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3. 商業施設の飲食フロアで「輝く店」を発掘する方法

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「大人の教養シリーズ『美食』『美酒』について語りつくす」全8回シリーズ(その3)は、美酒・美食のこだわりを登壇者たちが語ります。田んぼ違いのお酒を利き分ける住吉酒販庄島さんに、商業施設の飲食店誘致のために、1年で300店を食べるというJR西日本舟本さん。見極めるときのプロ筋の観点とは?ぜひご覧ください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット KYOTO 2020のプレミアム・スポンサーとして、Lexus International Co.様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年9月1〜3日開催
ICCサミット KYOTO 2020
Session 12C
大人の教養シリーズ「美食」「美酒」について語りつくす
Supported by Lexus International Co.

(スピーカー)
庄島 健泰
住吉酒販有限会社
代表取締役

西井 敏恭
株式会社シンクロ 代表取締役 / オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員CMT / GROOVE X株式会社 CMO

長谷川 誠
株式会社NTTドコモ
スマートライフ推進部 マーケティング推進担当部長/シニアプロフェッショナル

舟本 恵
JR西日本SC開発株式会社
カンパニー統括本部 開発戦略室 室長

(モデレーター)

榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長

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最初の記事
1.ひたすら美食・美酒を語る、 ICC KYOTO 2020最高評価セッション登場!
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2.“変態美食家”ハセマコの食生活とは

▶このセッションで紹介したお店のリストをを番外編としてまとめました。よろしければぜひご活用ください。
【番外編】「大人の教養シリーズ『美食』『美酒』について語りつくす」(シーズン1) 登場したお店リスト

本編

「美食」「美酒」へのこだわりとは?

 では、次の「美食」「美酒」へのこだわりって具体的にどんな感じ?という質問です。

どのようにこだわっているか、庄島さん、お願いします。

庄島 長谷川さんのようにワクワクするような話は出てきませんが(笑)……。

西井 大丈夫です。長谷川さんが異常なんです。

庄島 自分の特技というか、食を語る上での裏付けみたいなところですが、田んぼ違いで造られた数種のお酒の中から、ブラインドテイスティングで隣り同士の田んぼの酒を利き分けることができます。

西井 すごい!

庄島 左が昨日CRAFTED カタパルトに登壇した澤屋まつもとの田んぼです。

“素晴らしいものづくり”からその先へ。CRAFTEDカタパルト優勝のビジネスレザーファクトリーが示唆したもの【ICC KYOTO 2020レポート】

モルディブのリゾート“ソネヴァ”の「鮨 行天」

庄島 福岡のミシュラン三ツ星の鮨 行天(ぎょうてん)(写真右)のモルディブの店舗をご存知ですか?

長谷川 はい。

庄島 モルディブにソネヴァというリゾートがあって、マドンナも常連の素晴らしいリゾートがあります。そこの一番いい場所に、ソネヴァが行天のためだけに設置した専用のカウンターがあります。

ソネヴァというリゾートは環境的にも進んでいて、ここで出される皿は、漂流してきた瓶やリゾート内で出たワインの空き瓶を、リゾート内の工房で加工して作っています。

水は海水を浄水して使用するし、熱源はヤシの実が落ちたものを炭化させて炭として使います。その加工施設もリゾート内にあって、部屋やレストランのテーブルなどのしつらえも島内の木を使って作ります。

行天がソネヴァに誘われたときに、カウンターだけは日本から送りました。皿はソネヴァのものを使いますが、ソネヴァのオーナーに「本当の寿司屋をやりたいんですよ。ヒノキの一枚板でないと寿司屋じゃない」と言って、日本から送らせたそうです。

僕が生涯で食べたもので一番美味しかったものはソネヴァの行天で食べた寿司です。

京都伏見の「澤屋まつもと」で、田んぼを利き分け

庄島 澤屋まつもと(写真左)が取り組んでいることは、ワインでは「テロワール」という言葉を使います。

環境や、味に行きつくまでの土壌だったり気候だったり、あらゆる環境的なものを味という形にしたものがワインであり、テロワールというものです。

TERROIR(WINEBOOKS.jp) – ワインにおけるテロワールの解説

今、日本酒のテロワールが何なのかということに、先進的で意識の高い蔵は向かって行っています。

澤屋まつもとは、まず水が大きいです。

澤屋まつもとは、京都伏見の蔵ですが、伏見の水は、初めて飲んだときにめまいがするほど美味かったのです。こんなにやわらかいのにちゃんと骨格がある水は飲んだことがありませんでした。

やわらかい水は温泉水など、たくさんあります。でもだれます。ところが伏見の水はやわらかいけれども、だれません。

それが酒にすごく良いテクスチャーを与えます。水は人で言うところの、生まれ持った容姿のようなもので変えられないものです。

米は充実した、人で言うところの魂のようなものです。

それで、田んぼにもそれぞれ違いがあるのではないかと、田んぼ違いで同じように酒を造ってみました。

僕はお酒のリリースの相談で「澤屋まつもと」に呼ばれて、10何種類の酒をブラインドテイスティングしました。

「これとこれが異常にいいよね。他のものもいいけれど、明らかにこの2つがミネラル感が出ているし、なおかつこっちのほうがしっかりしているから、うちにはこの酒をほしい」という話をしましたが、後で米の獲れた場所を地図で見せてもらったら、隣り同士の田んぼでした。

 やっぱり! 気候ですか?

庄島 土ですね。そのほかに気候の南向きとか、寒暖差もありますが、テロワールというのは、田んぼにも、お米にもあります。

僕が利き分けられたことがすごいという話ではなく、田んぼでもそれだけ違いがあるということをお伝えしたかったので、このお話をしました。

 日本酒においてワインのような未来がありうるということですよね。

庄島 そうです。水と米と人の三大要素があります。ただ人の要素が大きいのは確かです。

ワインの素晴らしいところは、その畑に価値があるというか、神から選ばれた場所があります。

例えばボルドーのラフィット(※)とか、ムートンの経営者はだいたい三代で変わります。相続税も大変ですので、その時代に一番お金を持っている人が、土地に敬意を払いながらステイタスとして続けていくわけです。

小原康裕が挑むボルドーの深淵 その4 シャトー・ラフィット・ロートシルト(WINEWHAT)
ブドウ栽培に魅せられた男爵 シャトー・ムートン・ロートシルト(オールドビンテージ・ドットコム)

でも日本酒の場合は家業なので、家を継いでいくので、その差は大きいなと思います。

ワインは投資対象にもなるアートです。市場というか人が値段を変えるドラマチックな飲み物です。

日本酒は工芸のような部分があるので、一概にそことつなげることは難しいけれども、工芸の中でも優劣があるというか、土や土地の価値にスポットライトが当たるものがあるように、日本酒ももう少し狭めたところで価値の差が出るといいなとは思います。

 ありがとうございます。

日本酒で田んぼによって味が違うことをあまり大きく言っていないので、本当に今後楽しみですね。

庄島 そうです。そもそも米とブドウの差が大きくて、ブドウはそもそもヒエラルキーがすごく大きいですよね。

最高に美味しいシャインマスカットと産直で買うブドウの違いは、みんな知っていますよね。でも米は、腹が減っているときに食べるホカホカ弁当の米もものすごく美味しいわけです。

 確かに、確かに。

庄島 だから、生まれ持ったものが違うというか、米からできているというところにものすごくアイデンティティがあるので、要は魚沼産までの話で、魚沼のどこの田んぼというところまで話をしていないのと同じです。

ただ、もう少しドラマは田んぼにあるのではないかと思います。

 分かりました。ありがとうございます。

では舟本さん、お願いします。

商業施設の飲食店で「化ける店」とは

舟本 僕は商業施設に飲食店を誘致するために、先ほどもバルチカ20数店舗の誘致のために、300店舗で食べるとお話ししましたが、正直300店舗は20数店舗選ぶ上で少ないです。

ただ商業施設の開発は時間が限られているので、例えば「4年後に開発する案件に出店しませんか?」と飲食店に言っても、4年後にまだ店を続けているかどうかも分からないので、かけられる時間は長くてせいぜい1年ぐらいで、この1年が勝負です。

お声掛けをしてから条件提示をして、協議をして、それを1年以内に納めなければいけないと考えると、マックス300店舗になりますので、ある程度フィルターをかけて当たっていきます。無尽蔵に当たっている暇がないというのは、結構重要なことです。

かつ売れるフロアをつくることも当然重要で、僕は「この店は化けるな」と分かる店をピックアップして優先順位をつけて上から当たっていきます。

コツは「スーパーニッチ」な店舗だということです。

①自らの型が固まっていない、場に合わせた順応ができる店

舟本 こちらはルクア大阪のホームページの店舗紹介からスクショを撮ってきました。

例えばレストランフロアのフロアマップを皆さんもご覧になったことがあるかと思います。店舗名があってカテゴリーがカッコ書きで、(和食)(とんかつ)(ラーメン)などと書いてありますが、この店のカッコ書きは(海鮮が安いだけの店)という業種なのです。

それ以外はたいして美味しくはありません、海鮮が安くて美味しいだけですみたいな、スーパーニッチなお店だということに加えて、経験則的に、食べログは3.5を超えると自らの型ができてしまっているので、少し扱いにくくなります。

どういうことかと言うと、商業施設も例えば大阪と三宮で生活者の食に対するニーズは全然違います。施設によっても違いますし、隣り合っている施設同士でも全く客層が違うという世界があって、当然3.5を超えて4に近い食べログのポイントがある店が、ぽっと出てきても必ず売れるわけではありません。

そこのマーケットにアジャストしてもらわないと売れませんが、3.5を超えると「いや、わしはこれでやってきたんだ」という人が統計的に多くなってしまうので、なかなかアジャストしてくれません。

「いえ、このフロアのお客様はこういう特性があるので、もう少しこうしたほうがいい」ということが我々は分かりますが、やってきた自負のある方もいるので、食べログ3.4未満ぐらいの、スーパーニッチな方で、かつ化ける店を探すことがこだわりです。

例えば、この「海鮮スタンドふじ子」はバルチカにご出店いただいている店舗ですが、もともとは大阪の天王寺の地下街に本店(左上写真)があり、店内(左下写真)も「どこの社員食堂やねん?」という感じの店舗です。

右下の写真は、980円の魚盛です。これは美味しくて安いです。そこで、ほかの料理には注力せず魚だけでいいのでやってください、という出店の仕方をしてもらっています。

もともとは食べログ3.39とか3.4ぐらいのお店でした。

それをルクア大阪に誘致させていただいて魚に特化してもらい、少しルクア大阪の客層なりニーズに合わせてもらって出店してもらった様子がこの写真です。

長蛇の列になって、ルクア大阪店の食べログで、今3.7ぐらいまできています。

西井 すごい行列ができている!

②1品光るものがある、スーパーニッチな店

舟本 こちらの店舗「赤白」コウハクも同じくバルチカの店舗ですが、こちらのカッコ書きがもっとすごくて、(ソース料理・シャンパン・ワイン)です。これしか置いていないのです。

この写真も何なのか分かりにくいと思いますが、大根のおでんにポルチーニ茸ソースをかけています。「フレンチおでん」という独自の業種を確立しています。

左上の写真が本店で、梅田の地下街にあります。

ちょっとぱっとしない店舗で、右上のメニューで大根のおでんのポルチーニ茸ソースが140円で、おかしいのですが原価は160円です。

(一同笑)

これでお客さんを呼んでいます。

ちなみに真ん中の写真がじゃがいものおでんで、じゃがいもは「インカのめざめ」を使っています。ソースはアーリオオーリオで、右下ははんぺんです。これらはフレンチおでんです。

食べログ3.4ぐらいの店舗でしたが、バルチカに誘致してこのような感じになりました。

このお店は『スマステーション』というテレビ番組で、日本で一番行列の長い店はどこだ?という特集(右上写真)があって、3時間27分の待ち時間で日本で2位になりました。

(一同驚きの声)

貫地谷しほりさんをお迎えして番組史上一番並んだ!最新行列グルメ!待ち時間ランキングベスト10をオンエア!!(SmaSTATION)

当時フレンチおでんがバカ当たりしていて、多少われわれも調子に乗って、違うジャンルに行こうと考えました。

しばりは「フレンチおでん」でなく、「ソース料理」だったので、フレンチお好み焼き(右上写真)を作ろうかと言って作ったのが当たって、3時間27分の待ち時間になりました。今も有難いことにコロナ禍でも行列ができています。こちらも食べログ3.7ぐらいになっています。

西井 何を見てお店を発掘できるのですか? 何か1品光るものを見つけるという感じですか?

舟本 そうですね。1品光るものを日々ネットサーフィンしながら見つけるとか、あとはビールメーカーの営業さんは情報をよくお持ちです。自らビールを卸していて、その減り具合で売り上げもだいたい推察されるので、その中で細かなニッチなお店を紹介してもらったりします。

西井 食べログ3.4ぐらいの店に行きまくったりしますか?

本 基本的にはそうしています。お店に行くのはプライベートというよりはお店の発掘のために行きますので、そこを狙い撃ちです。

西井 それはすごい。

 プチ・ハセマコさんですよね。

舟本 いやいや、恐れ多いです、そんな。

 では、西井さん、お願いします。

(続)

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続きは 4.「鮨屋の系譜を理解せずして、鮨食うべからず」ビジネスに通じる美食家の教えを ご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成/小林 弘美

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