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幹細胞大量培養の鍵は“不織布”だった!脳外科医が挑む再生医療ベンチャー「フルステム」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

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ICCサミット FUKUOKA 2020 リアルテック・カタパルトに登壇し、3位入賞に輝いた フルステム 千葉 俊明さんのプレゼンテーション動画【幹細胞大量培養の鍵は“不織布”だった!脳外科医が挑む再生医療ベンチャー「フルステム」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 ゴールド・スポンサーの小橋工業様にサポートいただきました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜19日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 3B
REALTECH CATAPULT
リアルテック・ベンチャーが世界を変える
Sponsored by 小橋工業

(プレゼンター)
千葉 俊明
株式会社フルステム
代表取締役社長
公式HP | STARTUP DB

2003年聖マリアンナ医科大学大学院大学修了・医学博士。再生医療学会代議員・認定医を務める。博士テーマが、脳梗塞幹細胞移植による神経再生治療。学会発足前より、胚性幹細胞を始めとして、間葉系幹細胞、iPS細胞等のあらゆる幹細胞培養を自ら経験。2004年コロラド州立大学神経科学PGに留学し、ヒト胚性幹細胞から誘導したドーパミン産生細胞移植によるパーキンソン病治療の研究に従事。2005年米国パーキンソン病財団(APDA)賞およびグラント獲得、2007年帰国後2015年まで再生医学関連の国内研究費を研究代表者として継続的に獲得。2010年琉球大学大学院医学研究科准教授。2015年沖縄県一括交付金事業にて現在のシーズである“三次元多孔性足場からの培養細胞回収方法”を開発し、不織布を用いた自動大量培養技術の確立へと発展させた後、2016年株式会社フルステムを代表取締役社長として起業。

「ICC FUKUOKA 2020 リアルテック・カタパルト」の配信済み記事一覧


千葉 俊明さん 「不可能を簡単に、再生医療をもっと身近に」を企業理念とする、株式会社フルステム代表の千葉です。

よろしくお願いいたします。

再生医療で難病を“治せる”時代が到来

皆さん、脳梗塞についてどれくらいご存知ですか?

脳梗塞は、障害やマヒといった後遺症も残るため、“治らない病気”というイメージもあるかもしれません。

実際に多くの患者さんがおられ、亡くなられるケースもあります。

私は脳外科医として脳梗塞を治したいと思い、再生医療の研究を始めました。

そしてやっと、脳梗塞を再生医療で治せる時代が到来しつつあります。

再生医療は、高度先端医学・医療のひとつで、iPS細胞の研究をきっかけに注目を集めました。

その中で私が注目したのは、再生因子療法です。

再生因子療法では、体内にある幹細胞を培養して増やしたものを点滴し、その細胞自らが病変周囲に移動し治療する仕組みを利用します。

この機序については、サイトカインという免疫系細胞から分泌されるタンパク質が、受容体を介して標的細胞上で作用し、自己再生を促すというものが一般的に知られています。

さらに最近になり、エクソソームと呼ばれる細胞外小胞が注目されるようになりました。

エクソソームは内部に伝達物質を含み、それが受け取り側である神経細胞や幹細胞に伝達され、組織が変化・再生することが分かっています。

また、エクソソームは形状が小さく色々な細胞に取り込ませることができるため、脳梗塞に限らず、さまざまな治療に応用できるのではないかと期待されています。

現在は、次のような疾患の治療への再生因子療法の効果が期待されています。

細胞し、1回3,000万円治療を1/30に細胞培養に伴う高額な医療費

しかし患者さんたちは、このように列をつくって治療を待っているのです。

たとえ順番が回ってきても、治療を受けられるのはたった1回だけ。

細胞の点滴だけで済むのであれば、なぜ大学病院やクリニックで手軽に治療が受けられないのでしょう?

そこには、治療費が非常に高額であるという問題があります。

原因は、細胞が人手によって培養されていること。

技術が発展する過程においてはそれも仕方ありませんが、現状ではどんなに頑張っても、人手培養では(物理的な最大処理量として)1治療分の細胞しか作ることができません。

1治療に必要な細胞数は、およそ10の8乗個(1億個)です。

この10の8乗個を作るためには大きなインフラ(施設やモノ)も必要で、それも治療費が高額になることにつながっています。

そこで我々は、この状況を変えていきたいと思っています。

フルステムは、従来は6名で行っていた作業を1名で、しかも最小の施設で製造できるようにし、さらに人手培養の限界量からさらに10倍の良質な細胞を作りたいと考えています。

また、これまでは1回に3,000万円かかっていた高額な治療費を、30分の1すなわち100万円以下にまでおさえることを目指しています。

「お手拭き」素材で、良質な幹細胞を大量培養

そこで我々が目を付けたのが、「お手拭き」です。

不織布と呼ばれる、使い捨てのお手拭きにも使われる素材は、再生因子療法で用いる「間葉系幹細胞」が存在する体内組織によく似た立体構造を持っています。

この不織布を培養の足場に応用すると、再生因子が2倍多い良質な幹細胞を作れることも我々の研究で分かってきました。

コラーゲンの繊維と似た高密度な環境で培養ができ、3次元構造で培養面積も極小化。

培養効率は30倍にも上がりました。

唯一問題となったのは、誰にも不織布から細胞ははがせない、ということでした。

しかし独自に技術を確立し、大量に培養した細胞を痛めることなく全て回収することに成功しました。

自動培養装置で、人手限界の10倍量の幹細胞培養に成功

さらに我々は、この技術を組み込んだ自動培養装置を作りました。

この装置は、世界最小で実用性が高く、安定した培養環境を作れる安価な装置で「閉鎖系培養環境」を備えています。

この閉鎖系培養環境では、人の手を全く介さずに自動制御により細胞の大量培養と同時回収が可能で、注射器で細胞を入れると治療に使う細胞が自動的で出てくるようになっています。

この自動培養装置により、従来は1治療分しかできなかった培養量を10倍に増やすことができ、これは世界レベルでも大きな進歩です。

培養・回収・管理の全工程が、1人でも可能に

また、今までは数百枚の培養皿を一枚一枚を見て細胞の品質を確認しなければなりませんでしたが、ボトル容器から排出される培養液をモニタリングするだけで、培養状態や回収時期まで分かるようになりました。

その結果、培養・回収・管理の全工程をたった一人で行うことが可能になりました。

装置は非常にコンパクトな設計になっており、大量の細胞培養が安全キャビネット内で可能となるため、コストも削減できます。

また、キャビネット内に設置できることで、清浄度を維持しながら培養することが可能です。

今後は、大学や加工受託施設や製薬企業でしかできなかった治療が、中小規模の病院やクリニックでも可能になり、再生医療がより多くの患者さんにとって身近なものとなっていくことでしょう。

巨大な再生医療市場を支えるインフラ作りを目指す

再生医療市場は、2030年には国内で5,500億円、海外では12兆円の規模になることが予想されています。

我々は、その市場を支える基本インフラを作っていきたいのです。

ビジネスモデルは、装置と共に培養キットを販売し、サポートを提供していくというものです。

今後は、消耗品を主軸に東アジアを中心にビジネスを拡大してゆく予定です。

さらに、遠隔サポートを行いながらデータを基に検証し、世界中にサービスを展開していきたいと考えています。

また、我々の治療は「再生医療等安全性確保法」という法律に基づいています。

その下で治療実証されれば、申請書の焼き直しができるので、どんどん利用が増えてくると考えています。

より簡単に、再生医療を届けることができる世の中に

先ほど、不織布を培養の足場にすると再生因子が2倍多い良質な幹細胞を作れるとお話ししました。

さらに、新しい促進因子の発見により、品質の良い細胞を従来の2倍作れるようになりました。

自動培養装置を使えば、培養効率(量)も10倍になるので、要するに40人分の患者さんの治療が可能になります。

このように我々は、再生医療がより身近なものになるように頑張っています。

また、フルステムでは、一緒に新しい世界を創造してくださる方も募集しています。

どうぞよろしくお願いいたします。

(終)

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/戸田 秀成

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