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7.継続ビジネスの肝はライトユーザーを追いすぎないこと【終】

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「継続課金リピート型ビジネスの成功の鍵を徹底議論」7回シリーズ最終回は、Oisix、一休、楽天、ラクサスへの質疑応答です。失敗した施策や、サービス転換点での判断基準、競合への意識など、さまざまなな疑問に率直にお答えいただきました。ぜひご覧ください。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

ICCサミット FUKUOKA 2018のシルバー・スポンサーとして、日本マイクロソフト様に本セッションをサポート頂きました。


【登壇者情報】
2018年2月20-22日開催
ICCサミット FUKUOKA 2018
Session 6A
「継続課金/リピート型ビジネスの成功の鍵を徹底議論」
Supported by 日本マイクロソフト

(スピーカー)
北川 拓也
楽天株式会社
執行役員 CDO グローバルデータ統括部ディレクター

児玉 昇司
ラクサス・テクノロジーズ株式会社
代表取締役社長

榊 淳
株式会社一休
代表取締役社長

髙島 宏平
オイシックスドット大地株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)
東後 澄人
freee 株式会社
取締役COO

「継続課金リピート型ビジネスの成功の鍵を徹底議論」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1.継続課金リピート型ビジネスに携わる登壇者が、Oisix、一休、楽天、ラクサスの取り組みを紹介

1つ前の記事
6.継続課金ビジネスの踊り場で直面する誘惑とは?

本編

東後 このビジネスの本質にかなり迫る議論になってきたと思うのですが、ここで会場の皆様からのご質問を受けたいと思います。

もうかなり手が挙がっていますね。

全体に聞かれたいか、どなたか特定の方に聞かれたいかをおっしゃって頂いて、ご質問頂ければと思います。

ではまずこちらからお願いします。

質問者1 お世話になります。

株式会社ユーザベースの西川と申します。

NewsPicksをやっている会社です。

株式会社ユーザベース西川氏

ありがとうございます。

Life is Vegetable。

ライフ・イズ・ベジタブル―オイシックス創業で学んだ仕事に夢中になる8つのヒント

大好きです。

2つ質問がありまして、1つ目は皆さんに伺いたいのですが、LTVが伸びるかのように見えて失敗してしまったなという施策について教えてください。

お客様のためになるなと思ったのに失敗した施策があれば伺いたいです。

もう一つは髙島さんに伺いたいのですが、私はマーケティングを担当していて、今年、“Sell Through The Community“を掲げて、お客様を通してお客様に売るということを考えたいと思っています。

オイシックスのInstagramの施策がまさにそれだと思っていまして、実際のビジネスに返ってくる効果などについて伺いたいです。

▶参考書籍:いちばんやさしいInstagramマーケティングの教科書 (※該当ページ

ライトユーザーを追いすぎてはいけない

東後 まず1点目、LTVを伸ばそうとして失敗したことなど、思いつく限りで結構ですので伺えますでしょうか。

 これは先ほどから出して頂いている数字なのですが、私たちは2012年、2013年くらいにLTVを伸ばす努力をしており、その時とその後で違うのは、継続率の定義です。

継続率は一般的に人数で数えませんか?

100人の新しいお客様が入ってきて、その人達のうち、3か月以内に何人の人がリピートしましたかというように人数でやってしまうと、どうしてもライトなユーザーを追ってしまうことがあります。

そこで、私たちは、継続率を全て金額に置き換えました。

初月に100万円使った人のうち、何万円残ったのですかという定義に変えた瞬間に、顧客数は減少していた時期でしたがユーザー数を追わず、100万円使う人を100%取ろうという方向に自然となりました。

これは一つの大きな失敗でもあり、学びでもあった思っています。

東後 他にいかがですか?

児玉 僕の場合はまだ完全な失敗かどうかは分からないのですが、ポイントがなくなりますよと言って焦らせて、焦らせると沢山入会したのですが、(継続ユーザーに)転換しなかったことです。

実際のところ、沢山入会するので、転換はしなくてもソロバンは合うのです。

でも、やはりあまり焦らせ過ぎると納得して入ってきてないので、使っていただきさえすれば転換するという仮説とは違いました。

Instagramで適切なレア感をコントロールする

東後 では2点目の質問について、髙島さんご回答をお願いします。

髙島 ライトユーザーに必要以上に執念を燃やすというのは、よくやる失敗ですよね。

写真左より、北川氏、高島氏

ライトな人は人数も多く気になるので、ここに何かチャンスがあるのではないかと思ってしまうのです。

この人達の10パーセントでもリピートさせれば絶対にすごく違いがあるように数字的には見えるのですが、びくともしません。(笑)

本当にヘビーな人にもっとヘビーになってもらうのと、ややヘビーな人にヘビーになってもらう以外は、ほとんど無意味です。

僕らの場合は無意味だったと思いますね。

2つ目のご質問は、どうしてインスタグラムをやっているかですか?

質問者1 先ほどおっしゃっていた、「褒められたい」という気持ちに効いてくるのかと思いまして。

髙島 今、Instagramのアンバサダーが3,000人くらいいます。

でも、3,000人を10,000人にすると失敗すると思っています。

適切なレア感がなくなって、コモディティになってしまうとダメなところもあります。

Instagramを見ている時に、どのくらいの頻度でオイシックスの野菜で料理を作った人が出てくればよいか、気持ちいい上限はどのくらいだろうということについてはかなり見ています。

今のところそれくらいの人数なのかなと考えています。

おそらく、この施策をこれ以上厚くやることはできないと思います。

特にInstagramをされている方というのは、比較的自己表現欲求・自己承認欲求の高い方なので、私達からお願いしてやって頂くという行為自体が、お金を払うよりも、何となくその人達の納得感がある、人数が増えていったと思います。

東後 ありがとうございます。

では、次の質問を伺いたいと思います。

顧客の声を深く聞いてサービスを作り上げていく

質問者2 ありがとうございました。

リクルートマネジメントソリューションズの奥野と申します。

リクルートマネジメントソリューションズ 奥野氏

LTVを追うのか、顧客数を追うのかというところは、前提として誰にどんな価値観を提供するのかや、どんな場面で喜んでもらうのかが大事だと思いました。

そこを決める、あるいは継続型ビジネスで変えるというときに、何を見てどう判断・決断されているのかを是非お伺いしたいです。

月に一度お客様のお宅に行かれるというお話がありましたので、髙島さんと、そして、榊さんが転換を絞っていかれた際に、何を見てどう判断されたのかについて是非お聞きしたいです。

髙島 そんなにきちんとしたものはなく、本当に直感的に決めていくのですが、月に一回は少なくともお客様のお宅に行きます。

その他、会社にお客様に来ていただいたりしています。

オイシックスドット大地株式会社 代表取締役社長 髙島 宏平氏

弊社の全体会議は、パネラーが全員お客様といったのが結構多いんです。

「オイシックスさん、超不便だよね」と、お客様に皆で言い合っていただくみたいなこともよくやるのですが、とにかく生の声をシャワーのように浴びます。

仮説を見つけるヒアリングと、仮説をぶつけるヒアリングとを分けてやっています。

何回かやって仮説を見つけるヒアリングをして仮説を作り、今度は仮説をぶつけるフェーズに入るのですが、結局サービスにするかどうかは、ぶつけた時の「いいね」の熱量を直感的に判断して決めています。

「いいっすね、それ」というのと、「いいっすね!!」というこの違いによって、サービス化するかどうかを決めています。(笑)

東後 すごく直感的ですね。(笑)

髙島 それは、日常の人とのコミュニケーションでもありますよね。

「今度メシ食いに行こうよ」と言ったときに、「そうっすね」と言う人と、「是非!!」というのとでは熱量の違いがありますよね。(笑)

それに近いですよ。

東後 では榊さんお願いします。

 僕達がどちらに踏み切るか決めるときは、同じように顧客インタビューをかなりヘビーにやりました。

普通、お客様が10人並んだときに、「10人中7人がこう言ったからこれを入れましょう」と、決めることが多くないですか?

でも僕達のサービスは、「10人いて1人に愛されればいいサービスである」というのが前提にあって、「あなたは絶対に『一休』を使ったほうが幸せになるよ」と言えるかという直感に依存しました。

我々はネットのビジネスなので、お客様が増えるとすごく嬉しいのですが、人数は多くなくても、そのサービスを心から享受できるお客様のLTVを高くするというのがよいのではないかなと思ったということです。

東後 よろしいでしょうか?

では次のご質問にいきましょう。

セグメンテーションを捨ててパーソナライズした

質問者3 ユニゾン・キャピタルの松本と申します。一休の榊さんにお伺いします。

顧客ポートフォリオやセグメンテーションについてですが、成長の原動力となっているヘビーユーザーがどれくらいの割合でいらっしゃるのか、このセグメントがどう変わってきたのか・変えようと思っているのかについて教えていただけますでしょうか。

 実は、2012年くらいの伸びなかった時は、顧客セグメンテーションについてすごく考えていました。

株式会社一休 代表取締役社長 榊 淳氏

例えばカップル層は、夫婦と、カップルと、大人のカップルがいるとかですね。

例えば一人で泊まるお客様も、出張もいれば、そこに法事で行かなければいけないシーンだったり、そういうデータが全て取れるので、セグメント別に予約するタイミングが違うとか、そういったことをものすごく考えていました。

それが全然上手くいかないなと気づいたのが2013年くらいです。

要は、ネット上で考えていくと、パーソナライズがものすごく効くということです。

なので、例えばご夫婦でよく旅館に泊まるお客様も、カップルと同じセグメントですが、「そのセグメントって何の意味があるんだ」というのを考え始め、基本的にセグメンテーションという概念を捨てたというのが我々がやったことです。

東後 面白いですね。

セグメンテーションを捨てる?!

 はい。

私はコンサルティングファーム出身なので、戦略とはカスタマーディスカバリーであるとか、狙わない顧客セグメントを決めることであるとか、それぞれLTVが全然違うなど、そういう頭で考えてしまいがちです。

元々サービスがセグメンテーションされたところを狙っているので、そのお客様が一人一人違うという前提に立つ方が理にかなっています。

今はビッグデータもあるので、そういう方向に振っているという感じです。

質問者3 今、一休さんの中では、ヘビーユーザーの比率はどのくらいなのですか?

榊 ヘビーユーザーの比率というのはどういうことでしょうか?

質問者3 今まさにターゲットとされているヘビーユーザーというのが、今持たれている顧客ポートフォリオの中で何パーセントくらいで、それをどうされようとしているのかをお聞きしたいです。

 最初に申し上げた、100万円使うお客様というのは、2012年くらいは3,000人くらいでした。

今はそれが数万人になっています。

はっきりとは申し上げられないのですが、仮にそれが2万人だとしましょうか。

2万人が100万円使うと、200億円なんですね。

我々のトランザクション全体の4分の1を占めることになり、すごく少ない人数でもかなり大きなシェアになっているということです。

東後 最後にあと1つくらいご質問をお受けしようかなと思います。

競合をどのように意識しているのか?

質問者4 フォルシア株式会社の洲巻と申します。

フォルシア株式会社 洲巻氏

貴重なお話をありがとうございます。

いわゆる競合が出てくる可能性があったときに、通常の物販だと価格でをり安くしたり、そこにしかない商品が差別化につながると思います。

仮に会員数で勝っているとしても、例えば大手が半額にしてくる場合なども考えられると思います。

そこで、競争を勝ち抜くことについてどうお考えなのか、あるいはそういうことは考えずに顧客に向き合っていかれるのか、その辺の考え方をご披露いただければと思います。

東後 どなたからでも。

髙島 基本的に、弊社では競合のことを気にしたことは今まで一度もありません。

食品マーケットは100兆円あってものすごく大きいので。

しかし、満足していない方達が沢山いらっしゃるので、そのお客様の負の部分、つまり不安や不満などをどのように叶えればいいかなということを考えて、(同業種の会社と)一緒の会社になるというやり方を(笑)しています。

▶2018年1月30日「 NTTドコモとミールキット事業に向けた業務資本提携を合意 同時にドコモグループのらでぃっしゅぼーやを取得」

(会場 笑)

東後 タイムリーな話ですね。(笑)

児玉 弊社はかなりシンプルなビジネスなので、コピー屋はどんどん増えています。

写真左から、児玉氏、榊氏

けれども、質屋さんなど販売する方達がレンタル業界に入ってきているので、完全な戦略矛盾を起こしていますね。

彼らは、やはり貸したら売ろうと思います。

我々が20倍に成長した時に、彼らは40億円くらい費やして1.1倍の成長で止まっていたりします。

やはり最初は、新入社員2人でやっていたりしますから、そんなところには負けないだろうという自負はあります。

弊社では、ユーザーひとりひとりにスタイリストが付いていて、「こんなスタイリングはどうですか」など、そういった心の繋がりを作れるような密なコミュニケーションをとっています。

シェアリングエコノミーって、Uberにしても何にしても、そもそも値下げ競争にしかなりません、絶対に。

だからそのあたりから一歩違います。

あとはC to Cですよね。

弊社ではカバンを預かっているので、カバンが人質みたいなものなのです。

一回預けてお金を生み始めると、他が同じビジネスをやったとしても、わざわざそこに預けかえようというマインドにあまりなりません。そういった模倣困難性のようなものを組み立てていっています。

登壇者からのメッセージ

東後 今日は「継続課金/リピート型ビジネスの成功の鍵」というテーマで議論してきましたが、最後に一言、「成功の鍵」とはどのようなものなのかについて皆さんに一言ずつ頂きたいと思います。

最後は児玉さんからいきましょうか。

児玉 我々が出しているプロダクトを、どのように理解して頂けるかが大事だと思います。

私たちは「安く借りられるよ」ではなくて、「ファッションを自由に楽しめるよ」というという楽しみ方を打ち出しているので、そこをしっかりと理解して頂くというのが我々の鍵ではないかと思っています。

ラクサス・テクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 児玉 昇司氏

 継続型のビジネスの中身をこのように話す機会は、競合関係などもあるので、あまりないと思います。

ですから、今日のように異なるビジネスをされている方々とお話ができて、すごく面白かったです。

どうもありがとうございました。

北川 昨日はヤフー安宅さんから「知性とは問いを立てる力だ」と言われたので、皆さんに問いを投げかけて終わろうと思います。

楽天株式会社 執行役員 CDO グローバルデータ統括部ディレクター 北川 拓也氏

話そうと思って結局話せなかったのですが、実はこれ、「レ点型ビジネス」(※)になりますよね。

▶レ点型ビジネス:通常の契約に加えて、チェックボックスに「レ点チェック」をさせるやり方で、オプションサービスの同意を得たとみなす。

ケータイのオプションなどが有名な例だと思うのですが、継続型ビジネスの時に一度チェックしてしまえばずっと課金されるタイプのビジネスを目指すと、当然継続率は上がってお客様に対しても摩擦の少ないビジネスになります。

逆に、毎回モノが届いたり、毎回買わなければならないとなると、非常に摩擦は多いけれど、お客様が「なぜこのサービスが自分にとっていいものなのか」ということを常に確信を持ちながら続けてくれるので、より継続率も高まります。

どちらにもPros and Consがあると思うのですが、継続課金ビジネスは一体どちらを目指すべきなのかということをぜひ皆さんに教えて頂きたいなと思いますので、また僕を見かけたら教えてください。

今日はありがとうございました。

髙島 ICCサミットに来ると、僕は自分の字がかなり好きなので、メモを取ります。

でも、こうやって見ていてもそうなのですが、メモを取っている人って、年齢が比較的高めの人達で、そうではない人はパソコンを打っています。

俺達は絶滅危惧種なのかなと思っていました。

やはり学んだことはスマホやパソコンに打ち込むようなスタイルに、無理してでも変えなければならないのかなと思っていたら、北川さんが先ほどからずっとメモを取られていて、それを見るとすごくほっとしましたね。「メモを取っていいんだ」と(笑)。

オイシックスドット大地株式会社 代表取締役社長 髙島 宏平氏

皆さんのお話を聞いていて思ったのですが、暮らしを変えるビジネスだから、暮らしを変えるくらいの熱量を見つけるというのが、継続課金においてはすごく大事ですね。

熱量のうち横展開可能な熱量、例えば「絶対◯◯したい!」といった熱量を見つけて展開していくのだなという、そういうのが継続課金型ビジネスだなと改めて思いました。

東後 ありがとうございました。

私自身も継続課金型ビジネスなので非常に参考になりましたし、議論を通してかなりこのビジネスの本質に迫ることができたのではないかなと思います。

改めまして、パネリストの皆様に大きな拍手をお願い致します。

(終)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子/浅郷 浩子/本田 隼輝

【編集部コメント】

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