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体験して、つくり手に話を聞ける2つのアワード、ファイナル・ラウンドで熱狂の2日間が終了【ICC FUKUOKA 2022レポート】

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2月14日~17日の4日間にわたって開催されたICCサミット FUKUOKA 2022。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、2日間にわたって開催された「デザイン & イノベーション アワード」と「フード & ドリンク アワード」のファイナル・ラウンド、決選投票の模様と入賞企業のスピーチのハイライトをお届けします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


出展企業のロゴにサインを入れていただいたボード

約2日間に渡って1つの会場で行われた、「デザイン & イノベーション アワード」と「フード & ドリンク アワード」。前回から飛躍的にスケールアップした今回、2カテゴリがマッシュアップされた大きな会場、展示物も最長10メートルのもの(ロケット)、数グラム(お箸)から150㎏のもの(コンクリート建造物)あり、提供される体験も運営スタッフも大幅増となり、お祭りのような盛り上がりを見せた。

前回の開催の模様はこちら

それもICC FUKUOKA 2022のDAY2最後の時間帯に開催された、この「ファイナル・ラウンド」をもって終了となる。広々とした会場には、アワード会場の撤収を終えた参加企業の展示担当の方たちと、審査員たちが集合していた。

ファイナル・ラウンド進出企業は15社

改めて2つのアワードの全展示内容はこちら。

お箸からロケットまで大集合! デザイン & イノベーション アワードの展示を全紹介【ICC FUKUOKA 2022レポート】
これぞ究極の食体験プログラム! フード &ドリンク アワードの展示を全紹介【ICC FUKUOKA 2022レポート】

2日間で集められた投票は、当初想定していたよりも遥かに多く、1日目は1400票、2日目のこの日はなんと2000票超に達して、当初予定していた形から、より投票に参加した人たちの意思を反映するために集計方法を変えることになった。

審査員の平均点+オーディエンスの平均点の合計で各アワードの3つの部門賞を決定、ファイナル・ラウンドに進出するのは、審査員選出による上位5社、オーディエンス選出による上位5社となる。
グランプリや準グランプリ、各部門賞や結果は既報の通りだが、改めて紹介しよう。

【速報】「デザイン & イノベーション アワード」のグランプリは導入コストと職人不足の課題を同時に解決!「建設用3Dプリンタ」を提供する「株式会社Polyuse」(ICC FUKUOKA 2022)
【速報】「フード & ドリンク アワード」のグランプリはジビエソーセージ・ジビエハム提供の「イノP / 農家ハンター」!(ICC FUKUOKA 2022)

デザイン & イノベーションアワード

審査員部門の上位5社 オーディエンス部門の上位5社
インターステラテクノロジズ株式会社 インターステラテクノロジズ株式会社
Polyuse Polyuse
メルティンMMI どんぐりピット合同会社
Ashirase Oh my teeth
Oh my teeth 横山興業

<デザイン & イノベーションアワードの部門賞>

  • イノベーション賞「インターステラテクノロジズ株式会社」
  • 体験デザイン賞「株式会社TENTIAL」
  • ソーシャルデザイン賞「どんぐりピット合同会社」

フード & ドリンクアワード

審査員部門の上位5社 オーディエンス部門の上位5社
イノP / 農家ハンター みやじ豚
みやじ豚 山西牧場
十勝しんむら牧場 GRA
ムシロジックホールディングス イノP / 農家ハンター
homeal ムシロジックホールディングス

<フード & ドリンクアワードの部門賞>

  • モノづくり賞:「みやじ豚」
  • アイデア賞:「イノP / 農家ハンター」
  • ストーリー賞:「イノP / 農家ハンター」

こうして並べて見てみると、審査員とオーディエンスの違いが興味深い。審査員とオーディエンスの意見が一致するものもあり、「デザイン & イノベーション」は8社、「フード &ドリンク」は7社によるファイナル・ラウンド決選進出となった。

ファイナル・ラウンド進出を喜ぶイノP宮川さん

ファイナル・ラウンドでは、両アワード併せて15社による最後のアピール3分間スピーチが見どころだった。あとで聞くと、2日間でプロダクトへの想いを伝え燃え尽きたという方々が多く、ここでのスピーチはほとんどぶっつけ本番だったそうだ。

いずれのスピーチも数字的実績や展望よりも、飾らずに自分の原点を語った人が多く、エモかった。3分とはいえ十分なボリュームがあったため、ここではそのハイライトをご紹介したい。

デザイン & イノベーション ファイナル進出8社のスピーチハイライト

「ものすごく面白くて、チャンスのある宇宙。宇宙を使う時代が早く来てほしい」

インターステラテクノロジズ稲川 貴大さん 準グランプリ・イノベーション賞受賞
「振り返ってみると私自身、ロケットをやろう、宇宙をやろうと思ったのは、それこそ20歳を少し越えてからのタイミングです。大学でロボットや飛行機の勉強は一生懸命やっていたんですが、宇宙に実はそこまで興味があったわけではなかった。そのときは自分ごとではなかったからだと思います。

でもやりだすとものすごく面白くて、経済的なビジネスとしてのチャンスもすごくある。その可能性を多くの人に知ってもらい、本当に宇宙を使う時代が来てほしい。あらゆる機会を使って、どんどん知ってもらいたいなと思っています。今後も『宇宙の民主化』を、我々インターステラテクノロジズは進めていきます!」

「コンクリート構造物の今ある課題と未来の課題、両方やる」

Polyuse岩本 卓也さん グランプリ受賞
「なぜPolyuseがインフラをやるのかというと、現在インフラが危機的状況にあるからです。コンクリートの構造物は、高度経済成長期のときに非常に多く作られていてその老朽化が進み、来年には全総量のうちの3分の1がそうなると言われています。

『検査・点検して修繕もしてあればいいじゃないか』と思われるかもしれませんが、実際にこの作業を担う職人さんは、ここ5年から10年の間に、3分の1減ると言われています。やらなきゃいけないことはどんどん増えるのに、できる人はどんどん減る。これは建設業のリアルなんです。

だからこそ僕らはそこを自動化して、ある程度簡単に作れる、そんなことを作っていきたい。インフラというのは非常に地味です。でも何か起こってからでは遅いからこそ、今やらなきゃいけない。例えば橋が落ちたら、あるいはトンネルが崩れたら、大変なことになりますよね。だから今やるんです。

もっと明るい未来の話もしたいと思います。これまでのインフラ、作られてきたコンクリート構造物は単なるコンクリートのブロックで何もIT化できていません。僕らの建設用3Dプリンタは、造形するときに積み重ねていきます。そのときにセンサーを埋め込んでいって、つなげていくことができます。

コンクリートの構造物を、すべて集中管理、あるいは分散管理ができるようにインフラから整えていく。そこを僕らは創っていきたいし、今の課題、そして未来の課題、どちらも僕らは対応をしていきたいと思いますので、どうぞこれからも応援よろしくお願いいたします」

「脳卒中の方々の生活、未来を僕たちは変えられる」

メルティンMMI粕谷 昌宏さん 準グランプリ受賞
「僕たちの会社のビジョンは『人類の創造性を最大化する』ということ。自分がやりたいと願うことと、実際自分の身体を使ってできること、この2つのギャップを僕たちが開発しているサイボーグ技術で埋めていくというビジョンを持っています。その最初のプロダクトが、今回展示したリハビリ機器です。

日本では1日、約800人が脳卒中になっています。この数字は、だいたいICCサミットの1回の参加人数とほぼ同じです。日本だけでも全体で100万人ぐらいいて、後遺症のある人は手指が動かなくなってしまう。自立的に生活することもできなくなってしまうので、僕たちの機器を使って、身体を回復させることができないかということをやっています。

リハビリは人手も、時間もかかる。その成果が見えないと途中であきらめてしまったり、気が滅入ってしまう。今回体験された方は分かると思いますが、自分の生体信号の波形が見られるんですね。そうすると『あ、自分の身体は信号だけでもちゃんと発してるじゃないか』『もしかしたら、続けることによって、自分の手が動くかもしれない』、そういう可能性を感じられます。

体験された方は、もしかすると自分の身体がちょっと動かし方が変わった、不思議な体験をされたかと思います。わずか数分の間にでも、そんな変化を起こすことができる。脳卒中の方々の生活、未来を変えられると僕たちは感じておりますので、ぜひともこのプロジェクトを応援していただければと思っています」

「もっと自律的に歩きたいという、視覚障がい者の方の気持ちを感じて」

Ashirase 千野 歩さん「親族の事故がきっかけで、視覚障がい者と触れ合うことになりました。それまで私は視覚障がい者のことを、全然分かっていなくて、会ったことも無かった。たぶん皆さんもそういう方が多いんじゃないかなと思うんですが、どういったイメージを持たれていますか?

私が初めて会ったとき、第一印象はすごく失礼なんですが、『普通の人なんだ』と思ったんです。話していても楽しいし、語彙も多いし、僕は大きな偏見を持っていたんだなと改めて思いました。

彼らは普通だけれども、自由に移動できないから、どこかに行くのはもう諦めている、誰かと一緒じゃないと行けないと、どこか諦めているところがあるんです。僕は当たり前にできていることが、彼らは当たり前にできないっていうところを、なんとかしていきたいなと、活動を始めました。

もともと私は自動運転の開発をやっていたので、最初は技術から入りました。彼らが完全に安全に歩ける技術を作りたい。しかし、彼らと話していくうちに考えが変わりました。もっと自律的になりたいと心の中から思っている、そういった気持ちをすごく感じたんですね。

ただ、日本は福祉制度がしっかりしているので逆に、やってもらって当たり前、というところが多少残っている。そこにもチャレンジしていきたいと思っています。私たちのプロダクトは、自律性が担保できるように、自分たちで安全を確認する”余白”というものを残してデザインしています」

「なぜ歯科業界出身ではない僕が、業界を変えようとしているのか」

Oh my teeth西野 誠さん「実際にブースに来ていただいた方の中で結構多く聞かれたのが、なぜ歯医者でもない、歯科業界出身でもない僕が、歯科体験を変えようとしているのか? ということです。

『未来の歯科体験』を目指す、これが我々のミッションです。きっかけは僕自身、前職でエンジニアとして昼夜となく働いていた時に歯並びを直したいと思い、いろいろな歯医者に行ったんですが、諦めた経験があります。まず価格が高く、100万円すると言われました。それに何度も歯医者に通わないといけない。続けられないと思いました。

世の中を見渡すと、ガラケーはいつの間にかスマートフォンになっていて、支払いもキャッシュレス。でも歯科体験は、なぜか僕が子どものときから変わっていなくて、それが疑問でした。人生100年時代と言われている今、歯の重要性を皆さん理解されている。ここに、踏み込もうと思いました。

ただ、冒頭に言ったように僕はよそ者で、歯医者の出身外なので、最初の頃は『素人が口出しするな』、そんな心無いことを言われてきました。それでも絶対に変えたいと思い、少しずつ共感してくれるメンバーも増え、ようやくこういう場に立たせていただけています」

「我々が目指すのは、人と人がつながる令和版の『どんぐりピット』」

どんぐりピット鶴田 彩乃さん ソーシャルデザイン賞受賞
「どんぐりピット、なんかふざけた名前だなと思われた方、いらっしゃると思うんですけど、「ピット」という名前は、「穴」という意味です。

縄文時代に集落に1つ穴があって、その穴の中に木の実などを入れて、集落のみんなで分け合って食べていた、その穴の名前が『どんぐりピット』というそうです。日本は農耕民族で、もともと集落のみんなで分け合って食べていた。そんな文化がありました。

我々が目指すのは、「令和版のどんぐりピット」です。コロナ時代において、人と人とのつながりが希薄化したことで食材が余っているのではないかと思い、人と人とがつながって、フードロスが無くせるような令和時代のおすそ分けのサービスをこれからも作っていきたいと思っています」

「本当に繊細で素晴らしい日本の技術を、文化と一緒に発信する」

横山興業 横山 哲也さん「創業70年、愛知県の豊田市で自動車の部品を作っている企業で培った金属加工の技術を応用して製品作り、ブランド作りができないかといったところから始めたのが、我々BIRDY.ブランドです。

バーテンダーの方々が使うカクテルシェーカー、今回はステンレス製のデキャンタをお持ちしました。特徴としては、容器の中を職人の皆さんが精密に研磨していくときにまっ平にするのではなくて、ミクロの凸凹をあえて残すことで、液体が触れたときに、エアレーション効果が高まり、味わいを豊かにします。

皆様に体験していただいたのが、この研磨の目にそって液体を動かすのか、逆らわせるのか。回し方によって、味わいが変わるという体験です。朝の10時からアルコール度数47度のスコッチウイスキーを用意して、8割の方々に、お酒を使って体験していただきました。

我々が発信していきたいのは、この培った職人技術です。職人技術というのは、毎日使っていかないと廃れていくものです。この技術を製品に投影して、世界中に発信していきたい。日本の技術は本当に繊細で素晴らしいんだというところを、文化と一緒に発信していきたい。

本当にニッチなところなので、地道な活動で、辛いこともいっぱいありますが、フィードバックをいただいて、非常に刺激ある2日間でした」

「専門家の知識を集約した商品で、身体の機能をもっと発揮する」

TENTIAL 中西 裕太郎さん 体験デザイン賞受賞
「入口の左側で、棒を持ってインソール体験をご提供していたTENTIALの中西と申します。

江戸時代に人が参勤交代で長い距離を歩いたときは、今ほど肩こりや腰痛がないと言われていました。なぜかと言うと、足の指を使うことによって正しい姿勢が担保でき、身体の歪みがなかったためと言われています。靴が生まれて足の指の機能が衰えることによって身体の中心が崩れ、負担がかかるというメカニズムだからです。

僕らの作っているインソールは、土踏まずのところを微妙に上げることによって指をつかむことができ、姿勢が安定し、中心が崩れないような構造になっています。

僕自身は、ずっとサッカー選手を目指してスポーツをやっていました。日々身体のケアをしていましたが、高校生のときに心疾患に罹ってしまい、いかに身体を整えても身体が元気でないとチャレンジすることができないというのが、事業の原体験としてありました。

ドクターとかアスリートしか知らないような健康知識の集約をしながら、それをスポーツ以外の人にも届けたいんです。

ドイツでは子どもに足の小指のトレーニングをしたり、指の強さによってケガをする率が変わるというデータがあるなど、研究が進んでいますが、日本はまだまだです。足の指を使えないと子どもはケガをしたり、高齢者は転倒してしまうことも。それを知ることで、自分の身体の機能を生かすことにつながったり、もっと発揮できるような部位がまだまだたくさんあります」

フード & ドリンク ファイナル進出7社のスピーチハイライト

「5歳の男の子との出会いで『おからのクリーミーコロッケ』を開発」

ムシロジックホールディングス/豆乳パティシエ 鵜野 友紀子さん「今回、本当に美味しいお肉の出展がたくさんあり、もう絶対に無理だろうなというのが、私の本当の感想でした。植物性でグルテンフリーのコロッケを出させていただきましたが、動物性のものっていうのはすごく強くて、お肉の焼けるあの香りがあると、ああ、もうこれは絶対負けてしまったなと、植物性のすごい悲しさがあったんですね。実は(笑)。

『おからのクリーミーコロッケ』開発のきっかけが、5歳の便秘の子の男の子との出会いです。実は小学生の6人に1人が便秘、3人に1人が便秘気味だと言われています。”第二の脳”と言われる腸がそんなことになっているのは社会問題だなと思い、このコロッケを作りました。

おからは食物繊維などを含みとても栄養価が高いのですが、半日もおけば腐ってしまうため1年間に3万トン捨てられています。そのおからを使って、中はジャガイモとおからとタマネギ、化学調味料が一切入っておらず、衣もおからを使ったパン粉でグルテンフリーです。今回お披露目でICCに出させていただきました。

『パティシエなのにケーキじゃないの?』とかいろいろ言われたんですけど、それでも皆様に召し上がっていただいて、美味しいと言ってくださったのがすごくうれしかったです。

大豆は入っていますが27品目アレルギーフリーのコロッケを、全国の給食とか、志の高い企業の社食とか、コンビニエンスストアに置いたらいいんじゃない?と言ってくださったので、コンビニにこれを引っ提げて営業したいなという気持ちがあります」

「親子で食べるコンセプトは、自分が叶えられなかった願いを込めたもの」

homeal鬼海 翔さん「本気で幼児食を作り始めてから、まだ1年半です。サービスを開始して1年半でこういった場に立てていることを、本当にうれしく思っております。

このサービスを始めたきっかけは、息子の乳児湿疹でした。肌が真っ赤に腫れ上がって、アトピーのような症状が毎日毎日続いて、夜泣きも本当に丸2年間ずっと毎日でした。私の奥さんは看護師なので薬の知識があり、なるべく薬は使いたくない。奥さんのお母さんは保育士でして、そんな子どもを、よく面倒を見てくれました。

でも、私は一人の親として何もすることができなくて、そんな自分にも何ができるのか?といろいろ考えて、独学で勉強したのが幼児食です。今回はそんな私自身の思いを込めた商品を、皆さんに味わっていただいて、本当にうれしいと思っています。

皆さん、幼少期の食事の記憶ってどれぐらい残っていますか? きっと家族で過ごした美味しいな、楽しいなっていう記憶が残っているんじゃないかなと思います。

私の母親は10歳の頃に亡くなっています。幼少期の記憶がほとんどありません。このhomealの親子で食べられるコンセプトは私自身が叶えられなかった、そんな願いなんですね。だからこそ息子には、そんな思いはさせたくないと。それを大事にして商品をずっと作っています。

どうしても商品を作ると、原価のことや数量を気にしたり、ビジネスのことを一生懸命、大人の都合で考えるんですけれども、子どもにとって本当に大事なことは、大好きなパパとママと一緒に、同じご飯を美味しく一緒に食べたい、これだけが子どもの願いなはずなんですね。

でも世の中にはそんな商品がない。だから子どもと大人が美味しく食べるってことがどれだけ大事か、私はずっと原体験から思ってます。コロナの環境は、この家族の大切さだったりとか、子どもとの時間の大切さを明らかにしたと思っています。

私たちの会社のミッションは、「Love your family」です。マザー・テレサが答えた言葉です。「世界を平和にしたければ、家に帰って家族を愛しなさい」。今私たちは福岡に来ていますけれども、家に帰ってたくさんの家族との時間を、homealをちょっとでも思い出していただきながら過ごしてもらえたらうれしいなと思っております」

「山の中で投薬せずに大きく育てて、食べる人も健康にする畜産を」

十勝しんむら牧場 新村 浩隆さん 準グランプリ受賞

「私は農家の4代目です。昭和8年に富山から入植をしまして、私で4代目。子どものころからずっと農業を、跡を継ぐというようなレールの上にずっと乗りながら、高校、大学と行ったんですが、大学に行く中で、だんだん農業が嫌いになっていきました。(中略)

自分の親がやった農業に魅力を感じなかった。なぜ感じなかったかというと、まず農家の一番弱いところは価格の決定権を持てないところです。それを解消するには、自分で生産したものを自分できちんと加工をして、値決めをする。そして未来の再投資ができる価格を付けていく。それが必要だろうと思いました。

エサに輸入穀物を大量に与え、さらには化石燃料でトラクターを動かしながら収穫、もしくは堆肥を撒いたりとかしなきゃならない。そういう外部エネルギーの依存をいかに低くしながら、魅力ある農業をやるか?

そこでたどり着いたのが、家業の酪農を放牧酪農に転換して、牛を牛らしく、牛をハッピーに、その牛から生産されたミルクをお客様に提供、そしてお客様の健康になるような商品を作りたい。そういう思いで牧場に帰ってきました。

その積み重ねで、今回食べていただいたミルクジャムや豚肉を作りました。これは自分が美味しいベーコンを食べたいから、原料を買うのではなくて、自分で育てて、山の中で育てて、投薬無しできちんと大きく2年間以上大きく飼育したものをベーコンにして、それを食べる人をまた健康にしたい」

「1,000人の島から地方の奇跡を、ジビエを通じて達成したい」

イノP 代表取締役 / 農家ハンター 宮川 将人さん グランプリ/アイデア賞/ストーリー賞受賞
「今回皆さんには、美味しい、このイノシシさんのモモのお肉と、ソーセージを食べてもらいました。きっと美味しかったと思います。その理由ははっきり分かっています。彼らは山野を1日6kmも走り回ってプリプリです。さらに自分の身を守るためにつけた脂は本当にとろけるように美味しいんです。

上位6%だけのお肉を使って、私たちは『九州ジビエ』という加工商品を作りました。それがハムとソーセージ、そしてカレーです。

なぜ加工商品にしたかというと、ジビエをこれから食べる人たちを絶対失望させたくないと思ったからです。当たり外れがあるのがジビエの常識です。でも、抜群の安定感で年間1,000頭捕獲しているイノシシさんたちを、本当に美味しい状態で皆さんに提供できるようにしたい。

初めの3年ぐらいはなかなか食べていただけず、悶々としていましたが、『九州ジビエ』となって、皆さんに関わってもらえるようになりました。皆さんが食べることで、マイナスとされてきたイノシシが、今地方の宝になっています。

この農家ハンターモデルを、私たちがしっかりロールモデルとして確立させて、そしてソーシャルビジネスとして、清く正しく美しく稼ぎ、世界で一番イノシシ、シカが多いこの日本のジビエで、世界に打って出たいと思っています。

さらには、食育として、私たちのジビエを人口1,000人の島に皆さん来ていただいて、その1,000人の島から、地方の奇跡というのを、ジビエを通じて達成していきたいと思っています。今日は優勝させていただくつもりで来ました。応援よろしくお願いします」

「僕らの味と想いを分かってくださる方に提供できれば、それでいい」

みやじ豚 宮治 勇輔さん 準グランプリ / モノづくり賞受賞
「全力を出し切ったなということで、僕は結構満足しております(笑)。ブースも一番いい場所をいただいたので、せっかくだから少しでもお客さんを中に呼び込もうということで、外にお皿を持って出て行って、『こっちで食べられますよ』ということも結構やって、足が棒になりました。

悲願の1位をということで頑張ってきたんですけど、結構満足しているんです。『モノづくり賞』をいただいて、やっぱり生産者として、皆さんから美味しいって言っていただくのは、一番の喜びだなということを改めてこの場で気づかせていただきました。本当にどうもありがとうございます。

うちは本当に小さな豚農家です。日本の平均の経営規模の約4割ぐらいで、月100頭程度しか出荷ができません。なのでスーパーにも出せませんし、自分のところで直売所も出せません。規模を拡大しようと思っても、農地が地元の藤沢にはなくて、神奈川県の養豚家はみんな県外に出て行ってしまいます。

でもうちは湘南みやじ豚というブランドでやっていくので、今の規模を守って、僕らの味と想いを分かって下さる方に提供できれば、それでいいんだということを、この場でまた改めて気づかせていただいたな思っております」

「非効率で廃れゆくものでも、豊かな時間を彩るために作り続ける」

山西牧場 倉持 信宏さん「今回、ベーコンをご用意しました。私も研修させていただいた工房さんで作っていただいたベーコンです。塩を直接擦り込んで作る方法は『乾塩法』と言われまして、昔ながらのベーコンの作り方です。

現在大部分のベーコンが調味液を注射して作っていますが、そういった作り方に比べると水が抜けていくため収量が減って時間もかかり、手間もかかる、素材の旨味を引き出せるということ以外は、全くもって非効率なベーコンです。廃れゆく運命にあるというのも事実だと思います。

ただ、これがどうしようもなく美味いと自分でも感じますし、多くのお客様にそう認めていただいてきました。そして、そのベーコンがこの場所に連れてきてくれたんじゃないかと考えています。

素材と製法は、生産者と職人とのCo-creationで生まれた製品だと考えています。こういったものはたくさんはなくても、少しでも人の豊かな時間を彩るためにあってもいいんじゃないかなと、私はそう考えています。これからも特別なひとときを彩れるような、そんな豚肉を作り、伝え、届けていきたい、そう考えています」

「山元町の基幹産業であるいちご農家を元気にし、甘酸っぱさを広める」

GRA橋元 洋平さん「昨日、今日と、私なりに慣れない仕事をしまして、本当にクタクタになりました。ただ非常に充実感もありまして、皆さんにうれしい言葉、笑顔をいただいたので、本当にやり切ったという気持ちでいっぱいです。

GRAは2011年の東日本大震災で山元町が津波の影響で大被害を受け、130軒あったいちご農家さんがわずか数軒しか残りませんでした。山元町の基幹産業であるいちごが元気にならないと山元町は元気にならないということで、我々、ド素人ないちご農家を作りまして、なんとか10年、営農して参りました。

我々だけが作るのではなく、我々の失敗やノウハウ、栽培技術を伝えながら新たに新規でいちご農家になっていただくという新規事業を2015年から立ち上げまして、現在は全国で13軒の独立した農家さんが巣立っていきました。その方たちは我々の生産を超えるぐらいの規模になりました。

テール、カフェ事業も2~3年前からやりまして、今東京でも7店舗やっております。今後もやはり、『美味しい』と言ってもらえるいちごをグループ全体として作っていって、農家とカフェを通じて、いちごの食育や甘酸っぱさを広めていきたいと思っています」

決選投票の模様

意気込みいっぱいに語るというよりは、本当の気持ちをフラットに語るという姿勢に胸を打たれた審査員たち。まずはデザイン&イノベーションアワードの投票が行われた。

フード&ドリンクも激戦であることは間違いない。こちらもスタッフが必死に挙手を数え、集計に走る。集計が終わるのを待つ間は、ファイナルのスピーチを聞いた感想を審査員たちが語る。審査員たちも負けずに雄弁だった。

リバネス井上さん「一番最初に伝えたいのは感謝で、ブースにうかがった時に非常に丁寧に教えていただいたり、説明いただいたこと。前回も審査員をやらせていただきましたが、すごく感じたことがあって、それを伝えたいです。

素晴らしいプロダクトができたストーリーを聞かせていただくと、そのプロダクトを持っているときに力が湧くんです。この先、会社が大きくなっていくときに数字、結果、拡大などプレッシャーがかかってきて、ぜひ達成はしてもらいたいのですが、そのときでも自分のストーリーを貫いていただければと思います。その観点から投票させていただきました。僕が一番パワーをもらいました」

WAmazing加藤さん「私が最後の1票を入れたのは、横山興業さんです。1989年は世界の時価総額上位25中18社を占めていた日本が、 2022年発表では0社になっていた。そこには入れていないものの、日本では現在トヨタが1位です。

2022年世界時価総額ランキング。世界経済における日本のプレゼンスは?(STARTUP DB)

その部品を作って支えてきた技術が日本にはあるわけで、それが形を変えて世界に出ていくというのは、日本の企業には勝てる要素がまだまだあるんじゃないかと思って、一票を投じさせていただきました。

会場ではお買い物をしまくりました(笑)。MUIさん、TENTIAL、WAAK°さん、Oh my teethもブースで専門家に見ていただいて、前歯と奥の歯の高さが違うから肩こりになると言われて、すごい体験価値だなと思いました。とても楽しかったですし、まだまだ日本は世界で戦えるという実感を持てました」

博報堂 嶋さん「昨日も今日も、ブースでストーリーを聞かせていただき、熱い説明をいただきまして、非常に感銘を受けました。

”ザ・プレゼン”ではなく愚直に静かに自分の体験価値を語る方が多くて、心にしみたのが今回の印象です。ブランディングの仕事をしていて最近思うことは、DXが進む中で、効率化や最適化が語られるけれども、便利になることと愛されるのは違うなと思っています。

便利はいいことだけど、愛されるブランドになるかは別です。安くなれば、最新になればいいわけではないというのも、同じことです。

今日お話いただいた皆さんは、それを越える今までなかった体験、ストーリーを生み出している。たとえばロープライスでロケットを打ち上げるだけじゃなく、デザインを変えたりとか、今までにない打ち上げの新しい体験を作っている。車の部品を作る技術で、ウィスキーを飲むときの体験に昇華させたり。

Ashiraseさんも歩かされているというより、自分が歩きたいという感覚で使う人がいるんだろうなと、自発的な体験を促している。そこにクリエイティブジャンプがあるかないかはすごく大事だと感じました。

イノベーションは辺境から起きると思っていて、誰も気にしなかった、こんなのがビジネスになるのかと見つけると強いなと思いました。僕はTENTIALさんに投票しました。足の指を踏ん張ると肩こりが治るのか、そこか、と感動したので、購入します!」

JR西日本 舟本さん「JRの駅ビルに、いいお店を呼び込むということをしています。売れるお店をどう見つけてくるかというときに、頼まなくても勝手に伝道師になりたいと思うファンがどれだけつくかを1つの基準にしています。

独自性、エッジがきいていてキャッチーか?に加えて、人に伝えていくうえでシンプルに語れることが大事です。フード&ドリンクアワードでは、それをできている企業ばかりで感銘を受けました。最後は僕が語りたいなと思うブランドに票を入れて、2つはサブスクで買うことを決めました」

ひとつ、未来の出展企業に耳寄りな情報をお知らせしたい。各ブースの説明に聞き入り、体験をしてプロダクトの価値が心に響いたら、審査員であれ、オーディエンスであれ、運営スタッフであれ、彼らは強力なアンバサダーになる。実際に会場で、わが物のようにプロダクトの魅力を語っている人は数多かったし、実際に購入を決めた人も少なからずいた。

結果発表では、デザイン&イノベーションで「Polyuse」、フード&ドリンクで「イノP / 農家ハンター」のグランプリが決まり、本当に嬉しそうな表情の2人が壇上で優勝賞品を受け取った。このアワードをスポンサーするMakuake坊垣さんも、すでにつながりのある企業が多かったにせよ、体験価値がさらに上がったアワードに、感銘を受けた様子だ。

坊垣さん「クラフテッド・カタパルトで(小林)雅さんも含めみんなプレゼンを聞いて感動して涙ぐんでいたのですが、今のアワードのスピーチでも結構うるうるきてしまいました。

つくり手が輝く未来へ。クラフテッド・カタパルトが切望する、信念あるものづくりがスケールする世界【ICC FUKUOKA 2022レポート】

日々の想い、こだわりが、プロダクトやサービスに落とし込まれていることが体験できて、本当によかったです。今日の学びをみんなで持ち帰ってマスユーザーに向き合って、より昇華していただければと思いますし、私もよりユーザーに届くようにMakuakeを磨いていきたいと思います」

「体感して評価いただけたのが嬉しい」

ファイナル・ラウンドの終了後に、優勝したPolyuse岩本さんとイノP/農家ハンターの宮川さん、審査員を務めたエイトブランディングデザイン西澤さんと、審査員であり宮川さんのメンターである一平ホールディングスの村岡さんに話を聞いた。少々長くなるが、ここからご紹介したい。

岩本さん「グランプリはものすごくうれしいですね。何よりもやっぱり僕らはやっぱりテクノロジーの会社ですので、エンジニアが作ってきたものを評価してもらって、それが社会に通用するんだってことをちゃんと見てもらって評価いただけたのが非常に嬉しいです。

創業期からパートナーとなってくださっている多くの建設の企業様、ゼネコンさん、プレキャスト工場さん、資材メーカーさんといった皆様が、この業界を変えないと本当にヤバいというのを分かっていて、僕らに託してくれた。それを叶えるために本当に毎日の努力をしてくれた、そのエンジニアの1時間の、1分の、1秒の時間のおかげで今回の賞だと思っているので、本当に感謝しかないです。

この賞を踏まえて、今後日本の建設業の方々は高齢化が進むので、いかに早く一緒に組み込んで実際のインフラを作っていけるのか、そのスピード感をより高めていけるんじゃないかと感じています。

リアルに勝るものは無いと僕は思っています。僕らのマシンもそうですし、大きさ、素材感、何一つとっても、やっぱりこういう僕らのリアルテック、あるいは工芸物を作られている方々のは触らないと、見ないと、やっぱり分からない。これから出場する企業には、体感してもらうことの大事さを知っていただいて、その上でどんどんこういう場に出て、日本の技術、世界に通用する技術をアピールしてほしいと思っています」

優勝スピーチも熱かった岩本さんは、リアルテック・カタパルト登壇時に入賞はならなかったが、ここで結果を残した。岩本さんたちが直面する業界、事業の切実な課題は、実際に展示物を見せることで、私たちにとってよりリアルに伝わった。ちなみに参加予定だったスタッフが直前で欠席となり、150kgあるものを2人で運んだそうである。

「人間はハードウェアを持つ生き物。だからリアルな体験に価値を感じる」

日々ブランディングデザインを手掛ける西澤さんは、審査員の嶋さんのコメントに一言一言深く頷いていた。今回のアワードで見たブランドデザインやアワードでの体験について語ってくださった。

西澤さん デザイン&イノベーションアワードは本当に激戦でしたね。皆さんの思いが非常に詰まっていて、これ以上に無いくらい。あとはやっぱりプレゼンテーションが最高で、日々、ものにしっかり向き合って作ってらっしゃるという思いがヒシヒシと伝わってきました。

個人的には、横山興業に投票しました。なぜかと言うと、町工場で自動車の部品を作り、加工を行っているという本業があり、そこから新しく違う事業戦略、違う商品を企画していく、そしてデザインまで含めてお酒をアップデートするっていう体験価値まですべてが一気通貫でデザインされていて、筋が通っている。

想いを感じるし、全体の筋の良さみたいなところも含めて、知見が活かされているような気がして、好きなデザインだなと思いました。コロナ禍の中で、ご苦労されている中小事業を営まれるメーカーさんとか、特に下請けの部品メーカーさんや、OEMメーカーさんみたいなところで活路のお手本になるような可能性を感じたんです。そのほかのブースも本当に素晴らしいなと思って、個人的に買い物しまくりましたが(笑)。

Polyuseさんが優勝された理由は、社会性だと思います。僕もあれはいいなと思って、最初の投票で入れました。建築の現場で、職人さんがいなくなるというのが厳然たる事実としてあって、そこを解決していく。

単純にロボットで省力化するのではなく、新しく作り方までアップデートしていくみたいな、そんな価値を感じます。もっともっと作れる体制が必要だと思いますので、そういうラインに乗っていくと、もっと日本の建設現場の未来を変えていくような可能性を感じますね。

やっぱり触れるとか体験できるみたいなところは非常に重要だなと思ってまして、インソールのTENTIALもすごいなと思いましたけど、ああいうふうに感じないと分からないデザインは、確かにあると思うんですね。

コンクリートもそうですけど、実際触るのとでは全く違う。やっぱり僕らはどこまで行っても人間というハードウェアを持っていて、やっぱりリアルな生き物なので、リアルに接することに意味を感じる。

コロナ禍の中で、オンラインでのやり取りが増えていて、例えばカンファレンスのビジネスだってオンラインでできるのかもしれないですけども、やっぱりICCサミットのように場を持つと、ちゃんと価値を感じる。

そういうところを積み重ねながら、拡散していくときにはそのオンラインのパワーとかも使えばいいと思うんですけども、でもどこまでいっても僕らは人間なんで、こういうふうに体験するっていうのは非常に重要なデザインだと思ってます。

「彼らがいなければ、私は花農家の3代目で終わっていた」

イノP / 農家ハンターの宮川さんは、悲願のグランプリ獲得に、「食べ物の最上位概念は、美味しさだ」と、ずっと教えてくれていた村岡さんに感謝を伝えていた。喜びで顔をくしゃくしゃにしながら、インタビューに答えてくれた。

宮川さん「まだ直後で心臓がドキドキしています。今回私たちが小さい島で捕まえたイノシシさんたちを皆さんに味わってもらいたいって気持ちもあったんですけども、それ以上に伝えたいってところがすごくありました。

だから伝える、そして食べてもらうっていったところが、2つ同時にできて、皆さんにそれを喜んでいただいて、ご評価いただいたっていうのが、もうやっぱり魂が。魂がっていうぐらい、このイノシシさんと一緒にですね、喜んでいるところです。

2016年の熊本地震の直前から、僕らはこの活動を地域と畑は自分たちで守るっていうモットーでやってきました。ちょうど今年で6年目で仲間は130人ぐらいに増えて、それぞれの地域で鳥獣対策を頑張りながら、地域の希望の星になっています。そういう仲間たちと今回一緒にとれたものだと思っているので、喜び合いたいですし、まずはジビエバーベキューのお疲れさん会をしたいですね。

イノシシは、はじめは厄介者だなって思っていました。でもイノシシの話をするとみんなが、地域がひとまとまりになるんですよ。それを僕らはイノシシコミュニケーション、イノコミって呼び始めて、年間1,000頭も捕まえるようになったときに、やっぱりその命をちゃんと循環させるようにしていきたいなと思ってジビエ施設を造ったんです。

でもそれにはすごく大きなお金が要って、それが起業のきっかけです。借金するために会社を作った。そのときの名前を僕らはイノシシプロジェクト、イノPっていうちょっとポップな名前にして、イノシシをもっとプラスの方向に明るく楽しく元気よくという方向で解決していくようなチャレンジをずっとしてきました。

「イノシシさん」と呼んじゃうんですけど、それは彼らに対しての感謝とリスペクトなんです。彼らがもし私たちの地域に増えてなかったら、私は花農家の3代目で終わっていたと思います。でも、イノシシさんをきっかけに立ち上がって仲間が増えて、こんな人生の大きな転機を迎えられるようになったっていうのは、仲間とともにイノシシさんには感謝しかない。

これから私たちは、食べてもらいながら都市と田舎の価値交流みたいなものをぜひやっていきたいなと思っていて、皆さんが私たちが住む戸馳島(とばせじま)とか熊本に、わざわざイノシシさんとの関係を学びに来るような、そういうジビエツーリズムのメニューをこれから始めていきたいです。

世界の人が来られるようになったら、めちゃめちゃ面白いじゃないですか。僕らは、もっともっとワクワクするようなことをイノシシさんと、そして仲間とともにやっていきたいなと思っています。

僕らが大切にしている言葉は、「微力でも無力じゃない」っていう言葉です。たったこれくらいとか、俺一人だけではとか、みんな初めはそう思っちゃうんですけど、正しい志を持って人のため、世のためになることをちゃんとしていれば、先義後利(せんぎこうり)で言う後利が必ず返ってくると思うので、前向きな気持ちでスタートしたら、やりきってほしいなと思います。

お隣のブースで出ていた豚屋さんのお2人(みやじ豚、山西牧場)にはイノシシが先輩で彼らが後輩でとかっていう話をしたりするぐらい仲良くなっています。前回サバ屋さん(フィッシュバイオテック)の右田さんとは、イノシシを飼料にしたものをサバに与えられないかという話をしたり、実際に熊本に来てもらったり。

今回ブースで後ろにいた鈴木君、キャビア屋さん(平家キャビア)とは、ジビエの上にキャビアを乗せるなんて最高の海と山の贅沢品なんだとか、そういうのができたので、皆さんに提供できるような機会をCo-creationでやっていきたいなと思ってます。めちゃめちゃワクワクしてます」

プロダクトに触れ、つくり手の話を熱心に聞いてもらえる喜び

審査員を務めた一平ホールディングス村岡 浩司さんは、宮川さんとはイノPプロジェクト初期からの知り合いでメンター。ICCのカタパルトへの登壇を紹介くださったのも村岡さんだ。

村岡さん「ICCにローカルとかものづくりとか、そういう情緒的、価値の高い人たちの居場所が、近年作っていただけるようになって、僕らが一緒に歩んでる仲間とか応援している皆さんを、少しでもスポットライトが当たる機会になればと思ったんです。

僕自身もICCですごくお世話になって、いろんなところから注目してもらえる機会も作っていただいたので、そういうバトンも渡していきたいと思いました。

宮川さんのブースを訪れた村岡さん(写真手前)

今回のグランプリは、彼らと一緒にやってきた、農家ハンターの仲間とか、あと加工場で頑張って毎日働いている子たちとか、戸馳島の皆さんとか、宮川さんのところは蘭の農家なのでそこで働いているお父さんとかお母さんとかみんなの顔が僕も思い浮かぶようで、めちゃくちゃうれしいですね。

坊垣さんにも言っていたのですが、やっぱりローカルが頑張らなければ未来はない。坊垣さんには、その意味で日本を創る仕事をしているねと言われました(笑)。これだけいれば、やれると思います」

そこへ宮川さんがやってきた。

村岡さん「宮川君、僕までインタビューしてもらってる(笑)」

宮川さん「村岡さんは顧問であり、メンターなんですよ。いやもう、うれしい、うれしすぎますよ。めちゃめちゃうれしかったです。予想もしてなかったから。

今回はとにかく皆さんに伝えるっていうことをミッションにしたんです。僕はストーリーだけで今まで来たけれど、美味しさというのでもちゃんと評価されたい。『とにかく食の最上位は美味しさだ、次のステップはそこだ』って、村岡さんにアドバイスしてもらってたんです。

そこでこんなにたくさんの人が食べてくれて、感想を教えてくれて、質問もたくさん投げてくれて、2日間めちゃめちゃヘロヘロになりましたけど(笑)」

村岡さん「フード&ドリンクアワードに、僕も来年出ようかな? 九州パンケーキは2022年12月で10周年なんですよ、でも、手強いですよね(笑)」

宮川さん「すごい素敵なとこばっかり出ますもんね。でも食べてもらって想いを伝えられる、聞いてもらえるってっていうのは、なかなかないですよね。

他のイベントにたくさん出られている皆さんも、バンバン試食を配っていくだけのイメージかと思っていたとおっしゃっていました。そうしたら皆さんが一口一口食べながら、質問をたくさんしてくださるから、なんか僕もすごく情熱的になっちゃった。本気で聞いてくださるのが伝わってきたと、みんながその話をしてましたよ」

村岡さん「本当にそうですよね、ICCに来られる方たちが熱心だから。ただ食えればいいって感じじゃないですもんね(笑)。皆さんほんとちゃんとその文脈を理解している」

宮川さん「顧問と言いながらも、僕は何も村岡さんにできていないんです。でも、その顧問がいる前で今日こんな賞いただけたっていうのがなんかすごくうれしかったです、僕は」

村岡さん「最後のオチに白状しますけど、僕はみやじ豚に入れました」

宮川さん「(爆笑して)まだまだ上を目指せってこと…、はい、もっと頑張ります!」

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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