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IoTの活用で「養殖漁業」が変わる(ウミトロン藤原)【K16-5D #3】

ICC KYOTO 2016 S5D

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「1次産業(農業水産業) × ITから生み出されるビック チャンス 」【K16-5D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その3)は、ウミトロン藤原さんに事業紹介を頂きました。「宇宙のデータで魚を育てる」ビジネスです。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております


2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016「ICC SUMMIT」
Session 5D
「1次産業(農業/水産業) X ITから生み出されるビック・チャンス」

(スピーカー)
小林 晋也
株式会社ファームノート
代表取締役

藤原 謙
UMITRON PTE. LTD.
Founder / Managing Director

安田 瑞希
株式会社ファームシップ
代表取締役

(モデレーター)
椿 進
Asia Africa Investments & Consulting Pte.Ltd.
代表取締役/CEO

「1次産業(農業水産業) × ITから生み出されるビック チャンス 」の配信済み記事一覧

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【本編】

椿 次は藤原さんお願いします。

藤原 はい。

ICC KYOTO 2016 S5D


藤原 謙
ウミトロン株式会社
代表取締役

1982年大分県生まれ。東京工業大学機械宇宙システム専攻修了。学生時代に小型衛星開発プロジェクトに従事し、2008年より宇宙航空研究開発機構(JAXA)の誘導制御系研究開発員として、天文衛星プロジェクトや海外宇宙機関との共同実験等を担当。2011年、カリフォルニア大バークレー校ハースビジネススクールに留学しMBA取得。在学中、シリコンバレーにてベンチャーの創業支援を行い、2013年から三井物産株式会社にて新事業開発を担当。小型衛星、農業ITベンチャーへの投資を行い、衛星データを用いた精密農業サービスの海外展開に従事した後、2016年に水産養殖向けデータ・サービス会社、UMITRON(ウミトロン)を創業。衛星による地球観測データを活用し水産養殖の生産効率化を行うサービスを開発中。

私たちは一次産業でも農業ではなくて、水産養殖をやっています。色々お話を伺うと、結構似ているところがあるなという気がします。

小林 海か畑の違いだけですね。

藤原 魚にColorをつけて一匹一匹の動きを追いかけたいな、と今思ってました。

午前中のカタパルトのプレゼンと重なるところもありますが、簡単に紹介させていただきます。

宇宙のデータで魚を育てる「ウミトロン」

藤原 私はもともと衛星開発を開発するエンジニアをしていました。

こういった小型衛星の開発プロジェクト等に従事しておりましたが、研究開発をしていると、「こういう技術は何の役に立つんだろう」とずっと考えるんです。

作るだけはなくて、何とかして技術を役立てたいと思ったのですが、

衛星で何ができるか、というのを話してもなかなか使ってもらえないので、だったら自分で事業をやってみよう、というのがきっかけでウミトロンを創業しました。

対象としたのが水産養殖業界で、選んだきっかけは、宇宙から地球を眺めると75%が海だなと。

実際海に行くと、データソースが非常に少なくて、陸上はセンサーデバイス等がいっぱい溢れていますが、温度を取るにも海だと大変で、そういうところでは衛星から見た海表面温度や植物プランクトン分布等のデータ価値が高くなるのではないかと思い、水産養殖を狙いました。

こういった仮説はあったのですが、何の役に立つのかを調べるために、愛媛県の愛南町、四国で水産養殖が非常に盛んな町にご協力いただき、実証試験を行いました。

愛南町に行くと、湾内に養殖生簀(いけす)がいっぱい浮かんでおりまして、この生簀の上で魚の動きを見たり、養殖事業者とデータの使い方について意見交換を行い、プロトタイプの開発を行いました。生簀の上でコードを書いたりしましたが、こんなことをやってる人はあまりいないと思います。

椿 パソコン落としそうですね。

藤原 実証しながらお話を聞くと、課題が共通する部分があると思いますが、魚の価格変動が非常に大きいので売上が1つの悩みです。

魚の場合は特殊で、漁獲があるので農業よりも魚がいっぱい捕れた時は価格が下がるので悩みのたねです。

コストに関しましては、餌代が非常に高いということ。

事業リスクに関しましては、赤潮の発生が非常に脅威だということを伺いました。

価格変動に関しては、データアプローチでいうとかなりのデータ量が必要だというのが何となく感覚としてあったので、まずコスト削減と事業リスクの低減、この2つをデータを使ってやっていくというアプローチを始めました。

これは鯛の例ですが、餌代は生産コストの6割から7割を占めています。

小規模の事業者さんでも、億円単位の金額を年間餌にかけているという状況で、養殖業者さんとお話しても、みなさん口を揃えて餌が高い、とおっしゃっていました。

衛星×生け簀センサーで赤潮被害を防ぐ

ウミトロンとしてどういうアプローチをするかというと、

これが愛媛県で使われている養殖イカダで、10メートル×10メートルの大きさですが、餌は真ん中にある小さな箱がタイマー式の給餌器ですが、そこから事前に設定した時間になると餌が落ちてきて魚が食べる、という仕組みです。

餌やりの量とタイミングですが、釣りをやられる方だと「朝マズメ、夕マズメ」といって、魚の食いがいいのは朝と夜だとおっしゃる方がいたり、水温が高すぎると餌を食わなくなるので丁度いい温度帯があるとか。

また、濁っているとダメで、濁りはプランクトンの量や波の動き等が影響していますが、色んなものを総合判断して養殖業者さんは自分たちのレシピを持っています。

回数も週に3回がいいと言う人もいれば4回と言う人もいて、これらをデータでもう少し最適化出来ると考えているのがウミトロンのアプローチです。

ウミトロンは人工衛星を使って、海面温度やプラクトン分布のデータを取得します。海の直接データとして、生簀内にセンサーを配置し、海洋環境や魚群行動の直接データを取得しているのです。

この2つのデータに基づいて、餌の量とタイミングを最適化する、これがウミトロンのアプローチです。

最初に作ったプロダクトをMVPとよんでいますが、生簀の中に設置したセンサーで、魚群行動と捕食検出を行い、タイマー式の給餌器に後付できるクラウド式の給餌コントローラーを作り、リアルタイムでインターネットから制御できるようにします。

魚が食べているかを自動検出し、餌やりを制御することで餌の1割が削減できる、というのが最初のプロダクトです。

事業リスクの低減という観点で言うと、やはり赤潮でして、赤潮が発生すると魚が大量死してしまいます。事業者さんにとっては、今まで餌をあげ続けた資産を一気に失うことになるので、倒産リスクを招く危険性をはらんでいます。

プランクトンが増えると水の酸素量が減少し、魚が酸欠で死んでしまうのです。

魚の酸欠を軽減する方法は、餌を止めることです。餌を食べ始めると魚の運動量が大きくなり、酸素消費量が上がって酸欠で死んでしまいます。

養殖業者さんは皆さんこのことを知っているので、赤潮が発生したというニュースを聞くと、船を出して先程のタイマーを切りにいきます。

先程のデータソースとクラウド式の給餌コントローラーを活用して、赤潮が発生したら餌やりを緊急停止する、というサービスを開発しています。

13兆円の餌市場を攻略する

藤原 ここからはマクロ環境の話になりますが、餌が高い原因として、

餌の原料となっている魚粉はイワシやニシンの粉で、ノルウェー沖やチリ沖で穫れるものですが、漁獲高が減少していています。

食料全体的なトレンドだと思いますが、養殖業というのも人口増、中間所得層が上がってくるとプロテイン需要が増えてくるので、急増を続けています。

餌はこの需給の逼迫で、10年間で3倍程度価格が上がっています。

世界に目を向けても、餌代は生産コストの半分程度を占めていて、養殖業界にとっては大きな悩みのタネです。赤潮の発生も調べてみると、

愛媛ではブリや鯛に被害が出ていますが、韓国では鯛、中国ではアワビ、スコットランドやフィリピンではムール貝、チリではサーモンに被害が出ています。

これは温暖化で水温が上がり、人が溢れて都市化が進み、排水が流れ込んで海が栄養化していく、というトレンドに沿って発生頻度と発生規模が大きくなってきています。

水産養殖の事業変化そのものを、ウミトロンの参入機会として考えていて、全世界で13兆円市場の餌の1割削減支援を行い、このサービスで2,000億円、そして赤潮対策で事業リスクの低減し、売上を上げることを狙っています。

将来的な姿としては、現状は様々な宇宙のデータを使用して、衛星データとしては、公開データを使っていますが、海から直接とる生簀の魚群行動や海洋環境のセンサーのデータを比べると、直接データの方が重要度が高いと言わざるを得ません。

魚の動きを見て餌やりをどうするか判断するので、「魚を見ることが基本だ」と皆さんおっしゃいます。

一方で、現在世界中で人工衛星の打ち上げ計画が進んでおり、3年後には衛星は250基を超えると言われています。この時ほぼリアルタイムでの海洋データ取得が可能になり、このデータが揃った時、宇宙のデータで魚を育てる、という世界を目指しています。

藤原 Data company for aquacultureということで、よろしくお願いします。

椿 基本的な質問ですが、赤潮になっても餌を止めれば全滅はしないということですか?

藤原 魚の致死率を下げることができます。

椿 赤潮の時は赤いプランクトンがわーっと来ますが、防御壁等を作ってプランクトンが来ないようにしてもダメですか。

藤原 薬を撒いて消滅させたり避難場所を決めてそっちに魚を移動させる等、様々な対処方法がありますが、とにかく早期発見が大事で、そこからどのような対処方法を取るかという1つのアプローチとして餌を止める、というのがウミトロンが考えている方法です。

ICC KYOTO 2016 S5D

椿 分かりました、ありがとうございます。

椿 では、1位をとった安田さん、お願いします。

安田 どんどんマニアックになってきてますね(笑)。牛、魚、そして最後は植物工場です。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/城山 ゆかり

続きは 野菜の安定・大量生産を”植物工場”で実現する「ファームシップ」 をご覧ください。

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【編集部コメント】

続編(その4)では、ファームシップ安田さんに植物工場事業の紹介を頂きました。ICC KYOTO 2016 スタートアップコンテスト「カタパルト」で優勝した事業を是非御覧ください。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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