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【最終回】「夢はオリンピックのユニフォーム」ファクトリエ山田氏が語る世界への飛躍【BBT-FCT #7】

ビジネス・ブレイクスルー大学大学院の「アントレプレナーコース」が2016年4月に開講しました。ICCパートナーズ小林雅が担当した「スタートアップ企業のビジネスプラン研究」全12回の映像講義について、許諾を頂きまして書き起し及び編集を行った内容を掲載致します。今回の講義は、ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役 山田 敏夫 氏にゲストスピーカーとしてお話し頂きました。60分の講義を7回に分けてお届けします。

(その7)は、ファクトリエの世界展開とこれから目指すさらなる飛躍についてお話し頂きました。いよいよ最終回です。是非ご覧ください。

登壇者情報
ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」
スタートアップ企業のビジネスプラン研究
「ライフスタイルアクセント(ファクトリエ)」
 
(講師)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役
ビジネス・ブレークスルー大学大学院 教授
 
(ゲストスピーカー)
山田 敏夫
ライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役
 
(アシスタント)
小泉 陽以

その1はこちらをご覧ください:「日本から世界ブランドを作る」ファクトリエ山田氏のグッチ・パリ店での決心【BBT-FCT #1】
その2はこちらをご覧ください:工場のこだわりと息吹を伝える新しい流通”ファクトリエ”【BBT-FCT #2】
その3はこちらをご覧ください:「初回生産分すら売れない」ファクトリエ創業の苦悩と起死回生の”行商”【BBT-FCT #3】
その4はこちらをご覧ください:共感の連鎖を呼ぶファクトリエ山田氏の「沸点を超えた」想い【BBT-FCT #4】
その5はこちらをご覧ください:「タウンページ片手に開拓」ファクトリエの地道な工場提携秘話【BBT-FCT #5】
その6はこちらをご覧ください:「作り手と使い手が繋がる場を」工場の離職問題を解決するファクトリエの”工場ツアー”【BBT-FCT #6】


小泉 この銀座フィッティングスペースはいつ頃作られた施設なのですか。

山田 これは2014年の12月にオープンいたしました。

小泉 これはやはり、ネットだけではなくて、みなさんに実際に来て試着してもらおうということでもあったのですか。

山田 そうです。やはり、触りたいとか、着心地を知りたいとか、素材感をみたいという方々はすごく多かったですから。

shop_ginza_photo出所:ファクトリエ Webサイト

もっとも、ここにはiPadが置いてあって、持ち帰りはできないのですが、だいたい翌日くらいには埼玉の倉庫から発送されるようになっております。

つまり、そこでは全部サンプルとサイズが並んでいる場所、ということになります。

小泉 すると、今はここに誰かが常駐されているのですね。

山田 はい。オフィスも兼ねていますので。私もいますし、他のメンバーもいます。

小泉 ちなみに現在社員は何人くらいいらっしゃるのですか。

山田 私を除いて4人です。

それから先ほどのアルバイトや業務委託というのは10名弱おりまして、インターンが15名くらいです。

ファクトリエの採用基準

小泉 採用についての基準などはありますでしょうか。

山田 直接応募が多いのですが、そこで「日本のモノづくりを世界へ」という理念に共感してくださるというところが一番の点です。

(参考情報:ファクトリエの採用情報はこちらをご覧ください)

あとは、僕らの場合、一人一業務ではありません。

工場ツアーを企画したり、モノづくりのMDを生産したり、それから接客もします。

僕らは接客マイスター制度というものがあり、接客が一定レベル以上でなければ接客ができないことになっているのです。

接客マイスター制度というのはレベル1から5までありまして、レベル5まで取れないとできない。

今、ウチの接客のリーダーは百貨店に20年勤めていた女性なのですが、彼女が中心となって、上質な接客とはとか、言葉づかいとか、モノについての伝え方など全部訓練しています。

小泉 ずっとおひとりでやられていて、初めて採用をしようと決心されたのは何故なのでしょうか。

山田 もう出荷が追い付かなくなったからです。

今は埼玉の倉庫でやっていますが、最初はガムテープから、送り状発行から、領収書を同封するとか、1人1人のお客様へ手紙を付けるとか、全部自分でやっていました。

そういう意味ではそれが月に千個とかを超え始めると、1日30個とか40個とかやり続けることになるので、まったく回らなくなったのです。

小泉 すると、会社の状況としては売れるようになってからということですか。

山田 はい。そういうことです。やはり、売れるようになるまでは不安でした。

すべて自己資金だったので、売れるようになるまでは何とか1人で頑張って行こうと思っていましたね。

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小泉 この採用のタイミングということについて、小林さんいかがでしょうか。

小林 採用のタイミングはやはり難しいのです。

自分1人食っていけないのに雇えるのかとか、先ほどの在庫の問題もあります。

買ったは良いけれど売れなかったらどうするのだという問題が必ずあるのです。

そこの判断のしどころというのは非常に難しく、2年半、1人だったというのはやはりそういうことかと思います。

ただ、何故1年ではなく2年半なのかとは思いますよね。普通、2年半という期間は1人ではやらないです。

その間、ひとりぼっちですから。

おそらく今まで出てきた起業家の中で、最も1人の期間が長かったと思います。

でも、今は非常にチームを作ってやっていますね。特にインターンなど積極的です。

また、働き方も変わってきて、「社員だから仲間」というふうに制限する必要はありませんでしょう。

お客さんであるとか、周りの人もそうですが、そうした社会を含めた「仲間」ということになるので、必ずしも「ひとりぼっち」ではないですね。

そういう意味では新しい会社の形というものを作っている感じもしますね。

小泉 ちなみに資金なのですが、外部から調達しているようなことはないのですか。

山田 ないです。100%自己資金です。

小林 銀行借り入れをして資金調達をしているということですね。

山田 はい。銀行借り入れです。

小泉 なるほど。それでは続きましてお願い致します。

日本から世界ブランドを作る

山田 そして、最後に「いつグッチになるのか」というお話に行きたいと思います。日本から世界ブランドを作るということを言ってきていますから。

私たちが目指しているのは、ファッションブランドではなくて、モノにこだわったモノブランドだと思っています。

それが一番響いているのが海外です。11月から海外展開を始めたのですが、たった2-3ヵ月で100カ国以上からアクセスをいただいております。

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すでに、70カ国以上に発送が完了している状態です。マレーシアやタイやシンガポールにつきましては、月100件以上のオーダーが来ています。

今まで、メイドインジャパンブランドというのは日本にもなかったですし、世界にもなかったのです。

実は、世界トップ3のジーンズ生地は日本で作っているのに、世界のブランドの名前が書いてある。

プレミアムジーンズというのはすごく市場としても伸びています。

ただ、ジーンズも含めた形で、ジャパンブランドというものが世界へ打って出ようとした時に、そうしたものは今までありませんでした。

すると、それは面白い。

しかも、リーズナブルで安い。

関税がかかったとしても安いと言われるわけです。そうしたところですごくウケているのだと思います。

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小泉 これはもうサイトも英語など他の言語に対応させたということですか。

山田 そうです。すべて英語を、Google云々ではなく、全部自分たちでやりました。

私たちのサイトは専門用語が多いので、「どう訳せばいいか」などいろいろなことを翻訳者の方に言われながら、「これはこう訳してください」と言いながらやる。

せっかく語れるものがあるのに、Google翻訳ではチープでしょう。

(編集注:Google翻訳も最近大幅アップデートされて精度が劇的に向上しています)

その語れるもののために、自分たちでの翻訳を全ページでやりました。

これは大変でした。

小林 これはちょっと想像がつかないくらい大変そうです。

山田 何百、何千ページとあったのですが、全部翻訳していきました。

小林 素晴らしい。

小泉 海外の方々からお買い上げいただいた後の反応というのはありましたか。

山田 これが面白いのです。

たとえばマレーシアでは、チャイニーズ系マレー人とマレー系マレー人がいます。

そして、チャイニーズ系がお金を握っていて、マレー系が政治を握っていると言われるので、お金を持っているのは本当はチャイニーズ系のマレーシア人のはずですが、僕らのモノを買うのはマレー系が非常に多い。

マレー系の場合、「~モハメド」とか書いてあるのですが、同族ですごく流行るわけです。

もう、モハメドばかりが買うとか。

そうやって、自分たちで宣伝広告費もなくやっているからこそ、肌感でいろいろな反応が1個1個見られるのです。

今は非常に海外というのも伸びていますし、日本から世界ブランドを!と思った時に、メイドインジャパンブランドとしてファクトリエしかないので、その足掛かりとして頑張りたいと思っております。

今はだいたい創業から400%くらいの成長を遂げていますので、これからもこの成長率を維持できたらと思っています。

ひとつやりたい夢として、オリンピックの選手団のユニフォームと思っています。

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これこそ日本が世界に対して、「日本ブランドだ」と言える場所だと思います。

アメリカでラルフローレンが作っていたり、フランスでラコステが作っていたりする。

では、そうした一流ブランドを作っているファクトリエはジャケットも作れるし、シャツも作れるし、スラックスも作れますし、靴も作れます。

もう僕らができますので、ファクトリエの作った工場名が全て入ったユニフォームを、オリンピックの選手団に出せたらというのが、僕の今の夢です。

このように日本から世界へ向かって、日本のモノづくりからブランドを作っていくというのが、僕の今やっているファクトリエという事業になります。

以上です。

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小泉 ありがとうございます。

それでは最後に小林さんにまとめをお願い致します。

小林 はい。おそらくこの講義を聞いている方は、何事も「想い」から始まるのだと感じられたのではないでしょうか。

これはたまたまTEDにサイモン・シネックさんの動画があって、「何のため」がもっとも重要ということを語っています。有名な動画なので是非ご覧いただければ。

何故、から始まるのが非常にシンプルなルールである、と。

たとえば、アップルであれば「世界最高のモノを作りたいのだ」という想いから始まり、どうやって作るかという話になり、最後に「What」になっていく。

何を始めるか、どうやるか、という話になって、意外に「何故それをやるのか」というところから入ってこないケースが多い。

普通、事業計画を立てる時というのは、ネットで検索をして、「アメリカでこういうのが流行っているらしい」ということを見て、それならやってみようという話になったりする。

しかし、それで実際やってみると、「なんで俺、こんなことをやっているのだろう」と思ったりする。

それに対して、山田さんの場合は「何故(Why)」から入っているので、止めないですよね。

実現のためには手紙を書いたり、普通はやらないことでもなんでもする。

かつ、それが伝播してインターンまでやっているというふうになってくるのです。

ですから、自分自身が「何故」それをやりたいのかということを突き詰めることと、それをわかりやすく伝えることが大切になってきます。

そうした伝え方というところでも参考になったのではないでしょうか。

小泉 ありがとうございました。

さて、お送りしておりました、ビジネス・ブレイクスルー大学大学院「アントレプレナーコース」スタートアップ企業のビジネスプランは、いかがでしたでしょうか。

今回はゲストにライフスタイルアクセント株式会社の代表取締役で山田敏夫さんにお越しいただきました。

山田さん、小林さん、ありがとうございました。

山田 ありがとうございました。

小林 ありがとうございました。

(終)

編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成


【編集部コメント】

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