【NEW】ICC サミット FUKUOKA 2023 開催情報詳しくはこちら

7. 意識すべきは「戦略」より「構造」。帝国の成功と失敗から学ぶ現代企業経営のポイント

新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!

「歴史から学ぶ『帝国の作り方』(シーズン2) 」全9回シリーズの(その7)は、楽天の北川 拓也さんによる熱い投げ込みでスタート。「現代の帝国」ともいえる企業が安定するために不可欠なものについてプレゼンします。企業戦略として、マクロで考えるべき2つの視点とは? ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティング様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 6A
歴史から学ぶ「帝国の作り方」(シーズン2)

Supported by
リブ・コンサルティング

(メイン・スピーカー)

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

(スピーカー)

宇佐美 進典
株式会社CARTA HOLDINGS 代表取締役会長 / 株式会社VOYAGE GROUP 代表取締役社長兼CEO

奥野 慎太郎
ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン
マネージング パートナー

北川 拓也
楽天株式会社
常務執行役員CDO(チーフデータオフィサー)グローバルデータ統括部 ディレクター

山内 宏隆
株式会社HAiK
代表取締役社長

(モデレーター)

琴坂 将広
慶應義塾大学
准教授(SFC・総合政策)

「歴史から学ぶ『帝国の作り方』(シーズン2) 」の配信済み記事一覧


連載を最初から読みたい方はこちら

最初の記事
1.シーズン2は「生き残る帝国」から、事業やビジネスに活かせる学びを徹底議論

1つ前の記事
6. ベイン奥野さんが解説、現代の企業の「海洋帝国」「大陸帝国」経営

本編

琴坂 では引き続き北川さん、この熱い投げ込みを解説頂いてもいいですか?

帝国の安定には明確なコアが必要

北川 奥野さんと深井さんの話を受けて、帝国の成功と失敗を企業に当てはめるとどうなるかという話の続きをお話しします。

深井さんが言っていたように、帝国の安定にはコアが必要で、大英帝国の場合はコアが明確で、目で見て分かります。

しかしオスマン帝国は、どこがコアなのか見ても分かりません。

琴坂 分からないですね(笑)。

北川 まあ、インスタンブールあたりなのかな?という感じです(笑)。

地政学的に曖昧な境界を持つということは、宗教や身分、法行政的に多様性を持ちすぎてしまうことになって求心力が弱まります。

そしてこれが、第一次世界大戦で勝敗を分けたと言われています。

コアチーム、文化がなければ、企業は瓦解してしまう

北川 多角化しやすい大企業、Facebook、Amazon、弊社楽天、またはヤフーなどで、これからPMI(M&A後の統合プロセス)や事業拡大をする上で、やはり先ほどの話は正しいと思いました。

つまり、コアチームを明確にして、文化のコアを規定することは非常に大事だと、実践者として感じることは多いです。

これがなければ、瓦解してしまうのです。

楽天の場合、圧倒的なコアとして創業者の三木谷(浩史)がいますので、迷いなくコアを作れます。

しかし、例えば孫(正義)さんのいないヤフーがこれからどうなっていくのかは、非常に興味深いですね。

孫さんは、ソフトバンクに所属しながらもヤフーの経営に関わられているので、まだコアになっているのだと思いますが。

琴坂 コア文化を考える時、多様性を受け入れる文化なのか、それとも「これがうちの文化だ!」と強く出る文化のどちらなのでしょうか?

北川 場合によると思います。つまり何においての多様性なのかという話になると思います。

例えば、われわれはLGBTなどの多様性は必ず認め、性的指向による差別はしないと明言させていただきますし、女性活躍を全面的に支援するという姿勢を取っています。

ダイバーシティの推進(楽天)

そういった「多様性」は認めますが、ビジョンや文化という観点では、楽天は「ベストエフォートではなく、やりきる」という文化を持っているので、「ベストエフォート」で許される文化では決してないということです。

琴坂 なるほど。

北川 Amazonでは、22人から成るSチームというものを作っています。

拡大を続けるアマゾンで徹底されている「組織づくりのルール」(COURRIER JAPON)

楽天にも、常務執行役員以上のメンバーがちょうど22人前後います。

AmazonのSチームは、平均勤続年数が16年を超えています。

楽天の場合も、経営陣の平均勤続年数は15年くらいだと思います。

まあ、(小林)正忠さんが押し上げているかもしれないですが(笑)。

(一同笑)

(会場の小林 正忠さんに聞いて)15年弱だそうです。僕自身は、8、9年になります。

琴坂 もうそんなになるのですね。

北川 はい、意外にも僕は会社の中では長いほうになります。こういったコアチームは必須だと感じますね。

現代で「地続きの帝国」となっているもの

写真左からベイン・アンド・カンパニー奥野さん、楽天 北川さん、HAiK 山内さん

北川 オスマン帝国において、地続きが物事を難しくした(※) という事実を見た時に、今この地続きにあたることが何かと考えると、それはプロダクトだと思いました。

▶編集注:イギリスやフランスが「国民国家モデル」を適用できたのは、インドやアフリカが、コア地域から地理的に離れていたからとPart.4で言及。

プロダクトがつながっていると、コアをうまく切り分けることができないのです。

琴坂 なるほど。

北川 AWSもそうですが、経営陣としては、脆弱性やマネジメントコストが一気に上がるため、インフラやプラットフォームは同じにしたいのです。

しかしそうしてしまうと、コアとそれ以外の企業が分けられなくなり、コア文化が非常に作りにくくなるのかなと思いました。

琴坂 それは、「切り分けたほうがいい」というメッセージですか?

北川 基本的には、海洋帝国のほうがうまくいっている気はしています。

琴坂 切り分けた上でコアチームを作り、全体をつなげるということですか?

北川 そうです、コアチーム自体は同質化したものですね。

切り分けると言っても、ゆるやかな切り分けであり、真剣勝負をする場所を決めてやるというイメージです。

琴坂 なるほど。

北川 ちなみに、最近盛り上がっているデジタル庁ですが、デジタル庁をドライブする際のコアチームはどこなのだろうかと危惧していました。

どうですかね、奥野さん。デジタル庁のコアチームは!?

霞が関DXの司令塔 デジタル庁が民間採用を本格始動−−民間企業はどう見るべきか(JAC Digital)

奥野 ないんじゃないですかね(笑)。

(一同笑)

北川 でも、作らないと崩壊しますよ、ということです。

琴坂 そうですよね。

北川 できることも、する方法もいくらでもありますが、同じビジョンを持ったコアチームがドライブしなければ、やりきることはできないです。

平井卓也大臣のもと、コアチームを作ってくれればいいなと思っています。

コアの成立には「構造」が「戦略」に先立つ

北川 もう1つのポイントは、コアの成立には、「構造」が「戦略」に先立つということです。

これについて、奥野さんは思うところがあると思うのでお聞きしたいのですが、残念ながら、「戦略」は「構造」には勝てないことが多いです。

例が、まさにこれですよね。

キリスト教信仰があり、イギリス国王への忠誠があった大英帝国。

一方、当時イスラム教とキリスト教のやり合いがあって、野蛮だとレッテルを貼られてしまったイスラム教国である、オスマン帝国。

ニコポリスの戦いでオスマン帝国軍がキリスト教諸国を撃破!(BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン))

そんな背景から、今更、イスラム教とキリスト教を一緒にして「自分たちがコアだ」とは言えなかったわけです。

また、トルコ、アラブなど多民族がいたことも、一体化を阻んだ原因でした。

こういう構造があったわけです。

宇佐美 企業経営として考えた時、ここで言う構造とは、「市場の選択」になるのでしょうか?

戦略よりも、どこを自分たちの狙う市場とするのかが先にあるという状況と似ていると思いました。

北川 まさにそうですね。

どういう視点で考えるべきかを、列挙してみました。

企業戦略としてマクロで考えるべき2つの視点

北川 マーケットの話はここには載せていませんが、1つの視点として、国の制度や文化があると思います。

今、僕はインドやフランスなど他国でチーム経営をしていますが、例えば、フランスと日本は似ています。

雇用がとても強く、労働者が守られる文化なので、それに基づいたマインドセットを持っています。

逆に、アメリカやインドなど、守られるとは限らない場所で働いていた人たちは違うマインドセットを持っており、自分の持つ権利への考え方が、前者の国の人たちとは全く違います。

そのような国向けの文化作りは、まただいぶ違うのだなと感じています。

2つ目の視点は「顧客」で、これは宇佐美さんがされたお話に近いかもしれません。

誰を顧客とするかによって、変わってきます。

良い例が、ZoomWebExですね。

Zoomはいきなり伸びましたが、WebExはもともとあったサービスで、しかも提供するCiscoは巨大企業でした。

WebExがなぜ苦戦しているかは明確で、WebExはITソリューションだったので、彼らの顧客は、大手企業のIT責任者でした。

それに対してZoomは、IT責任者ではなく使ってくれる従業員向けに売りたいと考えました。Slackと同じ考え方ですね。

そこで、WebExとほぼ同じサービスながらも、エンドユーザーを向いて作り、ユーザーエクスペリエンスを非常に良くしたところ、従業員が「Zoomを使いたい」と言ったというわけです。

ですから、ビジネス構造が大事だったと思います。

クライアントマーケットとして見るか、ソリューションマーケットとして見るか。

つまり、マーケットをどう定義するかが重要だということです。

(続)

次の記事を読みたい方はこちら

続きは 8. 自ら作った構造をいかに打ち破るか。「変えられる組織」への設計が企業の成長を促す をご覧ください。

新着記事を公式LINEでお知らせしています。友だち申請はこちらから!
ICCの動画コンテンツも充実! YouTubeチャンネルの登録はこちらから!

編集チーム:小林 雅/浅郷 浩子/小林 弘美/戸田 秀成/大塚 幸

他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

更新情報はFacebookページのフォローをお願い致します。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!