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【新】東大発ベンチャーの雄「ユーグレナ」が東証一部上場企業になるまで 【KT16-1B #1】

ICC TECH 2016 Session1B

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「技術シーズの事業化のケーススタディ 「エクスビジョン & ユーグレナ」」【KT16-1B】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!9回シリーズ(その1)は、ユーグレナCFOの永田さんにユーグレナの歴史とその事業内容についてお話頂きました。是非御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております


2016年9月8日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2016 「ICC TECH」
TECH Session 1B
技術シーズの事業化のケーススタディ 「エクスビジョン & ユーグレナ」

(スピーカー)
永田 暁彦
株式会社ユーグレナ
取締役 財務・経営戦略担当
リアルテックファンド 代表

森本 作也
エクスビジョン
COO

(モデレーター)
小林 雅
ICCパートナーズ株式会社 代表取締役

技術シーズの事業化のケーススタディ 「エクスビジョン & ユーグレナ」の配信済みの記事一覧

司会 それでは時間となりました。Session 1B、技術シーズの事業化のケーススタディ 「エクスビジョン & ユーグレナ」を開始します。よろしくお願い致します。

早速ですが、ご登壇者を紹介させていただきます。まずは、ユーグレナの永田さんです。

続いて、エクスビジョンの森本さんです。

小林 雅(以下 小林) はるばるアメリカからいらしていただき、ありがとうございます。

司会 最後にモデレーターは、ICCパートナーズの小林です。

小林 どうぞよろしくお願い致します。

皆さんおはようございます。元気がないですね、おはようございます!

このICC Techは、技術シーズ、すなわち技術系ベンチャーを特集したプログラムですので、かなり専門的になってきます。

早速ですが、名前順ということで、永田さんから会社の歴史、ユーグレナがどのような会社かお話を伺いたいと思います。

では、よろしくお願い致します。

東大発ベンチャーで初の東証一部上場企業

永田 暁彦 氏(以下 永田) 皆さんよろしくお願い致します。改めまして、ユーグレナの永田でございます。

ICC TECH 2016 Session1B


永田 暁彦
株式会社ユーグレナ
取締役 財務・経営戦略担当
リアルテックファンド 代表

慶応義塾大学商学部卒。独立系プライベートエクイティファンドに入社。 同社でプライベート・エクイティ部門とコンサルティング部門に所属。2008 年にユーグレナ社の取締役に就任。ユーグレナ社の未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。技術を支える戦略、ファイナンス分野に精通。現在はユーグレナ社の財務、経営戦略を担当するとともに、日本最大級の技術系 VC「リアルテックファンド」の代表を務める。

昨日までのICCカンファレンスでは、経営に関する話が多かったですが、今日は次のようなことを最初に話したいと思っています。

▶永田さんのユーグレナ参画の経緯は【ユーグレナの誕生-ライブドア堀江氏の支援と取締役・永田氏の参画】をご覧ください。

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ユーグレナにはいろいろなキーワードがありますが、一応、東大発ベンチャーとしては初の 東証一部上場企業であり、時価総額が現在(2016年9月時点) 1,300億円くらいになっています。

これが実現できた理由は150個くらい挙げられるのですが、そのうちの3つくらいを今日はお伝えできればと思っており、持ち帰ってもらえればと思います。

我々は2005年に世界で初めて、微細藻類ユーグレナの屋外大量培養に成功した東京大学発ベンチャーです。

ユーグレナというのはミドリムシの学術名で、和名がミドリムシです。

ICC TECH 2016 Session1B

資料:2016年12月 個人投資家向け説明会(2016年12月1日開催)の資料 P2 から引用

未だに、ミドリムシの商業大量培養を実施している唯一の企業です。

微生物について勉強した方なら当然ご存知だと思いますが、ミドリムシ自体は、実験室レベルでは誰でも培養できます。ただ、それを屋外で大量培養することが非常に難しいのです。

ICC TECH 2016 Session1B資料:2016年9月期 第2四半期決算説明資料(2016年5月24日開催)のP26より引用

ベンチャーらしい紹介をしますと、2005年に東大農学部のメンバーで創業しまして、メンバーの年齢は当時25~26歳でした。

小林 この会場で26歳以下の人はどのくらいいますか?

手を上げた皆さんは、これを聞いた瞬間にすぐに起業しないとならないということですね。

永田 まさにそうですね。

2008年~2011年の未上場時代に多くの大企業と資本提携を実施しまして、大学発ベンチャーと大企業連携のハシリだったように感じています。

自分たちの研究や事業化に大企業をとにかく巻き込むというやり方を取ってきて、大企業によるベンチャー投資の事例をたくさん作ったというのは、ある意味轍になったかなと思っています。

その後2012年にマザーズへ上場、2014年には東証1部に上場しました。

2015年の第1回日本ベンチャー大賞で初代の最優秀賞をいただきました。

ICC TECH 2016 Session1B資料:2016年9月期 第2四半期決算説明資料(2016年5月24日開催)のP24より引用

現在までベンチャーとしての資金調達を110億円程度行っており、時価総額が約1,300億円(2016年9月時点)となっています。

もうひとつ我々がプライドを持っていることは、黒字だということです。

直近で10億円程度の黒字を出しています。

相当規模の研究開発をしながら黒字を出すというのは非常に大変なことですが、逆に言えば、自由にお金を使えるということです。

これを今日ぜひ皆さんにお伝えしたいのですが、自分たちがやりたい研究開発に対して、年間何億円、設備投資に何十億円もかけられる権利を得るには、自分たちで会社を創る以外にないと思っています。

大量培養技術を特許申請しないワケ

永田 2015年12月に世界で初めて、東大を中心とした藻類研究のメンバーでミドリムシの屋外大量培養に成功しました。

ICC TECH 2016 Session1B資料:2016年12月 個人投資家向け説明会(2016年12月1日開催)の資料 P9 から引用

東大の農学部メンバーで創業しまして、スライド上、右下の写真が沖縄県の石垣島にある大量培養施設です。

今は違う設備を使ってますが。

ミドリムシの大量培養に関しては、我々はパテントを取っていません。

なぜかというと、料理のレシピのようなものなので、どのように培養するかを記載すると、他の国の人が日本で培養したミドリムシを持ち帰って、リバースエンジニアリングできてしまいますので、特許化しないという戦略を取っています。

ですから設備も完全非公開です。

非公開にすると、本当に作っているのかと疑われ、いろいろ叩かれることもあるのですが、それでも非公開にし続けるというのは極めて重要な戦略だと思っています。

小林 住所も公開していないのですか?

永田 住所は公開しています。

資金調達できないなら自分たちで稼ぐ

永田 我々はバイオマスの「5F」を基本戦略にしています。

「Food」、「Fiber」、「Feed」、「Fertilizer」、「Fuel」の頭文字を取って5Fと呼んでいます。

藻類学、農学の世界では当たり前の話ですが、この5つは全て使えると言われています。


資料:2016年12月 個人投資家向け説明会(2016年12月1日開催)の資料 P10 から引用

この5つはとても大切で、上位にあるものの方が重量単価の高いプロダクトということです。

例えば、松坂牛は100グラムで何千円もしますが、その下が油や肥料、飼料になるわけです。

この辺りはマーケットによって入れ替わりがありますが、リッター原価ベースでいえば、数十円の世界です。

世界中のベンチャー企業が我々と同様、藻類から燃料を作るというプロジェクトを推進していますが、アメリカでその分野で最も先行していたソラザイムという会社が燃料研究から方向転換しています。

どういうことかというと、技術的に可能性がないという結論に至ったのではなく、株主から資金を調達し続け、それを利用して何十億円もの投資を行うという戦略に綻びが出たのです。

これ以上、資金が調達できなくなりましたと。

油をいったん化粧品原料として売ることからスタートする、というように方針を転換したわけです。

日本のベンチャー業界は資金が集まらないとよく言われますが、我々も実際、2005年~2007年にはお金が集まりませんでした。

お金が集まらないことを前提に何をしたかというと、自分たちで稼ぐという選択肢を取りました。

ですので、なるべく高いものを売りまくろうということで、今、ミドリムシからできた食料を年間大体100億円以上売っています。

ICC TECH 2016 Session1B資料:2016年9月期 第2四半期決算説明資料(2016年5月24日開催)のP29より引用

この中にもご利用頂いている方がいらっしゃるかもしれないのですが、原価率が20%くらいですので、(仮に売上が100億だとすると)80億円粗利がでます。

そうすると、思い切り研究に投資することができます。

なるべく高いものをたくさん作って売って、研究開発で生産性を上げていき、コストを削減していく、そうすると次のマーケットにどんどん参入できるという流れです。

基本的に研究開発では、コストを下げる開発と、アプリケーションを増やす開発、この2つをひたすら追求しています。

実は、ミドリムシというのは、30年、40年研究していらっしゃる研究者が多く、アプリケーションの開発はある程度終わっています。

つまり我々は、ミドリムシが餌になることも、エネルギーになることも、化粧品原料になることも知っているわけです。

ですからとにかく安く作れば、新しいマーケットが拓けるということが分かっているわけです。

現在のコストは2005年の創業当時の10分の1に下がっています。

更にワンオーダー(一桁)、もう一回下げようと、今も研究開発に取り組んでいます。

先ほども申し上げたように、ヘルスケア事業、機能性食品、一般食品や化粧品などで収益を上げています。

一方でエネルギー・環境事業では何をやっているかというと、火力発電所のCO2を吸収して、水質浄化施設、つまり下水の窒素やリンをいただいて、ミドリムシを大量培養します。

こういう循環の経路作るというのが、エネルギー・環境事業の目指しているところです。

未来を創る事業と資金を稼ぐ事業の両輪を回す

永田 ミドリムシの培養設備は、燃料用と食品用では全く異なります。

食品は、少々高くなっても、とにかく安心・安全に作るということに尽きます。

燃料側は、いかに安く作るかを目指しています。

言うなら、露地栽培とハウス栽培のような違いがあります。

先日この燃料用培養プールについて、三重県多気町に3,000平米規模という日本最大のプールを建設するという発表をしました。

このように、循環システムを作る事業と、手元の資金を稼ぐヘルスケア事業と両輪で行っているというのが、我々の特徴であると考えています。

実際の売り上げも毎年2倍に成長していまして、2016年9月期がもうすぐ閉まりますが、今期は約111億円となっています。

ICCカンファレンス FUKUOKA 2017 Session 2A 「メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論」資料:2016年12月 個人投資家向け説明会(2016年12月1日開催)の資料 P14 から引用

この緑汁という商品を販売しているのですが、これが非常に売れています。

我々の会社の特徴は、研究開発でコストを10分の1、ワンオーダー(一桁)下げること、マーケティング力で売り上げを毎年倍増すること、そして成長過程ではかなりM&Aも駆使していて、研究開発型の企業でありながら、相当規模のファイナンスもしていることです。

この三位一体での成長が、我々が評価されている要素のひとつなのではないかと考えています。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鈴木ファストアーベント 理恵

続きは 「ミドリムシでジェット機を飛ばす」”バイオ燃料屋”への進化を目指すユーグレナ を配ご覧ください。

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【編集部コメント】

最後まで読んでいただきありがとうございます!「ミドリムシというのは、30年、40年研究していらっしゃる研究者が多く、アプリケーションの開発はある程度終わっています」とのお話を聞いて、話の本筋からは逸れるのですが、ユーグレナが生まれる前に苦労していた研究者に思いを馳せてしまいました。続編では、ANA等と共同でユーグレナ進めているバイオ燃料事業についてアツく話していただきました。ぜひご覧ください。(横井)

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