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1.一平ホールディングス 村岡さんが「動けない期間」で再確認した旅の価値

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ICC FUKUOKA 2021で30分間のランチョン・セッションとして開催されたプレゼン企画「旅と出会い」。全4回シリーズの(その1)は、一平ホールディングス 村岡 浩司さんが「旅と出会い」について語ります。九州を旅してプロダクトの発想を得てきた村岡さんは、旅ができない時間に直面したものとは。旅を再開して生まれた商品も合わせて紹介します。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 ダイヤモンド・スポンサーのノバセル にサポート頂きました。


登壇者情報
2021年2月15〜18日開催
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 9C
【ランチョン・セッション】 プレゼン企画「旅と出会い」
Supported by ノバセル

(プレゼンター)

榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長

村岡 浩司
株式会社一平ホールディングス
代表取締役社長

(モデレータ)
山田 敏夫
ファクトリエ
代表


本編

テーマは「旅と出会い」

山田 敏夫さん(以下、山田) 皆さん、今日は貴重なランチの時間に来て頂いてありがとうございます。


山田 敏夫
ファクトリエ
代表

1982年熊本県生まれ。大学在学中、フランスへ留学しグッチ・パリ店で勤務。卒業後、ソフトバンク・ヒューマンキャピタル株式会社へ入社。2010年に東京ガールズコレクションの公式通販サイトを運営する株式会社ファッションウォーカー(現:株式会社ファッション・コ・ラボ)へ転職し、社長直轄の事業開発部にて、最先端のファッションビジネスを経験。2012年、ライフスタイルアクセント株式会社を設立。2014年中小企業基盤整備機構と日経BP社との連携事業「新ジャパンメイド企画」審査員に就任。2015年経産省「平成26年度製造基盤技術実態等調査事業(我が国繊維産地企業の商品開発・販路開拓の在り方に関する調査事業)」を受託。2018年より経産省「若手デザイナー支援コンソーシアム」発起人、毎日ファッション大賞推薦委員。著書「ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす『服』革命(日経BP社/2018年)」

ランチが食べられるイベントが色々なところであったと思いますが、この場に来てくださったわけですね。

▶編集注:ICCサミット会期中のランチは、密集を避けるためにランチョン・セッションをはじめ会場を内外に分散していました。

この2人から、良い話が聞けると思います。

本セッションのテーマは、「旅と出会い」です。

「旅」と「出会い」について調べたところ、旅とは「偶然をデザインする行為」で、出会いとは「思いがけなく会うこと、巡り会い」です。

例えば、師匠との運命的な出会い、1冊の本との出会い、芸術との出会いなど、相手が人ではなくても、強い印象や影響を受けた場合は「出会い」という言葉を使います。

「旅」は偶然をデザインする行為で、「出会い」も偶然の中で強い印象を受けた行為だと言えます。

村岡さんも榊さんも一流の経営者であり、僕はお二人を尊敬しています。

お二人が旅から、どんな衝撃や印象を受けたのか、皆さんと一緒に聞いていきたいと思います。

ではまず村岡さんから、旅と出会いについてお話しいただけますか。

コロナ禍で一時「心の行き場を失った」一平ホールディングス 村岡さん

村岡 浩司さん(以下、村岡) すごい前振りですね(笑)、ありがとうございます。

まずは、この1年間の僕の旅を振り返ってみようと思います。


村岡 浩司
株式会社 一平ホールディングス
代表取締役社長

“世界があこがれる九州をつくる”を経営理念として、九州産の農業素材だけを集めて作られた九州パンケーキミックスをはじめとする、「KYUSHU ISLAND®︎/九州アイランド」プロダクトシリーズを全国に展開。地元宮崎を中心として多数の飲食店を経営する一方、九州各地にて様々な地元創生活動や食を通じたコミュニティ活動にも取り組んでいる。メディア出演:カンブリア宮殿、NewsPicks/WEEKLY OCHIAI、NHKワールド、日経プラス10、日経ビジネス、東洋経済 他多数。「第1回 九州未来アワード」大賞受賞。ICCサミット KYOTO 2019「CRAFTED カタパルト」優勝。著書に「九州バカ 世界とつながる地元創生起業論(発行=文屋 発売=サンクチュアリ出版)」。
九州アイランド公式サイト:https://www.kyushu-island.jp

コロナ禍のこの1年間、僕は羽をもがれたトンボ状態でした。

羽がないとトンボは飛べません、それで、地べたを這っているような感じでした。

我々は飲食業も経営しています。宮崎県の商店街は、何もないゴーストタウンのようになってしまいました。

繁華街は欲望を失うと、空虚で不思議な空気になってしまいます。

そんな中、僕自身も、11年間経営したお店を失いました。

宮崎・一番街のカフェ&バー「CORNER」が11年の歴史に幕 事業承継でバトン渡す(ひなた宮崎経済新聞 2020年3月30日)

僕が38歳の時に、繁華街の中にオープンしたお店でした。

まだ若かったので、街の中に新しいカルチャーを作りたいと思って、クラブイベントやジャズライブなど色々なことをやった、思い出がたくさんあるお店でしたが、失ってしまいました。

去年の3、4、5月くらいから、心の行き場を失っていたと思います。

皆さんもそうかもしれませんが、僕も会社の生き残りをかけて、ありとあらゆる努力をしました。まるで戦争のように、次から次に湧き上がる課題を、ひとつひとつ解決しながら、事業全体の再構築を行いました。

オフィスに篭りきりで社業に集中する一方、外食産業の状況はどんどん厳しさを増していきました。食に関わる事業 を行っている(※)ので、地元の繁華街や商店街の状況を見ることも多く、悲しいことがありすぎて、心がどんどん沈んでいったのです。

▶編集注:事業内容(一平ホールディングス)

帰省できなくても「ずっと変わらず待っています」

村岡 そんななか、こんなポスターを作りました。

「ずっと変わらず待っています」というメッセージです。

ふと思いついて、僕がデザインして自分で作りました。

僕はもともと寿司職人で実家が寿司屋ですが、その近所に宮崎名物の元祖のチキン南蛮のお店(味のおぐら 本店)があります。

うちの寿司屋(寿司処 一平)も55年続くお店で、宮崎名物のレタス巻きという寿司の元祖の店です。

そこでおぐらさんに声をかけて、「今はみんな地元に帰ってこられないけれど、ずっと待っています」というお店からお客様に向けたメッセージのポスターを、2020年の4月に、共同宣言として一緒に作りました。

レタス巻きとチキン南蛮。(村岡浩司 @ippeichan note)

すると、奇跡のようなことが起こったのです。

本当に1枚ポスターを貼っただけなのに、このポスターを見てくれたお客様が、SNSに投稿してくれて、地元のテレビ局が来てくれました。

マーケティングではなかったのですが、地元のニュースが取り上げてくれた途端、お店の電話が鳴り止まなくなりました。

お店を閉めていたのですが、近所の方々がお持ち帰りのお寿司をたくさん買ってくれるようになって、その結果、前年の売上を上回るくらいになり、たくさんのお客様が来てくれるようになったのです。

社員も、70歳すぎた僕の母も一緒に頑張ってくれました。

再び会社を救ってくれた「九州パンケーキ」

村岡 そうこうしている間に、物不足の反動からか、粉物が足りない、パンケーキミックスが足りないという時期が2020年の5~6月頃にありました。

ホットケーキ粉が品薄? 菅氏「備蓄に不足ない」(朝日新聞 2020年5月1日)

全国から九州パンケーキミックスの注文が殺到するようになったのです。

九州パンケーキ

すごく嬉しかったのは、ウェブサイトや僕たちのSNSなどに、メッセージが届くようになったことです。

「朝の、家族とパンケーキを焼くひとときに救われます」という言葉を見て、羽をもがれて芋虫のようになっていた僕は、羽がまた少しずつ生え始めたような感覚を覚えました。

以前のように自由に旅はできなくなりましたが、これまでの道のりを振り返って、そっとアルバムを開くような旅もあるのではないかと感じるようになりました。

これは九州パンケーキの素材を作っている、九州の産地の風景の動画です。

僕たちは、九州全県から一つずつ素材を集め、それらを紡ぎ合わせてパンケーキミックスを作っています。

2010年に宮崎に口蹄疫という家畜伝染病が発生した際、非常事態宣言が出されたことがありました。

口蹄疫 宮崎知事「非常事態」を宣言 殺処分11万頭超に (日本経済新聞 2010年5月18日)

宮崎県では当時、地域限定の人流の移動制限がかかりました。飲食業である私たちの会社は途端に客を失いました。その苦しみの中から新規事業として食品製造業に参入し、作ったのが、この九州パンケーキでした。

産地を巡る旅をして、素材を紡ぎ合わせ、小麦を製粉してくれる熊本製粉に出会い、1年半の歳月をかけて出来上がったのが九州パンケーキです。

国境も、困難も乗り越えて。九州パンケーキは人々を笑顔にできる〜KYUSHU ISLAND(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

10年近く経っていますが、コロナ禍においても僕たちの会社を救おうとしてくれたのが、この九州パンケーキでした。

「九州を旅して、つくる。」、これが、僕が一番したいことです。

僕はこれしかしていないし、改めてこれをしていこうと思いました。

コロナ禍での新商品発売とカフェ出店

村岡 (2020年)10月には新たに、海外戦略商品としてMATCHA MODEという商品を発売しました。

MATCHA MODE

これは鹿児島県の志布志市にある、日本一の茶園と取り組んだ商品です。

11月になり、いつもと変わらない実りの秋を迎え、宮崎県日向市にある、東郷という人口3,000人の小さな村にカフェ(九州パンケーキカフェ日向東郷店)を出しました。

九州パンケーキカフェ日向東郷店

町の中心の、繁華街にあるお店は臨時休業していましたが、東郷で小さいお店を開けて、週末にはたくさんのお客様が来てくれるようになりました。

九州を旅しながら、ものづくり

村岡 2020年の12月に思い立って、もう一度旅をしようと思いました。

今年は3月以降ずっと動けなかったのですが、12月に、熊本、八女、平戸、そして全国的に有名な小城羊羹の小城に行って、うきは、日田、東郷村と、宿も決めずに1人で3泊4日、ぐるぐる回ってきました。

この旅の中で、いつもの自分を取り戻した気がします。

そしてもう一つ、コロナ禍で新たな商品ができました。

九州チーズタルトです。

九州チーズタルト

今日も会場後方に、数は限られていますが準備していますので、よかったら召し上がってください。

九州パンケーキと同じ素材を使ったタルト生地に、鹿児島の伊佐牧場のナチュラルチーズを載せ、宮崎県高岡町の丸山農園産のレモンを使っています。

季節は巡るので、僕が旅をした場所の、例えば、夏は五木村の「くねぶ」というみかん、秋はうきはのイチジク、冬は糸島のいちごなど、季節が巡るたびに素材を変えて入れようかと、旅をしながら考えるのです。

九州パンケーキがそうだったように、こうした旅をしながらものづくりをまたしようと思っています。

日本の加工食品の原料はほとんどが外国産ですが、僕たちは、九州の素材だけでものを作るという面白い、独特なことを行っています。

旅をしながらものづくりをする、そのストーリーをご紹介させて頂きました。

僕たちは「世界があこがれる九州をつくる。」という壮大な理念を持っており、この幻想が形になるまで、旅は続いていくのかなと思います。

ありがとうございました。

山田 ありがとうございました。

今九州チーズタルトを頂いていますが、爽やかで美味しいですね。

村岡 美味しいですか? ありがとう!

山田 甘すぎないので、皆さんもお昼を食べた後におやつとして、ぜひどうぞ。

村岡 一般販売は4月からで、マクアケでクラウドファンディングをして先行販売しました。

九州産小麦と雑穀の風味豊かな「九州チーズタルト」、クラウドファンディング1300%達成を経ていよいよ一般販売スタート!(PR TIMES)

ぜひよろしくお願いします。

山田 まずは、緊急事態宣言で羽をもがれたところからの。

村岡 そうです(笑)、この1年の旅を表現してみました。

山田 そこから、MATCHA MODEと、この九州チーズタルトができたのですね。

村岡 はい。

山田 すごいですね。

では次に榊さん、お願いできますか?

(続)

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続きは 2.一休 榊さんが紹介、お客様が探している「最高の体験ができる」宿とは をご覧ください。

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編集チーム:編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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