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「究極的にはNO REASON」ビジネス×スポーツ×宗教×科学の異種カオス討論(2)【K16-5C #2】

ICCカンファレンス KYOTO 2016 において大好評だった「最高の成果を生み出す チーム作りの方法論」【K16-5C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!3回シリーズ(その2)は自分の固定概念(バイアス)や仮面を剥がす「問い」について議論しました。議論がどんどんカオスな方向に白熱しております。是非御覧ください。

ICCカンファンレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級の招待制カンファレンスです。次回ICCカンファレンス FUKUOKA 2017は2017年2月21〜23日 福岡市での開催を予定しております。

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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 5C 
最高の成果を生み出す チーム作りの方法論 

(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H 
共同創業者

川上(全龍)隆史 
宗教法人 春光院 
副住職

川邊 健太郎 
ヤフー株式会社 
副社長執行役員 COO

中竹 竜二 
(公財)日本ラグビーフットボール協会
コーチングディレクター

(モデレーター)
小林 雅 
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

その1はこちらをご覧ください:「理不尽を作り出せ!」ビジネス×スポーツ×宗教×科学の異種カオス討論(1)


理由というのは自分の固定概念から生まれている

石川 そうですね。理屈も突き詰めていけば最後にはそこへ行くしかないと思うのです。

僕は子供の頃から、コカ・コーラが好きでよく飲んでいたのですね。

スカッと爽やかなどと言われていた。

ある時、コカ・コーラのキャンペーンのタグラインが「No Reason」になっていたのです。

つまり、なぜコーラを飲むのか、「No Reason」だと。コーラはここまで来たかと思いました(笑)

川邊 なるほど。

石川 実際、コーラというのはすごいらしいです。

友達に栗城君という登山家がいるのですが、彼に、「生死を分けるような極限状況から降りて来た時に何を口にしたくなるかわかるか」と聞かれました。

これは実は登山家に共通しているらしくて、危険な山から降りて来た時に最初に身体が欲するのが、温かなスープではなくコカ・コーラらしいのです。

そして、普段飲むのかと聞いても飲まないと言う。たぶん、あれは本能へ働きかけているのでしょうね。

でも、No Reasonというのは川上さん、どうでしょうか。

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川上 まさしく禅です。

石川 そうでしょう。

川上 No Reasonというか、理由もクソもない。

理由というのは自分の固定概念から生まれているわけでしょう。

そこをいかに外すかということになってくるので、No Reasonというのはほんとうに実は正しいと思うのです。

川邊 仏教とか禅で、チームとかチームマネージメントという概念はあるのですか。

川上 チームどころか、生きているすべてのものとか、存在するものすべてのマネージメントという世界になってくるのです。

川邊 この世のものすべてのマネージメントですか。

川上 無心という言葉がありますでしょう。

この心の部分というのは自分ということになります。

自分がない、自も他もないということになってくるので、ワンネス、「1」という概念になってくるのです。

その「1」はすべてを含むことになってしまうので、それをどうマネージメントするかということになってくる。

川邊 どうマネージメントするのですか。

川上 そうなると利他という概念になってきます。

川邊 徹底的に利他になるということですか。

川上 徹底的にと言いますか、そこへ行くとどうしても行動経済学的な論争になってしまう。

利他という概念すら本来存在しないということになってくる。ただ、どれだけ他人のために働けるかということが幸せになってくるのです。

石川 脳科学的には、人間にとっての一番の幸せは、苦しんでいる人を救うことなのです。苦しんでいる人を助けてあげることが、人間の脳にとって一番幸せを感じる。

中竹 それは本能なのでしょうか、欲なのでしょうか。

石川 おそらく本能レベルで植え付けられているものでしょう。

川上 2歳児でもお菓子を分け与える時の方が、自分がもらう時よりも、幸福度を感じるという研究がありますから。

川邊 そうなのですか。

川上 はい。

そして、2歳児でそうということは、実際本能のレベルでそうなのではないかということになりますよね。

自分が苦しいときほどライバルを思いやったほうがパフォーマンスは良い

石川 また、自分が苦しい状況ほど、相手を思いやった方が、実は自分が救われるということもあります。

たとえば、スポーツの世界でも、タイガーウッズが優勝争いをしている時の話です。

ライバルがパットを決めてしまうと、もう相手の優勝が決まってしまうという時に、「入ってくれ」と彼は思うらしいです。

つまり、他人の成功を喜んだ方が、結局自分が良いプレーができると知っているからです。

そこで他人の成功を喜んだりする。

それから川上さん、軍人もそうらしいですね。

川上 そうですね。

たまたま元特殊部隊や特殊部隊の方々が、よく春光院にいらっしゃるのです。

つまり、座禅会に来る。

言ってみれば紛争地域に派遣される傭兵部隊などありますでしょう。

ああいう会社の名前は使って来ないのですが、どう考えてもその研修のようなもので来ている人たちがいるのです。

私はそういう人たちにマインドフルネスを教えているのですが、その時に同じような話をしていました。

すなわち、敵のことをどう思いやるかによって、生きるか死ぬかが分けられるという話だったのです。

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たとえば、中国政府につかまったチベット仏教のお坊さんに「一番大変だったことはなんですか」と聞くと、「毎回私のことを拷問してくる中国兵のことを思いやることです」というのです。

そして、その話をした時に、「ああ俺たちも経験があるよ」という話になった。

そもそも、特殊部隊や傭兵部隊というのは、拷問に耐える訓練というものがあるらしいです。

電流を流されたりするらしいのですが、その相手のことをどこまで愛おしく思えるかということが大切らしいです。

川邊 拷問を受けながら。

小林 拷問をしている人に対してですか?

川上 そうです。

石川 「コイツにも家族がいるのだろう」などと思うわけですね。

川上 そう。「コイツも無理やりやらされているんだろう」とか。

川邊 そうすると耐えられるのですか。

川上 ええ。耐えられるらしいのです。

ただ、「コイツのことがほんとうに憎い」と思い出すと、人間というのはそこでもうダメらしいのです。

川邊 逆に言うと、スナイパーとかも「アイツにも家族がいるのだろうな」と思って撃っているのですか。

川上 まあ、スナイパーではないと思うのですが、ほんとに特殊部隊とかは相手のことを愛おしく思うらしいです。

中竹 スポーツの世界でも相手をリスペクトするとパフォーマンスがあがるというのは、タイガーウッズの話ではないですが、それはよく言われることです。

石川 やはり、「ぶっ潰す」などと思っていると、どこか身体が違うふうに動いてしまうのでしょうか。

中竹 そうですね。あと心理学的に、スポーツをやっている時に「勝とう」とか「この点数を入れよう」などと思うとだいたいパフォーマンスは落ちます。

これはハッキリ言われていて、目の前のことに集中できるかどうかの方が大事になってくるのです。

ですから、相手のことを倒そうと思うと逆に、常にパフォーマンスが落ちると言われている。

そして、コーチはそれにどこでストップをして、やるときに目の前のことだけに集中させるかということが重要になってきます。

それからタイガーウッズの話ではないですが、自分も相手も最高のパフォーマンスをした方が、結果的にパフォーマンスがあがるという前提で、「相手も良いプレーをして欲しいな」と思っているとパフォーマンスはあがると言われています。

川邊 なるほど。考えを改めたくなってきました。

コーチングによって自問自答の幅を広げる

石川 でもどうでしょう。

立場が上になればなるほど、部下の人たちに対する見方というのも変わってくるものですか。

川邊 そうですね。

石川 最初は至らぬ点がよく目に入ったが、そうでもなくなったとか。

川邊 と言うよりは、この数年間こうした場で話していますが、基本的には率先垂範で自分がやったほうが上手くいくことの方が多いわけです。

それをトップマネージメントになっても、最初の頃はやってしまう。

しかし、それを途中で切り替えて、部下を後押しして、部下が成果を出せるように変えていくわけです。

そして、昔は自分が仕事をうまくやることに対して脳にドーパミンが出ていたのが変わってきました。

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もちろん、途中で「なぜできないのだコイツは」というような苦しみはあるのですが、最終的にはその部下が成果を出した時、あるいは部下が他の会社の人から褒められた時に、ドーパミンが出るように変わってくるのです。

ですから、部下の何が見えるかも変わってきますし、自分が何を喜びとするかは、途中でかなり変わってきます。

自分が成果を出すのが楽しかったのが、部下に成果を出させるというのが楽しいというふうに、ほんとうに変わっていきました。

川上 自分という枠が外れて、会社というものが自分ということになったのでしょうか。

つまり、部下というものが自分の一部になるという考え方でしょうか。

川邊 そこは人によって違うと思います。

僕は、会社というか、ヤフー・ジャパンというサービスとは、昔から一体化していたので、どちらかというとマネージメントというものはそういうものだということを、エグゼクティブコーチとの対話の中で自分なりに作っていき、そして変わっていきました。

そう。僕にもコーチがいるのです。

ですから、自分と会社が一体というよりは、トップマネージメントになるということはそういうことなのだという、そちらの一体感の方が出てきました。

石川 そのエグゼクティブコーチという方は、どういうことをするのですか。

川邊 なんか「どうよ、最近」という感じです。

中竹 僕自身もやるのですが、基本質問です。

だいたい言葉にはならないですし、なんとなく考えているのですが、立場が変わる時というのは自分がやるべきことというのはわからない。

しかし、客観的に「トップマネージメントというのはそもそも何をやるのですか」と普通は聞かれません。

ですから、川邊さんもおそらくコーチに「教わった」わけではなく、考えていることをご自身で喋ったのでしょう。

それで言語化されていく。

川邊 結局コーチングとは何をやってくれているのかと言えば、自問自答の幅を広げてくれているのです。

自問自答はみんなやっていますよね。

みんな意思決定しますから。

今日は雨が降ってくるからどんな格好をして行こうか、とか。

そうやって自問自答しているのですが、自分で自問自答している限りは自分の実力の範囲内でしか自問自答の幅はない。

ところが、プロのコーチがつくと、その自問自答の幅が広がって行く。

その中で、「トップマネージメントとは」とか、そういう質問をしてくれるのです。

中竹 コーチの世界でよく言われているのは、良い回答が出るためには良い質問が出なければならないということです。

ですから、いかに良い質問をするかということを常に考えているのがコーチです。

川邊 質問のプロです。

「どういうバイアスがかかっていると思うか?」という問いをする

石川 僕は、先週までアメリカのイリノイ大学というところへ行っていました。

イリノイ大学というのは、20人以上のノーベル賞学者を出している大学です。おそらく、先生数あたりのノーベル賞は世界で一番でしょう。

そして、そこには脈々と伝統的な「問」というのがあるのです。

たとえば、生徒なり研究者が、何か言いますでしょう。それは、もちろん考え尽くして来ている。

それに対して、「なるほど、よくわかった。ところで、そこにはどういうバイアスがかかっているかと思うか」と聞かれるのです。

つまり、今自分が表明したその意見にどういうバイアスがかかっているかということをすごく聞かれる。

中竹 怖いですね。

石川 ええ。何を発表しても最後はそれを聞かれる。

川上 それはまさしく禅問答ですね。

ずっと考えていて、師匠へ行く前でベルを鳴らされるのと一緒です。

石川 だから、僕は1週間いたのですが、辛かったです。

発表して最後に次の日の宿題になるので。

川邊 でも、それで、やはり自分がすごくバイアスの中で考えていたということがわかるのですか。

石川 ええ。すごく気づきました。

小林 それはフィードバックされて変わっていくものなのですか。

石川 はい。変わって行きます。

でも、そのためにはこちらが考え尽くさなければなりません。

ものすごく考えて、考えて、こうだろうという時にそういう質問をされると、ハッと気づくのだと思うのです。

小林 ここにいらっしゃる経営者の方々も明日から部下へ、「キミの答えにはどういうバイアスがかかっているのだ」と聞かなければなりませんね。

川邊 それにしても、経営者はとにかく圧倒的に、答えを言えるかどうかよりも「問」です。

そう自分は思っています。

中竹さんのお話もそういうものが多いですね。部下に対して、いかに問えるか。「問」の質が高いか。

中竹 僕は今、立場的にコーチのコーチがメインの仕事なのですが、僕よりもキャリアの高いコーチを評価したり指導しなければなりません。

年齢もキャリアも低い僕が教えることはありませんので、すべてが「問」から始まるのです。

ところで、コーチのコーチというのは、業界的にはエデュケーターと言います。実はその上がありまして、コーチのコーチのコーチというものがあります。

これがトレーナー。そして、コーチのコーチのコーチのコーチというのがマスタートレーナーと言います。

その4段階があって、これがワールドスタンダードになっているのです。それがやはり最後のマスタートレーナーになると、何をやっているのかわかりません。

ほとんど何もやらないのですが、見て、問いかける。しかも、見て、問いかける相手も、また見て、問いかけているだけなのです。

その次のエデュケーターまでほとんど見て問いかけるだけの人に対して、見て問いかけて……が連なっている。

実は、僕はそのライセンスを取るのに何度も失敗しているのです。

この期間中にフィードバックで何度も聞かれるのは、「今、お前は何のキャップ(帽子)をかぶっているのだ」ということでした。

要するに、自分が今どのキャップをかぶって「今、僕はトレーナーです」「エデュケーターです」「コーチ役をやりました」というようなことを、ちゃんと意識しないと、どの立場かわからなくなるのです。

最初、僕は結構それに自信がありました。

俯瞰するのが得意なのだから素質があると言われて、自信満々で行った。

しかし、めった打ちで、初日はパニックになってしまいました。

そして、「キャップは何か」と聞かれて「エデュケーターです」と言うのですが、「いや、さっきはコーチの発言だったけど」と返されると、確かにそうだと気づく。

こういうことをやらされるのです。

経営者でも、リーダーになって、部長、取締役、社長、会長とありますが、おそらくこの段階の話かとすごく思いました。

「そのプレーに意図はあるのか?」という問い

石川 中竹さんがチーム作りをする上で、よくこの問いをするという決まったものはあるのですか。

中竹 僕は、「なぜ」を聞きます。

なぜそれをやるのか、と。

選手は「このプレーをしたい」「あのプレーをしました」と言うのですが、「そもそもそれをなんでやったのか。意図はあったのか」ということを聞くのです。

僕の中ではチーム作りで、”Somehow play” をなくそうと言っています。

要するに、普通、なんとなくやってしまうのです。

ボールが来たらなんとなくパスをするし、なんとなく走ってしまう。

でも、本当にそれは意図があったのかというのは相当突き詰めますね。

石川 なるほど。

僕は今回イリノイ大学で、先生からアドバイスをもらうこともあったのですが、それをやって持って行くと、「なんでこれをやっているのだ?」と言われました(笑)

先生が言ったからやりましたというのは、理由にならんというのです。

中竹 僕もほぼそれですね。

小林 経営者の中でもそういう方は多いのではないでしょうか。

自分で指示したのに、部下に対してなぜそれをやっているのだ、と言う人はいますよね?

川上 でも、人間は普通そうです。

毎日の生活で「なぜそれをやっているか考える」というのは非常に疲れる。結局人間というのは、いかに楽をできるかと進化していきますでしょう。

だから習慣や固定概念を作り上げて、脳を使わないようにしている。

そこで「なぜ」と聞かれるとすごく頭を使わなければなりませんから、普通なら避けてしまうのですが、そういうのを繰り返すコーチとか上司というのは必要になってきます。

そうすることによって、われわれの脳というのは常にフル回転している状態になるのだと思うのです。

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川邊 本当にそうだと思います。

あと、エグゼクティブコーチでよく出る質問は、やはり人間関係で捉える質問が多いです。

「今そういう仕事をやっている時に、どのようなチームでやっているのですか」

「川邊さんとその執行役員の人とはどのような関係ですか」

「その横にいる人とそのまた横にいる人との関係はどうですか」

このように関係性や関係性の質を問うことが多いです。

これは先ほど石川さんの冒頭の話とも関わってくるでしょう。

人間はやはり社会的動物だから、「どのようなグルーミングをしている仲なのか」ということなのでしょうね。

メンバーとの関係性によってパフォーマンスは変わる

石川 組織心理学という学問があって、どういう人間関係の時が、その組織が活性化しているのだろうかということを調べている人たちがいます。

これはギャラップ社という世界最大の調査会社がやっています。

そして、この会社が良い会社かどうかこの一問を聞いたらわかるという質問があります。「この会社の中で親友と呼べる人はいるか?」というものです。

YESが多い方が、生産性も高いし、離職率も低い。

ですから、会社の中で親友ができるかということが、良いチーム作りができているかに関わっているのです。

そのエグゼクティブコーチのコーチングでは「友達ですか」とかそういうことを聞いているわけではないですか。

川邊 友達ですかとは聞きませんが、どういう関係性なのですかという聞き方をします。

信頼しているのか、していないのか。

週にどれくらい話しているか。

石川 休みの日にも会ったりするのか、などですね。

川邊 それで全部書き出すわけです。

すると、ある仕事に対して関わっている人たちの関係性が全部浮かび上がってくる。

そして、それを見てどう思いますかと聞かれると、今まで思わなかったようなことに気づいたりします。

こことここの人間関係が良くないかも、とか。

ここは少し仲が良すぎて、他に思うところのある人間がいそう、とか。

そういうことがわかるのです。

そうして、人員を入れ替えたりということをやります。

石川 そういうことというのは自分でも普段やられていると思いますが、コーチがいて俯瞰するとまた違うものなのですか。

川邊 これについては二つあります。

一つは、やはり普段は忙しすぎてあまりやれていないということがある。そこがコーチとの時間でちゃんとやれるということがあります。

それからもう一つは、先ほども言いましたが、問いの幅が自分だけですと限界があるということです。

僕は、前回のICCカンファレンスでも話しましたが、別件で中竹さんへ「普段どんな質問をしていますか」と聞いた時にすごいなと思ったのは、ミーティングをした後にキャプテンを呼んで「今のミーティングどうだった」と聞くらしいのです。

つまり、内容というよりは、ミーティングの出来がお前の中ではどうだったのだと聞く。

これはすごい質問です。

僕が何かのミーティングを仕切っていた人間に「今のミーティングどうだったか」「仕切れたか」「人間関係はどうだったか」などと普通聞きません。

それを改めて聞かれると、気づくところがあるのです。

「このプレー、好きなのか」という本能に問いかける

中竹 やはり人間というのは、その場にどっぷり浸かると、そこの場だけの感覚になってしまうものです。

これは僕にとっても学びで、僕自身が今のミーティングで本当に落とし込めたかどうかと、その雰囲気の中で自分たちがどう感じていたのかということはすごく聞きます。

それから、僕が大事にしていることがあります。

プレーや仕事というのは良し悪しで見ますでしょう。

ほとんどの組織というのは、進化すると良し、悪しになるのです。

仕事ができたかできないか。

その人間は能力が高いか低いか。

試合もほとんどそれにとらわれている。

ですが、僕は「このプレー、好きなのか」と聞くのです。

このプレーが良いとか悪いとかではなくて、本当にそこでパスをしたかったのか、と。

それから、このゲームは楽しかったかどうか。

今日の練習はキツかったと書いてあるが、それが好きなのかどうか。

こうした好き嫌いの方が、圧倒的に人はモチベーションが湧くし、そこに立ち戻った方が早い。

ですから、試合が終わった直後などは、「良し悪しは関係ないから今日の試合がどうだったか好き嫌いだけで話そう」と言います。

川邊 「このパスしたかったのか」という質問はスゴイですね。

小林 それでどういう答えが返ってくるのですか。

中竹 それで「僕はこのパスが好きなんです」などと言う。

すると、「そうか。お前はこのパスが好きなのか。では次にこういうことがあってもするんだよね」と聞く。

しかし、「いや、本当はしたいのだけれど、なんとなく戦略的にしてはいけないように思う時もある」という答えが返ってきます。

でも、普通に考えて究極の緊張状態だと、したいプレーをした方がパフォーマンスはあがるのです。

そこで大事になるのは、誰がどのプレーを好きなのかということです。

僕はチームを組むと絶対にこれを途中でやります。

ミーティングを全部潰して、「今日はできるできないではなくて、みんながどんなプレーを好きかどうかだけについて言ってください」と言う。

これをやると次の日の練習が変わるのです。

それで好きなプレーをやると「それお前、好きだからやったのだろう」となる。

そういう意味では、僕としては問いを常に変えることをやっています。

良い悪いというところから、もっと本能的に力が出るためにはどうしたら良いかということを考えるのです。

石川 やはり人を良い悪いで評価し始めると、組織が崩れるというところがあるのでしょうか。

中竹 あると思います。

これは先ほども話していたのですが、勝ち負けとか、最後の結果というものにとらわれると、パフォーマンスはどんどん落ちて行きます。

ですから、「いかに今(now)に集中するか」というところに関してはいろいろな策を使います。

マインドフルネスとは何か?

川邊 その関係でいくと、少し話題が変わるかもしれませんが、マインドフルネスというのは何なのですか。

川上 マインドフルネスという考え方というのは、最近一般化していきているのですが、みなさんが話しているのはどちらかと言うとテクニックの方になってしまっています。

どういうふうな呼吸法で、こういう姿勢を取るというような。

もっとも、それは私もそういうところから話してはいきます。

今もこの会場で姿勢が悪い人が多いなと見ていて思いますし。

中竹 みなさん急に良くなりましたね。

川上 そう。毎回そう言うと急によくなるのです。

石川 マインドフルというのは、マインドレスの逆ということですか?

川上 マインドレスというのは、言ってみれば先ほど申したように、習慣とか固定概念に流されて脳を使わない状態になっているということです。

逆に言うとその固定概念や習慣にとらわれずに、今あるものをあるがままに処理するという形がマインドフルです。

それには、今出たような好きか嫌いかというところも結構重要になってきます。

良い悪いということになると、白黒つけるというだけの世界になってくる。

対して、好きということになるといろいろなグラデーションが出てくるのです。

もっとポジティブな話になってくる。

ポジティブかネガティブかという話だけではないのですが、もっと細かいところを見ていく。

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人間は白黒つけたがるものです。何故なら、白黒というのは単なる2択で楽だからです。

脳を使わなくてよい。好きか嫌いかも2択は2択ですが、好きとなった時にグレーのところをどんどん突き詰めていけますでしょう。

それによって脳を使うことになるのです。

川邊 すると冴えてくるのですか。

川上 冴えてくるというよりは、たとえば、それによって良い悪いという判断と言うのは案外意味がないのだというふうになってくるのです。

最終的にはそこです。

川邊 なるほど。発想が変わってくる。

川上 発想が変わってくるし、良い、悪いという判断というのは結局自分の視点からの問題でしょう。

その自分という枠が外れると、それこそ川邊さんがおっしゃっていたようにもう少し社員というものも自分のパーソナルスぺースに入ってくるのです。

全体になって、利他というよりは自も他もない境地に入ってくる。

石川 なかなかビジネスの場面だと感情を聞く場面というのはなかなかないのでしょうか。

川邊 それはもう仮面をかぶっていますよね。

それをなるべく剥がさないといけない。

ヤフー・ジャパンは新体制になってから、部下の経験学習のサイクルをまわすために、上司と部下が週に30分以上「1on1ミーティング」をきちんとやっています。

感情的なことも含めて、必ず聞いてくださいと言っているのは、「今仕事を楽しめているか」と「成長できている感覚はあるか」ということです。

しかし、そうやってセッティングしないと聞かないし、マインドセットが「聞かれて答えていいのだ」というモードになりません。

そうやらねば、おおよそ仕事では聞く場面はありませんね。

中竹 感情というのは、最初はみんななかなか言えません。

ですから、聞く側が最初こっちから言った方が良いです。

僕などはずっと面談などもしているのですが、自分から感情を言う。

「本当に今日のゲームはつまらなかったよね」とか「自分でも今日のミーティングは本当つまらなかったと思う。ごめんね」と。

そうやって先に言うと、「そうですね。今日は最悪でした」などと返ってくる。

ですから、やはり相手の本音を聞きたい時は先に言ってしまった方が良いのです。

この壁を取っ払ってやらないと、特に良い悪いという話ばかりに慣れているから、好き嫌いというのは言うのが怖い。

それから、僕などはこれも見抜けるようになってはきたのですが、「これが好きと言うと良く見られるな」と思って言う人間もいるということです。

これが好きと言うと、なかなか意識が高いなと思われそうだということで言う。

好き嫌いではなく、良し悪しでうまく取り繕おうとすることもあるのです。

これを排除しなければなりません。

ですから、僕などは振り返る時に、フレーミングという内容をちゃんと振り返るのか、感情を振り返るのか、その時の自分の姿勢がどうだったのか振り返るのか、これを明確に分けるのです。

これはビジネスのトレーニングでも一緒でしょうけれども。

石川 そういう意味で、小林さんはだいぶ付き合いも長くなってきて、会うたびにだいぶ感情が出てきたなという感じがします。

小林 突然 僕に質問ですか??(びっくり)

石川 どうですか。ご自分で振り返ってみて感情を出すみたいなところは。

小林 僕は最近より原始的になってきました。

アニマル化してきました。

僕の中では生死を彷徨う感じで、「これで失敗したらヤバイ」という崖っぷちというのは人生の中で感じる部分があるし、成長する部分もあるのです。

42歳にして成長している感じがします。

それでより野生的になった気がするのです。

川邊 最後はアニマルスピリッツですね。

(続)

編集チーム:小林 雅/石川 翔太/榎戸 貴史/戸田 秀成

続きはこちらをご覧ください:「カオスからの自己組織化とは?」ビジネス×スポーツ×宗教×科学の異種カオス討論(3)

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