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3.ICOによってベンチャーキャピタルは要らなくなるのか?

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「ベンチャーファイナンスについてズバズバ聞きたい」7回シリーズ(その3)は、昨今まったく新しい資金調達手法として注目を集めるICO(Initial Coin Offering)について、その動向と未来像を議論しました。ICOでIPOは要らなくなる?とも言われる中、ベンチャーキャピタリストの方々の見解に注目です。ぜひ御覧ください。

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ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、ジョブカン(株式会社Donuts)様に本セッションをサポート頂きました。

 

 

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 9A
ベンチャー・ファイナンスについてズバズバ聞きたい
Supported by ジョブカン

(スピーカー)

今野 穣
株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ
パートナー COO

永見 世央
ラクスル株式会社
取締役CFO

水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー

渡辺 洋行
B Dash Ventures株式会社
代表取締役社長

(モデレーター)

嶺井 政人
株式会社マイネット
取締役 副社長

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最初の記事
1. ベンチャーファイナンスについてズバズバ聞きたい!

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2.今の日本はカネ余り?ベンチャーファイナンスの最新状況

本編

嶺井 最近、「そもそも上場しなくていいよね」と話題になっていることがありますが、その根拠が、ICO(※)だと思います。

▶編集注:ICO(=Initial Coin Offering)とは、企業等が独自の通貨や権利証を発行することによって資金を調達する手段Wikipedia

ここ数日(2017年9月)でも、中国やロシアで大きな動きがあり、なかなか目が離せない状況です。

皆さんがICOをどう捉えていらっしゃって、自分たちのビジネスにどのような影響を与えそうだと思っていらっしゃるかを、簡単に皆さんに聞かせていただきたいです。

永見さんから順にお願いします。

永見 ICO自体は特別詳しいわけではないです。

コンセプトベースで理解しているところからすると、そもそもエクイティで資金調達する意味というのを、根本的に考えなければいけなくなるフェーズが来るのかなと考えています。

資本政策として、会社がMBO(Management Buy Out:経営陣が株式を買い上げることで企業や事業の独立を行う行為)も実施できると思います。

嶺井 その会社の経営陣がICOで調達した資金を使って、MBOすると。

永見 理論上は資本政策を巻き戻す投資もできるじゃないですか。

そのような観点も含めて、しっかりと学んでいかないといけないなという問題意識がありますね。

ラクスル株式会社 取締役CFO 永見 世央氏

嶺井 ありがとうございます。

水島さんにはどのように映っていますか?

ICOにおけるガバナンスをどうするか

水島 私もまだ勉強している最中と言った方がいいのですが、各国で規制が制定されはじめています。

技術の観点からすると、たぶんこのような世界というのは絶対に出てくるはずの世界です。

非連続の技術が生まれる領域というのは、最初にいくつかの問題が起こって、規制がかけられるというのが世の常です。

中国では詐欺だとかという言われ方をされていると思うのですが、どうしても裁定取引が起こります。

裁定取引でお金を稼ぐ人がいる一方で、「その技術は将来的にはいろいろと有用な使い道があるよね」というのが見えてくると当局がルールを作っていく、あるいは自主規制団体が立ち上がり、ルールを作っていきます。

要は、悪貨が良貨を駆逐するというような、「バッド・アクターがいるから、皆そこに踏み込まない」という状況になるのを防ぐということです。

そのどちらか、2パターンを繰り返しながらでフェアなマーケットが作られていくというのが他の新技術領域でもあるので、たぶんICOも同様に変遷していくのだろうと考えています。

永見さんがおっしゃっていたところについて話すと、要は資本、いわゆる今の会社法とか、資本主義って何だろうという問題提起が起こると思っています。

やはり株主とICOが一番違うのは、議決権や、会社の一部分を持っているかという点です。

上場会社において少ししか株を持っていない人というのは、当然のことながら、ほとんど影響力、意思決定への影響力はありません。

それでも集団として、株主総会決議などを通してガバナンスを効かせています。

そうでないICOなどの世界では、別のガバナンスを効かせないといけないのか。

あるいは、ガバナンスを完全に切り離して、完全に財務指標をパッシブ(受動的)に受けて、そこのリターンを見るというような投資にこれから世界が変わってくるのか。

今後どうなって行くのだろうなと思っています。

西村あさひ法律事務所 パートナー 水島 淳氏

嶺井 そこは、本当に皆でディスカッションして整えていかなくてはいけないところですよね。

では今野さんのご見解を、ぜひ聞かせていただけますか?

ICOはVCの役割を変える?

今野 専門家ではありませんが、ということを前提に、結論から言うと僕は、これは不可逆な流れだと思っています。

1つは、資金調達やファイナンスの民主化という文脈で言うと、もう不可逆だと思います。

いくつかの問題点が顕在化することもあるでしょうが、それによって逆にルールやフレームワークが整備されると言ったような揺り戻しがありながら、基本的には前進する方向に進んでいくと僕は思っています。

もう1つ、実はICO的な世界観というのは、クラウドファンディング、寄付、ポイント経済圏、地域通貨など、リアルの世界で既に結構あります。

そうすると、たぶん考えなければいけないのは、ICOが出てきて初めて登場する世界観というか、「ICOユニーク」な世界というのは何なのだろうなということです。

加えて、現実世界から仮想世界を見て差分や相互互換性を論じると見誤る可能性があると思っていまして、仮想世界の中だけで完結した世界が現実世界とは独立して成立するかもしれません。

僕はICOというのは、たぶん、株式のアンバンドル化(一括して提供されていたものを、解体あるいは細分化すること)だと思っています。

今の現実世界の法人格の株式というのは、実はいろいろな権利が混在する権利じゃないですか。

金融リターンが欲しい人もいれば、会社を応援したい人もいれば、株主優待みたいなものを期待していたり、いろいろな株主がいます。

それがICOになるとかなり細分化されて、流動化が起きるんだろうと思っています。

株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー COO 今野 穣氏

P/L(損益計算書)とか利益、とかEPS(一株当たり利益)というような議論ではなく、もっと細かいところで起こります。

たとえば何かを紹介したらビットコインがもらえるとか、キュレーションしたらもらえるとか、かなり細分化できることになると思うので、そっちの方が面白いというか、新しく出てくるだろうと思います。

そうすると、VCはたぶん、今の証券会社のようになるだろうと思います。

ICOする会社を先んじて目利きして、呼び水として出資して参加者を募るみたいな。

嶺井 アンダーライター(引受人)ですか?

今野 そうですね、アンダーライターのような立場になって行くと思います。

だから、資本家としての稼ぎ方でなくなるかもしれません。

場合によってはコンサル的なフィーで稼いだり、トランザクションに対するマージンで稼いだりというように、ビジネスモデルが変わるのではないかと思っています。

嶺井 なるほど。

ガラッとビジネスモデルが変わるかもしれないということですね。

今野 そう思います。

嶺井 ありがとうございます。

渡辺さん、ぜひ聞かせてください。

VCの役割は法定通貨と仮想通貨の世界で異なる

渡辺 そうですね、基本的にはもう皆さんおっしゃっている通りで、もう不可逆だと思っていますし、仮想通貨はどんどん広がっていくのだろうなと思っています。

時間軸的には、たぶん今はインターネットの世界でいうと、90年代の終わり、2000年ぐらいであって、恐らくここからまだ10年とか、15年かけて徐々に制度等が整えられていくのだろうなと思っています。

今の社会はいわゆる法定通貨の世界ですが、たぶん同時並行で仮想通貨の世界が広がっていって、そこでも調達ができるようになっていきます。

B Dash Ventures株式会社 代表取締役社長 渡辺 洋行氏

今野さんがおっしゃっていましたが、重要なことは、個人がいろいろな力を持つ世の中になっていくということです。

インターネットの世界と同様に、仮想通貨の世界も完全に同様だと思います。

要は個人の評価、個人の力が強まっていき、それによっていろいろなものが調達できるようになります。

その流れが加速するということは、もう間違いないと思っています。

嶺井 その流れの中で、ベンチャーキャピタルの渡辺さんの動きに、何か変化はありますか?

こういう風にビジネスが変わっていきそうだなとか。

渡辺 そういう意味でいうと、僕は世界を完全に切り分けて考えていて、法定通貨の世界では別に変化は当然ありません。

これは今まで通りの話です。

仮想通貨の世界、トークンの世界でどういう風なものになっていくかというのは、今、全世界的に皆が動き始めてやっています。

当然VCとしての私たちも、当然それに関わっていかなくてはいけないので、いろいろやっているというか。

2017年12月7日 「 B Dash Venturesが100億円規模のICOファンド設立へ、ICOで大成功したQUOINEも参画(TechCrunch Japan)」

嶺井 お、いろいろやっていると!

渡辺 いや、いろいろ考えていますという感じなのですが……。

何というか、どちらかがどちらかを凌駕するとか、そのような世界ではないなというのは最近思っています。

こういうのは広がるのに時間がかかります。非常に時間がかかるんですね。

今の法定通貨のような世界になるには、本当に10年、20年要するだろうなというのが、金融当局や弁護士の先生など、いろいろな方と話したここ最近の結論です。

そこを上手く立ち回って、やっていかないといけません。

日本は非常にいい環境だと思っています。

(右)株式会社マイネット 取締役 副社長 嶺井 政人氏

資金決済法の改正であるとか、クラウドファンディングのここまでの土壌もあり、非常に浸透し易い状況です。

とはいえ、まだ見えないところが非常に多いので、やはり留意してやっていかなくてはいけないのだろうなと。

それは僕たちの役割でもあるなと思っています。

今、今野さんから我々はある意味アンダーライターであるというお話がありましたが、我々は法定通貨の世界では現金を当然運用するけれども、仮想通貨の世界ではアンダーライターでやる部分も多く出てくるのだろうと思っています。

そのあたりがルール化されていくには、やはりまだ数年かかるなという感じですね。

ただ発行体にとっては、すごくいい制度だと思うので、発行体はやればいいと思います。

話がどんどんずれてしまいますが、ICOはすごく発行体有利なんですよね。

「やります」と言えば、いくらでもお金が集まる状態なのですが、これは実は不健全で、中国などでもありましたが、詐欺が横行していると言われています。

そうなると、当然社会問題化していって、おそらく金融庁が黙っていなくて、グッと規制を掛けてくることになります。

それは良くないと思っているので、「そういう事態は回避しないといけないよね」ということを、皆で啓蒙しなければならないと思っています。

そのうえで、どうすれば健全なICOができるのかということを考え、ともに創っていきましょうと思っています。

嶺井 なるほど、ありがとうございます。

面白いですよね、ICOはまだまだ動きがありそうなので、注目したいなと思います。

(続)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/浅郷 浩子/本田 隼輝/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

ICOをうたった詐欺があるそうですが、そうしたものが新しい手法の普及の障害になりえるので残念です。今野さんがおっしゃった株式のアンバンドル化といったお話が非常に刺激的でしたが、株式及びその市場が歴史的に培った良い面を取り入れつつ、手法が確立していくといいなと思います(榎戸)

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