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全資金投じ、累計売上2万円だったオンライン予備校サービス – ナイル高橋氏のHARD THINGS

クラウドワークス吉田さん、ナイル高橋さん、Fringe81田中さんをお迎えし、「俺たちのHARD THINGS」を議論しました。

(その2)はナイル高橋さんの「全資金投じ、累計売上2万円だったオンライン予備校サービス」などを議論しました。是非ご覧ください。

登壇者情報
2016年6月25日開催
ICCカンファレンス CONNECTION 2016 
Session 1
「俺たちのHARD THINGS」

(スピーカー)
吉田 浩一郎  株式会社クラウドワークス 代表取締役社長 CEO
高橋 飛翔    ナイル株式会社 代表取締役社長
田中 弦      Fringe81株式会社 代表取締役

(モデレーター)
小林 雅     ICCパートナーズ株式会社 代表取締役

その1はこちらをご覧ください:「ドリコム役員解任から得た経営者としての学び – クラウドワークス吉田氏のHARD THINGS」


小林 それでは次の「HARD THINGS」へ行きましょう。ナイルの高橋さんですね。

ICC CONNECTION 2016 Keynote 0616.009

小林 全資金というのは1千万円くらいで、累計の期間は半年でしたか。

高橋 資金は1千数百万で半年と少しだったと思います。

小林 そして、累計売上が2万円だったという。

それでは高橋さん。そのときどのような状況だったかというお話をよろしくお願い致します。

高橋 私は大学在学中2007年に起業しました。

会社のミッションとしては、世の中に残るものを作りたいというのを当時から掲げていました。

2007年創業当時の集合写真 (写真提供:高橋 飛翔)

2007年創業当時の集合写真
(写真提供:高橋 飛翔)

そして、最初は教育の業界で革命的なサービスをやりたいということで始めたのが、このオンライン予備校というサービスでした。

これはどういったものかと言うと、例えば経済格差だとか、地方に住んでいることによって情報がないとか、教育機会がないという人たちに、東大生が教える授業動画を非常に安い価格で提供していくというコンセプトで始めた「楽スタ」というサービスです。

当時、ウチは家庭教師事業をやっていたのですが、そこで作っていた売上や利益をベースにして、銀行からありったけのお金を借りて、「この事業にすべてを投じる」「これがウチの会社の最大の勝負になる」というふうに言って、1千数百万円を投じて作ったのがこのサービスでした。

iccconnection2016-session1-2-2

ただ、作ってみると思うようにいきません。

まず、私たち学生が作る教育コンテンツはクオリティが高くなく、努力してもなかなか上げられないという問題がありました。

また、2007年当時というのはスマートフォンもない時代なので、PCで見るためのサービスだったのですが、地方の高校生はPCなど持っていないのです。

ですから、全然PVも伸びないし、課金もされないし、売上がまったく立たない。

そういう中でクローズしてしまったという話です。

小林 ちなみにPVはどのくらいだったのですか。

高橋 正確に覚えていないのですが、無料登録期間というのを用意していて、これに登録する人は何百人かいました。

ですが、そこからまったく課金に転じなかったのです。

そして、当時からSEO(サーチエンジン最適化)などを研究してやっていたので、「大学受験」というキーワードで検索するとウチのサービスが1位になっていたりはしました。

ただ、ニーズがなかったのです。

吉田 よほどニーズがなかったのですね。

小林 検索すると上に出てくるのに、売上が2万円だった。

吉田 すると、それで最初SEOをやったのですね。

高橋 ええ、研究しているうちにこちら(SEO)をやっていった方が収益が上がるのではないかと思ったのです。

つまり、サバイヴ戦略的に始めたものがSEOだった。

田中 すると、良かったという話ですね。

高橋 はい、結果的にはそれが会社として生き残ることにつながったと思います。

小林 吉田さんはそういう経験というのはおありですか。

あることをやっていて駄目だったのだけれど、それをキッカケに何か違うことを見つけたというような経験。

吉田 私の場合は、一回目の起業の時に、役員を解任になったのは会計知識がなかったからだと思って簿記会計をゼロからすべてやりました。

ですが、その結論は「自分はこれに向いていない」ということでした。

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高橋 吉田さんは真面目ですよね。ロジカルシンキングも読んでいるとのことでしたし。

小林 反省して行動に移っていますよね。

吉田 全部、領収書貼るところからやって、それを仕分けして……と、一個づつやりました。

高橋 そんなことやらなくて良いですよ。

吉田 でも、当時は役員を解任になったことがショックで、考えられうるあらゆる可能性を一個一個潰していったということだったのです。

ロジカルシンキングとか、マネジメントとか、簿記会計とか。

小林 田中さんは、大金を投じてやって全然駄目だったけれど、そのアセットが活きたというような経験はおありですか。

田中 たぶんそれは次に出てくると思います。

小林 では、次を出してしまいましょう。

ICC CONNECTION 2016 Keynote 0616.010

田中 今でこそ化石なのですが、Internet Explorer7というのがRSSリーダーをすべて搭載するというリリースがマイクロソフトから出ていたのです。

それで、「これは絶対にRSSリーダーが来る」と思って、会社を作って、リクルートさんと電通さんと提携をしたのです。

小林 社名はRSS広告社ではなかったですか。

田中 そうです。

実は、Fringe81はRSS広告社から名前を変えただけなのです。

ただ、来る来ると言われていたので、起業家は新しい事業を作るのだったら、ウェーブに乗った方が良いに決まっているでしょう。

ですから、これはウェーブだと思って始めたら、遅れに遅れて、3年後にマイクロソフトが出すのですね。

吉田 RSSリーダーは、私とてもヘービーユースしていました。

しかし、あれは結局なぜ来なかったのでしょうかね。

高橋 マスに行かなかったからでしょう。

吉田 ああ、マスに行かなかった。

田中 でも、それは不思議で、サイバーエージェントの藤田さんもブログで「これからRSSリーダーの時代が来る」と言っていたのです。

だから絶対来ると思ってやってみたら、最初の月の売上が2万円くらいだった。

小林 高橋さんと同じですね!

高橋 でも、こちらは半年で2万円ですから(笑)。

田中 そして、当然ながら最初は、50億円から100億円くらいの市場になるというような事業計画を立てるわけです。

しかし、全然行かないのです。

1年目はだいたい1億円くらい赤字を出して、すぐ資金もほぼ尽きました。

創業期の2011年のRSS広告社のメンバーの写真 「8月全員で予算達成ダー!」 (写真提供: 田中 弦)

創業期の2011年のRSS広告社のメンバーの写真
「8月全員で予算達成ダー!」
(写真提供: 田中 弦)

吉田 当時、RSS広告社で資金はどれくらい集めたのですか。

田中 それでも3億円くらいだったと思います。

吉田 RSS広告で3億円くらい集めた!

田中 ですから、当時それくらいフィーバーしていたのです。

今はまったくですが。

しかし、実はまだこれは続いているのです。

日本のRSSフィードをほぼすべて制覇してしまったので。

今は1人で回していて、利益率80%とかになっています。

吉田 捨てきれない感じですね。

高橋 いつか累損を回収できるでしょうか。

小林 数字を聞いたことがあるのですが、とても儲かっていますよ。

吉田 そうなのですか。

田中 その事業はそうです。累損(累積の損失額)はかなり前に解消してます。

これはもう何もしなくても回ってますから。シェア100%ですからね。

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高橋 まさに残存者利益(過当競争や収縮傾向にある市場において、競争相手が撤退したあと、生き残った企業のみが市場を独占することで得られる利益※コトバンクより)ですね。

田中 そうです。残存者利益。

でも、マイクロソフトを信じたら、まるで騙されたという話だったのです。

搭載されるので間違いなく来ると世界中の人が言っていた。

そして、来るだろうと言われていたのですが、なぜか3年かかったのです。そして、あまり来なかった。

小林 でも、ICCカンファレンスに来るような起業家というのは、そうやって一回外して今があるという人が多いですね。

吉田 ドリコムのブログもそうですね。

ブログ一本足打法で上場しましたからね。

小林 すごいですよね。

吉田 当時はブログシステム一本で最大7,000万円などで売れました。

今は無料で作れるのに。

小林 ええ、無料ですよね。

田中 笑いごとじゃあないですよ。

吉田 それくらい製品のサイクルが速いということです。RSSも結局3年たっても立ち上がらなかったということですものね。

田中 そうです。3年たっても結局立ち上がらなかった。

しかし、一応生きてはいたので、頑張って続けたら収益が上がっていったということです。

小林 わかりました。それでは次の「HARD THINGS」へ行きましょう。

(続)

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編集チーム:石川 翔太/小林 雅

続きはこちらをご覧ください:『めちゃくちゃ嬉しかった』心を入れ替えるきっかけとなったお歳暮 – クラウドワークス吉田氏のHARD THINGS

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