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なぜ電子ゴミでつくったアートが1,500万円で売れたのか?「MAGO CREATION」長坂 真護(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

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ICCサミット FUKUOKA 2020 ソーシャルグッド・カタパルトに登壇いただいた、MAGO CREATION 長坂 真護さんのプレゼンテーション動画【なぜ電子ゴミでつくったアートが1,500万円で売れたのか?「MAGO CREATION」長坂 真護】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 ゴールド・スポンサーの電通様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 9B
ソーシャルグッド・カタパルト
Supported by 電通

(プレゼンター)
長坂 真護
MAGO CREATION株式会社
代表取締役美術家
公式HP

スラム街をエコタウンに。
―世界最大級の電子機器の墓場と言われるガーナのスラム街“アグボグブロシー”。この地の貧困問題と環境問題をアートの力で変える為にアーティストの長坂真護(MAGO)は立ち上がった。ー
1984年生まれ。2009年、自ら経営する会社が倒産し、路上の画家になったMAGOは、2017年6月に初めてガーナ、アグボグブロシーを訪れ、1日わずか500円の日当で先進国が捨てた電子機器を必死に燃やしながら、生きる彼らと出会った。“大量のガスを吸い、ガンになり30代で逝くと言われる彼らを犠牲にして、我々が富を形成する事がそんなに大事か?美術の力をもってこの真実を先進国に伝えたい”MAGOはそう決意。アートの売り上げで、スラムに教育、文化、そして経済をもたらすため、これまでに850個のガスマスクを彼らに届けた。2018年には、スラム街初の学校『MAGO ART AND STUDY』を設立。そして2019年8月、アグボグブロシー5回目の訪問でMAGOが53日間ガーナのスラム街アグボグブロシーに滞在し、彼らの新しい希望と生活のために、スラム街初の文化施設『MAGO E-Waste Museum』を設立。その軌跡をエミー賞受賞監督カーン・コンウィザーが追い、ドキュメンタリー映画“Still A Black Star”を現在制作中。

「ICC FUKUOKA 2020 ソーシャルグッド・カタパルト」の配信済み記事一覧


長坂 真護さん 皆さん、お集まりいただきありがとうございます。

今日は僕のソーシャルビジネスのすべてをお話ししたいと思います。

よろしくお願いします。

こちらは僕の作品で、貧困国といわれるガーナの国旗です。

Photo by Fukuda Hideyo

僕はMAGO CREATION株式会社 代表取締役兼美術家です。

代表取締役と言っても個人で経営していて、日本には従業員がおらずガーナに2人います。

サステイナビリティの3軸「文化」「経済」「環境」

早速、皆さんにお見せしたいものがあります。

ガーナのスラム街アグボグブロシー(Agbogbloshie)には、先進国から電化製品や車などの様々なゴミが集まり、大量消費社会の危機を迎えています。

そこで僕は、2019年7~9月の2カ月間、現地でスラム街を変えるための取り組みを行いました。今回で5回目の渡航です。

この取り組みを撮影したハリウッド映画のトレイラー(予告編)を本日初公開いたします。

どうぞこちらをご覧ください。

今僕は「サステイナブル・キャピタリズム」と銘打って、“Still A Black Star”というハリウッド映画の制作に挑戦しています。

ハリウッド 映画に 挑戦します!|mago note

僕個人が絵を売って用意した3,000万円の資金を投じ、約5分間のトレイラーをここまで作り上げました。

サステイナブル・クリエイティブ・カンパニーMAGO CREATIONは、創業4年目の会社です。

1年目の売上は、たった500万円でした。2年目は20倍になり1億円を超えました。

皆さんはもうご存じかと思いますが、ここで一度サステイナビリティ(持続可能性)の軸についてご説明したいと思います。

サステイナビリティは、シンプルに「文化」「経済」「環境」という3つのコンセプトから成り立っています。

「環境」には、社会貢献なども含まれます。

弊社は、ドネーション(寄付)も投資も一切お断りし、「お涙頂戴ビジネスは一切やらない」と公言しています。

有毒ガスが立ち込めるスラム街で、日当5ドルで働く人々

これは僕の原画です。ガーナのスラム街にあったゴミを利用してつくったものです。

Photo by Fukuda Hideyo

僕がガーナに初めて行った2017年には、現地で働く人々はガスマスクなしで仕事をしていました。

大量のゴミの中には、実は日本のゴミもあります。

彼らは、12時間働いてたったの5ドルを日当として受け取り、生活しています。

信じられない環境です。

また、ガスマスクもせずにゴミを焼くため、有害なガスによってがんになったり、失明したりしています。

児童労働もあります。

この街では、このように汚染されたものを食べた牛が、そのままマーケットに出荷されています。

これらのゴミは全て、日本、アメリカ、中国、ヨーロッパなどの国から、最貧困国のガーナの街アグボグブロシーに集まってきているのです。

僕は彼らを救いたいと思いました。

電子ゴミから作ったアートで、サステイナビリティを実現する

こちらは、彼らですら捨ててしまうE-waste(電子ゴミ)です。

僕は、この亡骸(電子ゴミ)にまだポテンシャルがあるのではないかと思い、彼らから無料で譲り受け、アートを作って先進国で販売しました。

サステナビリティとは何でしょうか?

サステナビリティとは一般的に、企業が得た利益の一部を慈善活動の一環として社会に還元するなどして、CSR(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)を果たそうという考え方です。

つまり会社が利益を出したら、「環境」に寄付しましょうということです。

しかし、僕が今取り組んでいるのは、CSRではなくCSV(Creating Shared Value、共有価値の創造 )です。

さらに、貧困国の特徴を生かしながら、共有の価値を創造していこうとしています。

一例をご紹介すると、このアートは2018年に1,500万円で売れました。

Photo by Fukuda Hideyo

このアートが売れれば、「文化」にアートが入り、「経済」のところで、絵の代金である1,500万円が動きます。

そしてガーナのゴミも減ります。

さらに今この場所で、こうして皆さんにメッセージをお伝えすることができます。

「1つが動けば、全部が動く」ことこそがサステナビリティだと認識し、「文化」「環境」「経済」を軸に活動しています。

なぜ電子ゴミでつくったアートが1,500万円で売れたのか?

さらに僕は、アインシュタインが残した相対性理論の意味を、スラム街に行って発見することができました。

今日それをアートにし、時間の許す限り皆さんにお伝えしたいと思います。

まず、「なぜ僕のアートが1,500万円で売れたのか?」についてお話しします。

1,500万円という高い売値がついたのは、実は僕がレバレッジを掛けているからです。

アインシュタインはかつて、「When you are courting a nice girl an hour seems like a second. When you sit on a red-hot cinder a second seems like an hour. That’s relativity(かわいい娘と愛を語っているとき1時間は1秒のように感じる。でも、赤熱の石炭の上に座っているときは1秒が1時間のように思える。それが相対性というものだ)」と言いました。

ここで、横軸を「時間」に、縦軸を「豊かさ」にしたグラフを想定します。

「好きな人といる時には、1時間が1秒のように感じられる」

この状態は、いま描いたグラフでは左上に位置します。

豊かな気持ちに満たされていて、かつ時の流れる早さが、その時間を一瞬で過去のものにしてしまうからです。

一方で、「嫌なことをしている時には、1秒が1時間のように感じられる」という状態はその反対側に位置します。

アインシュタインは、相対性理論の中で「質量とエネルギーは同等である」と解きました。

そこで僕は気づいたのです。

実はこの、時間と豊かさという尺度も同等なのではないかと。

ここで、この二軸の関係を、国にあてはめて考えてみましょう。

一番右上はアメリカ、その少し下に日本があり、そして左下にガーナが位置します。

さらにこの左下の象限の底辺には、先ほどご紹介したスラム街、アグボグブロシーがあります。

アグボグブロシーは、3万人の人間が住む最下層です。

皆さんは、アメリカ、日本を含む先進国で経済成長を競い合っています。

ほとんどの人が右上の象限でビジネスをしていて、僕も含めて今日ここでプレゼンテーションをされている人たちのほとんども、ここで生き、ここでビジネスをしています。

僕は、アインシュタインの相対性理論で「なぜ僕のアートが1,500万円で売れたのか?」に気づきました。

その前の年までは100万円だったものが、1,500万円で、こちら(右上の象限)で売れました。

なぜ売れたのかと言うと、-1,500万ポイントが、相対的に+1,500万円ポイントになったからです。

アートには、絶対的な物理があります。

僕は「物質的要素であるビジュアル」と「絶対的な精神の塊」が無理やりビジュアル化されたものがアートだと考えています。

左下の象限は、戦後の日本だとも言えます。

我々はアグボグブロシーの人々と同じ時代に生きていますが、貧困差、経済格差は時空すらゆがめ、ここでは「戦後の日本」のような文明が発達しています。

僕は飛行機で左下と右上の象限を行き来できるので、ガーナのE-wasteを飛行機に乗せて日本に戻りました。

精神性は、このブランチポイント(縦軸と横軸の交差点)をアートで超えることができます。

アートは、精神の時空をこちら(右上端)まで持ってくることができます。

つまり、E-wasteという社会の闇を示す-1.500万円という因子がこちら側に反転し、1,500万円になっただけなのです。

僕は先進国で競争せず、ガーナに行きました。

そしてそこで得たものを先進国に持って来たら、1,500万円になったのです。

仮に僕が秋葉原で拾ったゴミでアートを作っても、絶対に1,500万円にはなりません。

それはなぜでしょうか?

秋葉原のゴミが持っている闇は、このブランチポイントのわずか左下でしかないからです。

これが反転しても、わずかな価値しか生みません。

なぜガーナのゴミが1,500万円になったか、お分かりいただけたでしょうか?

これが僕の考えているキャピタリズムです。

このサステイナビリティの三角の理論と座標軸で、僕は今の自分の事業スタイル・方針を決めています。

子どもたちに夢を与え、「人生を変える」選択肢を

ここからは、時間の関係で写真の説明のみで進めます。

この1,500万円で850個のガスマスクを手に入れ、現地に持っていくことができました。

Photo by Fukuda Hideyo

そして学費が無料の学校をつくることができました。

次の写真は、実際の教室の様子です。

また、ミュージアムや色々な建物を建設しました。

Photo by Fukuda Hideyo

Scene from the film “Still a Black Star”

色々な建物をつくったことで、観光収入という新たな収入源が生まれました。

ギャラリーも運営しています。

ギャラリーには、ヨーロッパからの観光客も訪れるようになりました。

そしてそこからの収入を、現地の人々に100パーセント還元できるような仕組みをつくっています。

メディアも訪れ、僕のアートの宣伝にもなっています。

これがサステイナブルの概念です。

取り残しや無駄がありません。

お礼に、子どもたちが建物に絵を描いてくれました。

子どもたちに絵の才能を感じ、絵を描いてもらいました。

すると、子どもたちは次々に絵を描きました。

そして、その絵をクラウドファンディングで10万円で売ったところ、完売しました。

売上の10パーセントである1万円は、絵の作家である子どもに還元しました。

1万円は、彼らの2カ月分の収入に相当します。

努力をすれば自分の人生を変えられることを教え、彼らに夢を与えることもできました。

これでもうタイヤを焼いて生計を立てる必要もなく、がんになる不安もありません。

これが、アートの圧倒的な力を利益に還元した結果です。

そして僕は2019年に日本に戻り、1億円稼いだレシピを、全員にフランチャイズでお渡ししました。

Photo by Fukuda Hideyo

そして、大阪、滋賀、ロサンゼルスにMAGO GALLERYをオープンしました。

こちらはMAGO GALLERY OSAKA(大阪)です。

Photo by Fukuda Hideyo

Photo by Fukuda Hideyo

ロサンゼルスにも、MAGO Los Angeles SHOWROOMをオープンしました。

こちらはMAGO GALLERY SHIGA(滋賀)です。

MAGO GALLERYの一覧はこちらでご覧いただけます。

Photo by Fukuda Hideyo

売上を完全に折半して、精神性、サステナビリティの全てを皆ででシェアしていこうという取り組みをしています。

2019年11月に大阪と滋賀に2店舗同時オープンし、12月単月の売上が7,000万円でした。

今期は5億円の売上を目指して活動しています。

経済性を競っていては、誰も住むことのできない地球に

なぜこのような取り組みをするのでしょうか?

それは、もう時間がないからです。

我々の私利私欲で経済効率を競ったところで、皆が住めない地球になってしまっては取り返しがつきません。

そこで僕はこの10年でゴミなどを拾い、

彼らのために新しい世界をつくろうとしています。

今、映画制作の資金を集めるために、クラウドファンディングを行っています。

スラム街をエコタウンに!!美術家マゴの挑戦を描いた実録ハリウッド映画(CAMPFIRE)

皆さんのスマホをこちらのQRコードにかざしていただき、この続きを見ていただければと思います。

長坂真護でした。ありがとうございました!

(終)

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成

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