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経営者 Meets 西陣織。特別プログラム「HOSOO GALLERY」訪問で、京都の伝統と革新の文化に触れる【ICC KYOTO 2021レポート】

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9月6日~9日の4日間にわたって開催されたICCサミット KYOTO 2021。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、9月6日の特別プログラム「テキスタイルギャラリー『HOSOO GALLERY』を訪ね西陣織の歴史と着物の選び方を学ぶ」の模様をお伝えします。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをお待ちください。


12回目となるICCサミットは、半年前の福岡と同じく、緊急事態宣言下での開催となった。長らく月曜日はオープニングパーティで幕を開けていたが、ここ数回は、密の回避と、体験プログラムで交流を図ることを兼ねて、場外の特別プログラムを拡充している。

ICCサミット KYOTO 2021の初日となる9月6日は、その皮切りが京都の文化人が大絶賛する一般非公開の名匠・植治の名庭『對龍山荘』 特別見学ツアーと、この「テキスタイルギャラリー『HOSOO GALLERY』を訪ね西陣織の歴史と着物の選び方を学ぶ」となった。

京都の烏丸御池駅から徒歩2分のところに立地するHOSOO GALLERYには、集合時間前から続々人が集まってきた。

前回のクラフテッド・カタパルトで優勝を飾ったKAPOK JAPANの深井さん

早々に到着した参加者の方々は、思い思いにHOSOO FLAGSHIP STORE内を見学し、再会を喜んだり、初めて会う人と名刺交換をしている。

その中に、今回ICCサミット初参加の人も何名かいて、新しいスタッフユニフォームを作ってくださったHERG 1の内柴由美子さんや、アパレルブランドrenacnatta(レナクナッタ)で西陣織を扱うDodiciの大河内 愛加さんもいる。ふたりとも今回クラフテッド・カタパルトに登壇する予定だ。

スタッフのユニフォーム姿を見て大感激の内柴さん

早速クラフテッド・カタパルトの先輩たちに迎え入れられる大河内さんと内柴さん

特別プログラムの下見時同様、今回の特別プログラムをガイドくださるのは細尾 真孝さん。細尾さんをご紹介くださったTHE KYOTOの各務さんも合流してくださった。いつものことながら、集まった参加者たちの熱気に驚いている。

元禄元年創業、西陣織老舗が織りなす美のイノベーション! 特別プログラム「『HOSOO GALLERY』訪問ツアー」を一足早く体験しました【事前レポート】

ICCサミットの特別プログラムは、次の産業を作る若き経営者たちにとって、刺激や学びとなる共通体験から、さまざまな出会いと交流ができるを場を作ろうと企画している。

各務さんのご紹介で、元禄元年創業の西陣織老舗の12代目である細尾さんと出会い、伝統産業にイノベーションを試みるスタンスとそのシンボリックな形であるこの建物、「これから日本を代表するビジネスパーソンにこそ、きものを」という想いを聞き、ICCサミットの登壇者・参加者の方々で興味のありそうな方とのマッチングを考えたのが今回の企画の主旨である。

細尾さんは集まった参加者たちを前に、この日の行程と、ICCの下見時にICCのオフィスに飾るために注文した3点のアートピースを紹介。ICCの色であるブルーをモチーフに選んだ3点は、さまざまなテクスチャー、素材の糸を1枚の布に織り上げた西陣織だ。パネルに仕立てたのは京都の老舗の表具師。通常3カ月かかるところを、この日に間に合うように仕上げていただいた。

見る角度によってきらめき、複雑な色彩を放っている織地を見て、これも西陣織なのかと驚く参加者たち。和柄の絢爛豪華な織物のイメージだけではないと知ったところで、ツアーがスタートした。

【2階】西陣織の未来と出会うHOSOO Gallery

最初に一行が訪れたのは、2階のギャラリー。西陣織は常に最先端のテクノロジーを吸収して発展してきた歴史があり、このギャラリーではとくに最新の研究の成果を展示している。

ここで行われていた「Ambient Weaving」の展示では、細尾が東京大学大学院情報学環 筧康明研究室、株式会社ZOZOテクノロジーズとともに研究開発した、”西陣織の未来”を見ることができた。

温度により色が変わる立体的構造の西陣織

こちらも空気中の温度変化を察知して色が変わる繊維。触れると体温で変色する

葉脈のように着色した水を吸い上げる布や、電気が通ると透過する糸、UVで硬化する布など、ギャラリーで見られる素材は、今まで見たことのないようなものばかり。見て、触れて、体感して、参加者たちは驚きながら、細尾さんの解説に耳を傾けていた。

細尾さん「西陣織がいかなる手間暇も厭わず、美を上位概念において新しい技術を吸収して発展してきたのは、天皇や貴族といった人たちがパトロンだったからです。外部と組みながら、現在10本ほど『細尾スタディーズ』として、研究プロジェクトを進めています」

実験映像に見入る

UVで硬化する布は、軟化させることができれば梱包材としての可能性があると細尾さんは言う

新たな素材へのチャレンジや、テクノロジーとの掛け合わせで、次世代の織物はどのように進化していくのか? そこまでやるのかというぐらいアグレッシブに未来を模索する老舗の姿に、参加者たちもイノベーションの萌芽を見たに違いない。

【3階】会員限定のHOSOO SALONを特別見学

次に見学したのは、一般公開していない「HOSOO SALON」。このサロンは、すでにメンバーである人からの紹介でないと入れない、きもののショールームで、今回は特別プログラム参加者に特別に見学を許していただいた。

前のイノベーションの世界から一転、”ザ・きもの”の世界にやってきた参加者たち。前の部屋では新しい素材に好奇心いっぱいに手を伸ばしていたが、慣れない世界にやってきて、身の置き場に困っているようである。

ほぼ1点ものばかり、素晴らしいきものが並ぶサロン

このサロンは人間国宝の作品から、西陣織に限らず全国からよりすぐりの素晴らしいきものが取り揃えられ、百貨店よりも幅広いラインナップを誇っている。着物を見立てるほかに、サロンのイベント会場として、日本文化を学ぶトークセッションなど、少人数での文化体験を催しているそうだ。

会員はきものの保管やメンテのサービス、京都で着る場合は着付けやレッスンが受けられ、高いものでは数百万というきものもあるが、会員特別価格で購入が可能という。

今回このプログラムに参加したのは、海外での活動などできものや浴衣を着たことがある方や、京都で海外から来日したクライアントをもてなすという機会がある方も多い。日本人としてきものを着る効果は絶大と知っているが、いざ目の前にすると、少しハードルが上がってしまうようだ。

じっと見入るユーグレナの出雲さん

出雲さん「見ていると買ってしまいそうです。茶席とか、お正月に着る緑色のきものは持っていますよ。でも着るのが大変で、YouTubeを見ながら悪戦苦闘しました」

出雲さんのように、着るのが大変という声が多数上がった。どう選ぶのか、何が似合うかわからないという人もいる。たとえば、最近お茶を始めたという参加者の一人は、初釜用に袴ときものを検討しているという。どのように選べばいいのだろうか?

細尾さん「男性が最初に誂える場合は、スーツに近い感覚で、自分の好きな色とか、よく着る色だと抵抗がないと思います。実際に合わせてみて選ぶといいですよ。逆に、普段洋服で着ないような色でも、意外ときものでは似合ったりします。

白洲次郎はスーツはサヴィル・ロウ、着物は紬を愛用していました。一生着られる素材です」

本場結城紬(奥順)

様々な色や地模様が美しい結城紬

白洲次郎好きなんですよ!と頷く参加者。昔から紬に惹かれていて、濃紺の結城紬に目を留めていた。

美しい刺繍が施されたきものに目を留めたのは、ビザスクの端羽さん。熱心に見入り、サロンにも興味津々のようだった。

【5階】ホール&西陣織の外壁素材を見る

続いて一行が見学したのが、普段は完全にクローズしているという、サロンの会員及び紹介者とのみ入ることのできるイベントホール。ここでは文化体験後のディナーなどを催しているそうだ。壁にはインテリアのように、西陣織のアートピースや額装したビンテージの「箔」、西陣織の壁紙見本などが飾られている。

箔に目を留めた参加者たちに、細尾さんはその作り方を解説した。

細尾さん「和紙に合金や本銀を貼って、しばらく置いておいて、銀を育てていく。そのうちに真っ黒になったり、赤が出たりと展開していって、それをカッターさんが切って糸状にしていって、織るときに横糸として使います。

箔屋さんでも廃業していってしまうところが多いので、年代物の箔は、なかなか世に出にくくなっています。これも帯が一番作られていた40年前に仕込んだものです」

1982年作のビンテージ箔に見入る参加者たち

絢爛豪華な帯地で目にすることの多い箔は、どちらかというとコンサバな伝統美というイメージがあるが、額装するとビンテージシルバーのモダンな美しさが再発見され、参加者の心をくすぐったようだ。

記念撮影! ビザスクの端羽さんとスマートメディア成井さんがバックにしているのは、デンマークのアーティストのデザインによる西陣織アートピース

和室のサロンとは打って変わって、現代的な洋室にもなじむ西陣織で飾られたイベントスペース。このフロアは外壁素材にも、箔が入った西陣織の素材が使われている。

昼間は外の景色を鏡面のように映し、室内に灯りがつく夜は、その灯りを木漏れ日のように外にもらす西陣織の外壁素材

見学が終了し1階に戻ると、細尾さんに質問を続けている人や、早速サロン入会の申込書を記入している人も多数いた。

忙しい日々を送る一流のビジネスパーソンたちにとって、ICC KYOTO 2021の初日、京都の西陣織という伝統文化や、興味はあっても敷居の高さを感じていたきものの世界、その一流の一端に触れて学ぶ体験になったのではないだろうか。

對龍山荘の見学ツアーとともに、今回のオープニング・イベントとなったこの特別プログラム。この時、メイン会場ではまだ設営の最中であったが、会場外では一足早く、ICC KYOTO 2021が始まっていた。

(続)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成

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