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靴に装着する歩行ナビ「あしらせ」は、足への振動で視覚障がい者を安全に目的地へ導く(ICC FUKUOKA 2022)

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ICC FUKUOKA 2022 REALTECH CATAPULTに登壇いただき見事3位に入賞した、Ashirase 千野 歩さんのプレゼンテーション動画【靴に装着する歩行ナビ「あしらせ」は、足への振動で視覚障がい者を安全に目的地へ導く】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2022は、2022年9月5日〜9月8日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2022ゴールド・スポンサーの KOBASHI HOLDINGS にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2022年2月14〜17日開催
ICC FUKUOKA 2022
Session 7A
REALTECH CATAPULT
リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by KOBASHI HOLDINGS

千野 歩
株式会社Ashirase
代表取締役

2008年本田技術研究所にて電気自動車や自動運転の研究開発に従事。2018年SensinGood Labという任意団体を設立し、「あしらせ」の開発を開始。2021年4月、Ashiraseを創業、代表取締役に就任。
受賞歴 経産省始動プログラム2018シリコンバレー派遣選抜 / 内閣府S-Booster2019 最優秀賞 受賞
Asics accelerator program 優秀賞 受賞 / リバネス ディープテックグランプリ2021 KOBASHI賞、カワるサキへ賞 受賞 / ひろしまサンドボックスD-EGGS サンドボックス賞 受賞

【速報】燃やさないリサイクルでペットボトルの完全循環を実現「BRING Technology™」(日本環境設計)がREALTECH CATAPULT優勝!(ICC FUKUOKA 2022)


千野 歩さん 皆さん、目を閉じて歩くことはできますでしょうか?

おそらく難しいと思います。

私たちは目が不自由な方が自分の足で歩いていけるように、靴の中を振動させて誘導していくナビゲーション「あしらせ」というものを開発しています。

見えなくても自由に歩くことを諦めないでほしい

「78%」という数字。

これは、皆さんのメガネ・コンタクトの着用率です。

一方、視覚障がい者とは、メガネやコンタクトを使っても視力を矯正できない方々のことを指しています。

視力が低い。

中心が見えない。

逆に、周りからどんどん見えなくなっていく。

さまざまな症状があります。

こういった症状があると歩けるわけがなくて、どんどん自由に移動することを諦めていってしまうのです。

当然のように受け入れていっている方々が非常に多いのです。

私たちは、ここをなんとかしたいと思っています。

安全に、迷わずに目的地へ導く

視覚障がい者の歩行には、大きく2つのポイントがあります。

1つは「安全に歩く」ということです。

残された視力、聴力、手、足の裏、様々なインターフェースを駆使して、必死に安全を確認して歩いています。

また、もう1つのポイントとして、彼らは目的地まで迷わないように行かなくていけません。

そのため、行き慣れた道では電柱の数を数えて曲がり角を探っていったり、新しい場所に行くときにはスマートフォンを目の前に掲げて、日陰で止まって、歩いては確認して、歩いては確認してを繰り返しながら、必死にルートをチェックしています。

「電柱を数えていたら、足を踏み外して田んぼに落ちて、頭が血だらけになった」

こういう方がいました。

どちらかに集中すると、もう一方がおろそかになり、事故に至ってしまう。

こういったことを、私たちは解決していきます。

直感的にルートの情報がわかる仕組み

そこで私たちは、「あしらせ」を使って、ルートの情報を直感的・無意識的に伝えます。

これができれば、彼らはルートを考えなくてよくなり、すべての注意資源を安全確認に注ぎ込むことができるのです。

そうすることで、安全な歩行社会を創っていくのです。

私たちは、2つのポイントを掲げて、開発を進めています。

彼らの足の動きを積極的に活用して、視覚障がい者の方が迷わない誘導情報をまず生成します。

そして、彼らがその情報を直感的に理解できる振動インターフェースを作ります。

この2つの開発を、大きく進めております。

自分の靴に取り付けて、靴を履いて、目的地をワンタッチで入力して、あとはもう振動に従って歩いていく。

これだけで彼らの生活行動はどんどん広がっていくのです。

実際に日本ブラインドサッカー協会に勤めている増田さんに履いてもらいました。

まず、彼らの右側か左側か、この先のアクション、そちらの振動が右か左かに行われます。

このテンポがアクションまでの距離感を示していて、歩けば歩くほど近づいていき、どんどん速くなっていきます。

そして実際の曲がり角に差し掛かると、全体が激しく振動して、その後右折であれば右側が連続的に振動してきます。

この後、彼らの身体の向きを確認しているので、実際に曲がりきったと判断したら、次の指示に切り替わっていきます。

このように直感的に振動を感じられるようなオペレーションになっています。

しかし、どうしても視覚障がい者は、道を間違えてしまったり、不安に思ったりすることがあります。

ですので、このようにつま先で地面にトントンとするだけで、その場から進むべきルートや方角などを指示することができます。

体に固定する方位センサーで方角を指示

さらに、私たちのナビゲーションが今までの既存のスマートフォンと違うところは、体に固定された方位センサーを持っているので、確実に彼らの向きが分かるということです。

そのため、方角を指示していくことができます。

また、GPSのセンサーなどは誤差を持っているので、コロコロと誘導情報が切り替わってしまうことがあります。

それによって視覚障がい者が迷ってしまうので、私たちは彼らの歩行の軌跡のデータと組み合わせることで、不要な情報を彼らに伝えないような技術を開発しています。

また、道なりに曲がっていくという場合、通常であればまっすぐ進んでくださいという誘導情報になるのですが、彼らは曲がっていくことができないので、私たちは独自の右左折判定ロジックなども開発しています。

そして、それをどう伝えていくのか、私たちは徹底的に彼らが安全確認に使っているインターフェースを避けて、最も感じ取りやすい足の甲にアプローチしています。

足の神経叢(しんけいそう:多数の神経細胞などが枝分かれして網状になっている部分)の流れを見て、どこに振動を与えることで直観的に切り分けられるか、そういったことを試しながら、どんどん開発を進めてきました。

実際多くの方に使っていただいて、「安全に集中できる」といった声だけではなく、「今まで同じ道をずっと通っていたけれど、花屋があることに初めて気づいた。次は海辺に歩いていきたい。こうやって世界を広げていきたい」、そういった能動的な声を非常にたくさんいただいているのです。

2022年末に販売を開始予定

これを私たちは先進国の国々、1,200万人に出していきたいと思っています。

そこで、ナビゲーションアプリを入れるということが、一番重要だと思っています。

彼らには歩行、外出における課題がたくさんあるので、一つ一つの課題をナビゲーションだけではなく、さらに追加したアプリケーションとして解決していくアップセル・クロスセルの戦略をとろうと考えています。

例えば、ナビゲーションだけではなく、バスを降りるときに振動で教えたり、屋内の測位などにもトライしていきます。

このように、私たちはリアルテック企業ですが、例えば視覚障がい者のNAVITIMEさんのようなナビゲーションの企業にもなっていく、そういった企業です。

ポジショニングとしては、私たちはあくまでも安全は間接的にとりにいくナビゲーションです。

そのため、安全性を直接担保しにいっているプロダクトに比べて、より低コストで早期量産化が見込めると考えています。

まずは若い世代、次に高齢者に向け展開していきたい

最初は20代から60代の若い世代の視覚障がい者にアプローチしていき、市場を創っていきます。

その後、足のデータやプロダクトなどをうまく活用していきながら、たくさんのところから期待をかけていただいているので、リハビリテーションや高齢者に向けて展開していくことで、自分たちのビジョンである「人の豊かさというのは歩く」というところで科学し続けて作っていくというビジョンで掲げています。

それを実行できる開発力の高いメンバーと、何よりも実際の視覚障がい者の方々が主体的に私たちに協力していただいています。

このファンを自然に醸成できていることが、非常に私たちの強みになっていると考えています。

しかし、まだ量産に向けて加速していかなければいけません。

人の募集、資金調達、そして市場展開の拡大に向けた協業も募集しておりますので、ぜひ皆さん、応援していただけたらと思っています。

「あしらせ」が視覚障がい者のスマホに必ず入る未来を

最後に、私たち「あしらせ」のアプリケーションが、視覚障がい者のスマートフォンに必ず入る未来を絶対に創っていきたいと思っています。

そこから一人ひとりに寄り添った、新しいユニバーサルな社会につなげていきたいと思っています。

ありがとうございました。

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/小林 弘美/浅郷 浩子/戸田 秀成/大塚 幸

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