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「モバイル広告はどのように進化するのか?」【K16-1C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!8回シリーズ(その5)は、モバイル動画広告市場が拡大する鍵やブランディング広告の評価(指標)等について議論しました。是非御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス FUKUOKA 2018は2018年2月20日〜22日 福岡市での開催を予定しております。
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登壇者情報
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 1C
「モバイル広告はどのように進化するのか?」
(スピーカー)
菅野 圭介
ファイブ株式会社
代表取締役
二宮 幸司
株式会社ファンコミュニケーションズ
取締役
林 宣多
AppLovin Corporation
Country Manager, Japan
(モデレーター)
坂本 達夫
AppLovin Corporation
Director Sales, Japan
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【前の記事】
【本編】
坂本 今ちょうど動画のお話が出たのですが、菅野さん達が動画を始められたタイミングは、日本では一番早かったくらいかなと記憶しているのですが、その時からもう動画は「くる」なという確信がおありでしたか?
そして、今実際に、モバイルの動画広告は日本ではどれくらい「きて」いるのかといったお話を伺えますか?
FIVE菅野氏が挑んできたモバイル動画広告の歴史
菅野 はい。
実は僕、動画に過去2度チャレンジしていまして、はじめは2011年くらいにAdMobに在籍していた頃、HTML5を使ってリッチな広告をアプリに配信するというのをやっていました。
坂本 先ほど二宮さんのお話にもありましたけれども、一時期はリッチなモバイル広告をやってましたよね。
菅野 そう、結構チャレンジしていたんですよ。
というのはやはり、パフォーマンス型広告というのは、どこかでマーケットの天井があるという感覚があるじゃないですか。
広告の役割の中で、まだインターネット広告業界がタッチできていない部分というのは、やはり気づきを与える部分や、製品・サービスのことを好きになってもらうようなところだと思ったのです。
坂本 認知やブランディングのようなところですよね。
菅野 はい。
そこは効果測定、広告効果のアカウンタビリティ(説明責任)の部分で難しい面もあるとは思うのですが、業界全体でチャレンジしていく領域だと思っています。
そういう意味でAdMobの時に取り組んでいたのです。
ただ、個別の事例としてはすごく面白いものができたのですが、全くスケール(拡大、成長)しませんでした。
というのも、当時のスマートフォン端末の普及台数が2,000万台に届かないくらいしかなく、通信インフラも3Gだったので、動画がサクサク読み込まれるような土台の環境が整っていない状態でしたから。
それらの環境が整って初めて、スマートフォンでの動画市場が「ready」になる状態だと思っています。
坂本 なるほど。ちょっと早すぎたんですね。
菅野 2度目のチャレンジというのが、僕がYouTubeのTrueView広告を担当していた時なのですが、スマートフォンとデスクトップPCだと、やはり動画視聴態度が結構違うということを数字から明白に感じ取っていました。
これは同じ動画といってもモバイル向けには考え直す必要があるな、という感覚がありましたね。
坂本 具体的にはデスクトップPCとモバイルとでは、どういう風に違っていたのですか?
菅野 視聴完了率が違いましたね。同じ動画広告を流しても当時、モバイルの視聴完了率が半分くらいでした。
坂本 デスクトップPCの半分しか視聴完了されなかったということですか?
菅野 そうです。
坂本 へえ〜(驚)
菅野 とはいえ、トラフィックはすでにモバイルの方が上回っているくらいの状態でしたから、それってやはりマネタイズがしにくい状況ですよね。
そう考えた時に、やはり先ほども申し上げましたが、スマートフォンの接触のタイミングや、セッションの時間や、スクリーンの大きさや、音声など、色々な要素について、モバイルではデスクトップPCそのままの環境で展開してはいけないなということを感じました。
ですから、動画の尺の部分やフォーマットの部分などで、イノベーションが必要だなと感じました。
ブランディングとパフォーマンスで広告ラインナップを分ける
坂本 なるほど。
今、ちょうどブランディング型広告やパフォーマンス型広告についてのお話が出ていましたが、菅野さんのところでは、ブランディング型広告とパフォーマンス型広告の割合はどれくらいなのですか?
菅野 例えば、今年(2016年)の8月は半々くらいでしたね。
顧客に提供する価値が全く違うから、僕達はプロダクトのラインナップをはっきり分けているんですよ。
従来のインターネット広告の指標というのは、やはりオンラインで完結するビジネスなだけに、そこのROI(Return on Investment)を見たいというニーズはすごくあると思うんですね。
ただ、オンラインのビジネスをメインにしていない顧客というのは実は、インターネット業界から離れると沢山いらっしゃる訳ですよ。
その人達が大事にしている指標は全く違うものだったりするので、そこは提供する価値も違えば、それに合わせてプロダクトも作っていかなければならないという風に思っていて、そういう意味で言うと後者の、いわゆるインターネットではないビジネスをされている方達の動画利用というのは、テレビCMなどから、すごくシフトが起きてきているなという風に感じています。
林 それは、媒体の側で在庫を完全に分けているということですか?
僕達は完全パフォーマンス(型広告)ベースでやっています。
僕達のところにはゲーム系・非ゲーム系両方の媒体がいるのですが、両方に対してパフォーマンス型広告を配信していて、ブランディング型広告はまだほとんどやっていないのです。
ですが、やはりパフォーマンス型広告のゲーム系と非ゲーム系だと、ゲーム系の方が圧倒的にマネタイズがいいので、その単価に非ゲームの案件が勝てないんですよ。
普通に競争したらゲーム系の方が勝ってしまうのではないかなと思うのですけれども、その点についてどのようにバランスをとられているのでしょうか。
菅野 ゲームでいうと、強気な単価で一気にユーザーを獲得するのが得意な事業者の方も多いので、そこは割と気を付けて展開している部分ではありますね。
配信する手法や配信先が広告主によって全く違うという状態があると、割と僕達も在庫を共通にしたいという誘惑にはかられます。
ただ、例えばブランディング目的で使われる領域だと、ターゲットへのリーチが評価軸になることが多いですが、それに加えて事前に、かなり明確にこういうメディアでといった説明を加えた上で買っていただくという風にしているので、よりプライベートな取引になっています。
一方で、パフォーマンス型広告に関しては、おっしゃった通り、入札がありアルゴリズムがあり、ある程度自動化されていく領域ですので、そこは少しやり方を変えるというのは今やっていることです。
坂本 実際に動画を表示させる技術は両方共通だけど、誰に何を届けるかや、どこの面に何を出すかといったアルゴリズムは、ブランディング型とパフォーマンス型で完全に分かれているということでしょうか?
管野 そうですね。
基盤のシステムは同じなのですが、出し方や配信のされ方は違います。
モバイル動画広告で何を分析の指標とするか?
坂本 指標も、やはりView Through Conversionなどがメインになってくるということなのですかね?
(編集注:View Through Conversionとは、直接的なクリックではなく、広告がユーザーにどれだけ間接的に影響を与えているかを知るための指標。広告を見たが、クリックをせず、しかしながら、その後、その広告が関連づけられているコンバージョンページに到達し、目的の行動につながった場合の確率等を取得する)
菅野 動画でいうと、本当はオフラインが最終指標になるんですよね。
消費財でも何でも、ブランドがビジネスの価値になっているような企業というのは、最終的にはモノを売りたいのですよ。
店頭でモノを買ってもらいたい訳じゃないですか。
最終指標としてそこは変わらないんですよ。
売り上げだったり、利益だったりというところは変わらないと思うのですが、その手前の部分で、多分統計的に、この人の頭の中に自社のブランドが叩き込まれると店頭で手が伸びる確率が高まるから、あれだけ大量のテレビCMを出稿している訳ですね。
そこと近しい価値指標というのを、僕達もきちんと機能として提供しなければならないということは創業時から思っています。
そういう意味では、すごく簡易にブランドに対する態度変容を調査できるような機能というのを、プロダクトとしてはもう内包していたりします。
その手前の部分にView Through、つまり実際に見てくれたかどうかというのが指標としてはあるのかなと思っています。
坂本 なるほど。ありがとうございます。
モバイル動画広告が日本で伸びるためには?
坂本 次に、少し菅野さんと林さんにお伺いしたいと思います。
海外だと、Facebookの次は動画広告に出稿という風に、動画広告が主流になってきていると思うのですが、日本では、バナーなど動画以外の広告が占めるポーションもまだまだかなり大きいという印象があります。
これから日本で動画広告が伸びるためには、どういうことが起きなければならないでしょうか。
課題やボトルネックについては、どのようなことをお考えですか?
林 僕達の方は結構シンプルです。
USですと、例えばSupercell(スーパーセル)の「HAY DAY」のような、課金売上が主のゲームにも動画リワード広告が入っています。
やはりそういった課金の強いゲームだと、ユーザーのアプリ内報酬が欲しいというインセンティブが強いので、ボリュームも出るしインパクトもあります。
日本でもバンダイナムコエンターテイメントの「ドリフトスピリッツ」など、ソーシャルゲームにも徐々に入ってきてはいるのですけれども、そこをきちんと伸ばしていけるかというのが、動画が本当のメインストリームになれるかどうかというところのポイントなのではないかなと思います。
坂本 広告でマネタイズしていますといったカジュアルゲームだけではなくて、売上ランキングトップに入っているようなゲームなども媒体になるかどうか、ということですね。
林 おっしゃる通りですね。
坂本 菅野さんはいかがですか?
菅野 少し視点が違うかもしれないのですが、私も申し上げたように、動画というのは見ようによっては結構負荷の高いフォーマットだと思っています。
時間を独占するし、静止画に比べても相対的にはパケット通信がかかってくるという現状があって、日本だと通信量制限があって「パケ死」を恐れるユーザーがいるじゃないですか。
やはりこういう事業を手掛けているとどうしても供給者側の目線に立ってしまうのですけれども、市場が中長期的に広がっていくということを考えると、ユーザーに嫌われるフォーマットというのは定着しないわけで、その目線を忘れないということが大事なのかなと思います。
坂本 なるほど。具体的にはどういったところですか?
菅野 やはり、どれだけ通信を圧縮できるかという点や、動画を観る方にはできれば気持ち良い体験を提供したいと考えて技術開発をしています。
フォーマットを含めたUIの部分もそうだと思います。
後は、広告主向けの保護というか、例えば、Viewability等ですね。
(編集注:Viewabilityとは、広告掲載インプレッションのうち、実際にユーザーが閲覧できる状態にあったインプレッションの比率のこと。広告インプレッションは、Webページ上にある広告コンテンツがロードされたタイミングで発生するため、目に触れる位置までユーザーがスクロールしなかった等の場合も、広告コストを支払うという問題がある)
動画が実際にどういう環境で再生されていて、それは本当にbotではなく人だったかのどうかなど、そういうところも含めてですが、恐らく1社だけではなくて業界全体の基準策定のような話になってくると思います。
どうしても市場が盛り上がると色々なフォーマットが乱立して、色々なやり方が増えていくと思うのですけれども、そこがある程度集約されてくる時期というのも必要になってくるのかなと思っています。
林 なるほど。
ブランディング広告の効果をどう評価するか?
林 またブランディング型広告について質問なのですが、ブランディング型広告の広告主さんは、評価をどのようにされるのですか?
パフォーマンス型広告であれば、キャンペーンが終わった後にROASやCPIという形で評価すると思うのですが。
菅野 ブランド課題というのは、そのブランドによって違いますよね。
新商品でしたら当然商品の認知が必要になりますし、定番商品のテコ入れであれば、ひょっとしたら好感度のような指標かもしれません。
それぞれのブランドによって違うと思っています。
共通して言えるのは、ユーザーとの動画なりを通じたコミュニケーションが発生して、その後にユーザーの頭の中に何が起きたのかということを捕捉したいという問題なんですね。
インターネットの場合は、これまでクリックで価値計測ができていましたよね。
その後コンバージョンに至るかどうか、インストールに至るかどうか、その手前の部分で広告をクリックするのだったけれども、観た、というところというのはシステム的には補足できないですよね。
そこをどうやって補足するかということで、先ほど申し上げたようなメジャーメントで、例えばサードパーティー(第三者機関)に頼んで毎回調査してもらうのは、コストもかかるし時間もかかって、大変じゃないですか。
それをなるべく簡便にしていくことは、とても大事だと思っています。
林 ありがとうございます。
坂本 nendは、まだ動画はされていないですよね。これから動画を手掛けていかれることも含めて、動画の広告市場をどのようにご覧になっていますか?
二宮 先ほどお二人が話されたことが、僕達にもずっと課題感としてはあるのです。
僕達のところにはゲームの広告主が多いので、メディアはどうしてもカジュアルゲーム系のディベロッパーが多い中で、いかに安定したボリュームを出すために、デイリーアクティブユーザー(DAU)を動画のネットワークで担保していくかというのは非常に難しい課題です。
2年くらい前からずっと検討していて、優先順位的にはまだ明確にここではないよねということで、今はまだやっていないのですけれども、2017年春に動画の新しいサービスをリリースする予定です。
坂本 お!そうなんですね。
二宮 nendとはまたちょっと別なのですが。
坂本 それもまた別で。
シナジーは?(笑)
二宮 ちょっとあまり…(笑)
nendとはターゲットが違うということですね。
例えば、Top Salesランキングにいる大手ゲームのディベロッパーが広告をどうやったら入れてくれるかといった課題を解決できるようなプロダクトにしたいと思います。
また、先ほど菅野さんがおっしゃっていた、ユーザーにとってメリットがある動画や、通信料の負担が少ないようなサービスというのもすごく大事だと思いますね。
坂本 なるほど。
リリースを楽しみにしています。
(続)
続きは FacebookやGoogleといかに戦うか?国内モバイル広告市場の最前線 をご覧ください。
https://icc.dvlpmnt.site/industry-trend/9520
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子/坂本 達夫
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【編集部コメント】
続編(その6)では、国内の広告配信事業者の強み・グローバルプラットフォームを持つ事業者の強み等を議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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