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HARD THINGS④ 創業メンバーが会社の急成長についてこられない【F17-1D #5】

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「俺たちのHARD THINGS – サバイバル・ベンチャー経営論」【F17-1D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!11回シリーズ(その5)では、起業後に次々とぶち当たる「壁」についてお話いただきました。「創業期のメンバーが会社の成長に追いつかなくなったら」という話題も必見です。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日・22日・23日開催
Session 1D
「俺たちのHARD THINGS」-サバイバル・ベンチャー経営論

(スピーカー)
金谷 元気
akippa株式会社
代表取締役社長

倉橋 健太
株式会社プレイド
代表取締役社長

重松 大輔
株式会社スペースマーケット
代表取締役社長

柴山 和久
ウェルスナビ株式会社
代表取締役CEO

(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授

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最初の記事
【新】「俺たちのHARD THINGS」-サバイバル・ベンチャー経営論【F17-1D #1】

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HARD THINGS③ ピッチイベントで賞をとっても売上があがらない【F17-1D #4】

本編

琴坂 流れは見えているし、これをやれば良いはずだと分かっているけれど、製品の改良にも、採用にも、サポートにも時間がかかる。

自分の頭よりも現実にはギャップがあるということですね。

倉橋 そうです。

色々取り組むことの時間軸が全て違うので、それを合わせていくことが結構大変だなと感じます。

ベンチャーでは次に何が起こるのかが全く分からなかった

柴山 (流れが)見えているとおっしゃいますが、私は見えていなかったし見えていないんです。

起業家同士で話すとすごく感じるのですが、ベンチャーで働いた経験がある、起業2回目という人は圧倒的に強いなという気がしています。

彼らは次に何が起こるかあらかじめ知っているじゃないですか?

それがまだ来ないというもどかしい思いはあるかもしれませんが、私なんて「HARD THINGS」を読んで、次に何がくるんだと、本で勉強しているような状況ですから(笑)。

▶︎「HARD THINGS」(ベン・ホロウィッツ/日経BP社)

それはその通り、次はこのことが起こると待ち構えていても避けられない状況です(笑)。

重松 それはありますね。

僕のファーストキャリアは大企業で、NTT東日本で働いていたのですが、その時点で起業したらとんでもないことになっていたと思うんです。

絶対無理だったと思います。

その後、30歳のタイミングでフォトクリエイトという10数人の会社に入り、それが100人規模になり、IPOをするまで一連の流れを見てきました。

30人の壁、50人の壁、売上3億円、5億円の壁を一応経験しましたし、後から優秀な人が入ってくるので初期のメンバーが段々ついていけなくなったり、ビジネスモデルも当然変えていかなければならないですし、新規事業を仕込むタイミングですとか、色々教科書そのもののようなことを体感できました。

採用では、このような人はスタートアップで採用してはいけないけれど、逆にこういう人を是が非でも採るということが体で分かりました。

それでもトラップ(罠)を踏むのですが、かなり踏まなくはなっているかなと思いますよね。

琴坂 倉橋さんは、前職でそのようなフェーズの経験があったのでしょうか?

やりたい事が多すぎて進められないストレス

倉橋 いえ、僕たちも全然見えている訳ではないんです。

色々なものが見えていないのですが、「こうなったら良いな」という絵は描くじゃないですか?

その時は正しいかどうか全く分からないのですが、自分たちはこうやりたいし、多分こうすべきだということは沢山あるので、そこに強引にでも確信を持って進めたい。

けれど、進められないというストレスがあります。

早く確かめたいけれど、確かめることすらできないタイミングがあると感じています。

琴坂 金谷さんは何個も事業を立ち上げた後、この事業に取り組まれていますよね。

ある段階までは何回も経験していて、(akippaに関しては)これまでになかったフェーズに転換している印象なのですが、そこの差分は感じられますか?

要するに、やったことがあるものをリピートしていた段階と、それ以上に成長した時の違いはどうでしょうか。

金谷 それまでの事業は、全て営業で獲得すれば売上が上がるビジネスだったので、(ビジネスの構造に関しては)あまり苦労はなかったんですね。

みんな営業が得意なので、営業に行き、売って帰ってくると、翌月に振込があるということですよね。

琴坂 シンプルですね。

金谷 一方、akippaの場合は駐車場を先に沢山押さえ、そこにユーザーが来て利用をしないといけません。

CVR(コンバージョンレート=顧客転換率)という言葉も今まで聞いたことがなかったほどですが、皆で色々分析を行い、新しくKARTEのようなサービスを入れてCVRを高めるかといった話し合いをしています。

この部分については、今まで経験がなかったので人を採用するしかありませんでした。

今、akippaにはマネージャーが8人ほどいるのですが、それまでのプロパー社員全員が新しく採用したマネージャーの下につくよう入れ替えました。

執行役員だった2人も新しく入ったマネージャーの下に入りました。

重松 普通は辞めてしまいますよね?

金谷 誰も辞めていないですね。そのまま勤務していただいています。

重松 素晴らしいですね。

金谷 皆会社が好きという文化があり、今までとにかく高めてきたサービスが好きですので。

琴坂 そこをもう少し掘り下げていっても良いかなと思うのですが。

立ち上げ時に自分とチームを組んでいた方々の中で道が変わるとか、もしくはスキルの上昇についていかない者がいるとか、まさにHARD THINGSで、ある種の葛藤があると思いますが、そこに対して皆さんはどのように考え、どう対応されているのですか?

なかなか話しにくいことは承知の上で突っ込んでいるのですが。ぜひお話を頂ければ。

創業メンバーが会社の成長についてこられないときは?

重松 私は前職でもそれを見てきていたので、本当に最初の10人はめちゃくちゃ優秀な人間を集めようと思い、頑張りました。

頑張るためにピッチコンテスト等で風呂敷を広げた訳です。

ヤフーの不動産メディアの責任者等がジョインしてくれたのですが、一緒に働いてみると「全然だめじゃん」とびっくりしたり、完全に騙されて入社したなということもありました(笑)。

初期にそのようなメンバーが集まり、彼らが軸になる人たちだったので、それは非常に良かったなと思っています。

基本的には、やはり後から入ってくる人の方が優秀ですが、一方で最初から頑張ってきた人たちにもプライドがある。

そこは、絶対問題になると前職でも経験しましたし、あらゆる本が教えてくれます。

オススメの本として「成功者の告白」という神田昌典さんの名著があるのですが、そこにも書いてあります。

▶︎「成功者の告白」(神田昌典/講談社+α文庫)

柴山 私も重松さんから紹介いただき読みました。

重松 大体同じようなストーリーが必ず起こります。

ですので、社員には「こういうことが絶対起こるぞ」と常に言い聞かせています。

何かあったら席を譲るくらい自分より優秀な人を採用しよう、自分の上司を採用できるくらいの人が偉いということを話しています。

柴山 事業が急成長していくと、私も含めてですが、創業メンバーの成長が事業の成長に追いついていかなくなるじゃないですか?

まず、私自身がそのような状況です。

元々公務員ですし、ビジネスについて考えたことはありますが、作ったことはありません。

今まで日本になかった金融サービスを作り、ユーザー数がものすごく増えていて、サービス自体のパフォーマンスもすごく良い。

しかし、チーム作りは難しいですよね。

1年半前は私1人だったのですが、去年の10月位に20人ほどのチームになり、今50人ぐらいになっています。

チーム作りをしてきた経験が全くないので、自分自身が会社の成長にとってのボトルネックになっているんじゃないかと思い、日々辛いという状況です。

特に年末はそのような状況でしたし、今も若干辛い状況です。

重松 その増え方は結構・・・

柴山 エグいですか?

重松 そうですね。

琴坂 どちらかというと重松さんは、そのような状況になるだろうから少なくとも最初の数年はリードできる人材を最初から採用するという戦略ですね。

重松 そうです。

琴坂 それは皆さん同じですか?

柴山 私は知らなかったです。

琴坂 そうすると、どんなことが起きますか?

ご自身ももちろん成長と現実のギャップを感じられているかと思いますが、恐らく経営陣の他の方々も同じことを感じられているはずで、その時どのような問題や困難がありますか?

柴山 事業成長するにしたがって、そのフェーズあるいは次のフェーズを含めて乗り越えていけるような経営陣を採用していくことが多いですね。

この採用という表現はおこがましいほどで「来ていただく」ということが正しい表現です。

そうすると、新しく参加する経営メンバーは私自身も知らないことを良く知っているし、採用力もあるので、そういった形で組織づくりをきちんと委ねていく。

積極的に権限移譲するということは意識して行なおうと思っています。

琴坂 倉橋さんはどうですか?

倉橋 弊社も今規模的には50〜60人ほどですが、人と組織の所が一番難しいなと思っています。

創業期のメンバーの成長が追いつかないということもあります。

社員が20〜30人位のタイミングで、ミドルをしっかりおきながら権限移譲していかないと組織がそれ以上スケーラブルにならないという話を良く聞くので、少し取り組みしてみたことはありましたが、結果的に現状は僕とCTOという取締役2人以外の50〜60人は基本的にフラットな状態です。

そこの検証みたいなものは、ものすごく苦労しながら日々行なっています。

琴坂 まだ答えは見えていない?

倉橋 全然見えていないです。

これはフェーズによってどんな企業・事業にも当てはまる確実に正しい形というものはないと思っていて、事業の性質にもよると考えています。

組織も考え方によってはルールの一つなので、ルールを最小限にどうすれば保てるのかという挑戦を、ハードですが「するしかない」ということです。

未だに一人一人きちんと向き合い、時間をかけています。

これは、社員が何人になるまでできるのだろうと思いながらですが、取り組んでいます。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/鎌田 さくら

【編集部コメント】

そもそも「人の成長」と「事業の成長」がマッチする状態とは何なのか?なぜ事業の成長がある意味独りで先に行くような感覚を持つのか?事業を創造した人たちが「事業の成長についていけない」というのは非常に深い問いだなと思います。(榎戸)

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