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5.  歴史に残る会社を創った経営者が答える、上場する目的とは【終】

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ICCサミット FUKUOKA 2020 レジェンドが語り尽くす! メガべンチャーを創るための経営者の仕事とは?(シーズン2)全文書き起こし記事を全5回シリーズでお届けします。(最終回)は、会場に集まったすべての経営者が気になる「自分の引退」について。最後まで、偉大なる先人の言葉に、ぜひ耳を傾けてください!

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2021は、2021年2月15日〜2月18日 福岡市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プレミアム・スポンサーのビズリーチ様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 9C
レジェンドが語り尽くす! メガべンチャーを創るための経営者の仕事とは?(シーズン2)
Sponsored by HRMOS(ビズリーチ)

(スピーカー)

千本 倖生
株式会社レノバ
代表取締役会長

分林 保弘
株式会社日本M&Aセンター
代表取締役会長

(質問者)

宇佐美 進典
株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役会長 /
株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO

丹下 大
株式会社SHIFT
代表取締役社長

南 壮一郎
ビジョナル株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

宮宗 孝光
株式会社ドリームインキュベータ 執行役員 /
DIMENSION株式会社 代表取締役

レジェンドが語り尽くす!メガベンチャーを創るための経営者の仕事とは?(シーズン2)


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最初の記事
1. 若手経営者がレジェンドに問う、大反響セッションのシーズン2!

1つ前の記事
本業に忠実に、シンプルであれ。仕事ほど楽しいことはない

本編

自分が引退するタイミングをどう考えているか?

ビジョナル株式会社 代表取締役社長 南 壮一郎さん

宮宗 残り時間が20分となりました。最後の質問に移りたいと思います。

宇佐美さん、丹下さんから経営者の去り際、引退時期についての質問が出ていますが、千本さんは「70代で一番楽しいのは仕事だ」(Part 4参照)とおっしゃっていました。

丹下 これは愚問ではないですか?

「(自分に対し)まだまだ引退しない」と言われませんか?(笑)

 これは僕も聞こうと思ったのですが、お二人とも全然引いていないですよね。

宮宗 ただ会場の中にはトップとして苦悩されながら、トップとしてその姿は見せられないと思っている方もいると思います。

ストレートに書いていただいた質問なので、ぜひ私も聞きたいと思いました。

 これは、去る必要はあるのでしょうか?

やることはたくさんあり、何をしても楽しい

株式会社日本M&Aセンター 代表取締役会長 分林 保弘さん

分林 僕は2008年から会長になり、ほぼ三宅(卓)社長に任せています。できるだけ社員や役員の主張を尊重するほうです。

その理由は、意見を否定したら誰もやらなくなると思っています。

僕の意見と違っていても、最終的にゴールが一緒なら、右から行っても左から行っても変わりません。だから、逆に社員や役員の意見を尊重します。

そうでないと、誰も意見を言わなくなります。

僕は外資系にいたので、創業した時から年収は無限大と考えていて、社内には30代で1億円の年収の者もいます。

キーエンスは、だいたい年収が2,000~3,000万円ですよね。

そこから20人ぐらい入社してきます。

月に15人ぐらい中途採用をしていますが、三菱、住友、大和、野村などの一流企業、最近は商社やキーエンスのような高年収の企業から転職してきます。

応募の理由は、仕事に対してやりがいがあることと、年収の上限がないことです。

会社としても4年ごとにストックオプションを発行していて、これによって非常に意識付けが出来ます。

企画に関しては、修正はすることはあっても否定は絶対にしません。

「全員が経営者だ。君らは経営の仕事をしているのだし、経営者を相手にしているのだから、自分自身が経営できなければいけない。自分の年収は自分で決めて、上げろ」と伝えます。だから上限は設けていません。

新しい会社をつくってもいいし、M&Aの周辺事業なら何に取り組んでもいいし、資金も出すし応援もします。我々経営陣は、とにかく否定はせずやっています。

引退と考えてみたらあと3年で80歳で、じいじやん!と思ったのですが、この間、医者から心臓年齢54歳と言われました(笑)。

やることはたくさんあって、何をしても楽しいので、元気なうちは色々なことをやっていこうと思います。

宮宗 ありがとうございます。後進育成に仕事のポイントが移られているのかなと思います。

千本さんは色々な事業をやられていますが、宇佐美さん、丹下さんの質問の後進育成、去り際については、どのような哲学をお持ちでしょうか?

ワクワク感、躍動感がなくなったとき

株式会社レノバ 代表取締役会長 千本 倖生さん

千本 私がソフトバンクにワイモバイルやイー・アクセスを売却したときが、1つのリタイアの時期だったと思います。

自分が経営者として、ある種のワクワク感、躍動感がなくなったときは、次の新しい世代に渡すか、どこかの会社に売却して去るということになると思います。

人生のなかで、中に燃えるエネルギーの形は変わってきます。

60代でメラメラ燃えている炎と、70代でガバナンス側で見るときの炎は違うのです。

60代の時までは、メラメラと燃えている炎が私の内にあって、本当にワクワクして、毎日みんなと思い切り議論しました。120%、紙の奥を通り過ぎてまで議論するような、そんな躍動感がありました。

それがなくなったときに、この仕事を次の世代に渡すべきだと思いました。

70代になったら、ガバナンス、エンジェル、社会をもっと良くするための仕組みづくりに自分の関心をシフトしました。

そういうときが、CEOを引退するタイミングじゃないですかね。引退しても別の仕事は色々あります。

宮宗 本音のお話をうかがいました。

ワクワク感、躍動感をどのように維持できるかが創業者として大事だというお話だったのかなと思います。

上場する目的とは何か?(ビジョナル南さん)

宮宗 最後は南さんの質問になりますが、会場の方も聞いてみたい質問だと思います。

 お二人の話の中で、ストックオプションやガバナンス、CxOという言葉が出てきましたが、この会場の大半の会社は弊社も含めて未上場の会社です。

1つの出口としてIPOがあるわけですが、未体験の我々からすると、そもそも上場の目的をお二方はどういうところに置かれたのか興味があります。

歴史に残るような会社を、世代を代表するお二人が創ってこられたわけですので、ぜひ率直なご意見を伺いたいと思います。

認知、採用、提携、信用面のインパクトは絶大

分林 我々の場合、創業2年目から配当しているぐらいですから、借金をしたことが一度もありません。今も数百億円をキャッシュで保有しています。

上場の目的は、お金が目的ではありませんでした。一番大きな目的は、社会的信用です。

僕は会計事務所の役員を何十年としたので、今も1,000軒ぐらい会計事務所と提携があります。

その前から日本事業承継コンサルタント協会をつくって、550ぐらいの会計事務所とずっと良い関係を築いてきました。

三宅社長はオリベッティ時代から、地方銀行と良い関係で紹介ルートをたくさん持っていましたが、問題は上場会社とのパイプがほとんどなかったことです。

買い手をどう探すかとなると、日本M&Aセンターといってもその当時は認知度がありませんでした。

それが、上場することによって、認知度は一挙に上がりました。

あとは社員を採用するときです。未上場であるため、優秀な人が入って来なかったときもあると思います。

新卒採用においても、渡部(渡部恒郎 執行役員)をはじめとして、優秀な新卒が上場してから入社してきました。会社にとっては人材確保が大事なので、上場は重要でした。

当社は仕組み経営をしているので、大和証券、野村証券の中小企業のM&Aは実は当社がやっています。

野村証券だけでも30~40人当社の社員を出向させており、大和証券にも出向させています。

三菱UFJ銀行の全支店に対して我々が教育したり、それ以外にも様々なことをしています。

上場すると、大企業と提携しやすいという面もあります。

当社は中小企業のM&Aをかなり行っていますが、上場していなかったら、提携できなかった大企業もおそらくあると思います。

社会的信用、人材確保、大企業との提携の他、世界にも出ていくわけですから、信用が大切です。

企業というものは、ゴーイングコンサーン(会社が将来に渡って事業を継続していくという前提)で、永遠に続くのです。

でも人の命は永遠ではありません。南さんはあと50年くらい大丈夫と思いますが(笑)。

最後は相続税の問題です。

上場したら、税金は株式を物納するか、売却するかという選択もできます。

我々の場合はパブリックな会社にしていこうと思っています。

経営は一番優秀な人間がやればいい……南さんに社長をやってもらってもいいですが(笑)。

できる人がやればいいのです。上場すれば、内部でも外部でも一番適任者がやればいいと思うんです。

社会的存在を立証するには、上場で大義が立つ

千本 上場するのは、社会的仕組みを根本的に変えて、日本の社会を良くしたいと思うからです。

そういう社会的存在をきちんと立証するには、上場することによって大義が立つと思います。それが1つです。

私の会社は分林さんの会社に比べて、キャッシュリッチではなくて、対極です。

イー・アクセスの時に、未上場の時はできなかったのですが、上場した時にネットワークを作るために4,000億円のファイナンスをしました。

宮宗 すごい規模ですね。

千本 4,000億円のファイナンスをするためのコアはエクイティでした。

エクイティで800億円くらいで、それにデット(借入や社債発行による資金調達)を足して、足りない分はリースしました。

ベンチャーがファイナンスする時は、上場していないと何百億円、何千億円は出してもらえません。

世界に通用する上場企業であるために、きちんとガバナンスもやりました。

NYのゴールドマン・サックスのCEOに説明に行き、投資委員会でまる3日間かけて説得するためには、ガバナンスがあり、上場していることが必要でした。

今のレノバもそうですが、会場にいる森君がCFOとして何千億円のプロジェクトにかかっていますが、そういうことをやろうとすると、強烈なCxOを雇わなければいけません。

強烈なCxOを雇うためには、大きな共鳴できるビジョンが必要です。

この会社に入社したら日本のためになる、世界のためになる、世界の環境を変えられる、日本の環境をもっとよくできるという、ワクワクする夢、ビジョンを、社長以下全員が持っていなければいけません。

もう1つ大事なことは超優秀なCxOを採用するために日本の会社が怠っていることは、ちゃんとしたリワード(報酬)です。

分林さんの会社もこれをよくやっておられると思いますが、我々のようなレバレッジをたくさん利かせているところでは強烈にいいCxO、一流のCxOを整えています。

彼らに対して、CEOはケチであってはいけません。

エクイティも一つの形ですが、彼らの給与、生き方に対して豊かなものをきちんと与えることが重要です。

どうも日本の経営者はそういうところを惜しんでしまいます。それを潤沢に与えることが必要です。

シリコンバレーで、私はエクセレントカンパニーの社外取締役を10年ぐらいやり、その会社が、200億円から2兆円になるプロセスをずっと見ていました。

そこでは、全員プロのCxOを雇っており、彼らに対する与え方は破格です。創業者よりも多くのストックオプションを与えるなんてこともありました。

それによってしか、何千億円、何兆円の規模の企業を支える強力な人材は来ません。

ドリームインキュベータ / DIMENSION 宮宗 孝光さん

宮宗 ありがとうございます。分林さんと千本さんから、良いメッセージをいただきました。

分林さんからは、上場することによって信頼、人の採用、提携ができ、企業としてはゴーイングコンサーン(永続性)で、上場する価値があるのではないかというお話でした。

千本さんも重なる部分があって、大義、志を立証することに上場は資するのではないかということでした。

また、ファイナンスの規模について、お話にあった4,000億円の規模は桁違いではありますが、これは未上場では達成できないところです。

そうした2つが掛け合わさって、CxOの方が入ってきて、そういった方に対する貢献も、上場しないとできません。

規模感の大きい話や本質に関わるお話をいただけたのかなと思います。

最後に質問者の方から、メッセージがあればお願いします。

どうしたら業界でリーダーシップを発揮できるのか?

株式会社SHIFT 代表取締役社長 丹下 大さん

丹下 大義名分が重要で、もっと大局を見て器を大きくしてやっていくと資金調達も大きくなるし、会社が大きくなるというお話をいただきました。

僕は心から、SI(システムインテグレーター)業界を良くしたいと思っています。

多くのSI企業がすごく高い金額で開発をされているので、それを安くして多重下請け構造をなくしたいと思っています。

そのためには、SI業界のリーダーにならないといけないと思います。

ただ1社でやるよりは思い切ったリーダーシップを張って、この業界を引っ張る意気込みでやらなければいけません。

お二人はリーダーとして業界を牽引されたと思いますが、経産省に気を遣ってとかいった話ではないと思います。

どうしたら業界でリーダーシップを発揮できるのか、すごく気になっています。

宮宗 ありがとうございます。これは色々な業界でやられてきた千本さんに、最後一言お願いします。

千本 私がレノバという会社の木南(陽介 社長)に会った時に言ったのは、再生可能エネルギー、グリーンエネルギーの日本一の会社になろうよ、できればアジアでトップクラスの会社になろうよということでした。

そのためには業界というものを隅々まで知って、同業の仲間とトップ同士がよく会って、業界そのものを本気になって良くしようという合意形成をすることです。

もう1つは、彼と初めて会った時、彼はプロジェクトの売上は約50億円と言っていました。

私は、「君、違うだろう、2桁違う。業界を大きくしようと思ったら、自分の会社を2桁変えろ」

そう言いました。

彼は頷いて、それから数千億円のプロジェクトに挑戦し始めました。

宮宗 ありがとうございます。自社の規模が業界に影響をするというお話だったのかなと思います。

まだまだ質問はありますが、ちょうど時間となりました。ぜひ千本さん、分林さんに大きな拍手をお願いします。

ありがとうございました。

宇佐美さん、丹下さん、南さんにも、鋭い質問をいただきました。

大きな拍手をお願いいたします。

(会場拍手)

(終)

▶本セッションの模様をレポート 大物の持っているビジョナリー、フィロソフィーを、生身で体験!レジェンドが語る経営者の仕事シーズン2! 【ICC FUKUOKA 2020レポート】でもご紹介しています。合わせてぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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