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農業の高齢化に救いの手を!自動野菜収穫ロボットを“RaaSモデル”で提供する「inaho」(ICC FUKUOKA 2020)【文字起こし版】

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ICCサミット FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリに登壇し、3位入賞に輝いた、inaho 菱木 豊さんのプレゼンテーション動画【農業の高齢化に救いの手を!自動野菜収穫ロボットを“RaaSモデル”で提供する「inaho」】の文字起こし版をお届けします。ぜひご覧ください!

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回250名以上が登壇し、総勢900名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。 次回ICCサミット KYOTO 2020は、2020年8月31日〜9月3日 京都市での開催を予定しております。参加登録などは公式ページをご覧ください。

本セッションは、ICCサミット FUKUOKA 2020 プラチナ・スポンサーのAGSコンサルティング様にサポート頂きました。


【登壇者情報】
2020年2月18〜20日開催
ICCサミット FUKUOKA 2020
Session 6B
CATAPULT GRAND PRIX (カタパルト・グランプリ)
– 強者が勢揃い –
Sponsored by AGSコンサルティング

(プレゼンター)
菱木 豊
inaho株式会社
代表取締役
公式HPSTARTUP DB

1983年生まれ。鎌倉育ちの鎌倉っ子。大船高校を卒業後、大学在学中にサンフランシスコに留学し、帰国後中退。東京調理師専門学校に転学し、卒業後に不動産投資コンサルタント会社に入社。4年後に独立。2014年に株式会社omoroを設立。音楽フェスの開催、不動産系Webサービスを開発運営後に売却し2017年に解散。2014年に人工知能の学習を開始し、2015年に地元鎌倉の農家との出会いから、農業AIロボットの開発を着想。全国の農家を回りニーズ調査を進め、2017年1月にinaho株式会社を設立。鎌倉を拠点に、世界初のアスパラガスやキュウリ等を汎用的に収穫できるロボットを開発。収穫ロボットを軸として、一次産業全般のAIロボティクス化を進めている。

「ICC FUKUOKA 2020 カタパルト・グランプリ」の配信済み記事一覧


菱木 豊さん inahoの菱木です。よろしくお願いします。

かわいいロボット(※) の次は、とても実用的な自動野菜収穫ロボットのお話をさせていただきます。

▶編集注:菱木さんのプレゼンテーションは、GROOVE X 林 要さんによる「LOVOT」の紹介のの後に行われました。

inahoの自動野菜収穫ロボは、収穫適期の野菜を自動で判断

我々は「テクノロジーで農業の未来を変える」ことに取り組んでいます。

実際にどのように取り組んでいるのか、まずはこちらの動画をご覧ください。

まずこちらのシーンは、農家さんがアスパラガスを収穫している場面です。

このように、人が目で見て手で1本ずつ収穫します。

なぜ人の手で収穫しなければならないかというと、アスパラガスは「25センチ以上」など、長さで収穫するかしないかが決まるからです。

しかし、この収穫方法は身体への負担が大きく、とても大変です。

そこで我々のロボットを使えば、スマートフォンでスタートボタンを押すだけで自動的に動き、収穫対象かどうかを1本1本判断して、収穫の対象になるものだけを収穫することができます。

さらに、ロボットアームがどのような経路で行けば周囲の物に当らずにきちんと収穫できるかを、ロボットが自動で計算し稼働しています。

我々が技術的にクリアした大きな課題の一つは、日中に差し込む太陽光の問題です。

太陽光が差し込むと、通常カメラは白飛びしてしまい、収穫対象をきちんと認識して収穫することができなくなります。

そんなノイジーな環境でも正しく収穫できるのが、我々の技術の特徴です。

また、我々のロボットはハウスからハウスへの移動も自動で行います。

夜間でも問題なく収穫することができるので、24時間作業をすることも可能です。

農家さんを単純作業から解放し、身体を休めたり、販路開拓のための営業活動に時間を使ったり、野菜がより美味しくなるような研究に時間を使ったり、人がやらなくて良いことはテクノロジーで代替し、やるべきこと、 やりたいことに時間を使える社会をにしていきたいと考えています。

今後は、アスパラガスだけではなく、キュウリやトマトなど、色々な作物の自動収穫にも対応できるように開発を進めていきます。

ICC FUKUOKA 2019 カタパルト優勝、高まる注目度

我々は、2019年に行われたICCサミット FUKUOKA 2019 スタートアップ・カタパルトで優勝させていただきました。

「inaho」はAI×ロボットアームによる野菜の自動収穫で“農業の未来”を変える!(ICC FUKUOKA 2019)【文字起こし版】

優勝後の1年間は、3日に1回ほどのペースでメディアに取り上げられ、農業用ロボットが社会的に必要とされていることを実感しました。

多くの時間が費やされる収穫作業にソリューションを

我々の次の目標は、トマトの収穫です。

皆さんが普段食べているトマト、ナス、ピーマン、キュウリなどはすべて、人が目で見て、手で収穫する「選択収穫」野菜です。

サイズや、生えている場所、色など、今まで人が目で見て収穫の判断をするしかなかった野菜を、どんどんロボットで収穫できるようにしていこうと考えています。

我々が収穫作業の改善に取り組んでいるのは、収穫作業に全作業時間の5~6割もの時間がかかるという現状があるからです。

この課題を解決すれば、それが農家さんにとって大きなインパクトになると感じています。

収穫高の15%をマージンとする従量課金型の“Robot as a Service”

この収穫作業について、もう少し詳しくご説明します。

農家の方は年間8~9カ月もの間、毎日収穫をされています。

皆さんから見ればすごく長い期間に感じられるかもしれませんが、一方で、収穫がない期間が3~4カ月間あります。

農家さん側からすると、収穫がない3~4カ月間は人を雇うことができません。

しかし、働く側は、安定した通年雇用での労働を希望するので、雇用のニーズがマッチせず働き手が集まらないという問題が生じてしまいます。

そうした問題を解決するため、我々は収穫が必要な時だけにロボットを使えるサービスをつくりました。

ビジネスモデルは、収穫高に対してマージンをいただくというもので、「RaaS(Robot as a Service)」と呼んでいます。

ロボットには、アスパラガス1本を何回収穫したかのログデータが残ります。

例えば、アスパラガスが1本約30グラムだとすると、100本収穫したら約3キロ収穫したことが分かります。

アスパラガスの市場取引価格がキロ単価1,000円の場合、ロボットが3,000円分収穫したことになるので、我々はマージンとしてその15%分である450円をいただくく仕組みになっています。

仮にロボットが1,000万円分の野菜を収穫したら、我々は150万円をいただくことになります。

1,000万円分を収穫するのにかかる人件費は約180万円なので、ロボットを使うことでコストを抑えることができます。

ただ我々は、人件費を安くすることだけを考えているわけではありません。

仮にロボットが3人分ぐらいの働きをすることができるようになれば、人手不足により雇用できる人数が半分になったとしても、面積を2倍くらいにすることが可能になります。

つまり、雇う人が半分、所得が2倍になるような未来をつくっていきたいと考えているのです。

80%の収穫率・作業時間の半減・約7時間の稼働を実現

我々はハードウェアをつくっていますが、立場はあくまでサービス事業者です。

何がメリットなのでしょうか。

ロボットにはカメラやセンサーなど様々なパーツが搭載されており、これらは年々アップデートされています。

スマートフォンも同様で、パーツ単位でよいものがどんどん安く手に入るようになりました。

我々も、自社ツールであるロボットの、ソフトウェアとハードウェアの性能を更新し続けています。

いきなり100%の収穫率を達成することは難しいのですが、50~60%だった収穫率をどんどん上昇させています。

ロボットの性能が向上し、野菜の収穫率が増えれば増えるほど、我々の売上も増え、農家さんの手間も少なくなるのです。

2018年には50%だった収穫率は今では最大80%になり、収穫にかかる時間も半分以下になり、約7時間連続稼働できるようになりました。

佐賀の拠点から30分圏内の農家に絞ってサービスを提供

我々は、佐賀県に、鹿島支店・佐賀支店の2つの支店を構え、サービス・メンテナンスの行き届く、支店から約30分圏内の農家さんにだけロボットを提供しています。

自社で拠点を築いてサービス・メンテナンスを行うことには理由があります。

1つ目は随時最新のパーツに交換したり、ソフトウェアをアップデートすることでロボットを最新の状態にすること。

2つ目は、万が一ロボットが故障した場合は、すぐに代替機をお届けすること。

3つ目は、ロボットが収集するデータを活用することで、農家さんに生産性向上のアドバイス行うためです。

さらに、現在通信大手企業とアライアンスを進めており、我々のリソースが足りない場合は、代わりに外部のアライアンス・パートナーが駆け付けられるような体制をつくっています。

今後は、九州と関東近郊に拡大していく予定です。

平均年齢67歳、今後10年で半減する農家を支えたい

ある統計によれば、今後10年で日本の農家さんが半減するそうです。

理由は、農家の高齢化です。

農業に従事する人に定年はなく、平均年齢は67歳です。

世帯あたりの生産面積は2000年からずっと横ばいで、人手がボトルネックになっていることが、こちらのグラフからも読み取れます。

しかし、市場の約20%にロボットが導入されれば、かなり数字が改善されると考えています。

2020年3月から、ロボット15台の導入がスタート

これまで30回以上、色々なところでデモンストレーションを行いました。

そして600名以上の農家さんに見ていただき、約8割の農家さんから「導入したい」という声をいただきました。

2020年3月からは、15台のロボットを導入できるように準備を進めています。

日本発ロボットテクノロジーを“RaaSモデル”で世界へ

我々は、海外にも目を向けています。

これは、オランダのトマト工場の様子です。

まさに工場のような世界です。

48軒の農家さんの売上は420ミリオンユーロで、1軒あたりにすると約10億円です。

ここで、オランダと日本の市場の違いについてお話しします。

オランダの国土面積は日本の9分の1ですが、トマトの年間生産量は日本の1.2倍です。

そして、農家さんの数は何と日本の約70分の1。

未来の日本も、このようになるのではないでしょうか。

皆さんは、このように働き手の少ないオランダでも、まだ人の手で収穫がなされていることをご存知ですか?

収穫は、時給20ユーロの派遣労働者に頼っています。

このような環境に、我々はテクノロジーで参入していこうとしています。

我々は、オランダの政府機関によって世界のロボット系ベンチャー5社のうちの1社に選ばれ、2020年にプロジェクトを行う予定です。

2022年末までには15,000台を運用し、グローバルに展開を進めていこうと考えています。

日本発のロボットとテクノロジーで、皆さんの食の問題を解決していきたいと思います。

ありがとうございました。

(終)

実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/尾形 佳靖/フローゼ 祥子/小林 弘美/戸田 秀成

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