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1. 輸送や点検を担う産業用ドローンで、生活インフラを変えていく「ACSL」

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ICC FUKUOKA 2021で設けられたランチタイムのセッションで行われた、注目の産業トレンドのプレゼンテーションの書き起こし記事を4回シリーズでご紹介します。その1「テクノロジーが生活インフラを変える」というテーマで登壇したのは、ACSLの鷲谷 聡之さん。産業用ドローンの現在と未来をプレゼンします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2021 プレミアム・スポンサーのベクトル にサポート頂きました。


【登壇者情報】
ICCサミット FUKUOKA 2021
Session 3A
【ランチョン・セッション】テクノロジーが生活インフラを変える
Supported by ベクトル

<産業用ドローンの今後>
鷲谷 聡之
株式会社自律制御システム研究所(ACSL)
代表取締役社長 兼 COO

帰国子女、イギリス・フィンランドなどで幼少期の大部分を過ごす。早稲田大学創造理工学研究科修士課程修了、専攻は環境建築工学。カンボジアでの省エネルギー住宅の可能性やコミュニティ形成について研究。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、日本支社およびスウェーデン支社にて、日本と欧州企業の成長戦略、トランスフォーメーション、組織再編などの経営改革プロジェクトに従事。2016年7月より日本初のドローンメーカーという新産業創出という機会と可能性に惹かれACSLに参画。

その他もチェック! 注目の産業トレンドプレゼンテーション

2.「ハチドリ電力」は、実質自然エネルギー100%の電力への切り替えで、地球温暖化を止める選択肢を提供する
3.「暮らす」「働く」を提供して、路上生活の脱出と再出発を支援する「Homedoor」
4.「メタジェン」は、「茶色い宝石®」から価値ある情報を取り出し、新たな医療・ヘルスケアの創出を目指す


鷲谷 聡之さん ACSL代表を務める、鷲谷と申します。

本日は産業用ドローンで、空の世界がどう生活インフラを変えていくかについて、未来を見据えた話をいたします。

弊社は、ドローンの機体を作っているメーカーです。

▶ACSLの製品一覧

目指しているのは、未来のトヨタやテスラです。

今日は、機体だけではなく、機体を使うユーザーがどういう未来を見ているのかも、お話しさせていただきます。

2022年ドローン操縦が免許化、市街地上空の飛行が可能に

ドローンの世界にとって、来年2022年は極めて重要な年です。

というのも、僕たちの頭の上をドローンが飛ぶことが合法化されるからです。

2022年新設ドローン操縦ライセンス制度導入ガイド(DRONE)

2020年12月、日本政府はドローンに関する法律の大枠を示しました。

ドローン操縦、国が免許制度 市街地上空の飛行可能に(日本経済新聞)

まず、車と同じように免許が必要になります。

そして、車検が必要になります。

ドローンの型式認証と呼びますが、ドローンそのものの車検が必要になるのです。

自動車の世界は、運転する人は運転免許によって運転の許可をされていて、車は車検などで安全性が保証されており、道で使用されています。

それと同じ世界が、ドローンにも訪れるのです。

ドローンが有人地帯において頭の上を飛ぶ状態で、これをレベル4(※)と呼びます 。

▶編集注:有人地帯における補助者なし目視外飛行(国土交通省より)

遠隔診療で処方された薬をドローンで離島へ

今日は、物流の世界がどう変わるか、物流の未来についてお話しします。

ドローンが渋谷のど真ん中で飛ぶことは、絶対にないと思います。

それは危なすぎるので、実現したとしても100年後くらいでしょうか。

最初は最も安全な場所、つまり、人のいない海の上だと思っています。

これはANAとの、嵯峨島(さがのしま)での取り組みです。

 

 

[ドローン実証実験レポート]Vol.02 ANA、五島市の離島間で「ドローンによる処方薬配送」(DRONE)

五島列島にあるこの島には高齢者が住んでいますが、健康状態などの診察を受ける際は、本島にいる医師から遠隔で受けています。

本島に行くことがなかなかできないので、遠隔診療技術を活用しているわけです。

遠隔診療ができたとして、薬や湿布、保湿剤はどうやって運ぶのでしょうか?

物理的な物の移動の問題を解決しなければ、遠隔診療は社会実装されないのです。

ANAが取り組もうとしているのは、それに向けた1つの改革です。

島の高齢者は、クリニックからアバターロボットnewme(ニューミー)などを使い、4Gや5Gなどの通信技術を活用した遠隔診察を受けています。

ANA、アバター×ドローン「遠隔医療」を五島市で成功–ドコモ、長崎大学、ACSLらと(CNET Japan)

遠隔診療の際、使用用途など、薬についてきちんと説明をした後、薬を届ける必要があります。

届ける行為を可能にするのが、ドローンなのです。

なぜなら、ドローンは自動で飛ぶので、飛行にあたり、誰も介在する必要がないからです。

テクノロジーが可能にした医療改革

今回の実証実験の際、風に注意を払っています。

スタートアップであるメトロウェザー社が、リアルタイムで風の環境をモニタニングしているので、それを使って、安心と安全性を担保します。

ドローン安定運航に向けたリアルタイム風況情報提供に関する実証実験を開始(PR TIMES)

タブレット上にある離陸ボタンを押すだけで、ドローンが海の上を5km飛んでいくのです。

風によって揺れることもありますが、健気に、薬を届けるためにひたすら飛びます。

羽田空港から約1,000km離れた五島列島についても、4Gや5Gの技術を使えば、遠隔での管制が可能なのです。

カフェなどから航空管制をする世界も、将来的に実現するかもしれません。

ドローンが目的地に到着すると、QRコードを使ってGPSのズレを全て補正し、画像処理のみで着陸し(※) 、薬も自動的に切り離されます。

▶編集注: ドローンはGPS情報で飛行し、着陸地点に置かれたQRコードを認識して着陸する。

その後、ドローンは本島に飛んで戻ります。

今はまだ人の頭の上を飛ぶことが許可されていないので、クリニックから「患者の家の前まで」薬を届けることはできません。

しかし、来年(2022年)からは可能になります。

離島に住む高齢者に、本島からドローンが薬を届ける世界が、1、2年後に来るということです。

これはドローンのことを語っているのではなく、医療の改革なのです。

遠隔診療、5Gなどの通信と同様、ドローン技術も1つのピースですが、全てがつながると生活インフラが変わると強く思っています。

ドローンが人に代わり下水道管を点検

2つ目は、皆さんが実際に目にする機会はないと思いますが、インフラ点検も劇的に変わってきていることをご紹介します。

今、全国で農業水利施設が作り直されていて、それには1~1.5m半径の、人が入るには狭い土管が使われています。

▶7,582カ所のうち4,033カ所で耐用年数を超過。農業水利施設の老朽化進む。(アグリの樹)

私たちの生活には、土管形状のものが無限に存在しています。

例えばトイレがきれいに流れるのは下水道管があるからで、おいしい水が飲めるのは浄水管があるからです。

ですから、生活インフラにおいては、どう管を直すかは極めて重要なのです。

しかし汚い空間には誰も入りたくないので、ドローンが、まっすぐ管の中を飛んで代わりに点検しています。

人が入口にドローンを設置するだけで、映像や点検結果を取得するという世界が来ているのです。

これは、ドローンが真っ暗の管の中を飛んでいる映像ですが、ドローンの照明で、周りが明るく見えるように照らしています。

管の真ん中を正確に飛ぶよう、衝突回避のセンサーをつけたり、独自の制御ロジックを作ったりして、まっすぐ飛べるようにしています。

映像を見ると、管の中で浮遊しているように見えて、近未来的な印象で、少し気持ち悪いですよね。

しかしこれが、未来の点検のあり方です。

きつい・汚い・危険な業務を担うロボティクス技術

人が点検する世界ではなく、人が気づかないところを、ドローンもその1つだと思いますが、ロボティクス技術が点検してくれるのです。

そしてそれによって人が辛い思いをしなくてもよくなり、作業員が下水管に入らなくてもよくなります。

これがこの先1、2年で実現できる、生活インフラの未来の姿だと思います。

ドローンは、金具の付いたコンクリートの土管と土管の接合部分を通っても、まっすぐ飛んでいます。

多少左右に揺れても、衝突回避センサーによって、また真ん中にすっと戻って点検を続けます。

ロボティクス技術が実現するのは、海を越えて薬を届けることや管の中に入ることなど、きつい・汚い・危険といった、人がやりたくない業務の省人化です。

そういう近未来が、もう私たちの手の届くところに来ていると思います。

以上です、ありがとうございました。

▶こちらも合わせてご覧ください。
新企画のランチョン・セッションで、社会の変化に応える最新テクノロジーにキャッチアップ【ICC FUKUOKA 2021レポート】

(終)

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編集チーム:編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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