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セルファイバは、“細胞エンジニアリング”で新時代の再生医療・細胞医療を実現する!(ICC KYOTO 2019)【文字起こし版】

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ICCサミット KYOTO 2019 リアルテック・カタパルトにて見事優勝に輝いた セルファイバ 柳沢 佑さんのプレゼンテーション動画【セルファイバは、“細胞エンジニアリング”で新時代の再生医療・細胞医療を実現する!】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回ICCサミット FUKUOKA 2020は、2020年2月17日〜20日 福岡市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2019 ゴールド・スポンサーの電通様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2019年9月3日〜5日開催
ICCサミット KYOTO 2019
Session 3A
REALTECH CATAPULT リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Supported by 電通

(プレゼンター)
柳沢 佑
株式会社セルファイバ
代表取締役
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2007年東京薬科大学 生命科学部 環境生命科学科卒業。2011年3月まで株式会社リバネスにて企画開発業務に従事。2017年12月 東京大学大学院 化学生命工学専攻にて博士(工学)を取得。2018年3月、平成29年度東京大学工学系研究科研究科長賞・東京大学総長賞。専門は高分子化学、材料化学、ソフトマテリアル、ハイドロゲル。2018年5月よりセルファイバ取締役に就任。2018年6月よりAMED「細胞ファイバーを利用した抗体製造のための高密度連続生産技術の開発」研究開発代表者。2018年10月にNEDO Entrepreneurs Profgram(NEP)に採択され心筋ファイバの創薬応用を志向した収縮力測定システムを開発。2019年6月より代表取締役に就任。

「ICC KYOTO 2019 リアルテック・カタパルト」の配信済み記事一覧


柳沢 佑さん 皆さんこんにちは、株式会社セルファイバの柳沢と申します。

私は2年ほど前まで、大学の研究室で24時間、“ポリマー(高分子)”のことだけを考える生活をしておりました。

博士課程が終わるときに、ふとこれから何をしようかと考えたときに、東京女子医科大学の岡野光夫先生が、ある講演でお話しされていたことを思い出しました。

岡野先生は、細胞移植に用いられる「細胞シート」の基本技術を発明された研究者で、もともとは高分子がご専門でした。

岡野先生がその講演でおっしゃっていたのは、「研究者として同じような論文を数多く執筆するのではなく、本当に社会にある問題を解決するための研究をやりましょう」ということでした。

その言葉を思い出したとき、私はこの細胞ファイバの技術に出会いました。

セルファイバ社のコア技術「細胞ファイバ」とは?

皆さんがご覧になっているこちらの写真は、髪の毛ほどの太さのゲルチューブの中に、細胞が詰まっている様子を撮影したものです。

全長は数十メートルに及ぶような構造物なのですが、非常に均一な細胞密度・直径を持っています。

これがその細胞ファイバを作製している動画で、画面上部に見えているノズルが、非常に特殊なものとなっています。

もしかしたら皆さんの中には、ポリマー溶液を凝固剤の中に垂らして人工イクラを作る実験をしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの細胞ファイバも、使っている材料そのものは非常にありふれたもので、特別なものは使っていません。

人工イクラに用いるゲルと凝固剤、それと細胞を「マイクロ流路」と呼ばれる狭い空間の中で精緻に順序よく合流させることで、細胞ファイバを作ることが出来ます。

この技術は、セルファイバの創業者でもある竹内昌治、尾上弘晃らによって開発されました。

細胞治療への高い期待と、高額な医療費の課題

我々は、この細胞ファイバ技術を「細胞治療」の分野に用いる事業開発を行っています。

細胞治療とは、生体から取り出し体外で培養し特別な機能をもたせた細胞を“薬”として用いるもので、近年世界中で研究が進んでいる新たな治療法です。

従来の薬と比較すると取り扱いは非常に複雑ですが、それでも使いたい理由は、今まで出来なかったことが出来るようになっているからです。

細胞治療の中には、今まで難治性とされてきた白血病であっても、8割ほどの確率で症状がよくなったり、寛解したりする事例が出てきています。

日本でも今年、白血病に対するCAR-T療法と呼ばれる細胞療法が保険適用になりました。

これは非常に素晴らしいことなのですが、同時に我々は大きな課題にも直面しています。

それは、こうした細胞治療に代表される、再生医療の高額な医療費です。

先ほど例に出した白血病の細胞治療は、1人分の投薬に約3350万円の薬価がついています。

細胞治療とは少し違いますが、アメリカでは2億円を超える遺伝子治療も登場してきています。

今はまだ適用例が少ないので、こうした高額な薬価はさほど大きな問題にはなっていません。

しかし今後科学が進むにつれ、「治療法はあるのに、費用の問題でそれを受けることが出来ない」という事態が起こってしまう可能性があります。

細胞治療の普及に向けた「大量培養技術」は未確立

もちろん、これらの課題を大量製造によって解決できないかというアプローチは行われています。

このスライドの左側に示しているようなパーキンソン病、網膜変性症などの疾患治療に必要な10万個、100万個といった細胞は、今ある技術でも量産することが出来ます。

一方で、右側にあるようながん、糖尿病、心筋梗塞を治療するには、例えば10億個、100億個の細胞が必要になってきます。

100億個の細胞は、重量にするとだいたい80グラムほどです。

現在の技術では、このレベルの細胞をまとめて製造するには、1人分かせいぜい数人分が限界となっています。

こちらのスライドは、iPS細胞から治療に用いる細胞を量産する際の課題を示している写真です。

見えている一つひとつの丸が細胞塊、つまり細胞の集合体となります。

長期間培養していると、こうした塊がどんどん融合していき、大きくなります。

塊が大きくなると細胞に酸素が行き渡らなくなり、中央の細胞が死滅していき、もはや治療には使えないものになってしまいます。

細胞ファイバは、200億細胞/Lの大量培養を可能にする

我々はこの問題を解決するために、先ほど紹介した細胞ファイバの技術を使っています。

iPS細胞を細胞ファイバの中に入れて培養すると、細胞は空間を満たすように増殖していきますので、大きさを制御したまま細胞を増やすことが可能になります。

これは、単に凝集して死んでしまう、不均一化してしまうという従来の課題を解決するだけに留まりません。

こうした事態を避けるために、従来の大量培養技術ではリアクターの中で個々の細胞同士の間隔を空けた状態で培養していました。

細胞密度を高めることができず、単位体積あたりの生産性に限界があったのです。

しかしチューブに細胞を閉じ込めることで、従来と比較して20倍ほどの数の細胞を、同じサイズのリアクター内で得ることが出来るのです。

この技術が最初に開発された時点では、非常に少ない量の細胞ファイバしか作製・培養することが出来ませんでした。

この写真の左側は、細胞ファイバを持ち上げている写真です。

我々は実際にこれを事業で使うために、細胞ファイバを大量に作製・培養する技術の開発を行い、右側にあるような、これまでの100倍ほどの量の細胞ファイバを作製する技術を確立しました。

この規模の細胞培養が可能になれば、実際に治療で使える細胞が製造可能になる――そうした手応えがつかめてきたので、製薬企業が保有する細胞(治療に実際に使う)でも高効率の培養が行えるか、についての技術評価、細胞治療を開発している企業との共同研究が始まっています。

我々はこうした取り組みを通じて、細胞の大量製造技術の開発、ひいては細胞医薬品を合理的な価格で多くの人に届ける役割を担っていきたいと考えています。

細胞の産業利用のあり方を、根本から革新する

本日は時間が限られておりますので細胞の大量製造のお話をさせていただきましたが、我々はこの細胞ファイバの技術を、人工的に臓器を作るような取り組みにも用いています。

臓器そのものというよりも、そのモデルになるようなミニチュアの構造物です。

例えばここにお示ししているのは、心筋細胞の塊で作った紐です。

医薬品の開発において、今は動物実験が行われているような領域でも、ヒトの組織を用いることで毒性や薬効をより精度よく予測できると考えられています。

しかし、例えば血管や尿細管など、人間の身体の中で管状の構造になっているものを体外で作るのは非常に難易度が高いです。

そこで、我々は基本技術として細胞ファイバ技術を用いて、この写真のような直径20マイクロメートルの極細の細胞の管を作り、こうした管を創薬分野に活用したいと考えています。

時間の関係で本日ご紹介できませんでしたが、我々は今、食品分野での超高速発酵のように、細胞の産業利用のあり方を根本的に変えるような事業にも挑戦しています。

今日の細胞治療のほとんどはマニュアル工程で製造されるため、高額かつ供給量にも限りがあります。

自家CAR-T等では自動培養装置により一定のコスト削減が見込まれていますが、既存の低分子・バイオ医薬品のように普及するかどうかは、根本的な製造技術の革新がカギを握っています。

現在、研究員を募集しておりますのでセルファイバにご関心のある方は、こちらまでぜひお気軽にご連絡ください。

本日はご清聴いただき、ありがとうございました。

(終)

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/戸田 秀成/道下 千帆

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