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8月31日~9月3日の4日間にわたって開催されたICCサミット KYOTO 2020。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、DAY2の9月2日、ICCサミットの数あるカタパルトの中でも、最もハイレベルな強者が揃う、カタパルト・グランプリの模様をお伝えします。ぜひご覧ください。
ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。
「強者(つわもの)が勢揃い」とされているカタパルト・グランプリ。スタートアップ、リアルテック、CRAFTED、ソーシャルグッド、AIなど、ICCサミットで各カタパルトで結果を残した強者たちが集うレベル最高峰のイベントに、今回は10名が顔を揃えた。
そのなかでも異色なのは、初登壇ながら熱狂的なファンベースを抱える株式会社COTENの深井龍之介さん。歴史を楽しく学べるポッドキャスト、COTEN RADIOといえば知っている人も多いかもしれない。ICCサミット登壇者からの紹介で今回の登壇が決まったが、事前に開催したイベントでも大人気だった。
▶歴史の楽しさ、学びを伝える、COTEN RADIOの深井 龍之介さんがICCサミットに登壇決定!
一番早く会場入りした深井さんは、緊張の面持ち。この前日は比叡山延暦寺の特別ツアーでナビゲーターを務め、セッション「歴史から学ぶ『帝国の作り方』」にも登壇してくださっている。その後はプレゼンの練習をし続けたとのことで、夜は眠れなかったという。
会場には、COTEN RADIOでもお馴染みの株式会社BOOKの樋口 聖典さんとCOTENのヤンヤンさんこと楊睿之さんも駆けつけていた。
楊さん「プレゼンを何度も練習していて、今日は大事なイベントだから一睡もできなかったと聞きました。それだけ真剣にこの時間に向き合っているのだと思います」
樋口さん「緊張しているというより、ギラギラしているかも」
楊さん「僕と樋口さんは深井さんのやることを見ているだけ。みんなと言わなくても、一部でも深井くんがやろうということを認めてもらえたらと思いますね」
樋口さん「もちろん良い成果が出ればいいけれど、別にそうじゃなくてもいい。僕らは深井さんが楽しくやってくれればいいなと思います」
楊さん「歴史が好きで一緒にやっているのですが、多くのことを達成したいというよりも、彼の輝く姿を見たい」
深井さんと深井さんがやろうとしていることへの圧倒的な愛を感じるコメント。中国人の楊さんは大学時代に深井さんと隣の研究室で、飲み会でPCを片手に歴史のデータベースを語る姿に衝撃を受けたという。楊さん自身は中国と日本の間でアイデンティティ・クライシスに陥ったときに触れた日本の歴史の本に感動し、今の活動に至っている。
樋口さんは、福岡で行なわれたピッチコンテストの飲み会で2人と1時間ほど話して、この人たちは天才だと思い、別れる間際に一緒にラジオをやろうと持ちかけ、それがCOTEN RADIOの始まりとなった。福岡の飲み会、恐るべしである。
一方、舞台では粛々とリハーサルが始まっていた。少しずつ客席も埋まり始めている。
ガラパゴス中平 健太さんは「すごいんですよ、圧が」と壇上で両手を広げてイメトレ
この中に世界を変えるような起業家がいることを信じて
ICC小林「このタイミングですので、医療関係の方は登壇できないなどありましたが、それでも強者が揃いました。おそらくバラエティが今まで以上に広いと思います。なぜこんな人が?と思うかもしれませんが、その分野で非常に活躍されている方々ばかりですので、ぜひお楽しみいただきたいと思います」
ICCサミットを代表するようなハイレベルなカタパルト・グランプリだけあって優勝賞品はとにかく豪華。セッションをスポンサーするAGS賞としておなじみの、優勝者にはよなよなエール1年分、入賞者には半年分に加えて、新しく賞品提供くださる企業も増えている。
ファクトリエのスーツ仕立て券、モチベーションクラウド1年間サポート付き無料利用権、マネーフォワードクラウド10年分利用権とマネーフォワードシンカによるアドバイザリー支援1年分など、それぞれ内容がバージョンアップしている。
今回新たに加わったのは、オカムラで世界的に売れている最上位のオフィスチェア3脚、セールスフォースからはカスタマージャーニーのワークショップ3時間フルバージョン、NewsPicksの法人プレミアムプランを全社員分1年間。以上が1位で総取りとなる。
ICC小林「今回ICCサミットを開催できて、本当に嬉しく思っています。カタパルトのナビゲーターですので、こういうときしか皆さんにお伝えできることができないので、改めて御礼を申し上げます。
今のように、新型コロナウイルス感染症の流行は、50年100年に1回しかない歴史に残るような出来事だと思うのですが、その中でこういったリアルイベントを開催するのは、チャレンジだと思っています。
昨日のスタートアップ・カタパルトでも申し上げたのですが、この会場には必ず1人か2人、企業の時価総額が1千億円を超えるような、日本を変えていくような起業家が必ず生まれてくると思うのです。感染率よりも、世界を変えていく起業家がいる率のほうが、この中は絶対高いと思っています。
だからこそ、今回はリスクをとって開催することを選びました。それだけ社会的インパクトの大きいイベントだと思っています。ここにいる10人は、必ずそれを背負っていくんだという気持ちをもってプレゼンいただければと思います」
10名のハイレベルなプレゼンバトル!
RevComm會田 武史さん(ICC KYOTO 2019 スタートアップ・カタパルト4位入賞ほか)
トップバッターのRevCommの會田さんはMiiTelのサービスと、提供価値をよどみなく紹介。電話営業のグロースを鍛え、伸ばすツールでファンを増やしてきたが、コロナでさらに急成長が続いているという。練りに練られたプレゼンのレベルの高さは、これぞカタパルト・グランプリという感じだ。
▶MiiTelは、AI電話で会話を可視化して、日本の生産性向上にコミットする(ICC KYOTO 2020)【文字起こし版】
ビビッドガーデン 秋元 里奈さん(ICC KYOTO 2018 スタートアップ・カタパルト、ICC FUKUOKA 2020 CRAFTED カタパルトほか)
これが4度目のカタパルト登壇となる秋元さんは、全国から2,400の農家・漁師が集まる現在絶好調の直販サービス「食べチョク」をプレゼン。コロナ禍前は1.8兆円の市場外流通が、現在は5兆円になっているそうで、流通額は35倍になり、月間600万円も生産者に還元できているケースもあるという。
aba宇井 吉美さん(ICC FUKUOKA 2020 リアルテック・カタパルト優勝)
「突然ですが、親におむつ交換をしてもらった方はいますか?」「それでは、親のおむつ交換をしたことがある方はいますか?」というツカミでプレゼンをスタートした宇井さん。介護現場の最大の課題を解決する排泄ケアシステム「Helppad」は、誰もが介護できる社会の大きな力となる。
▶介護の最大課題”排泄ケア”を解決!「aba」はテクノロジーでだれもが介護できる社会をつくる(ICC KYOTO 2020)【文字起こし版】
データグリッド 岡田 侑貴さん(ICC KYOTO 2019 スタートアップ・カタパルト 同率準優勝)
「AIの自然化が未来のAI」と言う京都大学発ベンチャーのデータグリッド岡田さんは、極めて自然な人間のモデル画像を見せ、それがデジタルヒューマンであることを明かして観客を驚かせた。モデルによる撮影や、ショッピング体験も控えがちな昨今、デジタルモデルが活躍する余地は過去よりも広がっている。
MI-6株式会社 木嵜 基博さん(ICC FUKUOKA 2020 リアルテック・カタパルト同率優勝)
日本唯一のマテリアル開発ベンチャーであるMI-6は、開発プロセスで膨大な費用と時間を費やすトライ&エラーの精度を飛躍的に上げ、さまざまな素材開発に挑んでいる。従来は開発費が売上の5%という非効率をテクノロジーで正して、高い技術をもつ日本の素材開発をさらに促進させていく。
クスカ 楠 泰彦さん(ICC FUKUOKA 2020 CRAFTEDカタパルト優勝)
半年前のCRAFTEDカタパルトで優勝した楠さんは、今回会場内にKUSUKAの織り機を展示。見た目から特別感を漂わせるネクタイは、世界一流の目利きから支持され、日比谷に旗艦店をオープンしたところだが、丹後に71年ぶりに創設された高校の制服用ネクタイを提供するなど地元愛も忘れない。
MAGO CREATION 長坂 真護さん(ICC FUKUOKA 2020 ソーシャルグッド・カタパルト)
心の声を矢継ぎ早にぶつけるようなプレゼンで、会場の度肝を抜いたのがMAGOさん。ガーナのスラム街に集められた先進国からの電子ゴミでアートを作り、先進国で販売することで、現地に学校や施設を作れるほどの利益を還元している。「すべての始まりは愛」と言い切り、「リサイクル工場を建てるまで売りまくる」と力強く宣言した。
▶「愛」の追求で、電子ゴミをアートに変え、世界の貧困解決を目指すアーティスト「MAGO」(ICC KYOTO 2020)【文字起こし版】
ジグザグ 仲里 一義さん(ICC FUKUOKA 2020 スタートアップ・カタパルト 3位入賞)
ジグザグの仲里さんも、コロナを逆手に好調な一社だ。訪日客が激減した今、インバウンド消費が激減して小売店を苦しめているが、それを補う多言語対応のECサイトはまだ少なく、機会損失は2,700〜5,000億円にもなる。それがジグザグの提供する1行のタグによって解決し、海外からの購入が可能になる。
ガラパゴス 中平 健太さん(ICC KYOTO 2019 スタートアップ・カタパルト 同率準優勝)
内容をすべて暗記し、舞台中央で話しきったガラパゴス中平さんは、ウェブサイトのランディングページをAIで30秒で作成するAIR DESIGNをプレゼン。noteで以前に準優勝に終わった悔しさを公開していたが、そのリベンジのような完璧なプレゼンを披露した。ちなみにこの時表示していたスライドもすべてAI作成によるもの。
「部下に殺されてしまった人たち。カエサル、信長、張飛…」緊張を感じさせないCOTENの深井さんが話すと、そこはまるでCOTEN RADIOの世界。歴史上の人物に、生まれたときの身分、部族、戦争に勝つ・負ける、経済改革、土地情報…といったさまざまなタグをつけたデータベースを作り、任意のデータを検索、探求できる探究型世界史DBの必要性を訴えた。
そのDBの真価は、精神的に不幸な現代人の意識を変えられることにあると言う。「ソリューションだけでは幸せになれない時代です。一度も日本を出たことのない人が日本をわからないように、過去の価値観や状況といまの自分を比較することで、初めて自分をメタ認知できる。すると自分の捉え方が変えられるのです」
先進国の抱える社会的な病を歴史で解決しようという、スケールの大きな訴え。ビジネスカンファレンスの枠を超えた提言に、圧倒された人も多かったのではないだろうか。10組続いた大トリで新たな視点を会場に投げかけて、プレゼンテーションはすべて終了した。
「心からやりたい事業がスケールできる時代になった」
ICC小林「熱かったですね!僕もリハーサルに立ち会っていましたが想像以上で、ここまで熱いとは思いませんでした」
Mobility Technologies川鍋 一朗さん「今まで何度も審査員として見させてもらっていますが、一番圧を感じました。バラエティもあって、ビジネスになりそうだとか、僕になかった視点に気づきました。MAGOさんはインパクトがあったし、いつもTシャツ姿の會田さんはネクタイ姿だし(笑)。
今回僕は、日本に必要かどうかという視点で選ばせてもらいました。でも皆さん、ここに出ているだけでバリューアップしていると思います」
サツドラホールディングス富山 浩樹さん「選べと言われるのはすごくつらい。熱量もすごく感じましたし、それぞれの課題に多様性を感じ、本当ここから変わるんじゃないかというのを見られて感動しました」
シーヴィーシー・アジア・パシフィック・ジャパン赤池 敦史さん「ファンドとしては、ぜひ100億円使ってほしいなと思いながら見ていましたが、非常にクオリティが高いですね。コロナ下で生き延びて成長されている人のビジネスのクオリティの高さを感じて、感動しました」
マクアケ中山 亮太郎さん「テクノロジーの基礎の部分が上がってきたこの20年だったので、フィロソフィ、心から本当にやりたいという事業が、ちゃんとスケーラブルに実現できる世の中になったし、そういうチャレンジャーが現れたのだなと、日本の新しいことを始める底力が上がっていると感じました」
「これから愛が尊重される時代が来る」(MAGOさん)
順位は既報の通り、1位MAGOさん、2位はaba、3位はRevComm、4位MI-6、5位にビビッドガーデンとなった。カタパルト・グランプリ8回目にふさわしい、バラエティの豊かさ、レベルの高さがわかる結果となった。
会場が暗転して、1位が発表されると、MAGOさんは心底驚いていた。
MAGOさん「えーーー、信じられない!」
ICC小林「MAGOさんは話が長すぎて、プレゼン練習のときは7分に収まっていませんでした。言い足りないことがあるんじゃないですか?
MAGOさん「みなさん、今日はありがとうございました。6位ぐらいかな?と思っていて、本当に予測していませんでした。
ただやはり愛、これからは愛が必要になります。テクノロジーが進化していったあと、これから愛が尊重される時代が来ると思うんです。それをアートで具現化して、世界を絶対に平和にします。みなさんに今日、約束します!ありがとうございました!」
優勝商品提供企業も、MAGOさんのプレゼンを受けて感銘を受けたようだ。ファクトリエ山田さんは「かっこいいスーツを着てガーナへ。汚れても洗えるものでも」、マネーフォワード竹田さんは「100億円集めるときのアドバイザーを」、セールスフォース・ドットコム鈴木さんからは「サステナブルの取り組みもぜひ一緒に」とラブコールが送られた。
「モチベーションがすでに高すぎるのでは」と、一同が笑いに包まれた
MAGOさんが大喜びしたのは、NewsPicksの法人プレミアムプランで「すでに有料会員なので、明日からはタダで読める!」、オカムラのオフィスチェアには「丸椅子しか持っていないのでうれしい!」。
AGS廣渡さんは、参加者全員にも100本ずつビールを贈ることを約束
4回目の登壇にして初入賞、余裕さえ見えるプレゼンをしたビビッドガーデンの秋元さんは登壇を終えて笑顔を見せていた。
「プレゼンはだいぶ慣れてきました(笑)。最初の頃はガチガチに緊張して徹夜していましたが、昨日は眠れました。応援していただけているのも、ICCのおかげです。時代が変わって、私たちがいたいと思う世界に近づいているので、スピードを増して頑張りたいです!」
MAGOさんは舞台を降りたあとでも興奮冷めやらず、MAGOギャラリーのブースに戻ってもまだ、「びっくりした!」と連呼している。
「僕が一番びっくりしているんですよ、まさかと。今朝も練習していたのですが、こういうところでは絶対に賞を獲れないと思っていたので、インパクトが残ればいいなと、魂の出会いがあればいいかなと思っていました。
最後は愛でしたね。利益なんか追求しないで、愛を追求しようと。いやそれにしても、マジびっくりしました……でも、みんな愛だって、わかってるんだ!」
スタートアップ・カタパルトが人生をかけた決意宣言ならば、カタパルト・グランプリはその宣言に対し、周囲の期待もすべて背負った実行計画表明。ICCサミットに集まるのは、その計画を実行中の人たちだから、見る目も当然シビアだ。
正々堂々と壮大な夢を主張するこのチャレンジャーたちを「甘い」とか「無理」と言うには、彼らは準備をして計画を持ち、結果を出している。審査員たちも、彼らの語ることがただの夢に終わらるべきではないと選び、利害関係などなくても応援している。
すべての、本気のチャレンジャーたちにエールを。信じる道をひたすら追求し、実現に全力を尽くせば、描いた世界は現実のものになっていく。それが歴史に残るような状況下でも可能なのだという登壇者たち、審査員たちの熱いメッセージが伝わるような、今回のカタパルト・グランプリであった。
(続)
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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/戸田 秀成
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