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7.テレビCMにおける「当たるロジック」はあるのか?

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「スマホ・サービスのマーケティング & プロモーションを徹底議論」【K17-3C】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!11回シリーズ(その7)は、テレビ離れが進むスマホ時代のマーケティング戦略や、CM・Web広告などの各媒体の活用方法について議論しました。是非御覧ください。

▶ICCパートナーズではオペレーション・ディレクター及びコンテンツ編集チームメンバー(正社員&インターン)の募集をすることになりました。もし興味がございましたら採用ページをご覧ください。

ICCカンファレンス KYOTO 2017のプラチナ・スポンサーとして、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ様に本セッションをサポート頂きました。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット KYOTO 2018は2018年9月3日〜6日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。


【登壇者情報】
2017年9月5〜7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
Session 3C
スマホ・サービスのマーケティング & プロモーションを徹底議論
Supported by 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

(スピーカー)

齋藤 太郎
株式会社dof
Founder&CEO/Communication Designer

中村 洋基
PARTY / VALU
Creative Director / Founder

彌野 泰弘
株式会社Bloom&Co.
代表取締役

吉田 大成
株式会社エブリー
代表取締役

(モデレーター)

坂本 達夫
AppLovin
Director Sales, Japan

「スマホ・サービスのマーケティング & プロモーションを徹底議論」の配信済み記事一覧

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最初の記事
1.凄腕マーケター&クリエイティブ・ディレクターが語るスマホ時代のマーケティングとは?

1つ前の記事
6.メッセージを一貫して発信する「DELISH KITCHEN」のブランディング

本編

坂本 先ほどのお話の中で、ちらっと「テレビ離れ」という単語が出てきました。

テレビ離れが本当に起こっているのかというのも実感としてはよく分かりませんが、実際に数字で見ると、広告費の売り上げというのは、テレビ、いわゆるマス媒体が段々減ってきていて、ネットが段々伸びてきています。

そのような背景から、いわゆるブランドのユーザーコミュニケーションのやり方というのも、昔のようにテレビCMをやっていればよかったという時代から、本来変わってきているべきなのではないかなと思います。

実際ユーザーに届けるという観点から見て、デバイスやチャネルなどは変わってきているのでしょうか。

もしくは本当は変わらなくてはいけないけれど、変わりきれていないなどあるのでしょうか。

“テレビ離れ”でマーケティングはどう変化したか

吉田 分かり易く僕が関わっていたアプリのサービスでいうと、GREEの時にやっていた比率は、テレビCMが9割を占めていて、あとはリスティングです。

会員登録を取れれば、余裕で回るというような時代でした。しかし今は単純にそうではないと思っています。

テレビCMだけでユーザー獲得できるかという分かり易い指標を参照すると、やはり獲得しきれないです。

ではなぜテレビCMをやるのかというと、デジタルで「はける量」が変わるからです。

今までだったら、ある程度デジタルプロモーションを打っているとアッパーを迎えていたところに、テレビCMをミックスさせることで「はける」ようになります。

テレビCMで見たことがあるからデジタルの方でもよりクリックしてもらえるというように、よりはけ易くなってきます。

あえてミックスさせてCPI(Cost Per Install)自体を落とし込んでいくという話です。

あとはテレビCMを混ぜることによって、よりサービスのことを理解した上で来ていただける方が多くなります。

ですので、テレビCMだけやっていればいい、デジタルだけやっていればいいというよりも、完全にミックスさせないと、上手く回らないのではと実感として思っています。

彌野 テレビ離れについても、もう少し厳密に言うと、見なくなった人と、見続けている人の両方がいますよね。ざっくり言うと、40代以上はあまり変わっていないいかもしれません。

一方、スマホ・サービスのメインターゲットになり易い、20~30代は、特に女性を中心に家にテレビを持たない場合もあるため、実際、テレビ離れも何も、見るデバイス自体がないということが起こってきています。

(右から2番目)株式会社Bloom&Co. 代表取締役 彌野 泰弘氏

彌野 吉田大成さんがおっしゃったように、僕らが(携帯ゲームで)一番バチバチやっていた2012年は、テレビCMを打っているのが、下手したらデジタルのCPIよりも低いというような時期もありました。

ですが、特に20~30代向けのサービスにおいて、今は高くなっているんですよね。

ですので状況がこの5年で大幅に変わっているとは思います。

とは言っても全く見ないわけではないので、テレビでリーチして、デジタルで刈り取るというのは、吉田さんがおっしゃった通りです。

その配分などは、会社やカテゴリーなど、それぞれのノウハウの中で最適化していくものだと思うんですよね。

中村 同じ印象ですね。

テレビとデジタルの両方の挟み込みのプロモーションが、新興サービス、とくにアーリーアダプター・若者がターゲットであれば1番いいのではないかなと思います。

ただ、日本が難しいのは、完全に高齢化社会なので、高齢者へもアプローチできるような広告が必要だということです。

高齢者だけではなく、地方へのリーチも考慮に入れなければなりません。

僕は栃木県出身なのですが、北関東はマイルドヤンキー文化なので、基本的にB’zを聴いてたり、mixiがメインSNSだったりすると思ってます。

mixiって、いまだに毎日かなりのログイン数あるんですよ。その下支えをしているのは栃木県民ではないかなと睨んでいます。(笑)

冗談ですが、ターゲット像をきちんと理解して、見極めること。アーリーアダプターは、自分と同じような人ばっかりじゃないぞと。

彼らにはトラディショナル媒体もきちんとリーチするので、やはり結構プロダクトによる。分析が大事かなという気はしますね。

坂本 東京にずっといると失ってしまいそうな感覚ですよね。

彌野 これは本論ではないかもしれませんが、せっかく(吉田)大成さんもいらっしゃるのでお伺いしたいことがあります。

今の事業は、いくつか作った上で同時にテストをして、その中で割と引きがよかったものを厳選して集中的にやっているのか、齋藤太郎さんが今おっしゃっていたように、最初からいくつか決めてやったのか、どちらなのでしょうか?

DELISH KITCHEN立ち上げの経緯

吉田 決めてやっていますね。

DELISH KITCHENの他にも、ママ向けメディア「MAMA DAYS(ママデイズ)」、若い女性向けの「KALOS(カロス)」、男性向けの「TIMELINE(タイムライン)」もまだ残っていて、これらも今伸びています。

この領域をやろう、1社で1サービスをやろうというのではなくて、1社で複数メディアをやろうというのは最初に決まっていて、これは是が非でも立ち上げようということで考えています。

彌野 それ以外の事業は、独立される時にはあまり検討していなかったということでしょうか。

「もうこれだ!」と決められていたのでしょうか。

吉田 そうですね。

動画事業をやろうということだけを決めて、オフィスを借りて、その当日に電気屋さんへカメラとパソコンを買いに行きました。

株式会社エブリー 代表取締役 吉田 大成氏

吉田 僕はそれまでカメラをいじったことも、動画の編集もしたことがなかったので、カメラや編集の本を買って、覚えるというような感じでした。

坂本 それこそ、先ほどから何度も引き合いに出ていますが、クラシルは元々全く別の事業をやっていましたものね。

クラシルがスタートされてから彌野さんは入られたんですよね。

彌野 僕はもうだいぶ後ですよ。プロモーションやるよという時に。

僕は「ネット業界のプロモーションおじさん」のような立ち位置になっているので、CMの案件になるとエンジェル投資家の方や知り合いつながりから連絡がありまして。

齋藤 一番儲かりそうなところから入るということですね!(笑)

彌野 いやいや(笑)

CMは嫌いじゃないですけれど、わりと大変ですし、緊張するんです。

ですので、CMは好きだけれど、滅茶苦茶やりたいというわけではないんですよ、正直な話。

結果が明らかに出るし。それなりの確度で当てられるんですが、緊張感がスゴイです。

吉田 本当にそうですよね。

彌野 時間もないですし、非常に定性的なジャッジも多いので、大変ですよね。

吉田 大変ですよね。ランキングが上がってこないとき「やばい、眠れない……」と。

彌野 これで一本足なのは、非常に怖いと思いますよ。

齋藤 作るプレッシャーも相当ですよね。

彌野 そうですよ!

中村 15秒CMを作るのって結構、職人作業だと思うんですよね。

齋藤 いやもう痺れますよ……。

テレビCMにおける「当たるロジック」

中村 先ほど、競合をどれだけ意識するかという話がありましたが。

僕は(お二方よりは)デジタルばかりなのですが、実はクリエイティブ、作り手の方が競合を非常に意識していると思います。

競合というか、世界中をみまわして、例えば同じようなブランドで、こういうようなロジックで当たった、このようなアプローチをして当たったという事例や似たようなものがないか多少探して、紡ぎ合わせて、作るわけです。

PARTY Creative Director/Founder / VALU 取締役  中村 洋基氏

中村 広告クリエイティブというのはある意味矛盾してて、ヒットするパターンはだいたい決まっているくせに、斬新に見えないと、「これ見たことある、パクリだろ」と言われる酷い宿命にあるので(笑)、うまいこと調合しなければなりません。

完全に新しいものを見せても駄目で、火星に金星人の美少女が降ってくる、と言われても訳が分からないじゃないですか。

そうでなくて、せめて地球に降ってこないと。

そのくらい、上手いことスパイスを振りかけて、なおかつこのロジックだったら当たるだろうとか、何かエモーションに引っ掛けたものなどを上手にやらなくてはいけません。

かなり研究してからでないと、プレゼンなどは持っていかないというのはありますね。

坂本 それに関連してお聞きしたいのですが、そのCMなどの成功をどのくらいロジカルに予測できるものなのでしょうか。

今のお話だと事例もかなり研究しているとのことでした。

過去の事例がなぜ当たったのかということを、左脳的な意味での分析をしたうえで作る訳ですよね。

でも斬新さも必要となると、表現の部分なりで、今までやっていないことも何かしらやらなくてはいけないということで、それが再現性をもって次も上手くいくかというのは、そういう意味では分からないと思うんですよね。

中村 分からないと思いますよ。

彌野さんが先ほど緊張すると言っていたのもそういうことだと思います。

ピタゴラスイッチで有名な佐藤雅彦さんが、以前CMを当て続けた手法のひとつに「リズム&連呼」があります。とにかく連呼をいいリズムに乗せることによって、CMを見ているお茶の間の家族に真似させるんです。

「スコーン、スコーン、湖池屋スコーン」とか、「モルツモルツ~」、「バザールでござーる」とか。

この手法はメチャクチャ当たりました。ところがその後、禁止になっているんですよね。

15秒とか30秒の中で、一定以上同じことを連呼しては駄目ということになっているんです。

発明した手法が強力すぎたんです。

坂本 それは何か業界の自主規制ですか?

中村 放送局のレギュレーションです。とにかく、CMはやれることもかなり限られていて、表現が飽和しているので、必勝法がないという認識です。必勝法が産まれたら、規制されますし。

ウェブサービスは名前の”連呼”だけでは使ってもらえない

彌野 マニアックな話をすると、連呼が効くのは、名前の擦り込みだけで売れてしまう商品なんですよ。

ですからお菓子や飲料は割と連呼でいけてしまうのですが、アプリのサービスの場合、名前を覚えたからといって使ってもらえるとは限りません。

テレビ広告で今まで出稿量が多いのは、割とそのような飲料、お菓子、食べ物などなのですが、覚えてもらえたらいいという要因で、この分野の出稿広告は連呼が多いんですよね。

逆にウェブサービスの場合は、「ふ~ん」で終わってしまいます。

「使いたい!」と思ってもらわないといけませんので、メルカリなどは、「売ったり買ったり」、売るのも買うのもできるという、その動作を見せていますよね。

このように、実は何を広告するかによって必要な考え方が違ってきます。

(左)株式会社Bloom&Co. 代表取締役 彌野 泰弘氏

彌野 あとは予測にも2種類あって、何%くらい伸びるかという難易度の高い予測と、シンプルに上がるかどうかの予測というのがあると思うのですが、何%伸びるかを予測するのはやはり難しいんですよね。

消費財メーカーのように過去のデータが相当溜まっている場合は、過去のCMに比べて何%くらい強力かが分かると推測できるのですが、やはりネットサービスの場合は、あまりそのような推測ができません。

ネットサービスは、ほとんどのケースにおいて正直在庫のキャップがないので。

青天井なので、伸ばせたら伸ばせるだけいいので、そういう意味で言うと、構造的に伸びる角度が高いかは、ある程度予測できるとは思います。

坂本 ありがとうございます。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸/本田 隼輝/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

同じ広告でも、「受動」のときに見るのと「能動」の時に見るのだと違うのではないでしょうか。例えば、テレビCMや電車の広告を眺めるときは自身が受動的な状況で、関心度は低いため煩わしく感じません。一方、YouTubeなど、自身が能動的に調べたコンテンツに対して関連性の低い広告を強制的に見させられる状況になると、場合によっては広告に悪い印象を抱くこともあります。テレビ/スマホの各媒体を通したマーケティングの違いは、利用時の心理的状況の違いに起因するものなのでしょうか。(本田)

続編もご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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