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5. 社会と自分との「境目」のために、我々は嗜好品を欲す!

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「大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン6)」全8回シリーズ(その5)は、引き続きリバネス井上 浄さんによる解説。人間の「境目」を保つための「自分を取り戻す能力」について語ります。人がストレスを受ける状態はなぜ起こるのか? そもそもストレスとはどんな状態なのか。その緩和を助ける「嗜好品」とは? 刺激的な発表が続きます。ぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット FUKUOKA 2022は、2022年2月14日〜2月17日 福岡市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット KYOTO 2021 プレミアム・スポンサーのリブ・コンサルティングにサポート頂きました。


【登壇者情報】
2021年9月6〜9日開催
ICCサミット KYOTO 2021
Session 2B
大人の教養シリーズ 人間を理解するとは何か?(シーズン6)
Supported by リブ・コンサルティング

(スピーカー)

石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

井上 浄
株式会社リバネス
代表取締役副社長 CTO

北川 拓也
楽天グループ株式会社
常務執行役員 CDO(チーフデータオフィサー) グローバルデータ統括部 ディレクター

深井 龍之介
株式会社COTEN
代表取締役

(モデレーター)

村上 臣
リンクトイン・ジャパン株式会社
日本代表

「人間を理解するとは何か?(シーズン6) 」の配信済み記事一覧


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最初の記事
1. シーズン6突入! 前シーズンまでの「人間の理解」を振り返る

1つ前の記事
4. なぜイノベーションには「境目」が重要か。免疫組織学から考察するその必然性

本編

井上 次にディスカッションしたいのは、人間にはなぜ「自分を取り戻す能力」があるのかという点です。

村上 そうですよね。

井上 ここなんですよ。

ストレスを受けるのは、世界を理解したいから?

石川 どうしてストレスを受けるかと言うと、すごくシンプルで、それが自分にとって予測不可能、予測と違うからです。


石川 善樹
公益財団法人Well-being for Planet Earth
代表理事

予防医学研究者、博士(医学)。1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。公益財団法人Wellbeing for Planet Earth代表理事。「人がよく生きる(Good Life)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学、概念工学など。近著は、『フルライフ』(NewsPicks Publishing)、『考え続ける力』(ちくま新書)など。

世界が予測通りであれば、ストレスを受けないはずです。

だから本質的に、人間は世界を理解したいのだと思います。

予測通りにしたいということです。

予測通りにするには、予測から外れる現象を見に行くのが最も適切な戦略です。

そうするとストレスを受けるので、それを緩和する。

井上 この能力が備わっていると!

石川 ということではないでしょうか?

井上 人間の本質によって動くとき、前に進むために必要な能力の一つということですね。

村上 トラなどの動物がどう考えているのかは分かりませんが、例えば我々が狩猟民族だったとして、動いている動物に石を投げて狩りをすると、美味しいものが食べられます。

先ほど、期待報酬誤差の話がありましたが、結果が期待を上回ると気持ちいいので嗜好品になって、下回るとストレスになるわけですよね。

井上 そうです。

村上 結局のところ、人間は行動と結果のループでしか生きていけないので、上回るか下回るかによってさまざまなことが決まっていく気がします。

喫煙所の雑談、喫茶店で一息、お酒…全部「予習復習」である

井上 この能力があるのはとてもすごいことだと思っていて、色々な気づきがたくさんあった嗜好品のセッションの、延長戦の対談の記事が実はあります。

冊子を持ってきたので、先着1名様にお渡しできます(笑)。

その対談の中でも話したのですが、ストレスを受けている時は全部の情報が頭に入っている、つまり何か1つを解決しようとしているのではなく、情報を大量に浴びている状態で、光で言えば、全ての色が混じって真っ白になっている状態ということです。

そういう全部の情報を取り入れている状態の際は、気に入らないからと特定の光を攻撃しにいくのではなく、一旦消化して自分色に整理整頓する時間を持つことが重要です。

「喫煙所で物事が動く」という話をよく聞きますが、それは整理をしている途中で、話がどんどん盛り上がっていくからではないかということです。

北川 なるほど。

井上 そういうのって一見、だいたいサボっているように見えますよね(笑)。

村上 外見的にはね(笑)。

井上 お酒を飲んでいるのも、お茶をしているのも、忙しい人から見ると「楽しそうでいいよね」と思う。でも実は、違うのです。

石川 予習復習で言うと、復習をしながら予習もしているということですね。

井上 そうなんです。

とっても大事な崇高な時間なのですが、あれに何とか良い名前をつけられないかなと……。

村上 なるほど。

石川 「予習復習」でいいのではないでしょうか(笑)。

村上 浄さん、この後のページはいつものスライドですか?

井上 はい、行っちゃってください。

(壇上笑)

▶編集部注:このスライドは井上さんのプレゼンを締める定番となっています。

井上 ということで、まだまだ研究が足りないと反省しました。

この嗜好品というテーマ、データも入れていったら面白いのではないか、というところまで来ました。ストーリーというものが重要です。

この時代、強く反応を起こすためには、境目で折り合いをつけることが大事で、そのためには自分のストーリーで、自分でグリップができて、自分で予習復習できる時間を取るべきです。

その上で改めて、外に出ていくぞという強い意志で強い反応を起こしてくのが重要だと思います。

村上 ありがとうございます。

「次世代の嗜好品」を開発中

北川 ところで、浄さんの好きな嗜好品は何ですか?

井上 うーん……チョコですかね。

チョコレートは、第5の嗜好品と言われていますが、今、ストーリーの作りやすい「次世代の嗜好品」を作ろうとしています。

その中ですごく良かったのが、クロスモーダルです。

香りの種類でスピード感が変わるクロスモーダル現象を発見:医療技術ニュース – MONOist (itmedia.co.jp)

人には五感がありますよね。

五感は一つ一つが気持ちいいですが、あれをクロスさせるともっと面白くなるのです。

例えば、視覚と味覚についての、かき氷の話を聞いたことがあると思います。

色が全部違うけれど味を同じものにすると、香料を入れなくても、青いものはブルーハワイ味に感じるというものです。

このクロスモーダルをうまく利用した製品がありますし、また、その研究をしている先生がいます。

村上 ダイエット系でもありますよね、ご飯を青く着色すると食欲が全くなくなるようです。

食欲をそそる色と抑える色(Panasonic BUSINESS)

井上 そうです。

その中で、新しい嗜好品というか、きっかけや刺激ができるのではないか、それを味わっている時間が自分の時間になるのではないかと考え、今、開発中です。

これから良いものを作ります。

北川 良いものを見つけたら、ぜひ、体験させてください。

井上 VRで、野球ゲームやテニスゲームがありますよね。

球を打つ時に、球を目で見てブルブルっという感覚を感じます。

しかしこの感覚を一瞬止める時間をとると、めちゃくちゃ気持ちいいのです。

普通のテニスゲームだと、単にボールを打ち返しているだけですが、例えば漫画でも、必殺技やかめはめ波を出すときは、一瞬止まって何コマも続きますよね。あんな状況です。

村上 スローモーションのような…。

井上 そうそう、そういうちょっと止める時間を作れると、超気持ちいいのです。

北川 面白い。

石川 期待値でドーパミンが出そうですね。

井上 出ていました。そういう研究結果があり、学会発表前にその研究者に体験させてもらいました(笑)。

あれは次世代にものになるかもしれない! 超気持ち良かったです!

ということで、研究を今後も続けていきたいと思います。

歴史、境目、嗜好品…ここまでのまとめ

村上 なるほど。

さて、ここで一旦中締めとしまして、後半戦にまいりましょう。

ここからは、もう少し人間を理解するためにウェルビーイングの視点で話を聞きますが、ここまでをまとめます。

まず、歴史を学びました。

思考のOSが大きく変わる時は、3条件が整った時であるということが深井さんの投げ込みにより分かりました。

圧倒的に暇であること、違う意見を持つ人が近くにいる多様性、そして死ぬか生きるかの圧倒的な危機感があること。

今の時代、昔とは違って日本でも多様性が出てきて、コロナで死ぬかもしれないという危機感があり、奇しくも条件の揃うタイミングが来ています。

浄さんからは、リンパ組織論の話から、境界ができると強い反応が起きやすいということを聞かせていただきました。

不便な状態ですが、ICCサミットも開催できましたので、(主催者の小林)雅さん本当にありがとうございます。

このピンチはチャンスになる、つまり大きくアップデートできる、強い反応を見せられるタイミングが来ているのではないか。

深井さんと浄さんの話に共通していたのは、なぜか個人に落ちているということです。

我々は組織論の話などをしがちですが、深井さんは「個人がそう思った時に異能が生まれる」と、浄さんも嗜好品の話で、個人が気持ちよくなって、個人がことを起こすとおっしゃっていました。

そして次に、(石川)善樹さんから投げ込みをいただきたいと思います。

(続)

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続きは 6.「よく移動する人」がパフォーマンスが高いのはなぜか をご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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