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「小さく生んで、数を仕掛けろ」DLEが実践する”ヒット率 3割”の経営術【K16-4C #6】

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「ユニークなゲームコンテンツ企業のマネジメント手法」【K16-4C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その6)は、数字での経営管理とクリエイティビティをどう両立させるか等について、各企業の考え方を議論しました。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2016年9月6日・7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016
Session 4C
「ユニークなゲーム/コンテンツ企業のマネジメント手法」
 
(スピーカー)
小渕 宏二
クルーズ株式会社
代表取締役社長
 
椎木 隆太
株式会社ディー・エル・イー
代表取締役  
 
塩田 元規
株式会社アカツキ
共同創業者 代表取締役CEO
 
柳澤 大輔
面白法人カヤック
代表取締役CEO
 
(モデレーター)
琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授

「ユニークなゲームコンテンツ企業のマネジメント手法」の配信済み記事一覧

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【本編】

数字と進捗の管理をどのレベルまでやるべきか?

琴坂 皆さん全員に関連する質問をさせて頂きたいと思います。

創造性を高めていくという方向性で、色々な取り組みをされていると思うのですが、やはり先ほども売上のお話が出てきました。

管理することや、進捗管理等のバランスはどのように考えられておられるのか教えて頂きたいと思っています。

計画性を持つとか、何時に来るとか、こうして欲しいというところをどこまでやるべきなのかということです。

小渕 僕の場合、最終的には利益の追求が企業の使命だと考えているので、利益が上がる最適な方法をとる、ただそれだけです。

あとは、人によります。

先ほど柳澤さんが仰っていたように、人に張るというのは僕も同じで、やろうとしている人のタイプを見て、この人はマイクロ・マネジメントが必要なのか、放っておいた方が良いものが見つかりそうなのかを見極めますね。

琴坂 画一的な体制や組織にするというのではなくて、その人毎に考えられるのですね。

小渕 僕は人によりますね。

琴坂 なるほど。

打席数を決めて、Just do it!

椎木 ディー・エル・イーのビジネスモデルというのは、何しろとても小さく生んで、数を仕掛けて、生き残るものをその後見極めて、生き残りそうなものに張っていきましょう、更に張っていきましょうというものなので、数を作ることが大命題で、スタッフに号令を出すんですよね。

ですから、ヒットする確率は3割ほどで他社よりも高いのですけれども、映像コンテンツにおいては3割バッターです。

これだけの売上で、これだけのヒットを出したいのなら、これだけ打席に立たないとねと言うと、「えーっ。こんなに打席に立たなくてはダメですか?」と言われるのですが、「そういう計画だから、just do it!」ということです。

琴坂 逆に、これだけ出すようにと言うと、数は出せるのですか?

椎木 そうですね。

僕達のビジネスは、大体ヒットするとこれくらいという風に、例えばこれだと5億円くらい、これだと10億円くらいといったように、大体粒が見えて、ミニマムリスクでミディアムリターンです。

そういう5億円クラス、10億円クラスをこの数でやっていけば狙えるだろうなというのが大体見えているという感じです。

琴坂 まず数を張って、最初のリアクションである程度その先の事業の広がりを想像できるのですね。

そして然るべきところに張っていくという。

椎木 そうですね。

創造性と規律性は相反しない

塩田 弊社のカルチャーは基本的には真面目で、創造性と規律性は相反しないというか、創造性をしっかり発揮するためには、必要なプロセス管理はしっかり行わなければならないのではないかと思っています。

作り手の立場からすると、何でもよいから作ってと言われるのが実は一番難しくて、作るものの制約や、作り方の制約等、何かしらの制約をかけてあげることで、超天才ではなくてもチームで良いものが作れると思っています。

ゲームの場合なら、どこまで何をするという作り方のところをある程度プロセス化してあげて、与えられた時間の中でどういう風に生むかというのを先にキュッとやった方が、結局良いアイディアが出ているような気がします。

「(ゲームを)もっと面白くするのであと5年ください」などというのはあり得ないと思っていて、上手く規律を持たせて創造性を引き出すという考え方で作っています。

琴坂 先ほどの小渕さんのお話にも繋がっていくように思うのですが、こういうライツ(版権)を使ってこういうシステムでと、ある程度のガイドラインだけ作った上で、「あとはよろしく」というイメージですか?

塩田 モノを作る場合はそういう形をとることもありますし、例えば、コンセプトに3か月、制作に1年かけてもよいが、この中でやってくれというようにプロセスについての指示をすることもあります。規律の作り方は中身とプロセスの両方のアプローチが存在してると思います。

3か月の中でよいアウトプットが出なかったら、そもそもダメなのです。そういうプロセスがあり、規律が保たれているんですよね。

3か月という期間や、作るモノに関して何も言わないというのは、それはそれでありなんですよね。

その場合はプロセスの面で制約をかけている。あとは、「月に10億円 売上が上がるようなものを作ってね」というとても抽象的な言い方をしたりすることもあります。

琴坂 日本の大企業にありがちですね。

塩田 でも、制約は一つだけです。

抽象度が高ければ高いほど創る難易度は高くなるので、組織の状態や、チームの状態や、個人の状態に合わせて最適化していきます。

そのようにある程度サイエンスしていかないと、チームで勝ち続けることは難しいと思っています。

琴坂 なるほど。柳澤さんはいかがですか?

失敗を許す文化をどう作って維持するか

柳澤 クリエイティブと経営の矛盾の話ですよね。

経営は矛盾そのものなので、そこを戦い続けるのだと思うのですが、アウトプットというか、最終的に出てくるものは、クリエイティブが高いものではないと当たらないし、ゲームで言うと、結局面白いものが当たるわけです。

ですから、クリエイティブのクオリティが高いと儲かるという、そこには何の矛盾もないんですよ。

要は、会社が大きくなる過程でクリエイティビティがなくなってきたりするなど、やはりそこに矛盾が出てきて難しくなり、工夫をしないとどうにもならないということですよね。

ゴールは大丈夫なのだけれど、会社が大きくなってくると、色々とルールが増えてきますよね。

カヤックがどう工夫しているかというと、2つあって、1つはやはり、椎木さんと似ていますが、数を出すという文化というか、失敗を許す文化をどう作って維持するかということを大切にしています。

先ほど「人に張る」と小渕さんもおっしゃっていましたが、実際、当たったものに張りたい訳ですよ。

当たるものは当たるし、当たらないものはずっと当たらないように思います。

当たったものがなぜ当たったのかなという理由を紐解いてみると、意外と忘れてられているのですが、それもやはり過去には失敗しているんですよ。

琴坂 なるほど。当たり前に失敗しているのですね。

柳澤 企画を途中で潰されたことや、出してみて本当にダメだったことや、どんな失敗でもよいのですが、普通の人は2回、3回は失敗しないですね。

嫌になってしまうから。

普通、1回こけると、もう1回やってみようとは思わないと思うんですよ。

当たるものというのは、やはり1回こけてもやっていて、その人は沢山失敗しているのだけれども、成功しているから周りの人にはそれが見えていないだけなのです。

結論から言うと、当たるものに張るのだけれども、当たるものというのはどういうものかというと、失敗を忘れる人なのか恐れない人なのかは分かりませんが、そういう人が作ったものですね。

琴坂 失敗しても心が折れない人にはちゃんと張るのですね。

柳澤 張ります。

大部分の人が折れるから、別にやりたいという人に全部やらせておけば大丈夫なのです。どうせ2回目をやりたいとは言わないのだから。

スピード=クリエイティブである

柳澤 あともう1つは、先ほど塩田さんもおっしゃっていましたが、これは、クリエイティブの世界では正しいという人はかなり少ないかもしれない。

僕は建築家のサービスをやっていたのですが、良い家を建てる時に、予算がないことは良い家を建てられないことの言い訳にはならないけれども、時間がないことは「言い訳にできると言われているんですよね。

ですから、時間軸を長くしないとクリエイティビティが上がらないというのは、神話としてあるのです。

でも、このインターネットの世界に入って気づいたことがあります。分かり易い例で言うと、フラッシュ(Flash Player)等では、データのダウンロードに時間がかかってしまうと良いものでも見てももらえない訳ですよ。

つまりそれは、タイミングが遅いとクリエイティブではないと言い換えられる訳で、まず「スピードがある=クリエイティブである」という風に思うようにしないと、クリエイティブの世界と今の資本主義の世界が、なかなか噛み合ってこないような気がします。

ただ、そこには疑問もあって、何年か前は、株の保有期間が7年だったのが今は1年になっているということで、原丈人さんが「公益資本主義」を唱えてもう少し長いスパンで見ないと世の中がおかしくなると言ったように、もう少し時間軸を長くしていかなければならないという感覚もあります。

でも、実際には時間はどんどん速くなっていて、クリエイティブとの整合性を保つために、時間が速いことがクリエイティブだという意識づけをしていかないと、合ってこないというところがあります。

琴坂 そこだけはマネジメントが必要になってくるということですね。

椎木 やはり数を打ってヒットを目指しているので、スピード感を持ってクリエイティブを目指すというのはもう大前提で、やはりそこを目指せない、時間がないからよいアウトプットが出せないというクリエイターは、弊社だともう使えないですね。

柳澤 「時間が速い=クリエイティブだ」という概念にしなければならないのですよね。

琴坂 例え絶対的な質が低くても、スピーディーに出していかなければなりません。

柳澤 そこを要素として加えて「クリエイティブ」という判断にしないと、ついてこないというか。

長く時間をかけた方が良いものになるのは決まっています。

琴坂 それはそうですね。

塩田 クリエイティブにも、アイディアの面白さと、クオリティの両方の論理があるような気がしています。

時間をかければ良くなるというものに関して、クオリティが絶対相関すると思うのですが、アイディアのところは一定ファジーだという風に思っているので、掛け合わせもあるかなと思っています。

柳澤 ゲームというのは、本当に開発期間が延びがちですよね。

そこに関して、どういった方針を持たれているのですか?

塩田 2点ありまして、1つ目は、昔のようにプロセスを何となくやっていくとなかなか完成しないので、前段のコンセプトや、そもそも何を作るかという議論に一番時間をかければ、結果的に早くなりますね。

要するに、ある程度クリアにしてから取り組んだ方が早いと思っています。

柳澤 それはもう企画書の段階で?それともモック(Mock Object)の段階で?

塩田 モックまで含めてですね。

それも企画書を紙に書いてもよく分からないと思うので、作りたい世界観を動画やビジュアルで作ったり、見て分かる、手触りで分かるモックをとにかく早くつくって、高い精度で評価できるようにしています。

アメリカのコンシューマーゲームの会社が採用しているような開発プロセスですかね。ネイティブ・ゲームマーケットでも、そちらにシフトしていっていると思います。

柳澤 時間配分を変えたということですか?

塩田 時間配分をかなり変えましたね。

ですから、「あ、コレ面白いよね!」とうのが最後の最後に分かる、ということがかなり少なくなっています。

先に分かるという風にしないと、リスクが高いと思っています。

それから、先ほど柳澤さんが仰っていた、失敗を共有するということは、タイトルの長いネイティブ(ネイティブゲーム)だとかなり難しくなってくるので、そこにもすごく課題意識がありますね。

ハイブリッドな、短サイクルで失敗を摘み続けられる組織を中に作っていかないと、中長期で見た時に、クリエイティビティや人材が育たない恐れがあります。

琴坂 人材を育てるプロジェクトも必要になってくるということですね。

塩田 はい、必要になってくると思います。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/Froese 祥子

続きは ヒットを生み続けるゲーム&コンテンツ企業の「一貫性」と「変化力」 をご覧ください。
https://icc.dvlpmnt.site/management/8272

【編集部コメント】

続編(その7)では、会場からの質問を受け付け、理念の一貫性をどう守るか?という問いや今後の組織発展の形について議論しました。是非ご期待ください。感想はぜひNewsPicksでコメントを頂けると大変うれしいです。

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