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「理不尽を作り出せ!」ビジネス×スポーツ×宗教×科学の異種カオス討論(1)【K16-5C #1】

ICCカンファレンス KYOTO 2016 において大好評だった「最高の成果を生み出す チーム作りの方法論」【K16-5C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!3回シリーズ(その1)は主に「理不尽」という環境が創り出す効果について議論しました。冒頭から全員飛ばしております。是非御覧ください。

ICCカンファンレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回ICCカンファレンス FUKUOKA 2017は2017年2月21〜23日 福岡市での開催を予定しております。

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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 5C 
最高の成果を生み出す チーム作りの方法論 

(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H 
共同創業者

川上(全龍)隆史 
宗教法人 春光院 
副住職

川邊 健太郎 
ヤフー株式会社 
副社長執行役員 COO

中竹 竜二 
(公財)日本ラグビーフットボール協会
コーチングディレクター

(モデレーター)
小林 雅 
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

小林雅 氏(以下、小林) それではセッションを始めさせていただきましょう。

ここでは、「最高の成果を生み出すチーム作りの方法論」ということで、ほぼ経営者ではない人たちを集めてお話してまいりたいと思います。

何故このセッションをやろうと思ったかと言いますと、スポーツなどビジネス以外の分野も、必ずビジネスの世界に学びになる共通点があると思うからです。

ICCカンファレンスでもセッションでいろいろと特集しています。学びの多い内容となっており、満を持してのセッションが本セッションです。是非過去の記事もご覧ください。

石川 善樹さんと中竹 竜二さんの対談
・ゾーン(究極の集中状態)に入るための3つのステップ。「ストレス」「リラックス」「集中」人間がコントロールできるのは『今』しかない。全員がそれを理解・実践できるようになるだけでチームは変わる
川上 (全龍)隆史 さんのインタビュー
・「世界中のトップエリートが集う禅の教室」誕生秘話川上全龍氏が世界中のトップエリートに説く瞑想・マインドフルネスの効果
中竹 竜二さんの登壇したセッション
・グロース・マインドセットの人材は世界で活躍する世界で勝負するには日本人の緻密性・慎重さをどのように活かすべきか?グローバル企業としてビジョンの作り方とバリューの共有はどのように行うのか?
川邊 健太郎 さんの登壇したセッション
・新しい成長分野を創る経営とは何かイノベーションと既得権益日本からイノベーションを生み出すには?破壊的イノベーションを生む組織とリーダーとは?

ですから、僕も含めてですが、話は相当ヘンテコになっていくとは思いますが、よろしくお願い致します。

(編集注: 非常に面白い内容になりました。ご期待ください!)

では、最初に簡単にそれぞれ自己紹介もかねて、最近 嬉しかったこと、楽しかったことをお聞きしたいと思います。

パーソナルなことでも仕事の話でもよいので、まずは石川さんからお願いします。

石川善樹 氏(以下、石川) みなさんこんにちは。

僕は子供が1歳で、最近ようやく歩き始めたのが嬉しかったです。

こんな普通なところから、今日は行きたいと思います。

石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者

予防医学研究者、博士(医学)
広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。
「人がより良く生きるとは何か」をテーマとした学際的研究に従事。
専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、マーケティング、データ解析等。
講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター
著書に『疲れない脳をつくる生活習慣(プレジデント)』『最後のダイエット(マガジンハウス)』、『友だちの数で寿命はきまる(マガジンハウス)』など。

小林 ありがとうございます。

それでは川上さんお願いします。

川上(全龍)隆史 氏(以下、川上) 子どもネタが続いてしまいますが、私の娘は4歳です。

それが最近ようやくロジカルに話せるようになってきたというか、論理が通るようになって来たというのが、なんだか嬉しいです。

川上(全龍)隆史
宗教法人 春光院 副住職

1978年生まれ、高校卒業後に渡米、アリゾナ州立大学にて宗教学、主に宗教紛争について学ぶ。7年半の米国での生活の後、2004年に帰国。2005年より宮城県・瑞巌寺専門道場にて修行を行う。2006年に実家である春光院に戻り、その春より英語による坐禅会を開始。2007年に同院の副住職に就任。また2008年より米日財団主催の米日リーダーシッププログラムのメンバーとしても活躍。現在では、年間約5,000から5,500人の訪日外国人に坐禅や禅哲学をいかに日常生活に取り込むかを脳科学や心理学を交えながら国内だけでなく海外でも指導を行う。また米国を中心とした様々な大学とサマープログラムなどを春光院で共催。Campus for HのMYALOやJINS MEMEのZENなどのマインドフルネスアプリの監修を行なう。企業やHBS、IESE、やSloanなどのビジネススクールに「一如 (OnenessまたはInterdependency)の考え方」や「おもてなしの精神」を経営などにいかに活用するかなども指導している。そして、2010年ごろより、LGBTの権利の支持のため、同性同士の仏式結婚式や葬儀(埋葬)などを英語と日本語で行っている。著書「世界中のトップエリートの集う禅の教室」協力 石川善樹博士 角川書店

石川 ヒトになってきたということですね。

川上 そう。ヒトになってきた。

小林 なるほど。

そして、川邊さんはもちろんお子さんの話でしょうか?

川邊健太郎 氏(以下、川邊) まあ、そこはあえて話題を変えておきましょう。

今回のテーマとも絡めてパッと思いついたのは、むしろ悲しかったことです。

1年前ですが、ヤフー・ジャパンにインド出身の大物会長が就任しました。

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川邊 健太郎
 ヤフー株式会社
 副社長執行役員 COO

1974年10月19日生 東京都出身
 青山学院大学法学部卒(1998年)

1995年   在学中に電脳隊を設立、99年に代表取締役社長
1999年   ピー・アイ・エム株式会社設立
2000年8月 ヤフー株式会社と電脳隊、ピー・アイ・エムの合併に伴い、ヤフー株式会社入社、「Yahoo!モバイル」担当プロデューサー
2003年   社会貢献事業担当プロデューサー(モバイル兼任)
2006年2月 Yahoo! JAPAN10周年記念非営利事業として「Yahoo!みんなの政治」を立ち上げ
2007年   メディア事業部に異動、「Yahoo!ニュース」、「Yahoo!ニュース トピックス」などの責任者
2009年5月 株式会社GyaO(現在、株式会社GYAO)代表取締役社長
2012年4月 ヤフー株式会社 最高執行責任者(COO) 執行役員 兼 メディア事業統括本部長
2012年7月 副社長 COO 兼 メディアサービスカンパニー長
2013年4月 副社長 COO
2014年6月 取締役副社長 COO 常務執行役員
2015年6月 現職に就任

そして、言語の壁などいろいろを乗り越え、かなり個性的な人だったので個性も吸収しながら、良いチームが作れてきたなと思った時に、その会長は辞めてしまいまして、それが最近覚えていることで悲しいことでした。

(会場 爆笑)

小林 では中竹さん、お願いします。

中竹竜二 氏(以下、中竹) 僕自身は先週 中国にいました。そこで、いわゆる中国の洗礼を浴びたのです。

着いて、上海から地下鉄に乗る時に、並んでくれない人たちの中にまみれて、切符を買うのに1時間くらいかかった。これは自分の中ではいい意味で経験になりました。

中竹 竜二
(公財)日本ラグビーフットボール協会
コーチングディレクター

1973年福岡県生まれ。
早稲田大学人間科学部卒業後、レスタ―大学大学院社会学部修了。
三菱総合研究所でコンサルティングに従事の後、早稲田大学ラグビー蹴球部監督を務め、自律支援型の指導法で多くの実績を残す。「フォロワーシップ論」を展開した人のひとり。
現在、日本ラグビー協会コーチングディレクター(初代)を務め、2016年アジアラグビーチャンピオンシップにて日本代表ヘッドコーチ代行としての指揮をとり優勝を果たす。2014年に株式会社TEAMBOXを設立し、次世代リーダーの育成や組織力強化に貢献し、企業コンサルタントとして活躍中。主な著書に『自分で動ける部下の育て方—期待マネジメント入門』(ディスカヴァー新書)、『部下を育てるリーダーのレトリック』(日経BP)など。

それから、来週からはリオへ行きます。僕はリオのオリンピックへは行きませんでした。パラリンピックへ行きます。

あまり知られていませんが、ウィルチェア・ラグビーというものがあるのです。

石川 殺人スポーツと言われているものですね。

中竹 さすが、ご存じで。

小林 石川さんはなんでも知っていますからね。

中竹 その通り、マーダーボール(殺人ボール)と言われています。障碍者スポーツなのに本気でぶつかることが許されているので、大きな怪我も少なくありません。ときには指がちぎれたりするらしい。

車椅子で唯一フルコンタクトが許されているという競技。

川邊 それは車椅子に挟まって指がちぎれたりするのですか。

中竹 そう。すごい勢いでぶつかるので。

障害者なのに、さらに障害を負うリスクを背負って勝負するのです。

これは僕が言ったのではなく、関係者の方が実際に言っていたことですよ。

ですから、私はそのコーチのサポートへ行ってきます。これは非常に楽しみですね。

小林 個性的な自己紹介から入ったわけですが、さて、石川さん何から話していきましょうか。

石川 やはりスポーツの話がわかりやすいとは思います。

ですがその前に、一応調べてきたのでそのことをお話しさせていただこうと思います。チーム作りの基本とは何か。

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これをどこから考え始めたら良いかと思った時に、やはり「動物」だと思いました。そして、調べていったらすごく面白いことがわかったのです。

まず、チーム作りの基本は、毛づくろい(グルーミング)です。

最近、いろいろな経営者にお会いするようになって思うのですが、やはり毛づくろいをやっている経営者は多いですね。

人間の場合ですと握手とかになるのでしょうか。

川邊 あとは、お喋りが毛づくろいですね。

石川 そうですね。

ですが、毛づくろいとか握手とか、フィジカルなコンタクトは、限界があります。この限界を超えたのが人間だと言われているのです。

結局、毛づくろいで「お前と俺は仲が良いよな」とやるのは、時間がかかる。これを手っ取り早くする方法が、笑顔だと言われているのです。

笑顔だと一発でわかるでしょう。

「お前とは仲が良い」ので「お前とは毛づくろいしなくていい」と。だから、人間は群れのサイズを大きくできた。

ですから、チーム作りの基本はまずは笑顔だという研究がありました。

小林 ありがとうございます!

では次に振りたい話は何でしょう。

石川 やはりスポーツの話がわかりやすいとは思います。なのでやはり、中竹さんのお話が聞きたいですね!

リオ・オリンピックでラグビー日本代表が活躍したのはなぜか?

小林 中竹さんのラグビーの話題を伺いたいと思います。

オリンピックでも7人制で素晴らしい成績でしたものね。

川邊 なぜ、日本代表はあんなに活躍できたのですか。

中竹 実はこれ、心理的なところがすごくあると思うのですが、前回2015年、15人制のワールドカップで南アフリカに勝ったというのはたぶん心理的には大きいです。

普通に考えて、今回オリンピックに出ることだけでも目標達成というような雰囲気はあった。

石川 ランキングで言うとどのくらいなのでしょう。

中竹 ランキングは12位前後なので、実際出られたことがもうすごいという状況でした。

僕は日本代表関連のコーチなどを育成したり評価したりする役なのですが、正直、普通に考えて男子の勝利は厳しいと思われていた。

もちろん、「メダルを取るぞ」とは言っていましたが。

まあ、実は男子は全然言っていなくて、大会が始まって、「これ、取れそうだな」となってから言い始めた。

ですが、なぜ勝ったかというのはきちんと検証しなければならないので、帰ってきて僕は速攻で監督にインタビューしました。

僕は立場的にインタビューしなければならないので。

そして、「なんで勝ったのですか」と聞ききました。すると、やはり「準備がすべてだった」と言うのです。

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これは実は去年、エディ・ジョーンズが勝ったあとに、大会中に「一言で言うとなんで?」と聞いたら、「準備がよかった」と言っていたのと同じです。

エディ・ジョーンズの前回もそうでしたが、わざわざ下見としてブライトンの会場へ行って、「ここで闘うのだ」とやった。

これはすごくお金がかかりますし、前代未聞です。そして、実は今回の7人制も同じフォーマットでした。

朝、何時に始まるか。そして、選手村から会場までバスで40分くらいかかる。渋滞するともっとかかります。

わざわざオーストラリアで、同じ時間で、同じバスで、実際の会場は近いのですがあえて遠回りして40分かけて行き、試合時間がすごく空くのですが、その時間もしっかり空ける。

こうしてまったく同じフォーマットで、ニュージーランドとイギリスとケニア、要するに予選突破しか考えていなかったので、この3パターンの練習をひたすらやり続けたのです。

川邊 確かに準備感すごいですね。

中竹 そうですね。

それではなぜ、ニュージーランドが負けたか。実はラグビーにとっては初めてのオリンピックだったのですね。

そして、15人制ですと、しっかりとしたホテルに泊まってちゃんとした環境の中でやるのですが、オリンピックの選手村というのは結構ひどいのです。

シャワーが出ないとか、ベッドが小さいのに選手は必ず2人、スタッフも2人。

それに耐えなければならないのですが、ニュージーランドとか強い国というのは、そういうことをやって来なかったので相当ストレスを抱えていたであろうということは言えます。

一方、日本は他の競技から「オリンピックとはこういうもので、入ったら融通が利かずやらなければならない」ということを聞いて、ここの準備を相当やってきました。

これは女子バレーのチームなどに教えてもらっていたのです。

そういう意味では、ラグビーの競技以外の準備が相当進められていたのは、日本の国としてすごく良かった。

これに対して、ニュージーランドは他の競技はあまり強くない。

また、優勝を目指していますから、日本の分析などやっていないわけです。

日本は出られたことですごいということもあり、予選突破しか考えていないので、3つのチームの準備をひたすらやり続けた。

そして、もう一つ。

これは全部重なっているのですが、そもそもラグビーは女子の方が良いと言われていたのです。女子はほんとうにメダルが取れそうと言われていました。

しかし、その女子が目の前で惨敗しているのを見たのです。

すると、あれだけ準備して女子は強いと言われていたのに、ゲームになるとほとんど今まで経験したことのないことがたくさん起こり、パニック状態に陥ったのです。

川邊 オリンピックだからですね。

中竹 オリンピックだからです。

その時にヤバイと思い、男子としてはうまく行かなかった時にどうするかという準備を最後に徹底してやれた。

つまり、うまく行かない時の準備をポジティブにやれたので良かったのです。

そうなると、すごく勝つべくして勝ったということになります。

石川 失敗しようがないくらい準備したということですね。

中竹 そうです。

2、3カ月同じシュミレーションで、同じやり方でやっていましたから。

石川 為末大さんから聞いたのですが、オリンピックというのは普段と全然違うらしいですね。

たとえば、開幕式の時に着るシャツと次の日に着るシャツはスポンサーが違うから代えないといけないらしいのです。

違うのを着ていると怒られたりする。

こういうことも含めて、とにかく全然違うらしいですね。

川邊 その準備の主導は誰がやるのですか。

中竹 一応、監督がやります。

ですが、いろいろなサポーターがいる。たまたま、日本でコーチしていた人がオーストラリアの監督になりました。

つまり、日本のチームにいたコーチですね。ですから、コーチどおしで仲良くしていた。

そして、オーストラリアも他のグループで勝たないといけないし、お互い当たらないだろうから、オリンピック前に一緒にやろうよと言ってくれたコーチが非常に良かったのです。

彼はエディ・ジョーンズの影響をすごく受けている人間でした。ほぼ、エディ・ジョーンズの考えているところが、オーストラリアの7人制の代表の方向になっている。

また、日本代表の瀬川さんという監督は、彼と一緒にやることによってエディ・ジョーンズの考えていることも共有できた。

それまでは、エディ・ジョーンズの考えについて、15人制と7人制というのはなかなか連携できなかったのです。

しかし、こうして1年越しに、考え方もすごく共有できた。

そういう意味では、いろいろなアイディアをいただきました。

他の競技からもオーストラリアからも、良いとこ取りをさせていただいた。

そこは、謙虚におっしゃっていました。

川上 準備というのはよく言われますが、準備に関して国民性の違いのようなものはあるのでしょうか。

前に石川さんと、日本人がサッカーのような競技に弱い理由について話していました。そこで石川さん、電車が定刻に来るという話をしていましたよね。

友達が最近よくメキシコへ行くのですが、メキシコシティで、タクシーの後部座席がないとか、いきなり銃を突きつけられたりとか、そういうことがあるらしいのです。

だから、ああいう国というのは、意外とそういうのに強い。

石川 トラブルに強い。

川上 はい。トラブルに慣れている。

まあ、それもある意味準備だとは思います。

でも、日本人はそういうところに慣れていないので、準備をしなければダメだということなのでしょうか。

中竹 そうですね。

基本的には、想定しないことに対する対応力というのは非常に弱い。

なので、今回は最悪を準備するということになった。

要するに、うまく行かなかった時の準備が最後に積み重なった感じです。

石川 どれくらい最悪を想定しておくかというのも、面白い問いですね!

ヤフー・ジャパンなどはどうですか。

まさか、会長がいなくなってしまうということは想定していなかったですか。

川邊 いずれは、とは思っていましたが、こんなに短いということは完全に想定外です。

石川 そういう意味で言うと、対応力が問われるのですね。

川邊 そうですね。

しかし、ソフトバンクグループはいろいろなことが起こるので、変化慣れはしています。それにしても、せっかく1年で結構良いチームができたのにという思いはあります。

そういえば、中竹さんはヤフー・ジャパンが大好きで、3回くらい講演してもらっているのです。

それで、中竹メソッドでトップマネージメントでニケシュを入れて、良いチームを作ろうということで、かなりセッションをしたり1on1をしたりと積み重ねてきたところだったので、喪失感はすごかったですね。

ですから、1年というのはまったく想定していなかったです。

最後は日本っぽく色紙を書きましたけれどね。「ありがとう」とか書いて。

そういうことをしてくれたのはヤフー・ジャパンだけだったらしく、彼も非常に感動していました。

「ありがとう、またやろうね」と言って、色紙をシリコンバレーで渡したのです。

石川 とは言え、そういった事故対応ということについても、考えられるリソースは限られていますでしょう。

そこでどこまで不測の事態に備えるかというのは、たとえば中竹さんはどのように考えていますか?!

カオスを作り出す

中竹 実はコーチングも進化しているのです。

昔コーチングというと良いスキルを教えて、良いトレーニングを教えて、練習でうまく行くようなシュミレーションをやるという形だった。

しかし、今の良いコーチというのは、いかに緊急事態を「あえて」作るかということなのです。

つまり、練習トレーニングの環境をカオスに持っていく。

僕もよくやるのですが、いきなりレフリー、いわゆる審判の役でゲーム形式に入って行くのですが、全然違う反則を取るのですね。

全然オフサイドではないのに、「お前オフサイドだぞ」と言って笛を吹いたりするのです。

小林 かなり理不尽ですね。

中竹 理不尽です。

しかし、これに耐えなければならない。

また、ラグビーの競技場というのは広いのですが、狭くすると捕まる確率が高くなる。それから15対15なのですが、あえて8対20とかにするわけです。常に逆境。

小林 ちなみに8対20だったりすると、どうなるのですか。

中竹 もうやられっぱなしです。

川邊 それでチーム全体の対応力をあげていくということですか。

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中竹 そうですね。

あと、練習でもキーマンのリーダーをあえて途中で抜いたりする。

リーダーがいると、すぐに修正能力があってうまくいくのを、あえてリーダーを喋らせないように抜いたりするわけです。

そして、選手たちにはハッキリ言います。

これからやることがだいたい決まってくると、ここからはいろいろなシナリオを練習中に書くので、いろいろなハプニングなどが起こるが、それにいちいち質問などしないで対応してね、と。

そして、後でレビューするから、と。

こうして練習を組み立てています。

川邊 でも、そういう意味で言えばヤフー・ジャパンは24時間サービスをやっていてコンシューマー向けにもサービスを提供していますから、ありとあらゆることが起きるので、スポーツで言えば練習みたいなことが、程度の差こそあれ毎日起こっている感はありますね。

ですから、そうしたアクシデントの時にチーム力が鍛えられるというのはその通りかもしれないです。

石川 僕は、「成長とは何か」という研究をしていて、どうも2段階ありそうだというのが最近わかってきました。

最初の段階は、「積み重ね」による成長という段階がある。

つまり、言われていくことをきちんとやっていくことで成長するフェイズ。しかし、積み重ねていっても、ある時限界が来るのです。

そして、限界を突破するためには揺さぶりというか、理不尽が重要になってくる。そういった「揺さぶり」による成長のフェイズというものがあります。

人と言うのは、やはり変化に対応する時に強くなり、成長するというところがあるようです。

固定概念を省く

川上 朝、座禅の時にも話していたのですが、「悟り」という言葉は禅や仏教の世界でよく使いますでしょう。

ただ、仏教でもいろいろな宗派によって悟りという概念も違ってくる。たとえば、上座仏教で悟りというと、輪廻の枠から出るということです。

しかし、禅の考え方で言えば本来悟りというのは固定概念を省くということなのです。

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ということは、今起きるということになると、変化というものをどう受け止めるかということになってくる。

変化が起きた時に、良い、悪い、といいますでしょう。

その良い、悪いという判断は、結局自分の固定概念をベースにやっているので、そうではなくて固定概念を外してあるがままに見る。

それが変化に対応する強さなのではないかと思うのです。そういうベースがもともと禅にはあるのです。

川邊 禅問答というのも固定概念を省くということなのでしょうか。

川上 そうですね。

すごく理不尽でしょう。

川邊 理不尽な話の塊ですよね。

川上 そう。最初にやらされるのは、「犬には仏性があるか」つまり犬が仏になれるかということを聞かれるのですが、それを最初の半年から1年ずっと聞かれるのです。

それに対して、理論的に話してもダメ。

石川 答えても、また聞かれるのですよね。

川上 いや、ダメだったら鐘をチリンチリンと鳴らされるのです。

石川 鐘なのですか。

川上 老師と呼ばれる師匠が鐘を持っているのですが、答えを言った後ならまだしも、言おうとした時にいきなりチリンと鳴らされる。

石川 それ、良い制度ですね!チリンチリン(笑)

川上 そうでしょう!

あとは、部屋に入ろうとした時にもチリンと鳴ったりする(笑)

小林 すごく理不尽ですね。

川上 理不尽なのです。だから読めない。

するとこちらもいろいろ考えて、今度は逆に脅かそうかと考えたりする。たとえば、床の下から入って行くなど。

小林 仕事で言えばミーティングの時に入っていく瞬間にチリンと鳴らされるような感じですか。

川上 そうです。

インタビューの前とかもそうでしょうね。

川邊 それで、その犬には仏心があるのかというのは、模範解答などはあるのでしょうか。

川上 ないです。

川邊 ないでしょうね。

川上 ないことが、固定概念を外すということに繋がるわけです。

川邊 すると、師匠はなにをもって良いとか悪いとかやっているのですか。

川上 たぶん、なにもないでしょうね。

おそらく、いかに理不尽に扱ってやろうかという話だと思うのです。

川邊 すると、まったく同じですね。

中竹 はい。まさにエディ・ジョーンズはその手法です。

誰もが理解できない理不尽をやる。

ただ、その中で選手たちも途中で気づいたのです。

もしかしてわざとやっているのではないか、と。

そうでなければ自分たちは耐えていけないというね。

川邊 すると、鍛えるには社員満足度とか言っている場合ではないですね。

石川 最強の組織という意味では、新興宗教というのが最強の組織です。

僕、今日のために調べてきました。

(会場 爆笑)

友人が、新興宗教の洗脳のテクニックを研究しているのです。

これはあまり大きな声で言えないのですが、彼はいろいろな新興宗教に潜入して、実際に体験する。

ただ、弱点があって、彼は異様に洗脳に弱いのです。

(会場 爆笑)

毎回洗脳されて帰ってきて、奥さんにベシベシベシっと叩かれて「はっ」と気づくという。そういう男がいるのですが、いわくだいたい共通しているものがあるらしいのです。

それが理不尽です。

たとえば、水の入ったペットボトルを真ん中に置いて、みんなで円になる。そして、師匠がペットボトルを指して「これはなんだ」と聞きます。するとみんな一人ずつ「水」と答える。

しかしまた2周目が始まるのです。これを何周もしていると、途中から「自分です」などと言い出す者も出てくる。

(会場 爆笑)

これを真っ暗な部屋でやっていて、最後に「神です」というふうになった時、カーテンがパーっと開いて光が射してくるのです。

これで洗脳完了なのだそうです。ですから、とにかく理不尽というのは本当にチーム力を強くするのだと言っていましたね。

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川邊 これはちょっと新しい発見ですね。

中竹 ちょっとやりたいです。今度 (ラグビー日本代表の)U20でやってみましょうか。

小林 前のセッションで働き甲斐とか良い話をしていたと思うのですが。

石川 働き甲斐など言っている場合ではない、という流れになってきましたね(笑)

小林 もう理不尽さで勝負だと。

川邊 それは部活にはありましたよね。

会社になってくると社員満足度とかそういう方向へ行ってしまいがちなのですよね。

石川 でも、どっちが良いと言うよりはフェイズの気がしています。

最初はやはり満足を高めた方が良いのですが、それで会社の成長が止まった時に理不尽へ大きく振るというのが良い。

これは順番が結構大事です。最初は理屈が大事でその後に理不尽が来なくてはならない。最初から理不尽で始めた会社は結構厳しいでしょう。

川邊 ただのブラックですね。

石川 ただのブラックです。

川邊 ソフトバンクは汐留のビルのエレベーターに標語が書いてあるのですが、最初は「努力って楽しい」とか出ていたのですけれど最後の方では「ムチャ振りって楽しい」と書いてありました。

それを(ヤフー・ジャパンの)小澤さんと僕で見て、すごいなと言っていた記憶があります。

石川 徐々に変わっていったのですね。

川邊 徐々に変わっていった。

大きい組織なので、理不尽を是として飛躍させようと思ったのかもしれないですね。

石川 そうですね。理屈も突き詰めていけば最後にはそこへ行くしかないと思うのです。

(続)

編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成

続きはこちらをご覧ください:「究極的にはNO REASON」ビジネス×スポーツ×宗教×科学の異種カオス討論(2)

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