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2. 議論を活性化するモデレーター講座①「質問は、短く切って、テンポよく」

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ICCサマーパーティ2019“特別セッション”の書き起こし記事「ICC名物モデレーター直伝!トークセッションを成功に導くための極意とは」。全8回シリーズ(その2)は、議論を活性化するためにモデレーターが発揮するべき「質問力」について。慶應義塾大学の琴坂将広さんは、質問におけるテンポの重要性を説きます。ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うためのエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は、2019年9月2日〜5日 京都での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2019年7月17日
ICCサマーパーティ2019
特別セッション「モデレーター勉強会」

(スピーカー)

井上 真吾
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
パートナー

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ
執行役員

渡邉 康太郎
Takram コンテクストデザイナー /
慶應大学SFC特別招聘教授

(モデレーター)

小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

「ICC名物モデレーター直伝!トークセッションを成功に導くための極意とは」の配信済み記事一覧


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1つ前の記事
1. トークセッションは「準備」がすべて? 司会・モデレーター役を依頼されたあなたが、イベント当日までにするべきこと

本編

モデレーターの質問は「短く切って」「テンポよく」

琴坂 ICCの討論が楽なのは、小林さんが設計する登壇者の組み合わせが本当にちゃんと考えられていて、必ずどこかに噛み合うような要素があるということですよね。

慶應義塾大学 准教授(SFC・総合政策)琴坂 将広さん

だから、それにすごく助けられているというのが1つあるかなと思います。

あと私がやっていることでいうと、話をしている時に「あっ、その話って〇〇さんのこの記事に近いな」というのが頭の中に浮かんだら、ざっくりと「〇〇さん、どう思いますか?」と話を振るようにしています。

「こういうことを言うんじゃないか」というのをちゃんと理解した上で誘導するのではなくて、ただとりあえず振る、という感じです。

できるだけ早く流していくということですね。

井上 同じですね。

モデレーターをやっていて思うのは「しゃべらないほうが勝ちだな」ということです。

琴坂 おっしゃる通りです。

井上 なるべくモデレーターがしゃべれないセッションのほうがいいというか、まさに質問を短く切って、投げて、とにかくテンポをつくることを意識してやっています。

琴坂 あと、話を途中で切られるのにスピーカーの方に慣れてもらうために、「そうですよね」「〇〇ですね」と細かく相槌を打っています。

そうやって相槌を挟んでいくと、別の方に話を振りやすくなるのです。

小林 なるほど!

村上 臣さん(以下、村上) 確かにやられてる!

(会場笑)

琴坂 そうすると「それはどいうこと?」と踏み込みやすくなるし、踏み込まないときも、自然に次の話題に移りやすくなっています。

村上 確かに琴坂先生がモデレーションしているセッションに出ていると、聞いてくれているんですけれどパシッと他の人に振られて「もうちょい話したかったな」とか思う時もあるわけです(笑)。

それを意図してやられているとは……。

琴坂 それで、その「チクショー」と思う心が、また次の発言につながるわけです。

村上 なんか今すごい乗せられていたんだな、俺、と思いました(笑)。

小林 あとICCでは、パネルディスカッション・メンバーのテンプレートのようなものがあります。

普通のイベントの登壇人数は2〜3人が多いですが、ICCでは4人います。

4人だとどうなるかというと、他の人が話している間に考えられるんですよね。

だからいざ話を振られたときに、皆さんズバっといいことを言うような傾向があります。

村上 そうそう、ICCって他のイベントと比べて「何かいいことを言わなきゃいけないプレッシャー」が一番高いんです。

(会場笑)

なので、確かに登壇したら「どうにかして、いいことを言おう」と全力で考えている気がしますね。

琴坂 それってICCのセッションの特徴ですよね。

ICCが楽な理由でもありますが、「どうしてそこに座っているの?」っていうぐらいすごい人たちが参加者として聞いているんですよ。

だからモデレーター側として「一番最上級のものを」と考えるわけですね。

これが500人とか400人の聴衆に対してやっていると、相手が分からない可能性があるとか、相手がついてこれていないとか、そういう前提でやらないといけません。

小林 あとは、ICCサミットは6会場同時進行なので「好きなセッションを選んで来ている」という前提があるので、オーディエンスとしては、ものすごく前のめりの人がほとんどです。

琴坂 それもありますね。

前のめりで能力がある人たちに一番いいものを提供するという、コンテンツとしていい意味での制限がありますよね。

小林 他の質問はどうですか。では嶺井さん、どうぞ。

嶺井さんにも、モデレーターを担当してもらっています。

嶺井 政人さん(以下、嶺井) 小林さんにぜひ、準備のもっと前の部分を伺いたいです。


嶺井 政人(写真右)
グロース・キャピタル株式会社
代表取締役社長

早稲田大学在学中にマーケティングソリューションを提供する株式会社セールスサポートを創業し軌道に乗せた後、株式会社ネオマーケティングへ売却。2009年4月、モルガン・スタンレー証券に入社し、投資銀行部門およびクレジットリスク管理部門で主にテクノロジー企業の資金調達や格付業務に従事。2013年3月、マイネットに転進し、CFOならびに副社長としてファイナンスやマーケティング分野を中心に事業の成長に尽力し、同社の東証マザーズ、その後の東証一部上場を実現。2019年4月、グロース・キャピタル株式会社を設立し、代表取締役に就任。ファイナンス分野での新規ビジネスの創出に取り組む。

登壇者やモデレーターを、どういう点を見て選んでいらっしゃるのでしょうか?。

ICC代表・小林が語る「登壇者選び」のポイント

小林 分かりやすくいうと、登壇者は「結果」がすべてだと考えています。

前回のセッションの評価が高い人は、余程のことがない限り、ほぼ自動的に次の回でもオファーさせていただいています。

余程のことというのは、テーマがちょっと違うなとか、評価が高かったけれどちょっと今回は合うテーマがないという人です。

そういう人には、例えばカタパルト(ピッチコンテスト)の審査員をお願いするなどして、登壇以外の形でご協力をいただいています。

そうすると、だいたい7割くらいの登壇者の方に継続いただけることになります。

逆に言うと、毎回3割くらいは入れ替わるようなシステムになっています。

ですので、石川善樹さんのような人気登壇者は“常連”ですよね。

セッション企画としては、そうした常連の方々が登壇する「シーズンもの」のコアな企画が先に決まります。

そのあとで、例えば「組織系のセッションだったら、このテーマがいいな」と考えながら、そこに合う人たちを配置しています。

他のイベントでも同じ組み合わせで登壇している可能性はありますが、少なくともICCの中ではできるだけフレッシュな組み合わせになるように心がけています。

嶺井 前回の評価以外に考慮されているポイントはありますか?

例えば、「ICCに登壇する人は、少なくともこれを満たしていてほしい」とか。

小林 当たり前ですが、結果を出していないビジネスパーソンの話は誰も聞かないということですね。

嶺井 確かに。

小林 セッション評価もそうですが、ビジネスで結果を出していない人が登壇してもぱっとしません。

これははっきり言えます。

ちょっと業績が悪いかな、という人がなんとなく登壇してしまうと、いい発言も出てこないし、途中でこんな感じ(首を傾けて背中を丸めて)になってしまって、ものすごく分かりやすいですね。

当然、評価も低くなります。

嶺井 結果がすべて?

小林 結果がすべてです。

ですから、自分の調子は自分が登壇するときの切れ味でよく分かるものです。

「今日は調子が悪いな」というのは、違います。

そういときは「実力がないんだ」と思ったほうがいいんじゃないかと僕は思います。

嶺井 分かりました……勉強になりました(笑)。

(会場から笑いとともに「怖っ!」の声)

小林 いやいや、怖いというか、これはビジネスの世界そのものですから当たり前なんですよ。

皆さん、お金を払って来てくれている人たちですよね。

それなのに「なんでこの人の話を聞かなきゃいけないんだろう」と思われてしまうのは致命的です。

だから、そういう視線を感じる瞬間が戦いというか、僕らにとっての戦局になるわけです。

モデレーターに向いているのはどんな人?

嶺井 それは、モデレーターも同様ですか?

小林 モデレーターも当たり前ですが、実績が重要です。

(最前列に座る占部さんを見ながら)例えば「占部さんは前も担当いただいたし、これだけ評価があったからぜひお願いしよう」とか、過去のセッション動画を観ながら「この人のモデレーションはうまいな」と思う人は、継続してオファーをしています。

とはいえ、そうするとマンネリ化するので、常に新しい人にチャレンジしていただこうと思っています。

「この人はモデレーターに向いているんじゃないか」というのは、だいたい見当がつきます。

まずテンポが速い人が向いています。

あとはコンサルタント出身で、議論の整理ができる人。

また、パネルディスカッションをしながら、他の登壇者によく質問する人っていますよね。

ああいう人はモデレーターに向いています。

僕はそういう人をよく見ていて、この人にモデレーターをお願いしたらおもしろそうだな、というふうに考えてオファーを出しています。

琴坂 研究者もコンサルも最初の仮説をつくるとか、ヒアリングするところが仕事ですからね。

小林 あとは、その人に対して関心があるかどうかというのも重要だと思っています。

「この人にこういう話を聞きたいな」と心の底から思っていないと、まともな質問ができません。

他のイベントでありがちなのは、アナウンサーみたいな人が司会進行を務めることです。

れでは形式的な質問しか出ません。

宮宗 多分皆さん、登壇されたりモデレーションされたりするので分かると思うのですが、やはり「場の雰囲気」をどうつくるかが価値ですよね。

(写真右)株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 宮宗 孝光さん

先ほどの質問で「どうやって盛り上がる形にするのか」というのは、瞬発の部分もあれば先読みの部分もあったり、整理の部分もあったり、それをどうその場で判断して進めていくかですよね。

ですからアナウンサー的な能力だけではだめで、どこでどういう振り方をするかが大事です。

小林 そうそう、やっぱり本気で議論しなきゃだめですよね。

宮宗 そういう意味で、「雰囲気をつくれる人」はすごく重要かなと思います。

井上 小林さんに聞きたいのですが、モデレーターの分類みたいなものってあるのでしょうか?

小林 いわゆる「コンサル・研究者型」というのは1つありますよね。

あとは、嶺井さんもそうなんですけど「参謀型」ですね。

参謀みたいな人が聞く、立場を変えるというのがあります。

あと経営者が経営者としてズバズバ聞く、といったスタイルもいいので、それらをテーマによって変えていくようにしています。

井上 我々はほとんどモデレーターしかやっていないですよね。

(琴坂、宮宗両氏頷く)

だからモデレーター専用機、略して「モデ専」だと思っています。

(会場笑)

モデ専的にはモデ専の人を見るのがすごく勉強になって、「出た!構造化技出した!」とか「質問力来た!」とかそういうふうに見ています。

何か、モデ専なりの戦い方というのがあるように思います。

(続)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成/小林 弘美

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