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合理性からかけ離れた”狂気”が企業の個性的なブランドをつくる【F17-8B #4】

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「コミュニティの「世界観」をどう作り上げるのか?」【F17-8B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!7回シリーズ(その4)は、ブランドを形成する行いとしての「狂気」について議論しました。ICC小林もよく「狂い足りない」と発言しております。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。


【登壇者情報】
2017年2月21日・22日・23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 8B
ネットメディア&コミュニティの「世界観」をどう作り上げるのか?

(スピーカー)

青木 耕平
株式会社クラシコム
代表取締役

堀江 裕介
dely株式会社
代表取締役

松本 龍祐
株式会社ソウゾウ
代表取締役社長

(モデレーター)

小林 雅
ICCパートナーズ株式会社
代表取締役

「コミュニティの”世界観”をどう作り上げるのか」の配信済み記事一覧

【前の記事】

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【本編】

青木 今「ブランド」や「世界観」というキーワードが出てきていますが、「ブランディングとは何だろう」と考えた時に、「目指すポジションに向けたエピソードの積み上げ」と言っています。

「こういうブランドでありたい」という時に、どうであるというファクト、あるいはエピソードをどうやって積み上げていけるかです。

ハイブランドは100年や200年の間に細かいものから大きいエピソードを積み上げているからこそイメージやブランドがあるのだと思います。

合理性からかけ離れた行いがブランドを示す

青木 そのようなエピソードの中で一番効くものというのは、今 松本さんが言っておられた様な、合理性から考えるとやり過ぎとも言える、「無茶なことをしている」ということがブランドにとって一番本気を示せるエピソードになると思います。

アスリートやダンサーの動きは、一般の人から見ると有りえないような無理なプレーやポーズをするところに人を魅了することがあるのだとすれば、事業性のあるブランドを維持しようとした時に、「ちょっとやり過ぎでは」という部分をどれだけコントローラブルに作っていくことが出来るか、そのようなエピソードをたくさん作っていけるのか、ということだと思います。

我々の場合、「あれだけ商売に関係のないコンテンツを作るのに人を使っていて、いったいどうやって生計がなりたっているのだろう?」とお客様から思って貰えれば、とても有り難いと思います。

小林 「北欧、暮らしの道具店」ではそれはどのようなところですか?

青木 クラシコム本体で30人強のスタッフがいますが、Eコマースだけであれば10人強でも事業はまわります。それ以外の20人については、ほぼ商売に関係のないコンテンツやリトルプレス(雑誌)を作っていたりとか、企画をしたりしています。

(リトルプレス”オトナのおしゃべりノオトvol.10「脱・不機嫌」”)

会社の外から見ると、そこを無くせばもっと儲かると思われそうですが、長い目で見ればそのような変なことをしているから好評となり、結果的に売り上げに繋がっていると思います。

顧客から見て「効率が良い」という印象がなくとも、裏で効率の辻褄が合っていれば良いのです。

実際にはコンテンツを作るための人件費を負担する方が、一般的な通信販売の広告費率を支払うよりずっと安いわけです。

例えば月間に売上2億円くらいのビジネスをやるとしたら、一般的な通信販売の成長モデルですと20%くらい投資することになりますから、4千万円くらいの広告費を払うと考えると、10人や20人の人件費は安いものです。

その意味で、裏側で収益の辻褄が合っていて、表側では無茶している様に見えるという構造をしっかりと作るということが、ビジネスとしてブランディングするという時に重要だと思います。

小林 なるほど。

僕も狂気じみたICCカンファレンスをやっていますが、正しいことをやっているのだと思いました。

ありがとうございました。

小林 堀江さんも「ここが自分は狂っている」というようなところはありますか?

成り立たないと言う人の方が誤りだった

堀江 僕は、事業の入り口が狂っていると思われていて、良かったなと。

現状、日本トップクラスのレシピサイトだと、200万〜300万のコンテンツがあります。

それを動画で全部作るなんて馬鹿馬鹿しく、採算も合わないという話があります。

これをVC(ベンチャーキャピタル)に持って行っても99.9%が事業計画上成り立たないという話が出てくるでしょう。

ただし現状、月間で1千個くらいのコンテンツを作っていて、明らかに大丈夫だということは自分では分かっています。

つまり、そもそも記事と画像のメディアと同じくらいコンテンツを作らないといけないと思っていたこと自体が間違いです。

僕たちはレシピの既存サイトでも「カレー」を検索したら、上位の10個くらいしかレシピが見られていないことは分かっています。

Googleでインデックスされているものを全部作れと言っているようなもので、何十万個も出てくる検索結果があってもユーザーが見るのは上位のものだけです。

つまり、ユーザーを満足させるには、記事のメディアに対して数%のメインコンテンツのレシピ動画をきちんと作成していればよいのです。

ある程度の数字が必要だとは分かっていますが、既存のメディアに対して1%か2%で済むと思います。

これは最初は気が狂っていると思われましたがやってみたら採算は合いましたし、ユーザーが十分満足しうるコンテンツが動画で作れるということが証明されました。

逆に僕たちからすると、成り立たないと言っていた人の方が狂っていたわけです。

小林 僕もよく言われます。登壇者を170人も置いて成り立ちますか?と。意外に成り立ちますね。

松本さんは、先ほどカスタマーサービスが狂っている(ほどにリソースをかけている)という話は出ましたが、他に狂っているというポイントはありますか?

松本 まだ方程式が見えていないところが多いので、サービスとしては狂い切れてないかもしれません。

▶ 編集注:狂い足りない!(小林)

松本 組織としては新しい技術を使うというところにエッジを立てています。そうすると今まで作ったリソースが使えなくなってしまうのですが、新しい技術を使うために振り切って採用して、それがいま回ってきた感じです。

採用はそれで上手くいっているし、設立してまだ一年と少しの会社ですが認知度が上がっているのは、そこのリスクを取った判断をしたからだと思っています。

「当然やるべきことをやらない」という狂い方

青木 「狂っている」というのは「やる」という意味でもあるし、「当然やるべきものをやらない」という狂い方も大事だと思います。

ディズニーランドでミッキーマウスが園内に1匹しかいない状態にするということをやるのは、顧客満足度について平たく考えると5箇所に5匹いて、接触できる頻度を増やした方が結果的に満足度は高まりそうな気がします。

ミッキーマウスは1匹しかいないというストーリーに忠実にこだわるという狂い方、それが長期的にはブランドの一貫性を保てているのだと思います。

直近ではこうした方がユーザーが増えるとか、こういうコンテンツの方が流行るという話と、ブランドとして向かう方向は正しいがビジネスの合理性から言うと逆だということを選択し続けられるかというところで、ブランドができていくのかと思います。

小林 深く頷いてらっしゃいますが、何かありますか?

堀江 今のお話にとても共感できました。

これは運用の問題ですが、マーケティング担当に今月のMAU(月間アクティブユーザー)目標は1千万人と言ったけれども、どうしても足りないので、最後の3日で10発ずつプッシュ通知施策を打ちまくるとします。

そうすると何か狂ったのかと思い、皆が見に来ます。そして今月は目標達成するかもしれませんが、翌月のリテンションレート(再訪率)を見たらがくっと落ちているという話しがあります。

これはミッキーマウスをディズニーランドに1匹しか出さないのはなぜか?というお話と似ていると思います。短期での数字をあげることが逆に長期の数字を下げているということを検証すべきです。

「顧客の獲得」と「ブランディング」を両立して考えることは難しいと思っています。

自分たちの作りたい世界観はありますが、規模が大きくなるほどユーザーからは色々なリクエストが上がってきます。

やりたくないような意見も上がってきますが、拡大を考えるとレシピ数は増やさないといけない。

「顧客の獲得」と「長期でのKPI」は両立して考えなければいけなくて、短期でのユーザーの獲得だけを目指した煩雑な広告によってブランディングが落ちたら結果的に長期でのCPA(顧客獲得単価)が非常に上がってしまうと思います。

「顧客獲得」と「長期でのKPI」を両立して考える

堀江 青木さんがおっしゃっているブランディングは、短期で言えば楽天市場などのコンバージョンに結びつくようなLP(ランディングページ)の作成、例えばとにかく長くてクリックボタンを派手にする等、をすれば一時的に売り上げがあがるかもしれません。

一方、2〜3年後のブランドとしての完成度がどうか考えると、多分売り上げも落ちると思います。

そのため「顧客の獲得」と「長期でのKPI」について両立して考えないと今後が厳しいなと思っています。

小林 松本さん今のところは如何ですか?

松本 この話は、全く同じ状況で頷けます。

これは組織論に入ってくることだと思います。長期的なところは定量化出来ないので、リソースとしてどれくらい割くかという決めの問題だと思います。

そして定量と非定量なところのバランスについて、経営者が全てジャッジできれば分かりやすいですが、規模が大きくなってきて、世界観についてのジャッジのさじ加減をどう権限移譲するのか、社員をどう育てていくか、というところに最終的に繋がると思います。

皆さんはそこをどうしていますか?

堀江 ユーザーから見た世界観やブランドは社員から見ても同じだと思います。

これが好きだからやっているというもので、それが崩れた瞬間に、「かき氷なんて作りたくない」という様な話になった時に、「でもユーザーが求めているから作りなさい」というコンフリクトが起きたりします。

そういうときに、組織論として、どういった採用や人材育成や価値観の伝播を青木さんたちはやっているのですか?

社員から見た、企業の世界観やブランドの重要性

青木 我々の場合はほぼ100%元々顧客だった人を採用するので、基本的には自分が顧客だった時にどう思うかで動きなさいと指示しています。

もう一つは、制作者としての立場で作りたいものと、同じ人がコンテンツの消費者として消費したいものに乖離が生まれてしまうのが制作者の心かと思います。

例えば、ハードコアパンクのバンドをやっている人が、家ではジャズを聴くのが好きというのも良くあることだと思います。

つまり自分の表現したい方法やテーマと、自分がいざ顧客になった時に消費したいテーマというのは必ずしも一致しない。

自分が顧客だったらどういうものが読みたいかを考えて企画しようと言っています。

編集者や制作者はエッジを立てたいとか、今までなかった基軸を立てたいと思うものですが、例えば、僕らに求められているものが「サザエさん」的な癒しや安心感であると、新機軸は受け入れられないという場合も多いです。

先ず顧客であった人を採用することと、顧客であった人が顧客という立場においてどのようなものを求めているか考えるようにと繰り返し言っています。

松本 現場とのバランスの話ですが、先ほどのマーケティング担当者が「プッシュ通知」の施策を打ちまくる話とは逆で、メンバーはユーザーの目線に立った施策をやりたいという思いがあります。

しかし、それだとライトユーザー向けの施策になりがちで、僕やマネージメントがコントロールしています。

カスタマーサポートの声については、彼らが自分でコンテンツをチェックして社内ミーティングで紹介する、または、自分がユーザー目線で考えた改善案を投稿できるSlackチャンネルに皆入っています。

それをディレクターがカスタマーサポートのコメントと合わせてリスト化しています。ユーザーからの非定量的な要望を常にメンバーの目に触れるようにしていて、非定量的な改良をしたいという気持ちが醸成されています。そうやってバランスが取れています。

(続)

続きは ブランドの世界観の形成は体験の一貫性が重要 をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/立花 美幸

【編集部コメント】

ICCパートナーズ代表・小林も「狂い足りない」「狂い足りない」と普段から口癖になっています。その言葉に導かれるように?ICCカンファレンスはどんどん進化していきます(榎戸)

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