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春光院 川上副住職が語るマインドフルネスの誤解と本質(ICC KYOTO 2017)【文字起こし版】

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読者の皆さんは、自分のことを考える時間を取っていますか。自分を客観的に見られていますか。世界中のトップリーダーにマインドフルネスを説き続けてきた春光院の川上さんが、巷で叫ばれているマインドフルネスの誤解とその正確な理解を解説します。

ICCカンファレンス KYOTO 2017「オムニバス・ライブ」プレゼンテーションの書き起こし記事です。ぜひご覧ください。

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【登壇者情報】
2017年9月5-7日開催
ICCカンファレンス KYOTO 2017
オムニバス・ライブ

(プレゼンター)

川上(全龍)隆史
宗教法人 春光院
副住職

米・アリゾナ州立大学で宗教学を学んだ後、宮城県の瑞巌寺にて修行を行い。2007年より春光院の副住職として、国内外で企業や大学や学会などで禅やマインドフルネスに講演やワークショップを行う。現在、慶應大学大学院のKeio Media Designの研究員でもある。また2008年からは米日財団のリーダーシッププログラムのフェローとしても活躍。

川上(全龍)隆史氏(以下、川上) 川上です。

どうぞよろしくお願いいたします。

今日のトピックは、マインドフルネスについてです。

今いつも私が考えているのは、最近のマインドフルネスは、テクニック寄りになっているということです。

では、どのようにやっていけばいいのでしょう。私は今、こんな格好をしていますが、禅僧です。禅を中心に、マインドフルネスとはどういうものかということを考えています。

ここで重要なのは、マインドフルネスは科学であるということです。

ジョン・カバット・ジン、彼がMindfulness-based stress reduction(マインドフルネスストレス低減法)を1970年代後半につくりました。

マインドフルネスストレス低減法(ジョン・カバット・ジン)

その時に彼が作った定義としては、「マインドフルネスというのは非宗教的な瞑想であり、脳科学で証明されていくであろう」という考え方です。

証明で重要になるのが科学の定義ですが、最近のマインドフルネスの潮流を見ると、「科学があるから、まるまる信じて行こう」となってしまっています。

それでは宗教やカルトと一緒です。

科学で証明されているということで、ドンドンとそれを押していく方が多いのですけど、マインドフルネスのもともとの考え方からずれています。

マインドフルネスの考え方というのは、今、現に起きている事、目の前で起きている現象に対して良い悪いという判断をするのではなく、ありのままを見据えるということが必要だということです。

ありのままを見据えるためにはどういうことが必要かというと、自分の固定概念とか、バイアスを外していくということになります。

自分はどのように物事を考えて判断していくのか、常に意識するということが重要です。マインドフルネスに対する考えの中では、それが最も重要なことであろうと私は思っています。

マインドフルネスをやることによって生産性が上がります、健康状態が上がります、そういう事を言っている方が多いのですが、それでは巷で流行っているダイエットと変わらないアプローチです。

そこをよく考えずに、皆さんは乗ってしまっています。

ここで気をつけないといけないのが、良い悪いで判断している段階というのは、結局のところポピュラーサイエンスの世界です。リアルサイエンスではありません。

リアルサイエンスというのはどういうことかと言うと、「現時点でわれわれは、これが事実であろうと思っています、…」というのがリアルサイエンスだと思うのです。

なぜかというと、科学で証明されていることは、どんどん変わっていくからです。

14世紀、その当時の考えでは、地球は平らでした。でも、その後に、地球は丸いということがわかってきます。

天動説と地動説、創世論と進化論など、多くの常識が変化していきました。

良い科学者・悪い科学者の判断をどこでするのかというと、筋のいい科学者というのは科学を疑います。今証明されているものはどういうものだろうと疑ってかかる、それが筋のいい科学者です。

筋の悪い科学者というのは、科学をまるまる信じてしまいます。証明されているものが事実だと思い込んでしまいます。

ICCに参加されている方はベンチャー系の方が多いと思うのですけど、新しいイノベーションを生んでいくことに対してマインドフルネスをどう使うか、そこの考え方を変えていくということが重要で、単に1日10分とか15分瞑想したからすぐ変わっていくということではないのです。

なぜ呼吸と姿勢のコントロールが重要なのか?

では、瞑想の基本でもあり重要なことは何かというと、瞑想をやるという事が、脳や考え方にどのような影響を与えるのかということを、常に考えるということです。

そして、呼吸です。

瞑想というのはどういうことかというと、自分の感情に対するトップダウンのアプローチだと思ってください。

皆さんの感情はボトムアップです。ボトムアップで起きる現象というのは、周りで起きていることに対して、まず先に体が反応する現象です。

その後に皆さんの脳が、体が周りに対してどう反応しているかというのを分析して、皆さんの感情が出てくるわけです。

例えば、一番わかりやすい例は「怒り」です。

皆さんが怒りを感じている時、皆さんの体はどう反応しているでしょうか。

筋肉が硬直する、呼吸が荒くなる、心拍数が上がる、発汗の程度が変わるなど、脳が分析をして(身体の反応を)出していきます。

その中で皆さんが直接コントロールできるものは何かというのを考えてみてください。

心拍数を直接コントロールできる人は絶対にいないと思います。

皆さんが直接コントロールできるものは呼吸です。

呼吸というのは結構複雑なメカニズムでなされている行動で、交感神経と副交感神経の両方使っているわけです。

まず、ゆっくりとした呼吸、深い呼吸をすることで、副交感神経が活性化されてきます。

逆に言うと、先ほど言いましたとおり、怒りを感じるとき、緊張を感じるときは、呼吸が早く、浅くなります。

それはどういうことかと言うと、交感神経が活性化されているからなのです。

出所:春光院Website

もうひとつ、吸っているときと吐いているときで、実は違う神経を使っていまして、吸っているときは交感神経、吐いているときは副交感神経です。

ですから、私が指導する時は、まず姿勢から入ります。姿勢は呼吸に影響を与えます。

その次に交感神経を抑えていって、副交感神経を優位にさせる必要があるので、ゆっくりした呼吸で、吐く息と吸う息を長くしていく、これが重要になってきます。

普通のインストラクターやマインドフルネスの講師の話は、だいたいここで終わってしまいます。ストレスは悪いことですからストレスを下げていきましょうという話になってしまうのです。

呼吸と姿勢を整え、物事を客観的にとらえる

仏教や禅、ヒンズー教やヨガ・ヨギの世界などで、なぜ瞑想や、呼吸、姿勢というものが奨励されているのでしょうか。

それは、自分というものを客観的に見据えるコンディションを作らないと駄目だからです。

心拍数が高いとか、呼吸が荒いとか、交感神経がガンガンに上がっている状況で、自分というものを客観的に見ようとしても、絶対にできません。

心が落ち着いていて、副交感神経が活性化されている、しかも集中した状態じゃないと、自分というものがちゃんと判断できないのです。

どういう状況にあるかということを、客観的に見据えることができないわけです。

そこが重要になのです。そこからまず自分のバイアスというか、常に自分はどのように世の中を見ているのかということに気づく、問いかけるということが重要になってくるのです。

これを繰り返すことによって、言ってみれば自分が、常にどういう風に世の中を見ているか、良い悪いの判断をしているかということに気づきやすくなってきます。

意外と人間というのは、自分が持っている固定概念というものに縛りつけられてしまうものなのです。それはどういうことかと言うと、同じことを繰り返すというのは、実は非常に心地よいのです。

人間は、だんだんと状況が悪くなっているのにも関わらず、意外とそれを無視し続け、同じ思考パターンや行動をずっと繰り返すようになってきます。

最初のうちはそれがちゃんと機能していたのかもしれませんが、ある時点からネガティブに働くようになり、恒常性を好むが故に、それを無視してそのまま継続していくわけです。

しかしそうではなく、変化を冷静に判断して、そこから自分の考え方とか行動のパターンを変えていくというのが非常に重要になってきます。

そこがマインドフルネスのコアな考え方なのです。

自分というものはどのように考えているのか、行動しているのかということに気づいていく。

ネガティブな感情も重要である

また、もう一つ重要になってくるのが、ネガティブなものを完全に抑え込まないということです。

最近よく言われているのが、ネガティブな感情を失くして、常にポジティブに考えていきましょう、ハッピーハッピーな状況になっていこうという動きです。

人間というのは、感情の多様性が絶対に必要です。

感情の多様性ということを考えていくときに、最近私がよく言うことですが、ポジティブ感情にもネガティブなとこはあって、ネガティブ感情にもポジティブはあるということです。

例えば、幸せな時はどうしても楽観的になりがちです。

人間というのはあまりにも楽観的になりすぎると、周りに注意をしなくなります。

そうなってくるとミスが増えます。

それは言い換えれば、ネガティブな部分ですよね。

感情にも色々ありますが、悲しい感情というのは皆さんを注意深くします。

自分がどういった感情を感じていて、その感情は、自分の考え方や行動にどのように影響を与えるかということを常に理解してもらう、それがマインドフルネスの根幹になってきます。

自分を客観視できる状況を作る

自分というものを客観視して、自分がどういう考え方や行動をしているのか、どのように物事を判断しているのかというメカニズムを知るということが、マインドフルネスの一番重要なポイントです。

そのための状況を作るのに重要なのが、メソッドして伝えられているマインドフルネスです。

メソッドだけではなくて、考え方まで自分を発展させていくのです。

答えのない質問かもしれませんが、自分のバイアスはどのようなもので、どのような場合に使っているのだろうとか、自分の作った将来の目標というのが、実際に社会にどういう影響を与えるのかということを常に考えていく時間を持つということが重要なのです。

そのようなことを、皆さんには経験していただきたいと思っています。

実際、明日と明後日の朝、私のお寺に来ていただく方もいらっしゃいますが、そこで実際に体験してもらうというのも重要です。

出所:春光院Website

そこからもう一度、日々の生活にそれらを取り入れていただき、常に自分のことを考える時間が必要です。

自分がどういう社会の立ち位置にあって、世界の立ち位置にあるかということを考える時間を持つ、その時間を持つためのコンディショニングの時間が必要です。

簡単に言うと、それが、私が伝えているマインドフルネスです。

どうもありがとうございました。

(終)

春光院 川上(全龍)隆史さんのプレゼンテーション動画をぜひご覧ください。

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編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/平井 裕/本田 隼輝/浅郷 浩子

【編集部コメント】

ICCサミット KYOTO 2018では、昨年同様、春光院の坐禅プログラムを体験を用意しています。サミット参加でご希望の方対象です。詳しくはプログラムの3日目をご覧ください。(浅郷)

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