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「アックスヤマザキ」は、使い手の課題を解決して「ミシンをもう一度、1家に1台」を目指す(ICC FUKUOKA 2021)

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ICC FUKUOKA 2021 CRAFTEDカタパルトに登壇いただき、見事2位に入賞した、アックスヤマザキ 山﨑 一史さんのプレゼンテーション【「アックスヤマザキ」は、使い手の課題を解決して「ミシンをもう一度、1家に1台」を目指す】の文字起こし版をお届けします。動画も合わせて、ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2021は、2021年9月6日〜9月9日 京都市での開催を予定しております。参加登録は公式ペーのアップデートをお待ちください。

本セッションは、ICC FUKUOKA 2021 オフィシャル・パートナーのMakuake様にサポート頂きました。

【速報】「軽い、薄い、暖かい」植物素材で、サステナブルな衣類をつくるKAPOK JAPANが CRAFTED カタパルト優勝!(ICCサミット FUKUOKA 2021)


【登壇者情報】
2021年2月15〜18日開催
ICC FUKUOKA 2021
Session 10A
CRAFTEDカタパルト
豊かなライフスタイルの実現に向けて
Supported by Makuake

山﨑 一史
株式会社アックスヤマザキ
代表取締役

2002年近畿大学商経学部商学科卒業後、機械工具卸企業に入社。
2005年に父(当時社長)から相談を受け、右肩下がりの状況を何とかすべく、家業である家庭用ミシンメーカー株式会社アックスヤマザキに入社。2015年に3代目として代表取締役に就任。
その後、新市場を開拓するため子供向けに開発した「毛糸ミシンHug」がヒット。2016年ホビー産業大賞(経済産業大臣賞)、キッズデザイン賞受賞。
第2弾として子育て世代に向けて開発した「子育てにちょうどいいミシン」もヒット。2020年にキッズデザイン賞優秀賞(少子化対策担当大臣賞)、グッドデザイン賞金賞(経済産業大臣賞)、JIDAデザインミュージアムセレクションvol.22と国内デザイン賞3冠受賞。企業として「大阪活力グランプリ2020特別賞」に選出される。


山﨑 一史さん こんにちは。株式会社アックスヤマザキの山﨑 一史と申します。よろしくお願いします。

創業75年目、業界最小の家庭用ミシンメーカー

私たちは大阪市生野区にある、昭和21年創業、創業75年目の業界最小の家庭用ミシンメーカーです。

祖父が終戦の翌年に創業し、輸出で事業を広げてきましたが、1970年代から円高が急激に進み、全く採算が合わなくなり、一気に業績が悪化しました。

債務超過になりかけた時、父親が入社し、1987年に海外生産・国内販売に切り換えました。

そして、大きかったミシンを小型化することで成功し、一気に業績を盛り返しました。

そんな父親の姿を見ながら、自分はミシンに囲まれて育ってきました。

家業とミシンの未来に強い危機感

ミシンの市場と業績は一度順調に盛り返したのですが、1999年から一気に右肩下がりになりました。

そんな状況を知らずに、私は機械工具の会社で働いていました。

2005年に、売上が3分の1ぐらいになった、会社も非常に厳しい状態だと初めて父親に告げられました。

100kgくらいの大きな身体の父親ですが、その時初めて弱音を吐いている姿を見て、「これはまずい。会社だけでなくミシンがなくなるのではないか」と非常に危機感を感じて、私は入社しました。

入社したからといって何かできるわけでもなく、もがき続けていました。

どうしようかと考え、色々なところで話を聞いていたら、「ミシンて、まだあるの?」「もうやめたほうがいいんじゃないの?」ということを言われました。

ミシンで育った私としては、非常につらい日々でした。

ミシンを使わない人たちへインタビュー

でも、ここで諦めるわけにはいきません。

ミシンを使わない人に絞って、とにかく生の声を集めようと思い話を聞きまくりました。

そうすると、「ちょっとやってみたい気持ちはあるけど、小学生の時に苦手になった」「そうそう!」という話になりました。

ミシンは、そもそも使うまでのハードルがちょっと高いのです。

それをいきなり小学校で習ったら、苦手になるだろうなと思います。

子ども用ミシンの開発を決意

それならば、その前の補助階段のようなものを作って、子どもたちにミシンを得意になってもらおうと思いました。

そこからは、子どもたちにとにかく聞きまくりました。

安全で簡単な「子どもミシン」を作ろうと考えました。

そこから3年間、熱で圧着したり、色々と試作を繰り返しました。

ようやく毛糸で縫うミシン「毛糸ミシンふわもこHug」が出来上がりました。

準備は毛糸をひっかけて1秒、これで終わりです。

すぐに始められて簡単に縫うことができます。

指が入らないように針ガードが付いているので安全です。

日本だけではなく、海外でも特許を取得しました。

娘が欲しがるミシンを作りたい

この毛糸で縫うミシンをクリスマスに販売しようと思い、子ども向けの玩具市場に自分で飛び込んで営業をかけました。

そして、クリスマス前に用意した20,000台が一気に完売しました。

第10回キッズデザイン賞第16回ホビー産業大賞もいただいてうれしかったのですが、自分には目標がありました。

自分の娘から欲しいと言われるようなミシンを作ろうと思い、頑張ってきました。

ちょうどその頃、粘土がはやっていて、娘はどうやら粘土が気になっているらしいと家族から聞いていました。

娘がサンタさんに何を頼むのか、サンタさんへ書いたという手紙を、娘が寝てからこっそり見ました。

「みしんちょうだい」と書いてある手紙を見て、本当に頑張ってきてよかったなと思い、正直に言うと、一人で泣きました。

「ミシンはやってみたいけれど…」

色々なところでイベントを開催していると、子どもたちは初めて手作りをしてすごく感動し、お母さんたちもそれを見て感動していて、「ミシンを持っていないけれど、面白いな、やってみたいな」ということを言っていました。

それならばもう少し可能性があるのではないかと思い、色々聞いてみたところ、こんな話が出てきました。

でも、やってみたい気持ちはあるのです。

それならば解決できるのではないかと思いました。

「ちょっとやってみよう」と思えるミシンの開発

そして、「ちょっとやってみよう」ぐらいのミシンを作ろうと思いました。

スマホで使い方の動画を料理動画のように見ながら操作できて、本棚に入るようなサイズで、デザイン家電のように出したままでもいい、「子育てにちょうどいいミシン」を2020年3月に発売しました。

最大3カ月待ちの大ヒット商品に

発売前から「こんなミシンが欲しかった」という反響があって、ちょうどマスクが品薄な状況だったので、マスクの作り方の動画をアップしたところ、ちょうどYahoo!ニュースのトップに上がって、そこからすごい反響をいただきました。

連日メディアに取り上げていただき、ミシンが最大3カ月待ちぐらいになるというまさかの状況でした。

手作りのハードルを下げたミシンとして評価いただいて、国内デザイン賞もまさかの三冠(※) をいただきました。

▶編集注:2020年度グッドデザイン賞 金賞(経済産業大臣賞)JIDAデザインミュージアムセレクションVol.22選定第14回キッズデザイン賞 優秀賞(少子化対策担当大臣賞)の三冠。

「大阪活力グランプリ2020」では特別賞をいただきました 。

シニア世代に優しいミシンの開発

そんな中で、シニアの方から「外出制限でがなかなか会えないけれど、孫にちょっとしたものを作ってあげたいんだ」という話がありました。

何とかできないかと思い、そこでまたシニアの方に話を聞きまくりました。

そうしたら、「ミシンはできるけれども、細かいところは見えにくい」「ちょっと重たいのは…」などの意見が色々出てきました。

これらの意見にも一つひとつ向き合って、シニア向けのミシンを作りました。

針穴に糸を通しやすくするため本体の角度を変えられたり、軽量にしたりと、シニアに優しい仕様にしました。

さらに、シニア世代の方に元気になっていただきたいと思い、脳トレの川島隆太先生にも監修いただきました。

川島博士監修 ミシンで脳トレ!世界初、スイングミシン機構(特許申請中)!50代からの大人向けミシンを新開発!『孫につくる、わたしにやさしいミシン』2月下旬に新発売(PR TIMES)

脳トレができる「孫につくるわたしにやさしいミシン」を発売します。

ミシン市場が縮小しているなど色々言い訳はありましたが、そうではなく外を向いて、一つひとつ丁寧にターゲットを絞り、きちんと声を聞いて作っていくことで、これからどんどんミシンを作っていけるのではないかと思っています。

ただ独りよがりではなく、ミシンを通じてあくまでも社会の課題を解決し、世の中のお役に立てるモノづくり、コトづくりを行い、昔のように、「ミシンをもう一度、1家に1台」を目指して、暮らしに感動とぬくもりを広げたいと思っています。

ご清聴ありがとうございました。

▶CRAFTED TOUR レポート地道な「N1ヒアリング」が、激売れミシンに結実! 一度閉じた市場を新たに開拓する「アックスヤマザキ」【ICC 大阪CRAFTED TOUR レポート#3】もぜひご覧ください。

▶︎実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

(終)

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編集チーム:小林 雅/星野 由香里/浅郷 浩子/戸田 秀成

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