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「教室から社会を変える」社会起業家 Teach For Japan 松田 悠介の挑戦

「生まれた地域環境や家庭環境によって子どもの人生が左右されている」
「社会の変化によって必要な教育は変わる」
「公立学校の教育現場を支援する」
「教室から社会を変える」

社会起業家 Teach For Japan 松田 悠介さんの挑戦を是非ご覧ください。10分間のプレゼンテーション動画も是非ご覧ください。

登壇者情報
2016年2月17日開催
 ICCカンファレンス STARTUP 2016
 Session 2
 「社会を変える起業家になる」

(プレゼンター)
 松田 悠介
 認定NPO法人 Teach For Japan 創業者 兼 代表理事

日本大学を卒業後、体育教師として中学校に勤務。体育を英語で教える Sports English のカリキュラムを立案。その後、千葉県市川市教育委員会 教育政策課分析官を経て、ハーバード教育大学院(教育リーダーシップ専攻)へ進学し、修士号を取得。卒業後、プライスウォーターハウスクーパース株式会社 にて人材戦略に従事し、2010年7月に退職。Teach For Japan の創設代表者として現在に至る。日経ビジネス「今年の主役100人」(2014年)に選出。世界経済会議(ダボス会議) Global Shapers Community 選出。 経済産業省「キャリア教育の内容の充実と普及に関する調査委員会」委員。奈良県奈良市「奈良市総合計画審議会」委員、「奈良市教育振興戦略会議」委員。共愛学園前橋国際大学「グローバル人材育成推進事業」外部評価委員。京都大学特任准教授。著書に「グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」(ダイヤモンド社)」

e-Education 三輪 開人さんのプレゼンテーションもご覧ください:「若者の力で、社会を変える 」社会起業家 e-Education 三輪 開人の挑戦

松田悠介氏(以下、松田氏) 皆さんこんにちは!全然元気ないですね。こんにちは!ありがとうございます。Teach For Japanの松田です。教育界の松岡修造を目指してますので、今日は誰よりも熱くいきたいなと思います(笑)、よろしくお願いします。
黒板に「教育は人なり」という言葉を書いているんですが、これは私の想いであり、心から信じている言葉です。これは私のみならず、Teach For Japanが信じていることなんです。

1教育は人なり

どれだけ素晴らしいビデオ教材があったとしても、どれだけ素晴らしい図書館があっても、それを活かせる人がいることが、とても重要だと思ってるんですね。

私はこの「人」を通して日本の教育を盛り上げていきたいと考えています。そんな想いを本日はお伝え出来ればと思っています。

生まれた地域環境や家庭環境によって子どもの人生が左右されている

まずは私たちの取り組んでいる課題はこちらです。「生まれた地域環境や家庭環境によって子どもの人生が左右されている」ということです。

2教育必要

ピンとこないかもしれませんけれども、日本には深刻な教育格差の問題がございまして、今6人から7人に1人の子どもが貧困状態にあるといわれております。6人~7人に1人です。一学年に100万人いますので、一学年の中で16万人そういった子ども達がいるということになります。

貧困をもたらすのは格差の問題でございまして、年収が高ければ高いほど、子どもたちの学力は高くて、年収が低ければ低いほど、子どもたちの学力も低い。これはファクトです。

3年収(加工)

こういったところで、学力の格差が開いてくると、その先の進学の格差に影響を与えて、低偏差値高校、高偏差値高校の大学進学の違いはこれだけ大きな差があるんですね。

4学力(加工)

勿論大学に行くことが全てじゃないと思いますよ、夢や目標を早い段階で見つけられて、それを応援する環境があれば、中卒であっても高卒であっても、社会に出て自立をしている人、社会に貢献している人はたくさんいると思います。

ただ、現にそういった夢や志が高校段階で見つからない人達はどうするのか。引き続き大学にいって、色んな人との出会いがあったり、インターンやICCのような活動に参加する経験をもらえるわけですよね。そういった出会いや経験を通して、自分が本当に何をやりたいかって見つけられるんだと思います。皆さんは大学に行っているというだけで、今回のICCに参加するような機会を得られているわけですよね。大学進学はそういう意味ですごく重要だと思ってます。

また、データを見てみても明らかなんですけど、大卒なのか高卒なのかによって、これだけ得られる仕事であったり、得られる賃金は大きな差になってきます。

5 学歴年収

何よりも深刻なのは、これが連鎖してることなんです。つまり、先ほどの生まれた環境によって学力に差が出てきて、そして進学率が変わり、その先の就労出来るか否かが決まり、収入も決まり、そして自分の子どもに与えられる教育が限られてしまうわけですよね。

6 連鎖

つまり、皆さんはラッキーだから「ここにいる」ということだと私は思っています。もちろん、皆さんは努力したからこそ東京大学とか慶応義塾大学とかに入学したと思います。

ただ、忘れてはいけないのは、「努力できる環境にいた」ということです。努力しようと思っても、努力できる環境にいない同じ世代や下の世代の子ども達がいることを忘れてはならないと思っています。

どこに生まれても、そういった子どもたちの可能性が活かされる社会を作っていきたいなと私は思っています。その中で、「可哀想な人を救いましょう」ということじゃないんです。これは国造りであって、地方創生においても非常に重要な観点です。

日経新聞に日本財団が出した調査(子どもの貧困の社会的損失推計に関するレポート)についての記事ですけども、先ほどの一学年100万人いる子どもたちの16%を一学年放置するだけで、つまり学業であったり進学であったりを放置するだけで、経済損失は2兆9千億円あるというふうに言われております。社会保障は1兆1千億円増えるとも言われています。

7 日経

本来、必要な学力を身に付け、進学し、就労することができ、そして納税していく人たちと、機会が十分になく進学や就労がままらない状態で、社会保障に頼らざるを得ない状況にいる人たちの差を見るとこれだけ大きな差になるというシュミレーション結果です。

つまり厳しい状況にいる子どもたちは、可哀想だから救うんではなく、そういった子どもたちを税金を使う側ではなく、いかに税金を払う側であったり、社会に貢献する側を担ってもらえるようにしていくかはすごく重要なんじゃないかなと私は信じています。

社会の変化によって必要な教育は変わる

厳しい環境にいる子どもたちこそが未来のリーダーになる可能性があるんじゃないかなと思ってます。こういった子どもたちに学力テストの平均点を取れるようになればいいという低い期待値でみるのではなく、この子ども達が10年後、20年後の不確実性が高い世の中で自立できるように、必要な教育を提供していくことがとても重要だと思っています。

8 教育の変化

この子どもたちが社会に出る時には、色んな仕事がなくなってきます。これはオックスフォードのオズボーン教授が書いていることですけれども、今後生き残る仕事、無くなる仕事。無くなる仕事の為に子ども達を教育しても仕方がないですよね。

9 資料

厳しい状況にいる子どもたちだからこそ、勉強のみならず、課題解決能力だったり、リーダーシップだったり、そういったものを育んでいかないといけないと私は信じています。

公立学校の教育現場を支援する

こういった厳しい状況にいる子ども達に、私は最高の教育を提供していきたいと思っておりますし、そういったことを担う1人でも多くの教育イノベーター、リーダーを排出していきたいと思っています。

厳しい状況にいる子ども達と向き合う際は、色んなアプローチがあると思います。例えば、学習支援をするだとか、家庭の支援をするとか色々あると思ってます。私は学校を課題解決のフィールドとして選んでおります。

10意義

まず、どんなにやんちゃであっても、子ども達は最初は公立学校に通います。給食は食べれるからとか、友達がいるからだとか、若しくは夏の間は冷房が効いてるからとか、色んな理由があるんですけども99%の小学生は公立学校に通ってますし、93%の中学生は公立中学校に通っています。不登校になってしまった子どもも、最初は学校に通っていたのです。

11公立

そして、親の影響ですが、確かに子ども達からすると、とても大きな影響があると思います。

ただ、親以上に子どもと接している時間が長いのが学校の先生なんですね。1日6時間~8時間、年に200日以上の登校日がありますから、1,200時間~1,600時間ぐらい子どもと接している時間があるわけですよね。

そこのクオリティを上げていきたいと思って、公立学校を支援しています。生活保護率や就学援助率、学力が厳しい自治体や学校と連携しております。

12教師

就学援助率でいうと40%を超えたり、学力テストでいうと県の平均からマイナス20ポイントぐらいあるような学校に対し、私どもの先生を採用してきて、現場に入るために必要な指導力やリーダーシップのサポートをする研修を提供し、2年間教師として派遣する事業を全国で展開しています。

13活動内容

14基準

Teach For Japanの多様な先生達

Teach For Japanには色んな先生がいます。(例えば、青年海外協力隊や国境なき医師団での勤務を経て、「海外の厳しい状況を見てきたが、日本の子どもたちの方が厳しい環境にいるから、そこを支えたい!」という思いで今福岡県下の中学校で英語の先生をしている先生がいます。

15 先生

オリンピック選手のコーチングをしていたような人もいます。

16先生 関口(加工)

元スペインのプロサッカー選手、リーガ・エスパニョーラの2部リーグで活躍した侍みたいな人、こういった人達を採用してきて、現場に派遣をしております。

17 先生 中原

本当に多様な人達がいるんですけれども、そういう志高き優秀な人材にこそ、厳しい状況にいる子どもたちと向き合ってもらいたいと思って活動をしております。

またTeach For Japanのプログラムの特徴としては、教員免許が不要ということです。Teach For Japanのミッションに共感をしていれば、教員免許がなくても、文科省の制度を活用して、TFJが連携している教育委員会であれば教員免許を特別に付与することができております。

そして、その特別な教員免許で他の先生同様に担任を持つなどして教員として勤務することができているのです。

教室での取り組み

最初向き合う子どもたちは比較的元気な子どもたちで、学級崩壊寸前から始まることもあります。最初は何もかも上手くいかないところからスタートをしていきます。

一緒にビジョンを作ったり、子どもたち褒められた経験がほとんどないので、徹底的に褒めて自己肯定感を高めていきます。

18 写真

「ありがとう100プロジェクト」みたいに、感謝の気持ちをどんどん伝えていく、可視化していくようなことをしています。

19ありがとう

そうすると子どもたち、いい表情をするようになっていきます。

20表情

中には家庭で本をほとんど読めないので、自分の社会人時代の仲間たちに声をかけて本を寄贈するプロジェクト、手紙付きで寄贈するプロジェクトで学級文庫を作って本に慣れ親しんでもらって、休み時間どんどん本に触れていくようなことをやったりしています。

21読書

あとは学び合いですね。勉強できる子どもができない子どもに勉強を教えると。そうすると、できる子どもも退屈ではなく、アウトプットして知識も定着していくし、底上げにも繋がっていきます。

22学習

とはいえ、塾に通えない子どもたちがございますので、学力が厳しいと放課後とか週末、厳しい状況にいる子どもたちに学習支援をしています。

23学習環境

タブレットを活用して、紙だと全然学ばないんだけど、タブレットだとどんどん学ぶんですよね。そういったことを授業の中で活用しています。

24タブレット

あとは生きる力ということで、プレゼンテーションの力を育むということで、どんどんプレゼンテーションを日々、毎日やらせていいます。

25プレゼンテーション

多様なロールモデルとの出会いということであれば、社会科見学とかあると思いますが、結構工数がかかって大変なんですよね。

もっと身近にいる大人たちで気軽に出会えるのって大切だと思うんですけど、この先生は100人の大人たちにインタビューをしてきて、自分は子ども時代どういった子どもで、今どういう仕事について何がやりがいがあって何が大変なのかを、毎朝子どもたちに3分の映像を見せていく、みたいな先生もいたりします。

26大人

27映像

これは、生徒が先生の通信簿をつけるということなんですけども、先生が成長し続ける、リーダーシップを磨き続けることを意識しながら、教師の育成やサポートをしております。

28通知票

成果も少しずつ出てきてました。ある学力的に厳しい学校では、今まで英語に触れたことのない中学校1年生が学力テストの平均が県平均よりプラス26ポイントになっている教室もあります。

その先生は教室をITを使って海外と繋げたり、スピーチコンテストをやったり、創意工夫を繰り返しながら、子ども達の学力を向上できるように奮闘しています。

これ、面白いのが1教科上がると他にもいい影響が与えられてくるんですね、勉強が楽しくなってくるので。

こういったことを通して、先ほどの格差の連鎖を断つということをやっていきたいと思っています。

教室から社会を変える

引き続きこういった先生を増やしていくと共に、これをやっていくとこれからの時代に求められる教員採用や教員養成のあり方が見えてきますので、政策提言をしっかりやっていきたいなと思っています。

29短期

今年から教員免許を持っていなくても配置できるようになりましたので、これは大きな政策提言だったのかなと思いますけれども、そういったことを続けていきたいと。

30中期

そして、何よりもこのプログラムを2年間経験した人たちが、今後、社会のリーダーとして世の中で活躍していくことを期待しています。

31長期

学校の先生として、修羅場体験をして、その中で課題解決能力やリーダーシップを身に付けていく。つまり、このプログラムは子ども達と向き合うことを通して、教師がリーダーとして成長していく。

そういったリーダーたちを輩出することを通して、社会全体を巻き込みながら教育格差の問題を解決していく、そんなことをやっていきたいなと思っています。

恐らく皆さんの中にも、教育に思いがある、教育系サービスを立ち上げたいなどと考えている人もいるかと思います。

そういった人は、まず現場を経験して、本当に現場のニーズを理解してから立ち上がるのも遅くないと思います。むしろ、より良いサービスが創れたりすると思います。

32ビジョン

一人でも多くの志が高い人たちと、日本の公立学校を、日本の教育を盛り上げていきたいと思っております。もし関心を持たれた方は、是非お声がけをいただければと思います。ありがとうございました。

(終)

編集チーム:小林 雅/城山 ゆかり


Teach For Japan 松田さんは2016年9月13日開催予定の「ICC/AIESEC ソーシャル・イノベーション・カンファレンス2016」に登壇します。学生は参加費無料です。是非ご参加ください。

icc_aiesec_2016

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