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「作り手と使い手が繋がる場を」工場の離職問題を解決するファクトリエの”工場ツアー”【BBT-FCT #6】

ビジネス・ブレイクスルー大学大学院の「アントレプレナーコース」が2016年4月に開講しました。ICCパートナーズ小林雅が担当した「スタートアップ企業のビジネスプラン研究」全12回の映像講義について、許諾を頂きまして書き起し及び編集を行った内容を掲載致します。今回の講義は、ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田 敏夫 氏にゲストスピーカーとしてお話し頂きました。60分の講義を7回に分けてお届けします。

(その6)は、工場の離職という課題の解決に貢献するファクトリエの工場ツアーについてお話し頂きました。作り手と使い手をつなぐ素晴らしい場です。是非ご覧ください。

登壇者情報
ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」
スタートアップ企業のビジネスプラン研究
「ライフスタイルアクセント(ファクトリエ)」
 
(講師)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授
 
(ゲストスピーカー)
山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役
 
(アシスタント)
小泉 陽以

その1はこちらをご覧ください:「日本から世界ブランドを作る」ファクトリエ山田氏のグッチ・パリ店での決心【BBT-FCT #1】
その2はこちらをご覧ください:工場のこだわりと息吹を伝える新しい流通”ファクトリエ”【BBT-FCT #2】
その3はこちらをご覧ください:「初回生産分すら売れない」ファクトリエ創業の苦悩と起死回生の”行商”【BBT-FCT #3】
その4はこちらをご覧ください:共感の連鎖を呼ぶファクトリエ山田氏の「沸点を超えた」想い【BBT-FCT #4】
その5はこちらをご覧ください:「タウンページ片手に開拓」ファクトリエの地道な工場提携秘話【BBT-FCT #5】


工場ツアーの価値

山田 工場ツアーについてですが、基本的には現地集合、現地解散でお客様にお願いしています。

たとえば、岩手県の北上市というところも人口10万人くらいの小さな町なのですが、普段誰もいない改札に30人のお客さんが来ているということになる。

%e5%b7%a5%e5%a0%b4%e3%83%84%e3%82%a2%e3%83%bc%e5%86%99%e7%9c%9f出所:ファクトリエ 工場ツアー

最初の頃は工場の方々も「忙しいのに」とか「恥ずかしい」とか、いろいろとネガティブなことを言っていたのですが、いざ人が来ると「では、何をしてあげようか」とか「こういう体験は楽しいかな」とか、いろいろなことを考えだすのです。

僕らがこれを始めた頃は、工場の離職率というのは非常に高かった。

その時に、若い子たちがどうやったら自分たちのやっていることを誇りに思えるのだろうと考えました。

そして、自分たちのお客様と実際に接点を持てば、どういう気持ちでこの製品が使われているのかがわかる。

また、お客様もどういう気持ちで製品が作られているのかがわかる。こうして、両者がわかりやすいだろうというふうに思い、始めたのです。

すると、やはり離職というのが一気になくなったということがありました。

この工場体験を通して、お客様がどれだけ自分たちの作っているものに愛着が湧くのかわかりますし、1個作るのにどれだけ大変かということがわかるので、相互に理解し合える企画になったのです。

今は、工場の人も工場ツアーを楽しみにしていて、「次回工場ツアーいつにしようか」と言っているくらいです。

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毎月、富山だったり、福井だったり、岡山だったり、秋田だったり、いろいろなところでやっています。

そのたびに、「東京駅から朝8時くらいの新幹線で来たよ」とか「北海道から来ました」という話を聞くのです。

ですから、いろいろと全国各地でモノづくりに触れていただくイベントになっていると思っています。

小泉 現地集合、現地解散でも人は集まるものですか。

山田 そうですね。10人くらいの枠、20人くらいの枠と、工場によって違いますが、10人くらいならば1日2日で埋まります。

30人くらいの枠でも1週間くらいあればだいたい埋まってしまうので、大人気企画です。

小泉 参加された方の反応というのはどうでしょうか。

山田 すごく反応は良いです。

また参加したいという方が9割くらいいらっしゃいます。

それから、それにかこつけて、「温泉でどこか良いところはありますか」などおっしゃいます。

日本の方は旅行イコール温泉というイメージが強いので、どこかそういう場所があれば帰りにはそこへ寄りたいですとおっしゃっていますね。

参加者の寄せ書き

また、工場ツアーの最後に、来てくださった方からこうした寄せ書きをいただいております。

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そして、この寄せ書きにモノとの思い出というのがたくさん書かれているので、自分たちの作っているマフラーやカーディガンやネクタイがどういうふうに愛されているのかがわかる。

遠距離のカレにプレゼントしたら久しぶりに来た時につけてきてくれたとか、結婚式の時に父へ最後のプレゼントとして渡したとか、いろいろな思い出が書いているので、作り手としては自分が作ったものが誰かの大切な思い出になっているというのを実感していただける。

ですから、この寄せ書きは食堂や脱衣所などに飾ってあって、いつもこれを見ながらもう一回モチベーションをあげて「今日も頑張ろう」と思う。

工場ツアー自体はすごく良いサイクルにできているのではないかと思っています。

小泉 この工場ツアーを思いついたキッカケというのは何なのでしょう。

山田 工場ツアーは2年前から始めたものです。

その年の4月にある工場へ2人新卒が入ったのですが、半年たってその2人ともが辞めました。実はその工場以外でも、辞めるということが続出したのです。

それで、理由を考えました。

それは、「自社ブランドを作る」と言えば恰好が良いのですが、実際にやることはパイプ椅子に座って1日300枚のシャツを縫い続けることなのです。

また、環境も悪いとか、いろいろあった。

でも、彼女たちにずっと話を聞くと最後はこういうことに行き着きました。

すなわち、ある18歳の社員の方が、「自分が作るのが300枚でも400枚でも良いけれど、誰か喜んでくれているのかな」ということを話していたのです。

それならばお安い御用です。

だって、みんな喜んでいるのですから。

そこで始めたのが工場ツアーで、直接喜びの声を聞いてみてもらおうとしたのが最初です。

作り手と使い手が繋がる場を作る

また、それで改めて、作り手と使い手が繋がる場が必要だと思いました。

工場ツアーが2、3回終わったころに、銀座に40坪くらいのスペースを作りました。

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これも自分たちのDIYで作りました。

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そこで工場の方々とイベントを開くなどしております。

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傘をどう使うかというようなことで、傘工場の方が来てくださることもありました。

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工場用に就活イベントなども最近は開いています。

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学生100人と、提携している10工場が着まして、「おらが町に来い」というイベントを開くのです。

できるだけ工場が長く続くように、こういうこともやっております。

異業種とのコラボイベントを開催

実は服のモノづくりだけではなく、いろいろな異業種で毎月イベントをやっております。

地ビール、酒蔵、浮世絵師、書きぞめの書道家、いろいろな語れるものを持っている方々とイベントをやっているのです。

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こうした方をお呼びして、お客様に服だけではなく違った文化的なことだとかを共有しています。

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たとえば、利き醤油のイベントをやったら、こういう300年続いている天然工房の醤油が、大手の醤油と何が違うのかとか、かまぼこをつけて食べてみたりする。

こうして、いろいろな「豊かさとは何だろう」とか「日本の文化とは何だろう」ということをイベントとしてやっています。

(続)

続きは 「夢はオリンピックのユニフォーム」ファクトリエ山田氏が語る世界への飛躍 をご覧ください。

編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成


【編集部コメント】

続編(その7)では、ファクトリエの世界展開とこれから目指すさらなる飛躍についてお話し頂きました。次回いよいよ最終回です。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

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