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細胞ファイバ技術で、“誰もが手の届く細胞治療”を実現する「セルファイバ」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

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ICCサミット FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリに登壇いただいた、セルファイバ 柳沢 佑さんのプレゼンテーション動画【細胞ファイバ技術で、“誰もが手の届く細胞治療”を実現する「セルファイバ」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プラチナ・スポンサーのAGSコンサルティング様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 6B
CATAPULT GRAND PRIX (カタパルト・グランプリ)
– 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング

(プレゼンター)
柳沢 佑
株式会社セルファイバ
代表取締役
公式HP | STARTUP DB

2007年東京薬科大学 生命科学部 環境生命科学科卒業。2011年3月まで株式会社リバネスにて企画開発業務に従事。2017年12月 東京大学大学院 化学生命工学専攻にて博士(工学)を取得。2018年3月、平成29年度東京大学工学系研究科研究科長賞・東京大学総長賞。専門は高分子化学、材料化学、ソフトマテリアル、ハイドロゲル。2018年5月よりセルファイバ取締役に就任。2018年6月よりAMED「細胞ファイバーを利用した抗体製造のための高密度連続生産技術の開発」研究開発代表者。2018年10月にNEDO Entrepreneurs Profgram(NEP)に採択され心筋ファイバの創薬応用を志向した収縮力測定システムを開発。2019年6月より代表取締役に就任。

「ICC FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリ」の配信済み記事一覧


柳沢 佑さん セルファイバの柳沢です。よろしくお願いします。

我々は「細胞製品」の工業生産に挑戦しています。

皆さん、「細胞」と「生産」という言葉から、どのようなものをイメージされますか?

普段私たちが飲むアルコールは、酵母などの微生物による、生物的なプロセスで製造されます。

あるいはユーグレナさんは、ミドリムシを使って、バイオジェット燃料をつくることにチャレンジされています。

このように、実は細胞は様々な形で産業利用されており、かつそれらの優れた機能には、細胞以外による代替の難しいものが数多く存在します。

細胞を繊維状の部品「細胞ファイバ」に加工する新技術

人類が細胞を扱う方法は、約200年の歴史があります。

その1つは、タンクの中でぐるぐるかき混ぜて増やす方法です。

もう1つは、お皿の底に張り付けて増やす方法で、大きく分けてこれらの2つぐらいしかありません。

工業的にも、これらの方法しか使われていないのが現状です。

こちらの写真は、「ハイドロゲル」というゼリー状の物質でできたチューブの中に、細胞が詰まっている構造物です。

なぜこのようなものが必要なのかは、後でご説明します。

全体は、このような均一な構造になっています。

こちらは、実際に細胞ファイバを作製している場面の動画です。

上に見えているノズルは、非常に特殊なものです。

もしかしたら、理科の実験で人工イクラを作ったことのある方がいらっしゃるかもしれません。

アルギン酸という海藻から得た抽出物を、塩化カルシウムが入っている液体に垂らすと、ゼリー状のビーズのようなものができて、人工イクラとして使われます。

この人工イクラと同じような材料を「マイクロ流路」という非常に細い流路の中で精緻に合流させることで、「ファイバ」と呼ばれる構造物をつくることができます。

白血病治療で注目の“細胞治療”。しかしそのコストは…

我々は、この技術を「細胞治療」の分野に応用しています。

皆さんは、薬と聞くと、例えば錠剤やカプセルをイメージされるかもしれません。

しかし、細胞を薬として使うことで、従来の薬では治療できなかった病気を治すことができる時代がやってこようとしているのです。

2019年には、日本でも、細胞を使った白血病治療薬が出されました。

今まで手の施しようがなかった症状の方の中にも、回復されるケースが出てきています。

現在、我々が細胞治療の分野で直面しているのは、細胞を使った製品がとても高額な上、少量しか生産できないという問題です。

細胞を使った製品の製造工程はマニュアルであるため、実験室でかなり小規模なものしか作れないことが1つのボトルネックになっています。

iPS細胞を大量に増やすというプロセスを支えた、冒頭で申し上げたタンクの中でぐるぐるかき混ぜる方法を採用すると、集まって大きな塊を作る性質を持っている細胞は、その塊をどんどん大きくしていき、中央に酸素や栄養素が届かなくなっていくことで不均一化を起こして死んでいってしまうのです。

そうなると、もはやその細胞を薬として使うことはできません。

タンクの中で細胞を大量に作るということ自体が、非常に難しいのです。

「細胞ファイバ技術」で培養効率が飛躍的に向上

そこで、我々は先ほどの「細胞ファイバ」の技術を使って細胞を増やしています。

チューブの中で細胞を増殖させると、このように大きさを一定に保ったまま増殖させることができます。

従来のタンクの中でかき混ぜる方法では、塊を大きくしないようにするために、体積率でコンマ何パーセント程度という非常に希薄な状態でしか細胞を増やすことができませんでした。

しかし、我々は技術開発に成功し、生産量を約20倍も上げることができるようになりました。

製薬・バイオテック企業に広く細胞製造技術を提供

我々は、この新技術を、製薬企業の方や、我々のようなバイオのスタートアップの方にお渡ししています。

さらに、コストも10分の1程度にすることを目指して、製造技術の提供というかたちで、細胞治療が多くの患者さんに届くようなお手伝いをしているところです。

「心臓のミニチュアモデル」で新薬試験を効率化

我々の技術は、こうした細胞の培養以外にも応用されています。

本日は時間の関係もあり、1つだけご紹介したいと思います。

Myoridge(マイオリッジ)という京都大学発の会社は、心臓の細胞を効率的に増やす技術を持っています。

今、彼らと一緒に作っているのが、心臓のミニチュアモデルになるような、ヒトの心臓の細胞でできたヒモ(細長い繊維)です。

通常は、新薬に心臓への毒性がないかを動物を使った試験で確認するため、臨床試験に移った時に初めて、ヒトの心臓への毒性が分かります。

これでは、非常に大きな無駄が生じてしまいます。

そこで、より正確に早い段階で毒性を予測するためのツールとして、心臓のミニチュアモデルを提供していこうと考えています。

セルファイバは「細胞の産業利用」を再発明する

最後になりますが、実は今日、この話をするためにここに来ています。

細胞をカプセル化するという技術自体は、20~30年前から注目され、人工イクラのようなビーズ状のものが使われていました。

ただ、問題は、例えばそのビーズに酵母を閉じ込めてジュースに浸した際に、こちらの写真の左側にあるように、増殖した酵母が漏れ出てしまうことでした。

しかし、ファイバの技術があれば、この問題を解決することができるのです。

酵母を同じ期間増殖させても、外液が透明なままで、分離の機能を保ったまま培養することができます。

こちらは昨日ホテルで撮ったものですが、ファイバの中で酵母を発酵させた後、特別な分離の装置や設備を使うことなく、溶液であるジュースと酵母とを分離させることができました。

また最近では、小規模でオリジナルの酒類を製造するマイクロブルワリーやナノブルワリーなどの醸造所も増えてきており、大型の設備がなくても気軽に醸造を始められるツールとして、役立つのではないかと考えています。

このように、細胞を大量に増やすことで、医療、創薬、臓器のミニチュアモデル、食品の分野など、細胞の使い方そのものを根本的に変えていくことにチャレンジしています。

ご清聴ありがとうございました。

(終)

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成

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