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「人間力ECってなんだ!?」カメラのキタムラ逸見氏が語るオムニチャネル戦略【C16-4 #3】

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「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコム青木さん、独自性のあるプライベート・ブランドを強化するオイシックス高島さん、オムニチャネルの成功事例であるカメラのキタムラの逸見さんをお招きし、「Amazon以外のEコマースはどのように進化するのか?」をテーマに議論しました。

(その3)は「人間力ECってなんだ!?」カメラのキタムラ逸見氏が語るオムニチャネル戦略です。是非ご覧ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております


登壇者情報
2016年6月25日開催
ICCカンファレンス CONNECTION 2016
Session 4
「Amazon以外のEコマースはどのように進化するのか?」

(スピーカー)
青木 耕平 株式会社クラシコム 代表取締役
高島 宏平 オイシックス株式会社 代表取締役社長
逸見 光次郎 株式会社キタムラ 執行役員 経営企画室 オムニチャネル(人間力EC)推進担当

(モデレーター)
守屋 彰人 株式会社ディー・エヌ・エー EC事業本部長

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【本編】

では、キタムラの逸見さんよろしくお願いします。

逸見自己紹介

逸見 キタムラが5社目になります。元々三省堂という本屋で本を売っていました。本を売っている中で、ネットで何とか届けられないかな、と思いました。

要は、本は定価販売なので、地方に行くと流通が悪いため何でも在庫があるわけではなく、取り寄せ注文して、また取りに来るのに交通費使って来店したり、すごく買うのが大変なのですよね。交通費の方が本代より高いということがよくあったので、それで何とか出来ないかなと考えました。そんなタイミングにソフトバンクがインターネット書店を立ち上げるという話があって行きました。

守屋 1994年に出張の時に本屋に行ったら、逸見さんがいた可能性があるということですよね。

逸見 十分ありましたね(笑)。

ソフトバンクで立ち上げたベンチャーが、今のセブンネットショッピングです。だから、ずっと鈴木(康弘)さんのカバン持ち(笑)をやっていたのですが、その中でなかなか後発のAmazonに勝てず、何が違うんだろうと思い、見に行こうと思ってアマゾンジャパンに入りました。

たしかに、システムや物流などの仕組みは非常に素晴らしいし、非常に合理的であることが分かったのですが、ただ日本の商習慣や実店舗がないという点は、私の考え方としては、日本ならではのEコマースの発展という意味で足りないかなと思いました。

そこで実店舗を持つ会社に戻ろうかなと思っていたら、ちょうどイオンから声が掛かって、先ほどのネットスーパーを作りました。このネットスーパーも始めはいわゆる働く女性が使うのかな、と思いましたが、圧倒的にそうではないんですよね。

守屋 やっぱり主婦が多いですよね。

逸見 はい。始めは試し買いするから、重いモノかさばるモノを買いますが、生鮮が売れてくると、やっと定着して来ているのかなという感じでした。

そのときも、自分が買っているいつものお店の商品が届かないと、クレームが来るので、今みたいな店出荷ではないダークストア運営というのは、生鮮やデリカのロス率も上がってくるし、またお客さんの支持はどうなのかな、と見ています。

そんな中で、イオン全体のネット戦略も見ることになり、テナントも含めた全社の店舗・ネット事業を見る中で、今いるキタムラは元々イオンに280店くらい出店していますけれども、こういう専門性の高い分野でECをやったら面白いのではないか、という考えを持ちました。

今日もカメラを持って来ているように、私は写真が大好きなのですが、それもあって、キタムラに入りました。キタムラに入って、まずはECの立て直しをやって、今は全社的なマーケティングという要素がないので、それらを含めたオムニチャネルを考えています。

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これは、うちの北村会長から出ているメッセージです。経営陣である私がやっている仕事は、単純に2つだけで、EC含めたネットの数字を、とにかく経営陣に見える化してあげたこと、それから会社のあっちこっちにあったネットの機能や組織の整理と、全社とネットの評価軸を揃えて、一緒に仕事しやすくしたことですね。

北村さんが正月に「オムニチャネルについて考えた」と語った中で、オムニチャネルというのは、全国にバラバラとある1,300の店をお客さんと繋げてくれる便利な道具である、一方で、商品開発はしっかりやらないといけないということです。

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キタムラがカメラを取り扱っていることは皆さん知っているのですが、カメラのキタムラでは、スマホも売っていますし、スタジオ事業もやっています。3番目は1番知られていないiPhoneの修理事業です。国内でAppleストアを含めて、iPhoneの正規修理代理店は約100店ですが、いまスライドに載っている数より1店舗増えて、57店をキタムラがやっています。

守屋 そうなんですね。過半数をキタムラさんが運営されているんですね。

逸見 このメインユーザーが18歳から22歳なんですよ。なので、ツイートをザーッと拾って見ていると、「iPhone壊れてAppleに連絡したら、カメラのキタムラに行けと言われた」というのが多くありますね。なぜカメラ屋?そもそもカメラのキタムラってどこにあるの?という感じです。

守屋 各店舗に、キタムラというロゴは入っているのでしょうか?

逸見 入っています。

守屋 そうなんですね。

逸見 黒いキタムラと呼んでいますが(笑)、黒いApple風のキタムラロゴで、Appleに決められたロゴを使っています。従業員もスライドの写真のように黒い服を着て接客しています。

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おかげ様で、一昨年430億円を売上げまして、宅配と店受取を足したの関与売上で、大体ECのランキングで言うと10位にいます。

守屋 すごいですよね。関与売上という定義はどういうものでしょうか?

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逸見 ECの悩みどころは、宅配でしか評価されない部隊だということです。実は、会社の中での宅配の売上は、うちは10%いっていますけど、ほとんどのところは3~5%程度で、経営陣としてはそんなところに誰が大きな投資をするかという話になるわけです。直接的な利益も低いからです。

去年の数字で言うと、宅配が117億、店受取が302億で、圧倒的に店受取の方が多い。この宅配の3倍の店受取の数字を伸ばしたら、会社としてもプラスだと考えて、ただいっぽう宅配事業で収益出しておかないとそちらの貢献度も評価出来ないから、宅配と店受取を足した関与売上にしようという考えです。

守屋 先ほどおっしゃっていただけの店舗数があったら、大体の人が家の近くにキタムラがあるという感じですよね。

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逸見 そうですね。ただ、やっぱり店でどんなサービスをやっているかも知らないし、専門店は入りにくいですからね。

だから、いつもマーケティングの人に分かりやすく言っているのは、全国に1,300店のランディングページがあって、とにかく送客さえしてしまえば、あとは専門知識を持った人たちが初心者向けから玄人向けの接客までやってくれるので、オムニチャネルが出来るに決まっています、ということです。

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自社サイトが179億円の内、7割の138億円が店受取で、お客さんは店受取りを選ぶ方が多いです。セブン&アイグループにいたときも、7割が店受取でしたけど、セブン-イレブンでしたら、分かりますよね。近くにあるし、24時間開いているし、現金で払えますしね。

うちは10時から19時までしかやっていないお店が大半で、駅から遠い所にあって、どうしてだろうと思ってお客さんに聞いたり、従業員に聞いたりすると、やっぱり専門性が高いかつ単価も高い商品だから、ちゃんと説明を聞きたいというニーズがあります。

特にカメラは安く買うと、みんな使い方が分からなくて困るんですよね。こんな入門機ですら、フルオートで撮影している人がいっぱいいます。本当はもっと色々なモード撮影などを理解したら、色々な写真が撮れて楽しいのですが。結局、皆さんは店に聞きに来ます。

守屋 街の電器屋さん、パパママショップというものと、位置づけが近いですか?

逸見 そうですね。さらにうちの店の人間は、ネットで売れれば売れるほど、受取7割が店受取ですから、店が儲かるということを知っているので、一生懸命勧めますね。

守屋 なるほど。

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逸見 これが先ほどの整理ですね。宅配売上と店受取受注ですね。ECから見たら受注なので。これは予算には組めないのですが、目標として年初に持ちます。

なので、宅配の予算と店受取の目標を足した関与売上という数字が、毎年毎年のEC部隊の目標ですね。これが大体、会社売上の3分の1の数字になります。

守屋 なるほど、着実に伸びているということですね。

逸見 はい。でも、なかなか苦戦はします。

なぜなら、宅配は売上を伸ばすのが難しいからです。皆さんが値引きし出したり、ポイント10倍キャンペーンをやったりしたら、確実に売りは負けます。だから、そんな競争するなという話をしているし、経営陣にも売上伸ばすだけならバカでも出来ますよ、という話をしています。特に、ECは出来てしまうので。

だから必ず利益を見ましょう、ということです。その代わり、店貢献はしっかりしますからという話です。

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これは利益の話です。必ず、ECは儲かりやすいですよね、と言う人がいるのですが、そんなことないですよ。この通り大きな変動費がかかりますので。

変動費はどうしても下げにくいですよね。ここはスケールメリットが出て来ないと、カード会社が料率下げてくれないし、物流費も結局変動費ですよね。

ここを理解しないと、イオンのときもそうですけど、よく言われたのが、ショッピングモールを作るには100億円単位かかるけど、ECは初期投資5億円くらいで済むじゃないかということです。

間違ってはないのですが、その発想では儲からないですよね。変動費と値付けの中の粗利のコントロールをしっかりして、これが現場まで徹底しないと儲からないということです。なので、うちは儲かるECになっています。

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先ほどのクラシコムさんが羨ましいなというくらいに、うちはバラバラの客層ですね(笑)。これはTポイントのヒストグラムで、店頭のお客さんは7割がTカード出しますから、母数としてはしっかりしています。青が男性で、赤が女性で、上に行くほど年齢が上がっていきます。

カメラのデジタル一眼を買う人は、圧倒的にシニアの男性が多いですよね。しかし実際に入社後1週間、お店に入って見たときに、カメラ買いに来る人はそんなにいないですよ。圧倒的に写真をプリントしに来る女性が多いのです。当たり前ですが、そんなに毎年カメラは買わないですもんね。

守屋 小さいお子さんがいるお母さんは現像して、友だちにあげるんですかね。

逸見 そこが圧倒的に多いです。だから、スタジオマリオも30代の女性が多いのは、お母さんがTカードを使っています。お子さんを連れたご両親と、七五三だったら、その上のおじいちゃんおばあちゃんも、みんなが来るわけですよね。

スマートフォンは、同じハードウェアでもデジタル一眼カメラとは全然客層が違います。更に先ほどのiPhone修理は18~22歳です。

カメラを買うお客さんは、購買頻度は5、6年に1回ですが、好きな方はほぼ毎月来店してくださるのではないかと思います。一方で、何でわざわざキタムラに来るのか?という話を、あちこちで聞いてもらいました。そうすると、プリントするのに、毎回プリンターの高いインクを買うのは嫌だし面倒くさい、だからキタムラに来る、というコメントがありました。

守屋 いい色が出ないというのは、家と写真屋さんでは全然違いますよね。

逸見 そうですね。そしてプリントした写真の6割以上は人にあげるためです。だったら、インクカートリッジ置くよりも、人にあげるための綺麗な封筒など置く方が良いんじゃないかと。店があるから、こういうことがしっかり聞けてアプローチ出来ると思っています。

オイシックスさんも結構ユーザーヒアリングしますよね。そういうのは大事かなと思っています。

マーケティングの考え方

主要客層の併売率の話です。要は、うちはプリントが売れれば儲かるんですよ。

カメラ買った人は4割プリントしてくれて、プリントした人はその1年以内にプリントする人は9割います。

守屋 大量のコンフィデンシャルデータが出ていませんか(笑)?

逸見 別にこんなの当たり前の話です。これを知っていても、何も出来ないですしね。しかも荒い分析なので、実態はもっと伸びしろがあると思っています。

スタジオを使っている人が意外とプリントしてくれないとか、スマホを買っている人がなかなかプリントまで繋がっていないですよね。

1番伸び率がありそうなのが、アップル修理の18歳から22歳までですね。この人たちは、チェキも楽しんで来ているし、どんどん写真に親和性を持って来ているから、新しい商品として使っているわけですよね。こういうところをどうやって取り組むかという話です。

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そもそも、写真写真と言っていますが、メインは1枚だけのプリントではなく、左側のフォトブックというアルバムにするのか、右側のシャッフルプリントと呼ばれている複数画像が入るタイプです。これはデジタルだから出来る話であって、紙のプリント時代は出来ませんでした。

左側は、セミナーのたびにしゃべっていて、セミナーを聞いた人からこれすごく便利ですねって言われます。なぜかというと、撮った写真を自動で選定して編集してくれます。1年間で5,000枚の写真を撮ったとしたら、そこからこの1冊のフォトブックを作るというと、自動的にそこから100枚の良い写真を選んでくれて、しかも自動レイアウトしてくれます。その上で、さらに残りの4,900枚の写真から候補写真を選んでくれて、入れ替え候補はこれですと薦めてくれます。

守屋 なるほど。

逸見 写真ってプリントしたくないわけではなくて、写真データが死ぬほど手元にあって、整理するのが面倒くさいですよね。でも、残さないといけないという気持ちだけはあって、まさにソリューションビジネスとして、写真屋は変わっていくと思っています。

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なので、プリントに全ての活動をつなげるということで、カメラを売ったりiPhone修理をしたりをやっていきます。

最後にコソッと書いてある、「データベースを機軸とした新しい写真ビジネスの構築」というのは、画像クラウド作ったら、お客さんもっと便利になるよね、ということですね。自動編集して、InstagramやGoogle+みたいに、「この写真おすすめです。この旅行のときのフォトブックをこう作りませんか?」という提案をします。

うちが強いのは、店があって、アウトプットが出せることです。店があるから、ネットが苦手な人、デジタルが苦手な人もサービスが受けられます。アウトプットがあるから、形に残せる。そういったところで、他のネット企業やメディアと、どんどん組んでいけるのではないかと思っています。

守屋 なるほど、有難うございます。

プリントアウトする人がどんどん減っている一方で、スマホが普及して、ものすごい数の写真がスマホ上に溜まっているという状態なので、色々なプリントの仕方のライフスタイルを増やすことで、そこをしっかりV字回復させましょうというような戦略ですね。

逸見 写真はなくならないということです。

守屋 何で人間力ECと呼ばれるのかなと思っていたのですが、ご説明を聞いて、数多くの店員さんのノウハウを駆使して、収益に繋げていこうと理解出来ました。有難うございます。

(続)

編集チーム:小林 雅/藤田 温乃

続きはこちらをご覧ください:「物販を超えたECの方向性とは?」北欧、暮らしの道具店・カメラのキタムラ・オイシックス各社の顧客エンゲージメント戦略

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