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“Minimal”な材料で、本当の豊かさを。Bean to Barチョコレート「Minimal」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

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ICCサミット FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリに登壇し、2位入賞に輝いた Minimal 山下 貴嗣さんのプレゼンテーション動画【“Minimal”な材料で、本当の豊かさを。Bean to Barチョコレート「Minimal」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プラチナ・スポンサーのAGSコンサルティング様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 6B
CATAPULT GRAND PRIX (カタパルト・グランプリ)
– 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング

(プレゼンター)
山下 貴嗣
Minimal -Bean to Bar Chocolate- 代表 /
株式会社Bace 代表取締役
公式HP | STARTUP DB

(株)リンクアンドモチベーション入社後、新規事業立上やマネジメントを経験し、「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」を設立し、現在都内に5店舗2工房を展開。年間4か月強は、赤道直下のカカオ産地に足を運び、良質なカカオ豆の買付と品質改善に取り組む。独自製法を考案し、設立3年で世界最高峰のチョコレート国際品評会で部門別最高金賞を日本ブランドで初受賞後、4年間で61賞を受賞。グッドデザイン賞特別賞「ものづくり」受賞やWIRED Audi INNOVATION AWARD 2017 30名のイノヴェイター等に選出。新しいチョコレートブランドとして、カカオ農家貧困解決とモノづくり追究とビジネスのスケーラビリティの実現を目指す。

「ICC FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリ」の配信済み記事一覧


山下 貴嗣さん 山下と申します。

皆さんのテーブルにチョコレートを配っていますので、よろしければ封を切って、召し上がりながら聞いていいただければと思います。

僕たちは、カカオ豆を農家から直接仕入れてクラフトチョコレートをつくっているブランド「Minimal -Bean to Bar Chocolate- 」です。

“Minimal”な材料で、豊かな風味・食感を実現

今皆さんに食べていただいたチョコレートには、「カカオ豆」と「砂糖」以外何も使われていません。

ザクザクとした触感は、カカオ豆の触感です。

食べると青リンゴやベリーのような、果実のような味がします。

当然ですが、香料や果実は入れていません。

葡萄の種類によって味が左右されるワインのように、チョコレートも、カカオ豆とその製法によって、これだけ豊かな味を生み出すことができるのです。

「引き算のチョコレート」でイノベーションを起こす

これまでのチョコレートは、甘みを足していく、フレンチ料理のような「足し算のチョコレート」でした。

私たちは、和食のように素材を引き算する「引き算のチョコレート」で、チョコレートの世界にイノベーションを起こそうとしています。

私たちの引き算のチョコレートは、世界で最も大きなコンペティションで、日本のブランド初の部門別最高金賞をいただき、さらに4年間で61賞を受賞しました。

世界に技術が認められつつあり、ルイヴィトンやカルティエといったハイブランドからも商品開発の依頼が来ています。

西洋発のチョコレートに日本の技術を使い、勝負できるという基盤ができつつあります。

農業大学と提携し日本独自の「発酵」技術をスキーム化

チョコレートの産業には、植民地貿易の搾取構造がそのまま残っています。

私たちは、中間流通を抜いて、商品をダイレクトにお客様に届けるD2Cのブランドを確立してきました。

私たちの特徴は、OEM(※) ではなく、我々独自の技術を使い、独立したブランドとしてチョコレートの製造・販売を行っている点です。

▶編集注:OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、製造を請け負う側が、納品先のブランド名を使って商品の製造を行うこと。

そしてもう1つ特徴があります。

カカオは現地で「発酵」します。

ここに日本のお家芸である、発酵の技術を使っているのです。

私たちは、農業大学と提携し、日本独自の発酵技術をスキーム化しました。

Minimalファインカカオで、日本から世界の巨大市場へ

チョコレート市場は、世界で11兆円を超えるCAGR(年平均成長率)約5%の巨大な成長市場です。

この市場に対して、まずビジネスの川上では、酒発酵の技術を使ってファインカカオを作り販売していく体制を整えたところです。

これは、日本の発酵技術を駆使した、知財・マテリアルビジネスです。

生産者・消費者・製造者、三方良しの輪で好循環を生む

これまでの話を、製造業のスマイルカーブになぞらえてまとめます。

バリューチェーンの上流では発酵技術による知財・マテリアルビジネスによって日本の農業技術の付加価値を高め、世界に広めていきます。

カーブのボトムの部分では、B2Bの生地ビジネスによって収益や付加価値の底上げをします。

そして下流では、日本のモノづくりの企業が、世界のハイブランドになってB2Cの市場を獲得していくのです。

このようにしてビジネスが大きくなっていくと、当然農家へのフェアトレードも増え、貧困問題が解決されていきます。

一方で、消費者には私たちの新しい「引き算のチョコレート」が伝達されていきます。

生産者、消費者を巻き込んで、この三方良しの輪が広がりビジネスが大きくなれば、世界が良くなっていく好循環を生むことができるでしょう。

カカオ豆農家に教わった「本当の幸せ」とは?

最後に、私が農家に教えてもらった話をさせてください。

あるとき、私は、1トンを3倍の値段で買えると、意気揚々とインドネシアにフェアトレードの買い付けに言ったのですが、初年度はカカオ豆を売ってもらえませんでした。

それは、「1トンを3倍の値段で売る」よりも「100トンを3分の1の値段で売る」ほうが儲かるという“量の経済”にカカオ農家が支配されていたからです。

3倍の値段なのに売ってもらえない“逆フェアトレード”の現実に、僕は愕然としました。

そんな中、この写真に写っているカカオ豆農家のサロモンさんだけが、収入が減ってしまうのにもかかわらず、私と取引をしてくれました。

「なぜですか?」と聞くと、彼はこう言ってくれました。

「今まで僕たちは朝から晩まで働いて、量を作るしか収益を上げる方法がなかった。でも、君たちが初めて、僕たちの生活を守りながら収益を上げるという選択肢をくれた。自分と同じことを子どもや孫にさせなくて済む。このことに本当に感謝している」と。

この時、僕は気づきました。

「本当の豊かさ」とはフェアトレードがどうこうではなく、「選択できる自由を持つこと」で、それをサロモンさんに教えてもらったと思っています。

モノづくりで社会とビジネスを繋ぎ、豊かな世界を

僕は“Minimal”の地に足のついたビジネスで、日本のよいモノづくりを続けていけば、人口が減ってGDPが減少していく未来も、日本は必ず世界で戦え、外貨の獲得ができると考えています。

さらに、ビジネスが広がっていくことで貧困や奴隷労働がなくなり、世界が良くなるということを、選択肢として提示していきたいと考えています。

2100年にこの世界が豊かであるために、ソーシャルとビジネス、クラフトマンシップとスケーラビリティという一見相反するものを統合して、この世界を本当に良くしていきたいと思っています。

日本のモノづくりは希望にあふれています。

ぜひ一緒に皆さんと未来を描きたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

(終)

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください!

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成

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