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メンタルはストレス後のリカバリーで強くなる【SP-YI2 #1】

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2016年に配信した、石川善樹さんご登壇記事を総特集いたします。今回は、ICCカンファレンス TOKYO 2016 から、「試練に打ち勝つ強いメンタルの作り方」を5回に再編集してお届けします。石川善樹特集2(その1)は、石川さんが取材した「ヒューマン・パフォーマンス・インスティテュート(HPI)」での学びを中心にお話し頂きました。ぜひご覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。



登壇者情報
2016年3月24日開催
ICCカンファレンス TOKYO 2016
Session 1B
「試練に打ち勝つ強いメンタルの作り方」
 
(スピーカー)
石川 善樹
株式会社Campus for H
共同創業者
 
出雲 充
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長
 
佐藤 光紀
株式会社セプテーニ・ホールディングス
代表取締役社長
 
(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

▶「試練に打ち勝つ強いメンタルの作り方」配信済み記事一覧

小林雅氏(以下、小林) 皆さん! おはようございます。ICCパートナーズの代表をしております小林 雅です。

本日は第一回目となる「ICCカンファレンス TOKYO 2016」にご出席いただき誠にありがとうございます。

本日の最初のセッションは非常に面白い内容となっています。是非ご期待ください。それでは、石川さんから自己紹介と近況をお話頂ければ。

世界のエグゼクティブが多く訪れる伝説の施設

石川善樹氏(以下、石川) 石川です。



石川 善樹
株式会社Campus for H 共同創業者
予防医学研究者、博士(医学)
 
広島県生まれ。東京大学医学部卒業後、ハーバード大学公衆衛生大学院修了。
「人がより良く生きるとは何か」をテーマとした学際的研究に従事。
専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、マーケティング、データ解析等。講演や、雑誌、テレビへの出演も多数。NHK「NEWS WEB」第3期ネットナビゲーター。著書に『疲れない脳をつくる生活習慣(プレジデント)』『最後のダイエット(マガジンハウス)』、『友だちの数で寿命はきまる(マガジンハウス)』など。

自己紹介はさて置き、先日『WIRED』という雑誌の取材でフロリダにある伝説の施設に行かせていただきました。

「ヒューマン・パフォーマンス・インスティテュート(HPI)」といって、トップアスリートはもちろん、FBIや軍人、最近では企業のエグゼクティブがこぞって訪れています。

小林 どんなところなんですか?

石川 この施設は元々、スポーツ心理学の世界の第一人者であるジム・レーヤー先生によって創設されたものです。

一人当たりの参加費は、なんと5,000ドル!二日半にわたるプログラムなのですが、その顧客満足度が異常に高い。

アップル製品よりも全然高い。ですから噂には聞いていました。

「すごい施設があるらしいぞ」と。

そもそも、スポーツ選手のメンタルが真剣な科学の対象になったのは、1950年代にさかのぼります。それまでスポーツ選手は、「長い時間、一生懸命頑張って、たくさん競争すれば強くなる」という発想でトレーニングしていました。

今で言えば「ブラック」と言われるような。

小林 仕事と同じですね。長時間働けば何とかなるという発想。

石川 そうなんです。そんな「ブラック」な練習の結果、怪我人が続出し、さらには燃え尽きてしまう選手が多発したのです。

ですから、そういった「やみくもな根性」ではない方法でスポーツを捉え直さなければならないということで、1950年代に旧ソ連がメンタルを科学し始めました。

先ほどのジム・レーヤー先生は、テニス選手のメンタルを研究されたことで、多大な貢献をされました。

メンタル・タフネス―勝ち抜く「精神力」を手に入れる

小林 ほう、テニスですか!

石川 テニスという競技は面白くて、一試合のうち実際にプレーしている時間は35%しかありません。残りの65%は次のプレーの準備をしているのです。

例えば、球を打って、点を取って、「よっしゃー」となる。その「よっしゃー」となってから次のプレーを始めるまでの時間がほとんどなのです。

これは多分、僕らの仕事もそうだと思うのです。一日の内に仕事をしている時間というのは、多分35%もなくて、ほとんどの時間は次にする仕事の準備をしている(笑)。

この時間が長い。

そして、ジム・レーヤー先生は、テニスのトップ選手ほど、プレーをしていない65%の使い方が上手いということを発見したのです。

小林 それはどういうものだったんですか?

ストレス&リカバリーで人は強くなる

石川 どんな選手であれ、点をとれば興奮するし、とられれば怒ったりします。それは自然なことで、その感情を抑え込むことは難しい。

しかし、トップ選手になるほど、「リカバリー・ルーティン」というものを持っていたのです。例えば一つのプレーが終わったら、1)ラケットを持ち替えて利き手の緊張を解き、2)くるっと後ろを向いてコートの端まで歩いていき、3)その間ラケットのガットに注意を集中することで終わってしまったプレーから心を離し、4)またベースラインまで戻って「よし、やるぞ」となる。

ジム・レーヤー先生は、この「リカバリー・ルーティン」というアイデアをさらに昇華させ、「ストレス&リカバリー」という概念を提唱します。

(セプテーニの)佐藤さんは筋トレをやられるからわかると思いますが、筋肉というのはストレスをかけた時に成長するのではなくて、リカバリーの時に成長します。超回復というものですね。

メンタル、心というのも同じで、ストレスのかかった時ではなくて、そこからリカバリーする時に強くなるのです。

最近もいろいろ叩かれる人が多いですよね。

あれも見方によってはすごくチャンスで、ストレスが大きければ大きいほど、そこからリカバリーする時に人は強くなれると考えられます。

あ、リカバリーで思い出しましたが、「100歳になる人というのはどういう人か?」という研究があります。

小林 それは面白いですね!どんな人なんですか?!

石川 結論から言うと、「若い時にとんでもない苦労をしている人」は、100歳の人に多いようなのです。

あらためて考えてみると、歳を取るということは苦労が増えるということです。身体は衰える、親しい人は亡くなる、社会的にもどんどん活躍できなくなる。

辛いことが多いのですが、若い時の苦労を乗り越えた人からすれば、「こんなものは大したことない」と乗り越えやすいと考えられます。たとえば、強制収容所を生き抜いたユダヤ人の一部には、とんでもなく元気な人が多いと報告されています。

このように、先ほどのHPIという施設では、「ストレス&リカバリー」という概念をはじめとして、いろいろと教えてくれます。

質の高い睡眠・食事・運動をルーティーンにする

小林 それでは佐藤さん。自己紹介を交えてお答えいただければと思いますが、身体やメンタルに関する習慣はありますでしょうか。

佐藤光紀氏(以下、佐藤) 佐藤です。よろしくお願い致します。



佐藤 光紀
株式会社セプテーニ・ホールディングス 代表取締役社長
 
1975年東京都生まれ。立教大学法学部を卒業後、1997年4月株式会社サブ・アンド・リミナル(現株式会社セプテーニ・ホールディングス)に新卒で入社。
1999年新規事業責任者としてインターネット広告事業を立ち上げ、同社を国内トップクラスのインターネット広告会社に育てる。
2006年10月持株会社体制移行に伴い、事業会社である株式会社セプテーニの代表取締役社長に就任(現任)。
2009年12月 セプテーニ・ホールディングス代表取締役社長に就任。(現任)
2011年1月セプテーニ・ホールディングスが世界経済フォーラム(World Economic Forum)より世界成長企業(Global Growth Company)として選出される。
2015年2月 セプテーニグループ(対象10社)が、Great Place to Work(R) Institute Japanが実施した「働きがいのある会社(日本版)」ランキングにおいて、従業員数100~999名の企業のカテゴリにて4位に選出される。

心が健康な方が仕事で高いパフォーマンスが出るというのは実感するところです。

そして、やはり身体が丈夫だと心が健康になりやすい。

ですから、普段のルーティーンの中に、仕事でパフォーマンスをあげるための重要な因子として、身体を鍛えるということを含める必要がある。

そういうことを過去のいくつかの経験から感じていて、しっかり身体作りをするようになりました。

トレーニングという意味でもそうだし、食生活という意味でも、睡眠という意味でもそうです。

ですから、基本的には、ルーティーンの中に睡眠と食事と運動というのをリズミカルに質を高く、必ず一定の割合で入れています。

小林 佐藤さんは何時に起きて、何時に寝ていますか。以前(20代)は寝ないで働いていたと思うのですが、最近はどのような考え方方でしょか?

佐藤 寝ないで働いた時期もありましたが、そういう時期もあって、学びました。

今はだいたい平日6時間睡眠くらいです。

24時くらいには寝て、朝6時くらいには起きるというのがほぼルーティーンになっている。

ですから、会食とか行きますでしょう。そこで夜遅くまで飲みましょうというノリになることもあるのですが、最近は「もう帰ります」と言って帰ってしまいます。

あるいは、もう会食中でも寝てしまう(笑)24時くらいになって、もう眠いと思ったら、構わず寝てしまうようになりました。

まあ、一応家には帰るようにしているのですが(笑)。

小林 それではユーグレナの出雲さんにもミドリムシを代表して、自己紹介を交えて身体やメンタルについてお話をいただけますでしょうか。

出雲充氏(以下、出雲) 出雲と言います。



出雲 充
株式会社ユーグレナ 代表取締役社長
 
東京大学農学部卒、2002年東京三菱銀行入行。2005年8月株式会社ユーグレナを創業、代表取締役社長就任。同年12月に、世界でも初となる微細藻ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に成功。世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader選出(2012年)、第一回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」(2015年)受賞。著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』(ダイヤモンド社)がある。

ヘルスケアに関して一番良いのは、ミドリムシを飲むということでしょう。それはさて置き、私がお聞きしたかったのは、(HPIの参加費)2日で5,000ドルということは約60万円ですよ。

2日で60万円もかかって、アップルよりもファンになって帰ってくるというのは、とてもすごい。

60万円かかって2日ですごく良いプログラムでしたとなるのは、本当は何を教えてくれるところなのでしょう。ぜひ教えていただけませんでしょうか。

脳に酸素と血液を送り込む「マイクロ・バースト・エクササイズ」

石川 あんまりしゃべると怒られるかもしれませんが(笑)、その施設ではかなり細かいことまで教わります。たとえば人は、40分から45分くらい座ったままだと脳があまり機能しなくなる。

そこで一つ教わるのが、「マイクロ・バースト・エクササイズ」というものです。

小林 なんですか、それは。

石川 要は、瞬間的に「パパパッ」と動いて脳に酸素と血液を送り込めということです。だいたい40、50分くらい座ったままでいると脳の機能は落ちてきます。

なぜなら、酸素と血液が足りなくなるので。

でも一回立って、「パパパッ」と動けば、脳はまた一気に活性化します。その「パパパッ」をマイクロ・バースト・エクササイズと呼んでいました。

小林 このセッションも40分くらいたったらみんなで「うわー」と動いた方がいいですね。

石川 そうですね(笑)

佐藤 私は最近、ずっと「Apple Watch」を使っているのですが、これを使い続けて一番良かったと思うことは、たまに時計が「立て」と指示してくれるのです。

ずっと座った姿勢でいると、「今から立ってください、そして1分歩いてください」という指示がきます。

多分、それは今の話に近いのだろうなと思います。

やはり、ずっと座った姿勢でいることで、体に色々と悪い影響があるのでしょうから、「立て」という指示が来る。

もう、僕はこれで通知が来たら立つようにしています。立って、1分そのあたりをウロウロして歩いて帰ってくる。そうすると、きっと良いことがあるのでしょう。

そういうことを様々な文献を読んで学ぶことがありました。だから、最近はもうApple Watchの言うとおりに立って歩こうということになって。

そして、その間にぐるぐる肩を回しながらトイレへ行ったりとか、お水を買いに行ったり、ある意味軽いエクササイズをこなすのです。

そうして帰って来て、またデスクに座る。また、そういう点でこういうスマートデバイスが良いなと思うのは、習慣化するということです。

通知が来た瞬間に「立たなきゃ」と思って、何かをしていても立つようになるのです。

だから、メールを見ていて「このメール返したいな」とその瞬間思っていても、ちゃんと訓練して習慣化すると立てるようになる。

結構便利です。これは今のお話に少し近いような気がしました。

石川 たしかにそうですね!僕らはこれまで、「30分間座りっぱなしだと煙草1本吸ったくらい健康に悪い」などと言って椅子から立たせようとしましたが、もちろんみなさん立ちませんでした(笑)しかし、Apple Watchのようなものがあると、習慣化したということですよね。

佐藤 プッシュ通知というのは良いものです。

お腹が空いていると思っている時点で30分遅い

石川 別の話題になりますが、先ほどのフロリダの施設で教わることの一つに、「お腹が空いていると思っている時点で30分遅い」という話があります。

というのも、お腹が空いたと感じる時点で、脳は低血糖になっているからです。本当はその30分前、お腹が空いたと思う前に予防的に少しだけ間食すると、パフォーマンスを落とさずに脳を働かせることができる。

小林 ほー、そうなんですね。

石川 あらためて考えると、私たちはそういった睡眠や運動、食事のことを何も習わず社会人になっています。

さらに視点を変えると、前回の東京オリンピック、1964年の頃は55歳で定年していました。だから、とりあえず55歳まで駆け抜けろと。

定年したら、あとは年金で面倒を見てくれるし、何かあっても70歳以上の医療費は無料だった。そういう時代だったのです。

でも、今を生きる私たちは、100歳まで生きる可能性がかなり高い。

だから100年の人生設計を本当に考えておかなければならない時代になっています。そう考えると、私たちは75歳くらいまでは最低限働くんじゃないでしょうか。

定年が55歳なら、全力で駆け抜ければよかったと思いますが、75歳まで働こうと思うと、夜通し遊んでいる場合ではないですよね。健康を害している場合ではないというか。

ここで出雲さんからいただいた質問に戻るのですが、「フロリダの施設で本当は何を習うのか?」というのは、今日のこのセッションの後半でお話しようかなと。

小林 では、前半は何を議論しましょうか?

石川 少し、メンタルのお話をしませんか。

小林 良いですよ!

(続)

続きは 〔石川善樹〕メンタルの強い人は自分のことを名字で呼ぶ【SP-YI2 #2】をご覧ください。
https://icc.dvlpmnt.site/special/7713

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/石川 翔太

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【編集部コメント】

続編(その2)では、活躍するアスリートや経営者から学ぶ「自分との対話術」などを中心に議論しました。是非ご期待ください。

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