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ユーザーは自分が困っている「ペインポイント」に気づけない【SP-DS2 #5】

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これまでに配信した、デザインに関する議論を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス TOKYO 2016 より「優れたプロダクトの生み出し方」の記事を再編集して9回シリーズでお届けします。

デザイン特集2(その5)は、スマートニュース鈴木さんの格言「経絡秘孔」を土台に、ユーザーが困っている「ペイン」をいかに見つけるか?といった点などを議論しました。ぜひご覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 4B
「優れたプロダクトの生み出し方」
 
(スピーカー)
佐々木 大輔
freee株式会社
代表取締役
 
鈴木 健
スマートニュース株式会社
代表取締役会長 共同CEO
 
徳生 裕人
グーグル株式会社
製品開発本部長
 
中村 洋基
PARTY
Creative Director / Founder
 
(モデレーター)
赤川 隼一
株式会社ディー・エヌ・エー
モバイルソーシャルインキュベーション事業部 シニアマネジャー

「優れたプロダクトの生み出し方」の配信済み記事一覧

【前の記事】

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【本編】

赤川 (鈴木さんが事前に挙げたキーワード)「経絡秘孔」からいきましょうか。まず、改めて鈴木さんに伺いたいんですけれども、「経絡秘孔だな、ここは」っていうのをどう見つけていく、見定めていくんでしょうか。

鈴木 基本、分からないんですよね、それはね(笑)。中村さんのもすごく面白いけど、こんなにヒットするかなんて、創っているときは分からないんですよね。

中村 全然分からないです。

鈴木 それが経絡秘孔かどうかなんてなかなか分からないですよね。本当に勘を磨いていくしかないとは思いますけどね。

「経絡秘孔」の見定め方

経絡秘孔にも色々な種類があります。その中の1つで、とても左脳的に分かりやすい経絡秘孔は「ペイン」「ペインキラー」です。

僕が尊敬するベンチャーキャピタリストで、マイケル・モリッツという、セコイア・キャピタルのベンチャーキャピタリストがいるんですけども、彼が要するに投資するときに何を見るのかっていうのを書いた文章があるんですよね。

その考え方っていうのが、セコイア・キャピタルのホームページに行くと「Ideas」と言われるところがあって、そこに、セコイア・キャピタルが、こういうフォーマットで事業計画書を書いて下さいっていうのが入っていて、そこにも「ペイン」「ペインキラー」という言葉が書いてあるんですけれども。

簡単に言うと、「ペイン」というのは「痛み」ですよね。「ペインキラー」というのは「痛み止め」です、だから、痛みを止めます、と。

痛みがあって、痛みを止めると、それは非常に分かりやすいんですけど圧倒的に効く訳ですよ。

今、「痛い!痛い!」となっている人に、痛み止めを「ピッ」て与えたら効きますよねという話なんですよね。

これは、確実に分かりやすい左脳的に考えられるものです。ただ、それがどれくらいの大きな痛みなのか、これは本当に痛み止めになっているのかというところの判断は、相当色んな勘も必要ではあるんですね。

マイケル・モリッツの投資哲学というのがあって、その中で要するに、まずマーケットの大きさというのがある訳ですよ。これは後からどうしようもない、と。

それに「ペイン」があって、それに対応する「ペインキラー」があると、インフェルノが起きるという風に言うんですね。

インフェルノというのは、そのマーケットを烈火のごとく火が燃え広がるというので、そういうのが起きると。

そういう意味では、「ペイン」「ペインキラー」というのは分かりやすいんですね。

ところが、日本人に向かって、「ペイン」「ペインキラー」というと何だかよく分からないんですね。経絡秘孔を突けっていうとすごく分かりやすい訳ですよ(笑)。

(会場笑)

中村 例えば、『圏外で読めないじゃないか!』というのが「ペイン」ということですね。

鈴木 そうですね。

赤川 ペインの度合いと場所がまさに秘孔・ツボだと思うんですけど、それを見極める目をどう養っていくかっていうのを、他の方も含め伺いたいんですけど…

徳生 どれぐらいの精度で、経絡秘孔かどうか分かるか?

鈴木 いや〜百発百中だったら、それはすごいですよね。

赤川 逆に、これは超ツボだなと思ったのに、全然違ったみたいなエピソードはありますでしょうか?

鈴木 エピソードというか、大概そうですよね(笑)。でもそれは作っている途中とか、考えている途中で分かるんですよ。

議論していると、や~やっぱりこれダメだねってなることの方が多いですね。そういう意味で言うと、ダメな方がすぐ分かるので、生き残る方が珍しいっちゃ珍しいですね。

赤川 佐々木さんの観点はどうですか。

観察することの重要性

佐々木 B to Bだとペインとは何だろうというのは本当は分かりやすいんだと思うんですよね。多分それはお金に換算するとこうだよねというところに、最終的には行き着いて、それでコストが削減を出来るか、売上を伸ばせれば価値になるだろうというのはありますね。

ただ、ペインは実は存在するんだけど、気づいていない人はめちゃめちゃ多いと思っています。

例えば、経理の仕事というのは、経理をやっている人にとっては、ペインでも何でもないんですよね。でも経営者の視点からすれば、その仕事が減ればコストが減るとか、あるいは片手間でやっている人からすれば、これがなくなったらいいよねと思うわけです。

しかし、10年間経理をやっている人からすると、それは当然なので、全くそこにペインポイントがあると気づかない。

僕はなぜたまたま気がついたかというと、それは以前スタートアップでCFOの仕事をやっていて、自分のチームに経理担当の人間がいて、自分の横でひたすら経理の入力をしているんですよ。

何でこの人こんなに入力しなきゃいけないんだろうと思って、僕は最初その人のスキルというか能力を疑って、全部ちょっと何をやっているのか説明をしてくれと言って、分析しようとしたんですね。

そうしたら、その人がやっていることとかやり方が悪いんじゃなくて、これは会計ソフトが原因でこんなに入力が多いということが分かりました。

これは結局、観察するところが重要だったと振り返れば思っています。

そこで、当時思い出したのは、僕が就職活動をしているときに、P&Gという会社の会社説明会に行ったら、「チャレンジジョイ」という洗剤があって、開発ストーリーを聞いたのです。

要は油汚れが今までよりも落ちる洗剤ということなんですけど、その開発ストーリーは、色んな家にお宅訪問していったら、みんな一生懸命油汚れを落としているということがわかったということでした。

油汚れを落とすということに関して、「油汚れに困っていませんか?」と聞くと、誰も困っているなんて言わないんですよ。でも、一生懸命ゴシゴシやっているし、更に洗剤を追加する。洗剤を追加すると、技術的には更に油汚れが落ちなくなるらしいんですね。

そのようなことを思い出して、傍から見てみればすごく問題なのに、当事者たちは気づいていないというのはすごくいっぱいあるんじゃないかな、と思います。

赤川 観察で気づくという観点で、特にグーグルくらいになると、色んなイシューがあると思います。

ちょっとしたモスキート音が聴こえてきて、それがプロダクトに反映されるということなど、徳生さんなりに些細な違いが見えてくるのはどんなときですか?

徳生 プロダクトを出したあとは、やはりデータをとって議論が進められるので楽になります。出す前に決めなきゃいけないというお話の方が難しいですよね。油断すると無駄な議論や無駄な実験を繰り返す羽目になりますし。

赤川 となるとぜひ中村さんに伺いたいのですが、プロダクトを出す前にこれはいけそう、これはいけそうじゃないを判断するポイントは何かありますでしょうか?

プロダクトを一言で言うと何か

中村 うーーーーん。「これは一言で言うと何か」というシンプルなところに落とし込まれていること。そしてそれをきわめて左脳的に「こう当たります」とクライアントに説明できること。もう1つは、きわめて難しいのですが、広告は右脳に響く表現がけっこう大事じゃないかと思います。

「ダメ。ゼッタイ。」というキャッチコピーがありますよね。ああいうヒットを導こうとしたら、自然言語解析的にやるのではなく、ディープラーニングに近い処理で、ヒットを当てられるかもしれません。

左脳的に考えてオツなコピーで気を惹く、というよりも、15秒CMとか、キャッチフレーズとかって、右脳に働きかける要素が強いので、ロジックで組み立てていきながら、最後は感性、とか「気持ちよさ」が勝ってしまう世界かなあと。

僕も逆に聞きたいことがあります。

freee佐々木さんは、元グーグルですよね?freeeをお作りになり、起業しようとするとき、背水の陣で臨んだのですか?
つまり、「ヒットしなかったら別の起業アイデアがあった」とか、「βテストやってダメだったらグーグル戻ろう」とか(笑) 実際、他にも手はあったんですか?

徳生 いつでも戻ってくれて構わないです(笑)。

(会場笑)

中村 みんな聞きたいところかなと思って、その辺のヒリヒリ感というか…

佐々木 (笑)。どちらと言うと、今でもそうなんですけど、失敗するなら派手に失敗した方が正解だと思っています。

一番良くないのは、何か試したけど、あと3ヶ月やってみないとまだ分からないねというのが一番良くない結果だと思っていいます。

それで言うと、会計ソフトをリリースするのと、会計ソフトおまけアドオンツールみたいなのでリリースするのだったら、多分後者の方がリスクは少ないんですけど、それだと将来的に自分たちがもともとやりたかったビジネスにたどり着くような、可能性というか道のりが圧倒的に長いんですよね。そうすると、そこまで時間かけてやりたいんだっけ?という話になって、それだとすると、会計ソフトをずばっと試せた方が、結論は出やすいな~というのはあったんですよね。

失敗するなら、早く失敗した方がいいっていう発想だったんじゃないかな、と思いますね。

(続)

続きは 完成度をどこまで高めたらプロダクトをリリースすべきか? を配信予定です。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/藤田 温乃

【編集部コメント】

続編(その6)では、プロダクトを世に出す(サービスを始める)際に持つべき完成度やその後の改善について議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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