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ICC異色セッション「『創業の精神』と『事業継承』を徹底議論」登壇企業から学ぶ、変わらないもの、変えるべきものとは【ICC FUKUOKA 2019レポート#10】

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2月18日~21日の4日間にわたって開催されたICC サミット FUKUOKA 2019。その開催レポートを連続シリーズでお届けします。今回は、Session 10F 「創業の精神」と「事業継承」を徹底議論(90分拡大版)にフォーカス。ICCサミットとして珍しいテーマながら、大企業からスタートアップに至るまで、示唆が非常に多い内容となりました。ぜひご覧ください。

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ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2019は2019年9月2日〜5日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページのアップデートをご覧ください。

ICCサミットとしては異色のセッション

モデレーターを務めた早稲田大学ビジネススクール准教授 入山 章栄さん

今回のICCサミットには、新しい試みが数々導入されていた。目立つところではワークショップの増加だが、依然登壇者のディスカッションによるセッションは過半数を占め、過去に人気を集めたものは、続編が設けられている。

内容によっては1回限りのテーマもあるし、開催終了後のアンケート評価で残念ながらふるわず続かなかったものもある。ディスカッションテーマの新陳代謝は常に行われており、そこで今回、新しく登場したのがこの「『創業の精神』と『事業継承』を徹底議論」のセッションだ。

スタートアップ・カタパルトのイメージなどから、ICCサミットは新しい事業や産業を応援する場だと思われがちで、実際そういった内容のセッションが多い。しかし、新しい事業、産業を生み出すときに過去から学べることは多く、ICCサミットには事業を継承した登壇者も多い。そこでICCサミットでは異色ともいえるこのセッションが生まれた。

このセッションはアンケート評価では上から数えるほうが早い25位の64%。登壇者も参加者も、非常に満足度の高かったセッションとなった。書き起こし記事は後日をお待ちいただくとして、ここではその雰囲気をお伝えする。

ファミリービジネスが97.5%を占める日本

小橋工業の歴代社長。初代のカリスマ性に会場はどよめいた

このセッションでまず印象的だったのは、会場に集まった参加者だ。モデレーターを務める早稲田大学ビジネススクール准教授の入山 章栄さんが、会場内で事業継承者を聞くと、2〜3名の手が上がった。加えてポピンズの轟 麻衣子さん、日本交通の川鍋 一朗さんら事業を継ぐ方々が、期待にあふれた表情で会場に入ってきた。

楽天の小林セイチュウさんは最前列、前のほうには、ユーグレナ/リアルテックファンド永田 暁彦さん、リバネス丸 幸弘さんもいる。Drone Fund大前 創希さん、エイトブランディングデザインの西澤明洋さんやFABRIC TOKYO森 雄一郎さんなどなど、小さなF会場には、壇上に負けない濃いメンバーが集まっていた。

入山さんは、雑誌メディア「PRESIDENT」で「第二創業」という連載を持っており、事業継承で革新が起こっている現実を目の当たりにし、そういった人たちが日本を変えていっていることを紹介した。

日本では家族の所有、経営によるファミリービジネスは97.5%を占めているが、毎年数万単位で、継承者がいなくなるため廃業しているという現実を指摘したあと、各登壇者の事業の紹介に入った。登壇した5人は、いずれも継承ののち、事業が成長している企業ばかりだ。

登壇者の顔ぶれ

「経営と家族が混ざっているところを整理して、近代化を図った」と朝霧さん

協同商事/コエドブルワリー 代表取締役 兼 CEO 朝霧 重治さんは、血のつながらない二代目。

婿養子で入る前、高校生時代からアルバイトで出入りしていたという朝霧さんは、三菱重工に勤めていたある日、現在の奥様に「お父さんとお寿司を食べに行かない?」と言われた。蓋を開けたら前社長とふたりきりで、その場で継承を切り出され即答。当時は協同商事はアグリベンチャー企業だったが、朝霧さんがCOEDOビールを開発しこれが大当たり。

小橋さんは「親の代と同じだったら継ぐ意味がない」ときっぱり

小橋工業 代表取締役社長 小橋 正次郎さんは、次男坊の四代目。

創業から108年間、農業機械を創り続けてきた小橋工業。幼いころから父親が大好きで、小学生の頃から父親と経営談義をしていたという。20代半ばで就任してまず父親から言い渡された業務は、親戚である関係者の利害調整。現在は空き耕地をユーグレナと組んで微生物の藻類培養プール化や、Drone Fundへ参画し「空を耕す」ことに挑戦中。

「成功している今の世代が、次の世代の荷物にならないようにしないと」と櫻井さん

旭酒造 代表取締役 櫻井 一宏さんは、四代目蔵元。

2代目の祖父が亡くなり、その後継いだ父親が「第二創業」に近く、感覚としては二代目。父親は造る酒を獺祭に絞り「機械を使って、杜氏を使わないおいしい酒」というジャンルを創った革命的存在。「経験値の差でボコボコにされる」ことは日常茶飯事だという。

「外様なので、社内の人は全員先生です」と佐藤さん

資さん 代表取締役社長 佐藤 崇史さんは、ソニー、ボストン・コンサルティング・グループ、ファーストリテイリングなどで活躍。資さんの創業者亡きあとユニゾン・キャピタルが全株式を取得し二代目に就任。

「うどん発祥の地・福岡」のソウルフードとして愛される「資さんうどん」を、東京からやってきたプロ経営者としてさらに活性すべく挑戦中。

富山さんは「プロレスです」と父親とのバトルを語る

サツドラホールディングス 代表取締役社長 富山 浩樹さんは、 2代目社長。

全国チェーン店も入り乱れて群雄割拠するドラッグストア業界で、北海道での一番を目指す。卸商社で10年勤めた後、子どもが生まれたタイミングで父親から当然のように切り出される。リブランディングでイメージを刷新して他社と差別化を図り、ホールディングスも設立。

サツドラ新年会での親子仲間割れを経て、リブランディングが無事着地した秘話が語られた

入山さんいわく、過去40年の統計によると、日本の上場企業で成長率や利益率が圧倒的に高いのは、圧倒的にファミリービジネスだという。その理由としては、長期的な視点で事業を組み立てるからであり、これは世界的に見ても同様の傾向があるそうだ。

どうやってDNAを引き継ぎ、革新するか

自己紹介だけでも興味深い話が数々飛び出したのだが、その後の議論としては、以下のような問いに、登壇者の方々からは、笑いありの家族ならではのエピソードや、シビアに対処する現実問題など、さまざまな経験が語られた。

「先代とぶつかったことはあるか?」で三人が挙手

・先代とぶつかったことはあるかどうか? 
・持ち株問題
・事業を継いだときの経営チームはどう作るのか?
・先代からいる大番頭さんとの付き合い方
・古い事業、ビジネスモデルの継承はどうするか。先代のいいところ、悪いところの見極めは?

ここで新鮮な視点を適宜差し込んでいったのは、登壇者の中でも唯一、純粋に外から来た社長の佐藤さんだ。先代がすでに他界していることもあり、継承者として大切にしたいことを第三者的視点で語った。

「創業者に会いたかった」と佐藤さん

佐藤さんは迷ったときは常に「創業者の大西章資さんだったらどうするか」というところに立ち返るという。創業者の考えに共感するが、それを身をもって経験する環境やDNAを持っていないため、常に考え続け、頭の中で対話することで、それを自分のものとしていくという。

それに対して逆に、DNAとして持っている場合は、大胆な変革もしやすいという意見には同意の声も出た。ビジネスモデルは継承ではなくアップデートすべきというスタンスだ。

純粋な聴衆目線としてでも、経営者ほどの切実さはないかもしれないが、企業の中で働くときでも、前任者から交代して引き継ぐ場合などに置き換えて、応用できる話が実に多かった。加えて家族の関係にまで想いを馳せた方も多かったのではないだろうか。

事業承継で大切なこととは

セッションの最後は、登壇者から「事業承継では何が大切か」というメッセージで締めくくられた。

小橋さん 「父親、または母親との対話。誰かに想い、価値観を引き継ぐことは先代の責任だと思います」

朝霧さん 「経営者としてやりたい、という意思が必要だと思います」

佐藤さん 「もとになる軸がないときは、ちゃんと理解してやりながら、どこに行くかというのを明確に決めることです。それを今、やっている最中です。創業者、従業員と僕の想いをまとめて、これだというものができれば、会社は絶対強くなると思います」

「最初は継ぐ気がなかった」という櫻井さん

櫻井さん 「同じ方向に進んでいく、父親からバトンを継いでもっと先に行く、ということだと思います。そのためには、父親が言っていた方向性が好きでないといけないと思うし、そうでないと無理だろうと思います。能力などは置いておいて、それができるのがファミリービジネスの強みなのではないでしょうか」

富山さん 「圧倒的な主体性といいますか、世界で一番、会社のことを考えるのは自分だ、という想いですね」


結局、予定時間を10分超過して、100分間のセッションが終了した。

これはF会場最後のセッションで、パーティがもう始まる時間だというのに、参加者は登壇者の周りに集まり、話が終わる気配は一向になかった。ICCサミットのセッションでは、議論の熱気が高まりすぎてこういったことはよくあるが、登壇者の方々のお人柄もあるのか、会場はいつもとは少し違う、”家族的”で温かい雰囲気に満ちていた。

この夜のパーティ会場への誘導アナウンスがされ、残った人々が名残を惜しむように、渋々追い出されたのは、セッション終了時間から半時間過ぎた19時45分ごろだった。

(終)

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編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子

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