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大学発技術ベンチャーが陥る「事業フォーカス」の落とし穴とは?【KT16-1B #8】

ICC TECH 2016 Session1B

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「技術シーズの事業化のケーススタディ 「エクスビジョン & ユーグレナ」」【KT16-1B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その8)は、大学発の技術をどうビジネス化するかについて議論しました。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております


2016年9月8日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC TECH」
TECH Session 1B
技術シーズの事業化のケーススタディ 「エクスビジョン & ユーグレナ」

(スピーカー)
永田 暁彦
株式会社ユーグレナ
取締役 財務・経営戦略担当
リアルテックファンド 代表

森本 作也
エクスビジョン
COO

(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役

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【本編】

小林 (永田さんが時間の都合上、退席されたため)では続けて、森本さんとOne on Oneでいきたいと思います。

森本 プレッシャーですね(笑)。

小林 先ほど永田さんにも同じような質問をしましたが、先ほども高速ビジョンというテクノロジーを事業化させるまでは時間がかかったというお話しがありましたし、紆余曲折があったかと思うのですが、実際問題として、どのようなフィードバックがあったのでしょうか。

森本 ポイントは商品化に至ったプロセスでしょうか?

小林 そうですね。

発信に対する反応が複数社あるかどうかが重要

森本 ジェスチャーUIに決めた時、私の入社前ですが、世の中の流れとして、ジェスチャーUIをリビングルームへ出すというデバイスが既にいろいろと出ていました。

「Kinect」が非常に大きかったわけですが、トレンドができたという安心感でジェスチャーに決めたんですね。

それと並行して、先ほどご紹介したピンポン玉をトラックするというようなテクノロジーは、我々の場合マーケティングとして、R&D部門である大学の研究室がものすごい量のビデオをYouTubeなどに発表していますし、学会にも当然発表しています。

そうすると、網にかかるんですよね。

いろいろな企業から、こういうことを一緒にやらないか、こういうことができないか、とお誘いがくるわけです。

その中で話を聞いてみると、これはビジネスになりそうかな、ならないかなというのは分かります。

会社側から資金を出してでも共同開発をしたいと言ってくることもあり、その場合はその会社は絶対に困っているので、間違いなく価値があります。

ただそれが1社で終わるのか、更に展開できるのかというのは、他の会社の反応を見なければわかりません。

もしも2、3の会社が同じような反応を示すならば、それはもう社会的に、市場として価値があると判断をして、商品化へと進めていきます。

ICC TECH 2016 Session1B

小林 なるほど。では、森本さんだけになってしまいましたが、何か聞きたいことがある人はいますか?

安西 バイオやライフサイエンスの分野に特化したベンチャーキャピタルを運営している安西と申します。

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安西 智宏
株式会社ファストトラックイニシアティブ
取締役 マネージングパートナー

東京大学大学院博士課程で生命科学の学位取得後、2004年にコンサルティング会社のアーサー・D・リトル(ジャパン)株式会社に入社し、国内外のバイオ系企業の戦略立案や技術経営に関するコンサルティング活動に従事。2006年1月より (株)ファストトラックイニシアティブに参画。ライフサイエンス・ヘルスケア領域への投資に特化したベンチャーファンドの運営、大学発ベンチャーの投資育成に数多くの実績を有する。また、東京大学トランスレーショナル・リサーチ・イニシアティブ特任准教授を兼任し、研究者への産学連携支援を実践。他にも京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)客員准教授等を歴任し、2012年には内閣官房医療イノベーション推進室に在籍。経済産業省「再生医療の周辺産業に関する調査委員会」委員、大阪商工会議所事業化アドバイザー(医療機器)。
東京大学理学部生物学科卒業。同大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。博士(生命科学)。

私も多くの大学の先生とお話をする機会があり、その先生との関係性を大学とどのように整理していくのかということが永久の課題でして、非常に素晴らしい先生もいれば、適当なサイエンスでベンチャーを立ち上げてしまい、いろいろな人に迷惑を掛けるようなケースが非常に多く出てきています。

今日は学生さんも多く出席していますが、恐らくラボの先生に対しては、そのような疑いを持つことなく今まで接してこられているかと思います。

東京大学・石川正俊教授のビジネス感覚

安西 (エクスビジョン創業者兼CTOの)石川先生は非常に特殊な経験やスキルをお持ちですが、他方でグローバルな経験、起業などのリアルな経験がない先生については、その辺りの教員としてのマインドを変えていくことも必要なのではないかと、常日頃感じているところです。

その点、石川先生はやはり特別な人なのか、森本さんの認識をお伺いしたいのがひとつです。

もうひとつはビジネスの面で、技術系のベンチャーですと多くの場合、BtoBで着実に成果を上げていく、非常に優れたマネジメントメンバーで構成されているような気がします。

最初の点とも関連しますが、大学発ベンチャーの位置づけとして、BtoBであれば、例えばM&Aをするというようことは非常にフレキシブルに考えていかねばならないと思いますし、その提携をどこまで広げ、どこで離していくかという感覚が非常に大事だと思います。

大学発ベンチャーにはしかし、悠久に、自分の赤子を育て続けることが是であるというような感覚をお持ちの先生が日本には多いように思うのですが、その点石川先生はビジネスライクに、エグジットの戦略についても同意されているのかという点についてもお伺いしたいと思います。

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森本 石川先生は、私が知っている限り、学者の中では相当……何と言いますか、ビジネスが上手というか(笑)。

企業から協賛金をもらってくるのがとても上手な人です。

「上手」という意味は、向こうからやりたいと言わせるのが上手だということです。

なおかつ、エグジットについてもさばけていて、成功して会社を大きくしてエグジットしたいということも明確に言っています。

そういう意味では、珍しいのかもしれません。

小林 なるほど。木谷先生はいかがでしょうか?

木谷  京都大学の教員をしております木谷です。

森本さんと元同じ会社(マッキンゼー)にいました。

大学発ベンチャーのチャンスとリスクというテーマですが、私もたくさんそのようなケースを見ています。

まさにおっしゃる通りで、非常に素晴らしいと思います。

特にリスクのところで、事業をフォーカスし難いというのは本当にその通りだと思っています。

研究者、先生というのは、ひとつのものが実用化されて普及する段階になるとテクノロジー的にはこなれてきて、面白くなくなってしまうんですよね。

だからどこかで手離れして、それだけにフォーカスするような感じが必要かなと思うのですが、その辺りはどのようにお考えですか?

研究開発の分野をどう狭め、フォーカスさせるか

森本 まずはなぜフォーカスし難いかというと、まさにおっしゃる通り、我々は現在24人の会社なのですが、共同開発も含めると4つ、更に自分たちの事業もあります。

これは、教科書通りの選択でいえば、本来はあり得ない、やってはいけないことです。

それでもやはり有力企業から魅力的なプロジェクトの提案があれば、経営陣としてノーというのは難しい。

小林 やりたくなりますよね。

森本 共同開発の提案に対して、やりませんとはなかなか言えないんですよね。

そのうえで私の経験上、唯一「やりません」と言わせる力があるとするならば、それは投資家だと思うのです。

先ほどPrimeSenseという会社名が出てきましたが、同社は競合だったのでよく見ていたのですが、ある一点からビシッとゲーム向けのUIしか作らなくなりました。

あれは間違いなく、投資家がフォーカスさせた例だと思います。

他にもビデオを撮る技術や3次元センサーなど、いろいろなことをやっていたのですが、ある一点から完全にフォーカスしたんです。

それが、Kinectにつながり、見事3億ドル(約300億円)を超えるエグジットにつながったと。

それができるのは、私はガバナンスの力だと思うし、それができるのは、技術が面白いということではなくて、冷徹に数字をはじいて、「これだ」ということをやらせる投資家の立場なのではないのかと思っています。我々は強力な投資家を得て、まさに今その段階にいます。

小林 ありがとうございます。鮫島先生、何かありますか?

技術のオーバースペック問題をどう考えるか?

鮫島 弁護士の鮫島と申します。

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ジェスチャー関係のベンチャー企業はいくつかサポートしたことがありますが、その中でも先ほど卓球のような、あれだけ高速なものというのは見たことがなく、テクノロジーの面では御社が一番なのだろうと思っています。

往々にして、テクノロジーとコストというのは反比例し、テクノロジーがよければコストが高いですよね。

その中で、その応用が、いわゆるBtoCのテレビとのインターフェース、ゲームとのインターフェースということに若干違和感があります。

要は、技術のオーバースペックになっていないか、コストが合わないのではないかと、直観で思ったのですが、その辺りはどのようになっているのでしょうか?

森本 Kinectというのは3次元センサーを使っていて、非常に高いです。

私はCanestaにいましたからよく知っているのですが、どちらの技術も高額です。

大体200ドルくらいでしか市販できませんし、それが何千万台売れてようやく200ドルなんですね。

それに比べると、エクスビジョンの方は基本的にソフトウエア・ソリューションなので、市販されている部品を組み合わせてソフトを載せるだけなので、とても安く完成させることができます。

このような比較対象の観点からは安いという確信がありました。

コストが安くなるというか、コストを上げずに、高速認識ができるということですね。

我々は基本的にソフトウエア会社で、部品は全て外から買ってきています。

このスライドにもありましたが、Movidiusという会社のチップを使えば、自分たちでハードウエアを作らなくても、安く仕上げられるということが分かりました。

これが実は非常に大きな、重要なポイントでした。

非常に選択的にパーツを選んでいます。

小林 よろしいでしょうか?

鮫島 はい。

小林 では、次に丸さん。

 リバネス 丸と申します。

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永田さんが帰ってしまったので、おひとりで大変そうだなと思っていたのですが(笑)。

大学発ベンチャーも、この間十何年、1000社計画もありましたが、ブームが一度去って、最近また出てきている気がします。

昔の、2001~2002年くらいから言われていた大学発ベンチャーのブームと、今の流れはどう違うのか、それとも同じなのか、こういう状況が以前と変わってきている、というものがありましたら教えてください。

以前の大学発ベンチャーブームと現在は違うのか?

森本 正確に比較できるかどうかは分かりませんが、少なくとも、大学発にかかわらず、日本の起業コミュニティというのは絶対に大きくなってきています。

成功した例も増えてきています。

そのためかベンチャーを作ろうという時に、最初からエグジットを意識している形が相当多くなったのではないかと思います。

私が覚えている範囲では、前のブームの時は、とにかく会社を作るということありきで、それをどのように成長させ、エグジットさせるかという意識のないまま起業する人が多かったように思います。

なおかつ、大学がベンチャーの成功の便益をうけるために、ライセンスを守る仕組みは作ったけれど、一番大事な事業を成功させるということには意識が届いていなかったのではないかなという気がします。

今はもうベンチャーを作った段階で、大学生の皆さんがエグジットということを意識している気がするので、成功するかどうかは別として、全体のプロセスに対する学びはコミュニティ全体として蓄積されているという印象を持っています。

(続)

続きは 技術力は高いけれど…大学発技術ベンチャーがグローバルに活躍するには をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

石川先生は東大工学部の学生にとっては有名な先生らしいですね。私、東大に在籍しておりますが、違う学部なので存じ上げず…。次回がこのセッションの最後の配信記事です!お見逃しなく。(横井)

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