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【最終回】2017年12月28日、HAKUTOは月に向かう【F17-6D #12】

ICC FUKUOKA 2017 Session 6D

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「民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦」【F17-6D】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!12回シリーズ(その12)は、会場からの質問で、「月は誰のもの?」という宇宙における権利について議論しました。また、最後には、各登壇者に熱いメッセージを頂きました。2017年12月28日にHAKUTOは月に向かいます。是非応援ください。

ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております


【登壇者情報】
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
2017年2月21日〜23日開催
Session 6D
宇宙資源開発ビジネスは宝の山! – 民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦

(スピーカー)
石田 真康
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル / 一般社団法人SPACETIDE代表理事

袴田 武史
株式会社ispace
代表取締役

水島 淳
西村あさひ法律事務所
パートナー

(モデレーター)
千葉 功太郎
慶應義塾大学
SFC研究所 上席所員

「民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦」の配信済みの記事一覧

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【本編】

千葉 お時間が後5分くらいですかね。もしよろしければ会場からの質問も一つ、二つお受けしたいなと思いますが、いかがでしょうか。

今日のセッションは、皆さんを置き去りにする勢いで勝手に盛り上がろうと思って臨んだので、もしかしたら本当に置いていってしまったかもしれません。

はい、(リバネスの)丸さん、どうぞ。

質問者1 非常に素朴な疑問なのですが、月は誰のものになるのでしょうか。

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丸 幸弘
株式会社リバネス
代表取締役CEO

1978年神奈川県横浜市生まれ。幼少期の4年間をシンガポールで過ごす。
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。

東京大学大学院在学中の2002年6月に理工系大学生・大学院生のみでリバネスを設立。日本で初めて、「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化した。現在、大学・地域に眠る経営資源や技術を組み合せて新事業のタネを生み出す「知識製造業」を営み、世界の知を集めるインフラ「知識プラットフォーム」を通じて、200以上のプロジェクトを進行させる。2014年12月に東証一部に上場した株式会社ユーグレナの技術顧問、孤独を解消するロボットをつくる株式会社オリィ研究所、日本初の大規模遺伝子検査ビジネスを行なう株式会社ジーンクエスト、次世代風力発電機を開発する株式会社チャレナジー、腸内細菌ベンチャーの株式会社メタジェンなど、多数のベンチャー企業の立ち上げにも携わるイノベーター。

日本が行って、アメリカが行って、月の土地を取り合うことになるのか、何か法律で決まっているのでしょうか、その辺りを教えてください。

月は誰のもの?

水島 では法律的な話なので私から。

この分野には、宇宙の国際法にあたる宇宙条約というのがあります。

国連で作られた条約です。

月及びその他の天体は人類共有の財産と言われていて、国家は権利を行使してはならないというように定められています。

つまり、誰のものでもないというのが正しいです。

公海、太平洋などでいう、領土の範囲内200海里(1海里=1852 m)の外の海と同じような感じです。

それと同じアナロジーで考えると、公海で魚を釣るとします。

釣ったマグロは自分のものとしてお金で取引します。

ですから、天体自体を所有することはできませんが、取ったものは自分のものにできるというのが、国際法の解釈の有力な見解です。

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千葉 でも公海と違って、土地があるわけですよね。

質問者1 そうなのです、土地があるから、掘り始めたら……

千葉 そこに占有権、所有権のような概念が発生しそうですよね。

質問者1 一戸の家ができるようなもので、私と千葉さんなら買ってしまいますよね。

千葉 まあ買いますよね。私も買います、絶対。100エーカーくらい。

質問者1 住みますよね。そうすると、退去を求められることになるのでしょうか。

水島 占有権というのは、不可避的に必要になるだろうと言われています。

それを何年くらい認めるのか、国家間で認め合うシステムをどのように作っていくのかということは、今まさに世界中で議論しているところです。

ispace社もそういった国際フォーラムに出席されて、望ましいあり方について意見を述べているところです。

千葉 SORATOローバーが月へ行って、水が豊富に存在するエリアを発見したとしたら、全部、柵で囲ってHAKUTOの看板を掛けたいですよね。

水島 これがまさにビジネスの面白いところで、それをやってしまうと、全世界から非難を浴び、誰かが足を引っ張りにくるんですよね。

三方良しの精神で上手いこと回るようにしないと、ルールができませんし、ルールができないとひたすら足を引っ張られて進めませんし、いかに公平なルールを作っていくか、それを自分の方から発信していくということが非常に大事です。

千葉 なんだか、大人な会話でモヤモヤ感が残りますね。

宇宙での占有権と所有権をどう考えるか

質問者1 例えばストローを月にスーッと刺して、ピューッと出てきたものを宇宙空間で採取して売ればいい、土地から浮いていれば問題ないというようなことはないのでしょうか。

千葉 そういう……脱法的な話ですか(笑)。

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質問者1 どういうグレーゾーンがそこに存在するのでしょうか。

水島 グレーゾーンではなく、占有と所有というのは別なのですよね。

占有というのは、他人のところでも座れます。

今このように、他人の椅子でも座っていいわけです。

そういう話ですね。

質問者1 座っていればいいということでしょうか?ずっと座っているしかない?

袴田 今、採掘するために、この場所、スペースを10年間使えるようにして、そこに妨害ができないようにルールを作っていくというような検討がなされています。

そこに最初に権利を持つには、やはり最初に行くというのが重要になってくるとは思います。

水島 その辺を細かく定めていくには、クリエイティビティが必要なんですよね。

新しい、これまで全く存在しなかったビジネスというのは、皆この道を通るわけです。

質問者1 ローバーで先に占有して、後から来たものを撃ち落とせば……全部取れるということでしょうか。

袴田 簡単に言ってしまえばそうなのですが(笑)、それは妨害に当たるという法律ができてしまうかもしれませんよね。

千葉 なるほど、興味深いですね。

火星でも同じことが起こるんですよね。

質問者1 月が一番早いんですよね。

千葉 月が圧倒的に早そうですね。

袴田 法的な解釈はさておき、面白い話をすると、今回我々は、Google Lunar XPRIZEで月面探査をするのですが、その過程でアポロの痕跡を見つけることができたら、追加でボーナスを出しますよ、というボーナス賞があるんです。

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千葉 かっこいい!

袴田 しかし、そろそろXPRIZEのチームの月行きが現実味を帯びてきた2、3年前に、アポロの残したものに勝手に触ったりしてもらいたくないという理由で、NASAが、この範囲には入ってくれるなというガイドラインを作ったんですね。

では、これはどうなのだと。

千葉 戦いですね。

袴田 我々としてはスポーツマンシップにのっとり、そのようなガイドラインは尊重しましょうとは言っているのですが。

水島 NASAが一方的に勧告を出したんですよね。

実効性は別として、そういう戦いが既に起こり始めています。

そこをいかにギリギリのラインでやっていくかが、とても大事です。

2017年12月28日-HAKUTOローバー出発

質問者1 国策的にはHAKUTOが一番初めに月に行かなくてはならないと。

千葉 いつ予定されているのですか?

袴田 今年(2017年)の末です。

千葉 本当?

袴田 本当です。

千葉 「SORATO」(月面探査ローバー)が行くんですか?早くないですか?

水島 2017年12月28日。

千葉 2017年12月28日?

袴田 はい。

千葉 ロケットは?もう決まっているんですか?

袴田 インドのロケットで行きます。

質問者1 ローバーがずっと氷の上でジーッとしていれば、そこは日本が取れると。

袴田 はい。我々も日本で初めて降りたローバーを守るために頑張ります。

質問者1 触るなと。

袴田 伝説に触るなと(笑)。

千葉 SORATOは何台送るのですか?

袴田 まずは一台です。

小型にしてあるので、将来的には何十台、何百台と送り込んで、資源のマッピングをしていきたいと考えています。

千葉 早い。今年末か……!

2年くらい先の話だと思っていました。

袴田 今年末です。

我々は既に2010年から取り組んでいるので、結構長いなと思っているのですが(笑)。

千葉 ありがとうございます。

ちょうどお時間となりましたので、最後にお三方からメッセージをいただきたいと思います。

先ほどSPACETIDEの話にもありましたが、「巻き込み力」、このICCカンファレンスに来ている皆さんを、そしてこの対談記事を読むすべての人をぜひ巻き込んでいただきたいので、「宇宙ビジネスをやろうぜ」というメッセージをお願いします。

水島さん、石田さん、最後に袴田さんの順でお願いします。

子どもに戻り切れるかが宇宙ビジネスで大事なこと

水島 インターネットの世界では、今やインターネット・ビジネスと言うような人はもういないと思います。

宇宙もそういう風になっていくと思うので、皆さんもビジネスを考えたり、新しいサービスを作ったりという時に、そのパレットの中に当たり前のように宇宙があるのだということを常に頭に入れていただければと思います。

細かい話はどうでもいいので、気持ちだけでも、それができれば、すごく面白いことが起こるのではないかなと思っています。

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千葉 ありがとうございます!

石田 今日はビジネスの話でしたが、日本もアメリカもヨーロッパも、宇宙ビジネスをやっている人というのは小さい頃の原体験がある人がほとんどなんですよね。

大人になる皆大抵、それを押し潰していくのですが、どこまで子どもに戻り切れるのかというのが、このビジネスを続けるうえで最も大事なことのような気がしています。

ICCの参加者は、子どもの心を持った人が多いのではないかと思いますので、そういう意味でも、皆さんと一緒にこのビジネスを盛り上げたいなと思います。

よろしくお願いします。

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千葉 ありがとうございます。

では最後、袴田さんに締めをお願いします。

宇宙産業は経営者が足りていない

袴田 宇宙産業というのはこれからまだまだ大きくなっていくというのは、自明のことだと思います。

その中で根本的に重要なことが2点あると思います。

一つは、心のハードルを下げること。

宇宙開発、宇宙事業というものを特別視しないこと、ここから始めなければならないと思っています。

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もう一つは技術ばかりではなくて、経営力が必要です。

この業界には経営者が少なすぎると思っています。

アメリカでさえ、エンジェル投資家が、宇宙産業は経営者が足りていないと言っているので、日本はなおさらだと思います。

ぜひ経験を持った経営者の皆さんに、この宇宙産業にどんどん参入してきてもらいたいと思っています。

以上です。

千葉 ありがとうございます。

ということで、75分間にわたり、「民間発の月面探査チーム「HAKUTO」の挑戦」というタイトルでお送りしてきましたが、メチャクチャ面白かったです。

興奮しました。皆さんも興奮していただけたのではないかと思います。

宇宙は近い、あなたも参加できる!というのが今日のメッセージだと受け止めました。

私自身も投資など、そして起業家として、経営者としてもチャンスがあれば……モヤモヤが、萌え萌えになりました!

皆さんもよろしくお願いします。

今日はありがとうございました!

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(終)

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/鈴木ファストアーベント 理恵

【編集部コメント】

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