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「異質なものとの融合が覚醒を生む」オープン・イノベーションの本質とは何か?【K16-4B #5】

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ICCカンファレンス KYOTO 2016 において大好評だった「オープン・イノベーションを実現するには?」【K16-4B】のセッションの書き起し記事をいよいよ公開!6回シリーズ(その5)はオープン・イノベーションの実現にあたって、よくある誤解や陥りがちな罠について、議論しました。いよいよ本格的なディスカッションの内容となっております。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 4B
「オープン・イノベーションを実現するには?」

(スピーカー)
竹林 一 
オムロン株式会社
IoT戦略推進プロジェクトリーダ

西條 晋一 
株式会社WiL
共同創業者ジェネラルパートナー

留目 真伸 
レノボ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 
NECパーソナルコンピュータ株式会社 代表取締役 執行役員社長

丸 幸弘 
株式会社リバネス
代表取締役CEO

(モデレーター)
西村 勇哉 
NPO法人ミラツク
代表理事

「オープン・イノベーションを実現するには?」配信済み記事一覧

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【本編】

西村 4名に1分で自己紹介をお願いしますと申し上げたら、普段は2時間ずつお話を聞かせて頂きたい方々がそれぞれ5分にまとめて下さったので、まだ時間が大分残っています。(笑)

ここからは「オープン・イノベーションを実現するには?」というテーマで話していきたいと思います。

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西村 勇哉
NPO法人ミラツク
代表理事

大阪大学大学院にて人間科学(Human Science)の修士を取得。人材育成企業、財団法人日本生産性本部を経て、2008年より開始したダイアログBARの活動を前身に2011年にNPO法人ミラツクを設立。 Emerging Future we already have(既に在る未来を手にする)をテーマに、社会起業家、企業、NPO、行政、大学など異なる立場の人たちが加わる、セクターを超えたソーシャルイノベーションのプラットフォームづくりと、企業が社会課題を基盤に社会と共に行う事業創出、事業コンセプトデザインに取り組む。

僕も一応自己紹介をしておきますと、大阪生まれで今は滋賀に住んでいます。バックグランドとしては、心理学の分野で心の成長の研究し、その後、東京の人材開発系のベンチャー企業と組織開発系の国内シンクタンクと2つの会社に勤め、2009年に独立後、2011年に法人化しミラツクというNPOの代表をさせていただいています。

▶参考資料:「郵便」はソーシャル・イノベーションの代表事例(ミラツク西村)

活動としては、京都を拠点に全国規模のコミュニティ形成、企業の方々や自治体とのオープンイノベーション、と、その2つをつなぐ現場起点のシンクタンク機能の3本を柱に取り組むNPOです。

よろしくお願いします。

主にお聞きしたいことは2つです。

1つは、どうやったらオープン・イノベーションが実現できるのかという、その勘どころと難しさの超え方で、これを幾つかの方向からお聞きしたいなと思っています。

ただ、それではあまり面白くなく、それはとりあえずタイトルですしお聞きしてみようかなと思っているのですが、そもそも何故オープン・イノベーションでなければならないのかというところがもう1つのお聞きしたいところです。

これは、ヘンリー・チェスブロウ(Henry W. Chesbrough)という方が、クローズド・イノベーション(Closed Innovation)とオープン・イノベーション(Open Innovation)を対比した時の図です。

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クローズド・イノベーションではダメなのかということをこの方々にお聞きすると、オープン・イノベーションの価値みたいなものが見えてくるのではないかなと思っています。

今日は、そこを知ることができるとオープン・イノベーションの価値が見えるのではないかと思い、期待しています。

では、少しずつセッションを進めていきたいのですが、例えば竹林さんと留目さんは、ご自分の会社を如何にオープンにしていくのか、ご自分のプロジェクトを如何にオープンにしていくのかというお立場からお話頂けると思いますし、西條さんと丸さんは、どちらかというとオープンな場をどう形成し、どう人を巻き込んでいくのかというお立場からお話を伺えるかなと思っています。

ですので、少し(お座り頂いている)順番が飛び飛びになってしまいますが、まず竹林さんと留目さんに最初の質問をさせて頂きたいなと思います。

先ほど、オープン・イノベーションの取り組みとして、例えばSuicaやパスネットの例をご紹介頂きましたが、実際にどういう難しさが出てきて、それをどうやって乗り越えてこられたのかというところを振り返りながら教えて頂けますでしょうか。

同じ質問を、この後、留目さんにもさせて頂きたいと思います。

オープン・イノベーションとは何か?

竹林 私のスライドをよろしいですか?

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お題も何も聞いていなかったので、そう来るかという話なのですが、自分で準備していたものと違うので、自分の準備していたものを勝手に喋ろうかなと。(笑)

(会場笑)

オープン・イノベーションとは何かという話ですね。当たり前ですが、「オープン」と「イノベーション」からできているんです。

要はイノベーションが起こるかどうかなんですよ。その手段としてオープンであるんです。

クローズドでイノベーションが起こるなら、別にクローズドでやっていたらいいんです。一番のポイントは、新しい価値が生まれるのかどうかということです。

企業というのは、特に大きくなっていくと、過去の経験があるので段々イノベーションが起こらなくなってくるんですよね。そしてイノベーションを起こすのが怖くなってきますよね。

ではイノベーションをオープンでやるのはどうしてかということを整理したのがこのグラフなのですが、よく企業でオープン・イノベーションをやらなければならないと言われますが、オープン・イノベーションをどう仕掛けるのかという話です。

基本的に、日本は製品、つまりプロダクトと技術が強いんですよね。

ここで仕掛けるのか、それとも上のサービスレイヤーから仕掛けるのか、ビジネスのレイヤーから全く新しいエコシステムを作ってごっそり新しい世界観に変えていくのか、それによってイノベーションのやり方、オープン・イノベーションのやり方って変わってくるんですよね。

ある企業は製品の中のオープン・イノベーションをやります。

後はオープン・イノベーションには、持続的にどんどん改善していくイノベーションと、破壊的なものとがあるんですよね。

この破壊的なイノベーションについては、大企業はそんなものは起こるわけはないと必ず言いますね。起こったら大変だから。

ではどこをやるかというと、左側で、なおかつビジネスが分からない、サービスが分からないとなると、一番左下の象限(製品・斬新的)ですね。

一番左下のオープン・イノベーションとは何かと言うと、この技術がないからどこかからとって来いという話ですね。

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それをオープン・イノベーションと言ったらいけないというわけではないのですが、そこをやっている担当は、オープン・イノベーションをやれと言われて何をやっているかというと、技術だけを集めて来るんです。

技術を集めて何かを起こすというのがなくて、技術だけを調達するのだったら、それは「技術調達課」と言った方が分かり易いです。

ではサービスまでやろうとした時に、例えばオムロンは自動改札機を作っているけれど、周りの新しいサービスをやろうと思ったら、サービスのDNAとプロダクトのDNAは違うから、サービスのDNAを持った人を呼んでくる必要があるんです。

業界自体を動かすようなイノベーションを仕掛けようとすると、仲間を集めてビジネスレイヤーまで広げないといけないんですね。

あなたの会社は、或いはあなた自身は、どこを仕掛けたいかと思っているかによって、やり方が全く変わってくるというのが僕の持論です。

ビジネスレイヤーからやらなければならない、そして破壊的なイノベーションは、破壊的なイノベーションのところに、ひょっとしたら金を張っておくだけでもいいかもしれないと、本来、僕はそう思っています。

自分を脅かすビジネスに、ひょっとしたらというところに先行で金を張っておいて、左下のところで着実に改善して儲けていく、そういう作戦が企業の中にあった上でオープン・イノベーションを語っているのかどうかによって、どう付き合うかは変わってきますよね。

そうでないと、先ほど大学の話にもありましたけれども、技術だけ調達して来て、それをうちはコアじゃないから、ノンコアだからそれをやっておこう、そして足したはいいけれど、その上のイノベーションが起こらなくて、「これ、終わりました」ということになりかねません。

オープン・イノベーションというのだけが先行して、周りで技術を探さなくてはならないというのが今流行っていますから。

IoTとイノベーションというのは、今、世の中で流行っていますので、その2つを付けておいたら暫くはそこそこ食っていけるのですけれども。

でもそこをきっちりと理解した上で進めないと、タイアップをしていても、何のためにしているのかというのがズレてくる可能性がありますよね。

それが僕の理論です。

西村 質問に戻ってもいいですか?

竹林 はい。

(会場笑)

西村 いやいや、質問させて頂きたいなと。(笑)

パスネットの時のお話も少し教えて頂けますか?

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竹林 製品レイヤーというところでは、我々は自動改札機が得意ですよね。

パスネット自体は我々の能力でできるのですが、その上に新しいサービス、例えば、子どもが帰ってきたらお母さんにメールが配信されるという「あんしんグーパス」というのを、関西でやっていますね。

関東でも、東急や小田急に入ってきます。

そうなると、今度はサービスレイヤーを考える人たちが必要になんですね。

そして鉄道会社といっても、今までは、我々のお客様というのは鉄道の駅務機器の部門だったんですよね。

ところが、そのデータを活用して新しいビジネスをするとなり、あそこに広告を載せますとなると、今度は違う部門とも繋がることになります。

例えば、このデータの権利関係はなどと言い始めると、戦略部門。

ですから今まではお客様と1対1だったのが、お客様自体も縦ではなくて横になってくるんですね。

お客様に接する際にここ(横)をどう繋いでいくかというのは、オープン・イノベーションとか、そのサービスのところで変わってくるんですね。

なおかつ、それを作るサービスも、良い機械を作ったら良いというエンジニアリングではないんです。

良い機械を作ったら良いプラスアルファ、それを使った面白いサービスを考える人達がいて、それで組んで、尚且つお客様自体も、ビジネスレイヤー、つまりお金の取り方が変わってきますから、そうするとお客様側も全部変わってくるんですよね。

この生態系の中で、全部関わり合ってくるのです。

今までは、この技術のところとお客様が1対1でよかったんですね。

今度はお客様も含めて付き合う部門が変わってきて、そこの横同士の調整をする人、つまりプロジェクトデザイナーであったり、本当の意味でのプロジェクトマネージャーというのが必要になってくるなという気がしますね。

西村 無限にいけそうなので、留目さんに移りますね。

先ほど3つ出して頂いていた中のどこから引っ張って頂いても良いのですけれども、同じ質問で、オープン・イノベーションをやっていく上での難しさや、どうやってそこを超えていくのかについて伺えますでしょうか。

インターネット時代の企業のあり方を考えるべき

留目 まずは、「オープン」、「クローズド」というのが何なのかをお話したいですね。

企業の中で、自社の中で開発をして製品を作ってサービスを提供してというような、そういったこれまでの当たり前のビジネスのプロセスの対極として多分、「オープン」という話をしていると思うのですが、そもそも、IoTの時代、全てが繋がってサービス、ソリューションとして成り立っていくので、もう1社でやることは不可能だと思うんですよね。

そして、さらに根幹の話をしますと、インターネットというのは、究極に資源を最適化、再配分をする仕組みじゃないですか。

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企業の話、インターネット時代の企業とは何なのかということを考えないといけません。

企業というのは、元々、事業の目的があって、それを実行する人達が集まったプロジェクトじゃないですか。

これまでは例えばパソコンというものを作っていて、それでビジネスとして成り立っていたので、30年間くらいその事業で企業が続いてきた訳なんですけれども、もうニーズがなくて事業として成り立たないということであれば、そのプロジェクト、つまり企業はいらないんだと思うんですよね。

企業というのはプロジェクトのためのただの「箱」であり、別に役割を終えたらなくなってもいいのです。

そこから一歩進んで、あらゆる資源がインターネットで最適化されていくような未来に、企業と人の関係がどうなるのかということを考えると、もうその殆どの形はオープン・イノベーションなのではないかなと思うんですよね。

例えば今は投資したい会社を見つけるのは結構大変です。でも投資したいプロジェクトはあります。

「この人がやっているこのプロジェクトは社会的な価値も大きく、絶対成功する」と思うから投資したいと思っても、そういうプロジェクトに投資できるチャンスは、今はまだ多くありません。

ですが、そもそも企業自体がもともとプロジェクトであったことを考えるといずれそういうことが可能な時代になってくるのではないかなと思うんですよね。

インターネットが本当に進展していって、資源がもっとフレキシブルに最適化されるようになったら、いいプロジェクトにお金が付くし人も集まるし色々なリソースが集約されていって、プロジェクトとして成り立っていく。

そしてそのプロジェクトが一つ終わったら、それが安定的に運用する段階とか、工場的なオペレーションとして継続していく必要があったら、大企業がやっていくようになっていくのではないかなと思うんですよね。

そうすると、将来的には、プロジェクトとしての企業の寿命はもっと短くなっていくのかもしれないし、これまでなかなか固定化された業界や会社がアプローチできなかったような課題の解決もプロジェクト化されて取り組まれていく。

このように、世の中の殆どのプロジェクトはオープン・イノベーションをベースに実現されていくのではないかなというのが、私の仮説です。

一方で、いくらフレキシブルなオープンイノベーションでのプロジェクトが価値創造の主体になっていったとしても大企業という存在はなくならないと思うんですよね。

やはり資本を集約して何かしらのオペレーションを固定化し、効率化しなければならないものというのはあるでしょうから、所謂第三次産業革命とか第四次産業革命以前の工場としての機能、大企業というのは必要だと思います。

でも、今の大企業のホワイトカラーの働き方は、工場労働者と大して変わらないですよね。大企業もオープン・イノベーションのプロジェクトに関わっていく中で、これはもう変えていかなければなりません。

毎日同じオフィスに行って、同じメンバーと同じような仕事をしてというような、オープンイノベーションの真逆のような働き方です。これって、自分が投資家だったら、社員にそんな働き方をさせている経営者には投資したくないです。大企業のマネジメントのやり方、社員の働き方もガラリと変わっていくべきです。

過渡期だから「オープン・イノベーション、オープン・イノベーション」と皆さん騒ぐのだけれども、きっと将来的には働き方も含めて、それが当たり前になってくるのではないかなと思います。

具体的な事例を一つ紹介させて頂くと、例えば海の家(Lenovo House)ですけれども、今は実は経済産業省の「おもてなしプラットフォーム」のローカル実証(IoT活用おもてなし実証事業)で、鎌倉市さんとやっているプロジェクトの一環に位置付けられています。

でもこれ、もともと3年前に海の家のスポンサーシップを始めたときは、ただのブランディングの施策だったんですよね。

マス広告からソーシャル、エンゲージメントにシフトするということで、海の家のスポンサーを始めて、それはそれである程度成功だったのですが、やっているうちに、どうせやるのだったらITの会社でデバイスもあるのだから、海の家をIT化してみようよという話になって進めていったんですよ。

ソーシャルをレバレッジするにしても、結局本物ではないとやはり共感につながりません。「いいね!」はつくかもしれないけれど、実際には買ってくれません。

共感してもらうには、やはり我々がやりたい事業のビジョンをそこで示すしかないのではないかなということになってきました。要は、我々はコンピューティングを普及させるということをやりたいのだから、そこでやったらいいのではないかということになった訳です。

試験的にスタートし、少しづつ評判になっていき、実際にブランディングの効果も高まったのですが、それにとどまらず、ビジョンを語り始めたら、海浜組合の人と繋がって、商工組合と繋がって、観光組合と繋がって、鎌倉市と繋がってとなっていきました。そこから、鎌倉市さんと一緒に、鎌倉市を観光でどうやって盛り上げていくかというプロジェクトをやらせて頂くようなことになっていったんですね。

というわけで、やりたいこと、事業への想いとか熱量とかというのがあって、それがニーズと出会うとプロジェクトになっていく。

このようなプロジェクトをクローズドでやることなんか、もうできないんです。ですので、徹底的にオープンでやっていく。

そして進めていくうちに、本当に色々な人の力を集まり、オープン・イノベーションが加速していくのではないかなという風に思っています。

西村 なるほど。面白いですね。

段々と、個人に単位が回帰していっている訳ですよね。

西村 先ほど研究者は最後に取り残されると仰っていましたけれども、セクターが違ったり、普段の生態活動が違う人達と企業とが繋がっていく時、或いは人と人とが繋がっていく時に、どういう風に仕掛ければ上手くいくのかについて、丸さんと西條さん、お教え頂けますか?

ビジョンを共有している人以外が来ると、成功しない

 日本の研究者は、人と繋がりたくないんです。

(会場笑)

 皆さんそれを勘違いしてはいけませんよ。

大体、こんなところに出てくるのがいけないんですよね。

「オープン」の意味も「イノベーション」の意味もよく分かっていないのですが、大変申し訳ないことですが、結局、研究者が考えているのはゴールが何なのかなんですよ。

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つまり、台風のエネルギーを1パーセントでも利用できたら原子力発電はいらないよね、というクエスチョン、つまり課題に取り組んでくれる企業がいたら、どこでもいいのです。

腸内細菌を調べて便移植ができるようになった世界からは病気がなくなる、と信じている人達が「俺、やりたい!」と手を挙げてくれればいいのです。

「ウンコなんか調べていても仕方がない、ただの微生物だろう」と15年間も言われ続けていた研究者達に、今は、「オープン・イノベーションだ」と言って製薬会社が束になって寄ってくるんですよ。

(会場笑)

ちょっと都合がいいような感じですよね。

何が言いたいかというと、インターネットのお蔭で、今、研究者がざわついてしまっているのです。

だから、無駄に変な人に来て欲しくない。

ビジョンを共有している人以外が来ると、成功しないんですよ。

だから邪魔しないで欲しいし、変な投資も入れないで欲しいんです。

すぐに寄ってたかってくるから、日本はダメなんですよ。

よく分からないVC(ベンチャー・キャピタル)の人と、よく分からない大企業の人とが適当にやって、担当者が変わったらもうやらないなどと言って、途中まで引っ張っておいて落とすということをよくやるんですね。

何が言いたいかというと、先ほど仰られた通り、個のネットワーク組織(注)が当たり前の時代になってくる中で、もうヒエラルキーをやっている大企業なんて残れないんですよ。

(編集注:個のネットワーク組織とは、所属を超え、社内外の区別なくクエスチョンとパッションをもった個人がつながり、アイデアやネットワークが無数に生まれる組織)

だから、個のネットワーク組織の中で課題にチャレンジするとなった時には、大企業だろうが、町工場の匠だろうが、政治家だろうが、研究者だろうが、誰がリーダーでもいいんです。

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皆がきちんとゴールを見てやっていかなければならないと思っていて、僕らはその個のネットワーク組織で、60人の社員と、2,500人の尖った研究者達とを抱えています。

是非使って下さい。

宣伝でした。

ありがとうございます。

(会場笑)

西村 では、西條さんに落ち着けて頂きましょうか。

(会場笑)

異質なものとの融合が覚醒を生む

西條 イノベーションのイメージなのですけれども、既存の会社のカルチャーや製品から何かイノベーティブなものが生まれるというやり方もあると思うのですけれども、個人的には、外から全く異質なものが来て、ぞれが既存のものに融合していくような感じでイノベーションが起こるという方がいいのではないかと思っているんですよね。

例えば、鎖国の日本で色々なものが生まれていきますけれども、いきなり仏教が来たとか鉄砲が来たとか黒船が来た、それを見てざわついて、カルチャーや色々なものが変わって新しいものが生まれていくという、そういうのがいいと思っています。

サイバーエージェントは新規事業の得意な会社として業績を伸ばしていますけれども、僕が2000年に転職した時には、広告代理店と細々とメディアビジネスをやっていました。

そこに、突如としてC.A.MOBILEという会社が誕生して、PC事業をやっていたところに、いきなりモバイル事業で収益を上げ始めたんですね。

そうすると、それを見ていた僕の中でイノベーションが起きて、既存事業以外でも色んな分野で稼げるんだ、といったことを感じました。

自分も何か全く新しい分野でやってみようと思い、例えば金融事業に取り組んだり、当時まだ目新しかった「アイテム課金」という概念のオンラインゲーム事業をやってみようということを思いつきました。

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イノベーションを起こそうという時には、最初からこういう製品を出すんだとか、こういう数字を出すんだとか、そこを考えすぎるがあまりに、イノベーションが逆に起こらなくなっているんじゃないかと思っています。

少し上から目線ぽくなってしまいますが、ソニーがやっているSAPというプログラムにはプロジェクト数はかなりありますが、ソニーの何兆円という売り上げからすると、それぞれはほとんど売り上げに貢献しない小さなものなんです。

でも、若手でもこんなものをやらせてもらえるんだといったところから、既存の大きな事業部のおじさん達が参加して何かやるといったことも起こってきます。

イノベーションを語る時にはとかく技術や製品のことばかりが言われがちですが、会社のカルチャーや、他の人達が脳内で覚醒するようなところの議論が、結構されていないのではないかと思っています。

そういう意味で、僕が今携わっているQrioで主張したのは、ソニーさんは50パーセント以下にして欲しいということです。

というのは、50パーセント以上にすると、結局ソニー・ルールになってしまうので、ソニーで決められた取引先の部品を使って作らないといけないとか、自由なマーケティング活動がしづらくなったり、厳しい品質管理があってとりあえず出してみるみたいなことができなくなったりして、イノベーションどころではなくなるのです。

実は、出向者もいないんですね。

Qrioには、18名在籍しています。

僕はサイバーエージェント出身なのですが、他にサイバーエージェントから2人、それからDeNA、グリー、リブセンスと、インターネットの企業の人しかいないんですよね。

要は、「モノづくり」という発想ではなくて、まずサービスを考えるということです。

そしてそのサービスをやるために、こういうハードウエアが欲しいということでソニーさんに相談に行って、こういう研究をやっていませんかとお聞きしてやっていくというように、アプローチが全然違うんですよね。

こういったことは、恐らくソニーさんではあまりやっておられないやり方なので、オープン・イノベーションに繋がるかもしれません。

そして、全体的にもう少し広くイノベーションについて、特に働いている人達の意識が変わるような手法について何か考えることで、成果を出していけるのではないかと思っています。

(続)

続きは 【最終回】秘密結社モデルで「うぇーいwww」から始めるべきオープン・イノベーション をご覧ください。
https://icc.dvlpmnt.site/management/5064

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子

【編集部コメント】

続編(その6)ではオープン・イノベーションの始め方について、現場感覚たっぷりで議論しました。「秘密結社」や「うぇーいwww」が炸裂しております。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

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