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楽天、ミクシィ…成長企業のCFOたちが参考にするIR戦略【F17-2A #6】

ICCカンファレンス FUKUOKA 2017 Session 2A 「メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論」

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「メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論」【F17-2A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!10回シリーズ(その6)は、ユーグレナ永田さんとメルカリ長澤さんに、資本市場の活用が上手い会社の事例についてお話しいただきました。マニアックな議論となりました。ぜひ御覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております


【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 2A
メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論

(スピーカー)
齋藤 剛
SMBC日興証券株式会社
株式調査部シニアアナリスト

長澤 啓
株式会社メルカリ
執行役員CFO

永田 暁彦
株式会社ユーグレナ
取締役 財務・経営戦略担当

米島 慶一
クレディ・スイス証券株式会社
株式調査部 マネージング ディレクター

(モデレーター)
嶺井 政人
株式会社マイネット
取締役 副社長

「メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論」の配信済みの記事一覧

嶺井 アナリストのお2人からは、楽天、GMOインターネット、ユーグレナ、そしてCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の名前が出たのですが、是非事業会社のお2人からも、この会社は資本市場の活用が上手いなと、ロールモデルにしておられる会社があれば教えて頂けないでしょうか。

では、長澤さんからお願いします。

投資家との信頼を大事にするミクシィ

長澤 色々とあるのですが、一つは米島さんもおっしゃっていましたが、楽天さんは確かにすごいなと思います。

今のマーケットキャップ(時価総額)に来るまでに、ジャスダックから始まって、長い時間をかけて築き上げてきている中で、その時その時で戦略的にIR戦略を変えてきているし、直近の公募増資では戦略的に外国人株主に売っていったりというところをやってきているので、企業のステージとストーリーに合わせてきちんと投資家に戦略的にアプローチしていっているなという感覚があり、ある意味王道かなと思います。

「王道のIR戦略」を取られているなというのは、すごく思いますね。

ICCカンファレンス FUKUOKA 2017 Session 2A 「メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論」

それから、面白いというかこれは立派だなと思うのは、ミクシィさんって、1年半くらい前に公募増資をされて…

嶺井 ミクシィさんも確か海外で…

長澤 そうですね。海外募集で公募増資をされて、(創業者で大株主の)笠原健治さんの分もその時に売り出されていてというのがあって、海外の株主を戦略的に取り込むというのもあったし、モンストもあって、ゲームの広告宣伝費に使うけれども、使わなかった時はきちんとお返ししますといったコミュニケーションを結構きちんと取られたという風に、ある投資家さんから伺ったことがあります。

最近、すごいバイバック(買い戻し)をしているんですよ。

ゲーム(事業)ってキャッシュがどんどん積み上がっていく中で、積み上がっても800、900億円くらいで終わりになると思うのですが、その中で100億円規模のバイバックをこの数か月間でされているので、色々な考え方があるとは思うのですが、ある意味真摯に投資家と向き合って、株価も堅調だし、投資家との約束事ではないですけれども信頼を大事にされています。

その時は取ることが大事だと思って公募で取ったけれども、実際に使わないのであればきちんとその分はお返ししますということです。

公募増資でバイバックなんて相反するからおかしいはずなのに、それを約束事としてきちんとコミットして実行されたというのは、素晴らしいなと思います。

嶺井 確かに。

ありがとうございます。

米島 ミクシィさんは、確か、僕の記憶が正しいとすれば、「チケットキャンプ」(を運営するフンザ社)を買うということで公募増資をされたような気がします。

ミクシィ、海外募集での公募増資を実施・約203億円を調達し借入金返済などに充当

ICCカンファレンス FUKUOKA 2017 Session 2A 「メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論」

ただ、モンストとか、利益がものすごい出ちゃったんですよね。

会社計画を上回って、100億円ほど上回りました。

そして、確かバイバックをやったというところで、結果的には同じなのですが、非常に(投資家との)コミュニケーションをしっかりしたなという感じですね。

正直言ってゲーム業界というのは、キャッシュが出たり急に業績が悪くなったり、株主とのコミュニケーションが非常に難しいところです。

ですから、僕も本当に長澤さんと同じような意見で、ミクシィは本当に上手くやったな、上手だなと思いました。

公募増資に明確な使途があった故の買い戻し

嶺井 そのバイバックについて、投資家はどう見ているのでしょうか?

この短期間で公募増資してバイバックというのは。

永田 証券会社しか儲かっていないのではないかと。

嶺井 そうそう、そういう見方もありますよね(笑)。

米島 あれは確かモルガン・スタンレーさんだったような。(笑)

使途が明確だったと思うんですよ。

何となく公募増資しました、何となく返しましたというのではなくて、確か(企業買収のための公募増資という)理由づけがすごくはっきりしていたので、最終的には「あ、そういうことなのだ」という風になったという感じがしていて、あまり、「何だこれ?!」のような感じにはならなかった。

(利益が計画を上回ったため株主還元を行ったということで)株価対策でバイバックをしたという訳ではないように見えたのですね。

むしろ株価が上がったところでバイバックしているので、そういう意味では株主還元でリスクを取ってくれてありがとう、なので、バイバックで少し還元しますと。

僕らからすると、少し利益が出てしまったので、といった感じに見えたと思いますね。

ミクシィの意図は分からないのですが、アナリストの立場で見ると、非常にリーズナブルなやり方だったのではないかなと思います。

嶺井 なるほど。

ありがとうございます。

ちなみに、長澤さんに伺いたいのですが、海外の場合ユニコーンが上場時期は遅らせながら未上場で調達して成長していくという姿があると思うのですが、そういった未上場の会社でどこか参考にされている会社はありますか?

ICCカンファレンス FUKUOKA 2017 Session 2A 「メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論」

長澤 そもそも我々が未上場で重ねてきたいと思ったのは、アメリカのUberやAirbnbなどのメガベンチャーがそういうことをやり始めていて、そういうことをやろうとしている投資家が海外で我々のことを聞いて下さって会っていたりするうちに、こういうポケットが最近あるんだという風に思って、国内外の投資家にずっとあたってきて、今でもずっとコミュニケーションは続けています。

参考にしたという意味では、超ビックネームですけれど、UberやAirbnBですね。

私自身も、そういったことが出始めた2011年頃のサンフランシスコで投資銀行の仕事をしていたので、そういったものが日本でも起き出しそうな雰囲気は感じていました。

そして、そういうムーブメントがここ5年くらいで起きてきたのかなと思っています。

嶺井 なるほど。

ありがとうございます。では永田さん、お願いします。

永田 参考にする会社ですよね?

嶺井 はい。

永田 アマゾンです。

嶺井 ほう。アマゾン? その心は?

利益が出ると残念がられるアマゾン

永田 投資をし続けて、トップラインが上がり続けることで利益が出ていなくても市場評価を得続けるという状態を、どうコミュニケーションして維持していくかというのは、我々のど真ん中の重要テーマです。

やはりファンダメンタルで、すぐ指標としてPERなど色々な論点になりますけれども、やっていることと未来を理解してもらって投資が維持し続けられるか。

まさに先ほどの、短期的な利益をどう出すかではない世界に持っていけるかということを、IRチームとしてはとことん考えています。

ですからそれを実際にやっていて、だから利益が出ると逆に株価が下がるみたいな事象が起こるという…

嶺井 利益が出たら残念がられるというのはすごいですね。

永田 そうです。

嶺井 もう投資できるところがないのだと思われるという…。これはすごいですよね。

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永田 我々はいかにバリュエーション(時価総額)とキャッシュフローを維持しながら、自分達の、例えば、通販におけるノウハウや、唯一のミドリムシという商材や、研究開発能力を、M&A先に対してどう導入していくか。

キャッシュフローというのは、当然財務キャッシュフローの方も含めてですが。

例えば、通販事業というのは、共通項目が多すぎて、M&Aするだけで営業利益率が一瞬で5パーセント、10パーセント改善できるんですね。

それを自分たちが持っている株価を活かした形でM&Aを続けられるという環境をいかに維持するかということは、非常に適切な戦略だと思っているし、株主にとっても意味がある。

そういう意味では、キャッシュフローとバリュエーションを中心に据えたということは素晴らしいことだなと思っています。

市場成長と自分たちの成長にいかに活用していくかということに振り分けていくということなので、言っていることは一緒ですね。

バリュエーションとキャッシュフローを大切にしながら、短期的な利益ではなくて、戦略的にファイナンスを活かしていくということを実現している会社、ということかなと考えています。

(続)

編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/Froese 祥子

続きは 財務のプロたちが評価したメタップスの資金調達とは? をご覧ください。

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【編集部コメント】

続編(その7)では、メタップスが実施した新株予約権と私募債をセットにした調達スキームについて、マニアックに議論しました。元グリーCFOの青柳さんにもコメント頂きました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。

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