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「メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論」【F17-2A】セッションの書き起し記事をいよいよ公開!10回シリーズ(その3)は、ユーグレナCFOの永田さんに、ユーグレナのファイナンス戦略についてお話し頂きました。高い企業価値を維持するユーグレナのIR資料を多く掲載いたしました。ぜひ御覧ください。
ICCカンファレンスは新産業のトップリーダー160名以上が登壇する日本最大級のイノベーション・カンファレンスです。次回 ICCカンファレンス KYOTO 2017は2017年9月5〜7日 京都市での開催を予定しております。
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【登壇者情報】
2017年2月21〜23日開催
ICCカンファレンス FUKUOKA 2017
Session 2A
メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論
(スピーカー)
齋藤 剛
SMBC日興証券株式会社
株式調査部シニアアナリスト
長澤 啓
株式会社メルカリ
執行役員CFO
永田 暁彦
株式会社ユーグレナ
取締役 財務・経営戦略担当
米島 慶一
クレディ・スイス証券株式会社
株式調査部 マネージング ディレクター
(モデレーター)
嶺井 政人
株式会社マイネット
取締役 副社長
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▶「メガ・ベンチャーのためのファイナンス戦略と資本市場の活用法を徹底議論」の配信済みの記事一覧
嶺井 いま、メルカリの「未上場戦略」とでも言うべきカタチをお伺いしたわけですが、では続いて、ユーグレナの永田さん、御社のファイナンス戦略を是非お聞かせ下さい。
10年、20年先の株価を見据えたファイナンス戦略
永田暁彦 氏(以下、永田) ユーグレナは東証一部上場企業なので発言には気を付けるのですが、ファイナンスについては、おっしゃる通り、会社としてやりたいことを実現する時に、「
資金がない」と言わせない環境を作ることが最も重要だろうと考えています。
資料:2016年12月 個人投資家向け説明会(2016年12月1日開催)の資料 P2 から引用
資料:2016年9月期 第2四半期決算説明資料(2016年5月24日開催)のP26より引用
永田 エクイティファイナンスにしても、本質的には、資本を厚くしてそれ以外の戦略を取り易くするという側面も十分ある訳ですので、ファイナンスというものをどう考えていくのかというのは非常に特徴的だなと思います。
ここにユーグレナが呼ばれている理由から察するに、我々のファイナンス戦略を軸で切って考えると、やはり株価というものは非常に重要な戦略というか、戦術の一つだなという風に考えています。
資料:2016年12月 個人投資家向け説明会(2016年12月1日開催)の資料 P14 から引用
永田 私達は、ファイナンスとマーケティングとR&D(Research and Development=研究開発)という3つに切り分けて成長戦略を描いています。
東大発ベンチャーということで研究開発型の企業だと思われがちなのですが、研究開発型「アンド」マーケティング型「アンド」ファイナンス型ということを常に考えています。
研究開発型となると、かなりアグレッシブな先行投資が必要です。
資料:2016年9月期 第2四半期決算説明資料(2016年5月24日開催)のP30より引用
永田 例えば先日も、58億円の燃料工場を建てることに関する契約を結んだので、これが建つことは決まったのですが、58億円から生まれてくる売り上げというのは、(現時点で)ほぼゼロなんですよね。
資料:2017年5月12日「2017年9月期 第2四半期決算説明資料」P17より引用
永田 その資金をどうやって使うか、それをどうやって調達できるか、これは普通の調達ではできませんよね。
資料:2017年5月12日「2017年9月期 第2四半期決算説明資料」P31より引用
嶺井 そうですね。
永田 加えて、我々はM&Aでの成長をとても重要視していて、毎年数社ずつM&Aし続けています。
▶ 2017年4月21日 簡易株式交換によるイースター株式会社の完全子会社化に関するお知らせ
資料:2017年5月12日「2017年9月期 第2四半期決算説明資料」P10より引用
永田 これらをどうやったら、いわゆるファイナンスの側面で足枷をつけずに実施できるか、株価を維持するための10年先20年先の戦略を考えています。
これによって株式交換もできるし、当然一般的なエクイティファイナンスもできるし、他のファイナンスもできる環境をどう作るかということに、相当専念をしています。
ですから、我々のファイナンス戦略においては、株主、特に個人投資家とのコミュニケーションと、それによる株価形成がかなり意識されており、経営が維持されているという状況です。
嶺井 なるほど。ありがとうございました。
では、アナリストのお二方に、今の事業会社2社の…お2人が「聞くなよ」という表情で見ていらっしゃいますけれども(笑)。
戦略を実現する、投資家とのコミュニケーション
嶺井 米島さん、ユーグレナに関してはいかがでしょうか?
一般論としてで結構ですので聞かせてください。
米島慶一 氏(以下、米島) カバレッジ(担当)していないので、株価についてのレコメンデーション(推奨)は避けさせて頂きますが、やはりエクイティファイナンスをとても真剣に考えていらっしゃるなという印象がありますね。
一般的にはやはり公募増資という形になると、(株式の)希薄化などと言われて株価が一旦下がったりすることが結構多いのですけれども。
僕がエクイティ(株式)というところで仕事をやっていて、やはりすごいなと思うのは、上手く株式市場を使うと、例えばデット(借入)で調達できなかった資金をエクイティ(株式)で調達することによって、会社に全く違う成長が見られたり、異次元に行ける時があることです。
そこを上手く使っている、もしくは上手く対応しようとしているというのはすごく重要かなと思っています。
ユーグレナさんの財務諸表などはあまり拝見したことはないのですが、永田さんのお話を聞いていて、非常に真剣にやっていらっしゃるなという印象がものすごくあって、こういう活用の仕方をして下さる企業があるんだという感動を覚えましたね。
あとは個人投資家などもそうですし、一般的な機関投資家にもヘッジファンドやロング・オンリーで(株式を)持ち続けてくれるようなところがあって、個人投資家というところがあって、株主に対して色づけする方というのは結構多いと思っています。
ヘッジファンドには持ってほしくないとか、個人投資家は面倒だよねとか、時々電話がかかってきたりするらしいので、結構大変かもしれないのですが、やはりステークホルダーが沢山いることによって会社の多様性もできてくると思います。
また、ヘッジファンドや個人投資家でも本当に長期のホルダーになったり、本当にファンになってくれる方も多いので、その辺の活用の仕方を本当にきちんと考えていらっしゃるなという印象を受けていますね。
嶺井 自分達の戦略を実現するために投資家を自ら選び、その投資家に理解してもらえるように説明会などを通してしっかりコミュニケーションを取っていらっしゃるというのは、ユーグレナの特徴ですよね。
株価の4分の3は未収益化事業への期待値
齋藤 米島さん、今ユーグレナさんをカバレッジしているのは僕だけですので、是非 財務諸表を見て頂きたいと思います(笑)。
▶ 財務諸表を掲載しました!
資料:2017年5月12日「2017年9月期 第2四半期決算説明資料」P23/P24より引用
齋藤 カバレッジアナリストを増やすというのはバリュエーションを安定させるためにはいいポイントだと思うので。
ただ、実はこの間レポートにも書いたのですが、現在の株価が1,200円くらいなのですが、ヘルスケアのところでは、僕、350円しか価値がないと思っていて、残りの900円以上というのは全部、収益を生み出していない部分(バイオジェット燃料)に対しての期待値なんですよね。
資料:2017年5月12日「2017年9月期 第2四半期決算説明資料」P6より引用
先ほど設備投資の金額を少し控えめにおっしゃいましたけれども、その後の商業プラントまで考えると、300億円以上の設備投資が必要になるんですよね。
ようやくお金が出て来るのは、2020年や2021年という話ですよね。
それに関して、個人投資家も含めて、将来のことをきちんと伝えることによって今のバリュエーションが付いているというのは、株式価値というものに対しての見方も含めて、やはりきっちりやられているなというのは、カバレッジアナリストとして言える範囲のコメントです。
投資家に研究開発がゴールに辿り着きそうと思ってもらう
嶺井 ありがとうございます。
(株価を)350円と900円という分け方、なかなかシビアな見方かと思うのですが、永田さん、それについてはどう思われますか?
永田 分けるとそうなるんですよね。
嶺井 敢えてそれを分けて考える分には、永田さんとしては意図通りなのですか?
永田 そうですね、それぞれが独立した事象ではないということが一番大切だと思っています。
僕達は上場してから4年間、時価総額1,000億円以上を保ち続けているのですが、利益を出し続けながら、PER(Price Earnings Ratio=株価収益率)3桁を保ち続けています。
確かに、バイオジェット燃料に対する期待値が高くなる訳ですが、その株価ををいかに活かしながら短期の利益にも転換していくのか、そしてどうヘルスケアビジネスに転用するかということも常に考えているということですね。
応援したい人が増えると、株主は増える訳です。
我々には株主が9万人いて、これは日本の上場企業のトップ100に数えられます。
資料:2017年5月12日「2017年9月期 第2四半期決算説明資料」P34より引用
その人達は全員潜在的な顧客になる訳ですし、PERが100倍を超えている状態でPER10倍の会社を株式交換でM&Aできるという状況が4年間続いているというのは、私達にとっては相当な強みだと思っています。
買えば買う程、ファンダメンタル(Fundamental=基礎的諸条件)が良くなっていくという状態なので、そういう意味では、実は資本コストとして燃料事業に投資しているということが、ヘルスケア事業に対するファイナンスコストを下げているという風にも言えると考えていて、その環境は循環し続けています。
▶ 資本コストとは、企業の資金調達に伴うコスト(グロービスMBA用語集)
トップライン(売上高)が毎年2倍伸びながら、研究開発がゴールに辿り着きそうだという感覚値をきちんと全員に伝えるIR戦略をとっていくということが一番大切だと思っています。
資料:2017年5月12日「2017年9月期 第2四半期決算説明資料」P3より引用
そういう意味では、(ヘルスケア事業とバイオジェット燃料事業と)分離して評価されること自体はやぶさかではないですけれども、それが両方あるからこそ、今の環境が作れているということを経営としては理解しながら進めているということです。
嶺井 なるほど。ありがとうございます。
(続)
編集チーム:小林 雅/榎戸 貴史/戸田 秀成/横井 一隆/Froese 祥子
続きは M&Aを通じて起業家型人材を獲得するメルカリ をご覧ください。
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【編集部コメント】
続編(その4)では、メルカリによるザワットとのM&Aをケースに、非上場ベンチャーによるスタートアップの買収の意図等について議論しました。是非ご期待ください。他にも多く記事がございますので、TOPページからぜひご覧ください。
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